検診で異常が見つかったら…

 検診を受けて異常が見つかると、多くの患者様は大変ショックを受けてしまわれます。
 何か症状があって検査を受けた場合と異なり、単なる「検診」はご本人が「何も異常があるはずがない」と思って受けていることが多いので、どうしても心の準備が何もない状態で結果を受け取ることになってしまいがちなんですよね。

 でも、本来「検診」は、こういった症状が出る前の初期の異常を見つけることが目的なので、検診で異常が見つかったというのは、ラッキーと言えます。
 「病気が見つかって、なんでラッキーなんだ!」と思われるかもしれませんが、病気というのは心や体からの何らかのメッセージです。それに早く気づいてあげられたということは、心身にとってはラッキーなんですね。

 もし検診を受けていなければ、症状が出るまで、つまり病気がかなり進行するまで気づくことができず、取り返しがつかない段階でやっと見つかったり、大掛かりな治療が必要になっていたかもしれません。
 子宮頸がんの検診で言えば、当院で不正出血などの症状が何もなく検診だけを受けた方で異常が出たケースは、すべて「上皮内がん」以下の病変でした。つまり、経過観察で大丈夫なレベルか円錐切除という簡単な手術のみで完治が可能なレベルまでで見つかっているということです。ちなみに、不正出血やおりものの異常で検査を受けた方の中には、残念ながら浸潤がんの方が数名いらっしゃいました。

 子宮頸がん検診で異常が見つかっても、中等度異形成までなら3か月ごとの細胞診を受けるだけで治療に進む必要はありませんし、万が一病変が進んでも円錐切除までで済みます。高度異形成や上皮内がんであっても、円錐切除をきちんと受ければ、ほぼ完治が可能ですから、子宮を失わずに済みます。
 もちろん、妊娠前の方が円錐切除を受けることによって、将来の不妊症や流産・早産のリスクを作ることにはなりますから、できることなら手術を受けずに済んだ方がいいわけですが、進行がんになってから行う治療に比べれば、負担は非常に少ないと言えます。

 日本人の検診受診率は、残念なことに非常に低く、すべての年代を平均してもわずか20%程度にとどまっています。子宮頸がんが増えている10代や20代の方の受診率はもっと低く、10%以下なんですね。
 中には、異常が見つかるのが怖いから検診を受けない、という方もいらっしゃいますが、それは本末転倒です。毎年検診を受けることによって、異常がなければ「安心」を得ることができますし、異常が見つかってもその異常とどのように付き合っていけばいいのか、早めに注意することができるわけですから、検診はぜひ受けていただきたいなと思います。