HPVワクチンとは?効果・副反応・接種回数を解説

HPVワクチンは、子宮頸がんの主な原因となるHPVへの「新しい感染」を防ぐワクチンです。現在、公費の定期接種には9価ワクチンが使用され、子宮頸がんの原因の80~90%を占める7種類のハイリスクHPVへの感染を予防します。初回接種が15歳未満なら原則2回、15歳以上なら原則3回です。[1]
ただし、すでに感染しているHPVを排除したり、子宮頸部異形成を治したりするワクチンではありません。また、すべての発がん性HPVを防ぐわけでもないため、接種後も20歳から子宮頸がん検診を受けることが大切です。
先に確認:対象年齢・回数・費用
| 確認項目 | 2026年度の目安 |
|---|---|
| 横浜市の公費対象 | 横浜市に住民登録がある小学6年生~高校1年生相当の女子 |
| 公費で使うワクチン | 9価HPVワクチン(シルガード9)のみ |
| 初回が15歳未満 | 原則2回(初回・6か月後) |
| 初回が15歳以上 | 原則3回(初回・2か月後・6か月後) |
| 公費対象の費用 | 無料。横浜市の予診票などが必要 |
| 公費対象外の費用 | 当院の9価ワクチンは1回30,800円(税込) |
| 予約方法 | 電話予約(045-440-5577) |
HPVワクチンとは
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、性的接触があれば誰でも感染し得る一般的なウイルスです。多くの感染は免疫によって検出されなくなりますが、一部は長期間持続し、子宮頸部異形成を経て子宮頸がんにつながることがあります。
HPVワクチンは、ウイルスそのものを使った生ワクチンではありません。感染性のないウイルス様粒子を用いて抗体をつくり、ワクチンに含まれる型の新しい感染を防ぎます。ワクチン接種によってHPVに感染することはありません。

HPVワクチンの効果:感染予防から「がん予防」へ
9価ワクチンは、ハイリスクHPVの16・18・31・33・45・52・58型への感染を予防します。これら7種類は、子宮頸がんの原因の80~90%を占めます。[1]
ワクチン導入から時間がたった国では、感染や異形成だけでなく、子宮頸がんそのものの減少も確認されています。スウェーデンの大規模研究では、17歳になる前に4価HPVワクチンを接種した女性で浸潤性子宮頸がんの発生率が88%低く、英国では12~13歳で接種機会を得た世代で子宮頸がんが87%、CIN3が97%少ないという結果でした。いずれも観察研究であり、個人の効果を保証する数値ではありませんが、若い年齢での接種効果を支持する実社会データです。[4][5]
オーストラリアでも、公的接種プログラムの開始後、18歳未満の女性で高度子宮頸部病変の減少が早期から確認されました。[10]
「3回打てば子宮頸がんを100%予防できる」という意味ではありません。接種前にすでに成立した感染には治療効果がなく、ワクチンに含まれない型による病変もあるためです。一方、規定回数を終えた後に、一定年数ごとの追加接種を行う制度は現在ありません。
なぜ小学生・中学生から接種するのですか?
HPVに感染する前に接種するほど、高い予防効果が期待できるからです。また、若い年齢ではワクチンに対する免疫反応が良好で、15歳未満で開始すれば原則2回で完了できます。
日本では毎年約1万1,000人が子宮頸がんと診断され、約3,000人が亡くなっています。[2]子宮頸がんは妊娠・出産を考える年代にも起こり、異形成の手術では子宮を残せても、治療範囲などによって将来の早産リスクが高くなることがあります。[8]
院長の診療経験では、19歳で子宮頸部異形成の手術が必要になった方もいました。これは発生頻度を示すデータではありませんが、「若いからまだ関係ない」とは言い切れない病気です。感染前に予防できる機会を逃さず、接種後は検診で早期発見につなげることが、将来の妊娠・出産を守ることにもつながります。
2回接種と3回接種の違い

| 初回接種時の年齢 | 回数 | 標準的な間隔 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 15歳未満 | 2回 | 初回、6か月後 | 2回の間隔は最低5か月。5か月未満なら3回目が必要 |
| 15歳以上 | 3回 | 初回、2か月後、6か月後 | 標準日程が難しい場合、2回目は初回から1か月以上、3回目は2回目から3か月以上あける |
途中で間隔が長くあいても、通常は最初からやり直しません。過去に2価・4価ワクチンを途中まで接種した方は、残りを9価で完了できる場合があります。母子健康手帳など接種歴が分かるものをご用意のうえ、ご相談ください。[2]
横浜市の公費接種と高校1年生の期限
横浜市の定期接種は、横浜市に住民登録がある小学6年生~高校1年生相当の女子が対象で、標準的な接種年齢は中学1年生です。2026年度から、公費接種に使用されるのは9価ワクチンのみです。過去のキャッチアップ接種と、その経過措置は2026年3月31日で終了しています。[3]
高校1年生相当の年度は、公費で接種できる最後の年度です。標準間隔で年度内完了を目指す場合は、9月までに1回目を受けるのが目安です。期限が近い、すでに間隔があいている、接種歴が不明という場合は、自己判断であきらめず早めに自治体または医療機関へ確認してください。
公費接種では、横浜市の予診票、母子健康手帳などの接種歴が分かるもの、本人確認書類が必要です。原則として保護者の同伴が必要ですが、13歳以上では所定の条件と保護者署名を満たせば、同伴なしで接種できる場合があります。詳細は横浜市の最新案内をご確認ください。
よくある副反応と接種直後の失神
9価HPVワクチンで最も多いのは接種部位の痛みです。厚生労働省の資料では、痛みは50%以上、腫れ・赤み・頭痛は10~50%未満、めまい・吐き気・発熱・疲労などは1~10%未満とされています。多くは数日以内に軽くなります。[1]
注射への緊張や痛みをきっかけに、血圧が下がって気分が悪くなる「迷走神経反射」が起こることがあります。これはHPVワクチンの成分に特有の反応ではなく、採血やほかの注射でも起こり得ます。転倒を防ぐため、接種は座位または横になって受け、接種後は院内で少なくとも30分安静にします。
- 注射や採血で気分が悪くなったことがある
- 当日の体調が悪い、寝不足、空腹が強い
- 強い緊張や痛みへの不安がある
このような場合は、接種前にお知らせください。横になった状態で接種するなど、安全に配慮します。
当院の2025年の接種実績
2025年、当院ではHPVワクチンを延べ369回接種しました。当院が把握した範囲で、迷走神経反射による気分不良・一時的な意識消失が2件ありましたが、いずれも数分で回復し、重篤な副反応として把握した事例は0件でした。
※これは当院の院内集計であり、すべての接種後症状を追跡した研究ではありません。一般的な発生率や安全性を証明する数字ではないため、国内外の安全性評価と分けてご覧ください。
長引く症状・重い副反応・不妊が心配な方へ
ワクチン接種後には、接種との因果関係が分からない症状も含めて幅広く報告・評価されます。「接種後に起きたこと」と「ワクチンが原因で起きたこと」は同じではありません。国内外の大規模な安全性監視では、HPVワクチンが不妊や卵巣機能不全を増やすという根拠は確認されていません。[6][7]
一方で、接種後の症状を「気のせい」と決めつけるべきでもありません。強い痛みやしびれが続く、歩きにくい、意識状態がおかしい、息苦しい、全身にじんましんが出るなどの症状がある場合は、接種した医療機関または救急医療機関へご相談ください。次回接種は、症状と経過を確認して延期・中止を含めて判断します。
接種する・しないをどう考えればよいですか?
HPVワクチンは強制ではありません。効果と接種後に起こり得る症状の両方について説明を受け、本人と保護者が納得して選ぶものです。
| 選択 | 得られること | 残る課題 |
|---|---|---|
| 接種する | ワクチンに含まれるHPV型への新しい感染と、それに続く異形成・がんのリスクを下げる | 接種部位の痛みなどが起こり得る。すべての型は防げず、検診は必要 |
| 接種しない | 接種に伴う痛みや一時的な副反応は避けられる | ワクチンで予防できる型への感染リスクが残る。検診はがんになる前の変化を見つける方法で、感染そのものを予防しない |
不安がある場合は、「受けるよう説得される場」ではなく、疑問点を整理して判断するための相談として受診していただけます。
性交渉の経験があっても接種できますか?
性交渉の経験があっても接種できます。すでに一部のHPV型に感染したことがあっても、ワクチンに含まれるすべての型に感染しているとは限らず、未感染の型への予防効果が期待できます。ただし、年齢やこれまでの感染機会が増えるほど、接種によって得られる利益は一般に小さくなります。
接種前にHPV検査を受けることは、通常必要ありません。一般的なHPV検査では、過去に感染したすべての型や将来得られる予防効果を正確に判定できないためです。検診異常やHPV陽性を指摘されている方も接種できる場合がありますが、ワクチンは現在の感染や異形成を治療しません。必要な精密検査・経過観察を優先し、接種とは別に継続してください。
ワクチン完了まで性交渉を控えなければならないという決まりはありません。ただし、効果は接種直後から100%得られるわけではなく、HPV以外の性感染症や妊娠も予防しません。コンドームなどの予防策は別に必要です。
妊娠・授乳中、妊娠を希望している場合
妊娠中はHPVワクチン接種を見合わせます。接種後に妊娠が分かった場合、ワクチンを理由に特別な妊娠処置が必要になるわけではありませんが、残りの接種は出産後まで延期し、産婦人科医へご相談ください。[6]
授乳中、妊娠を希望している、免疫を抑える治療を受けている、過去のワクチンで強いアレルギー反応があった場合は、接種前にお知らせください。
ワクチンと子宮頸がん検診は両方必要です

HPVワクチンは感染を予防する「一次予防」、子宮頸がん検診は異形成やがんを早く見つける「二次予防」です。ワクチンを接種していても、20歳から自治体などの案内に従って、原則2年に1回の子宮頸がん検診を受けてください。検診異常や治療歴がある方は、通常の検診間隔ではなく医師に指示された時期の検査が必要です。
当日の持ち物・接種の流れ
- 電話で接種日を予約する
- 予診票、母子健康手帳などの接種記録、本人確認書類を持参する
- 体調、アレルギー、接種歴、妊娠の可能性を確認する
- 医師の予診後、上腕に筋肉注射する
- 院内で少なくとも30分休み、体調を確認して帰宅する
- 次回接種日を記録する
接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保ってください。入浴は差し支えありませんが、強くこすらないようにします。発熱や明らかな急性疾患がある場合は、日程を変更します。
HPVワクチンについてよくある質問
Q. HPVワクチンを受ける前にHPV検査は必要ですか?
通常は必要ありません。HPV検査は、過去のすべての感染やワクチンによる今後の利益を判定する検査ではありません。検診異常がある場合は、その精密検査・経過観察を別に行います。
Q. 1回目から長くあいてしまいました。最初からやり直しますか?
通常はやり直さず、残りの回数を接種します。接種日とワクチンの種類が分かる記録を持ってご相談ください。
Q. 性交渉の経験があると、もう遅いですか?
一律に遅いわけではありません。未感染の型への予防効果が期待できます。ただし、感染前に接種する方が効果は高いため、年齢や状況に応じて相談します。
Q. HPVワクチンで不妊になりますか?
HPVワクチンが不妊や卵巣機能不全を増やすという根拠は、国内外の安全性評価で確認されていません。むしろ子宮頸がんやその治療が、将来の妊娠・出産に影響する可能性があります。
Q. 接種後は子宮頸がん検診を受けなくてよいですか?
いいえ。ワクチンに含まれないHPV型もあるため、接種後も20歳から定期的な子宮頸がん検診が必要です。
Q. 9価ワクチンは何回受ければよいですか?
初回接種が15歳未満なら原則2回、15歳以上なら原則3回です。免疫状態や過去の接種歴によって異なる場合があるため、接種記録をご持参ください。
横浜駅近くでHPVワクチンをご希望の方へ
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~は、横浜駅きた東口から徒歩6分です。産婦人科専門医の女性医師が、接種歴、公費対象、必要回数、接種への不安を確認します。
HPVワクチン接種のご予約は、お電話(045-440-5577)で承ります。
予約方法・診療時間を確認する | 自費診療の料金を確認する
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月15日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・接種可否の判断に代わるものではありません。公費制度・料金・接種方法は変更される場合があります。
参考文献
- 厚生労働省.HPVワクチン.
- 厚生労働省.HPVワクチンに関するQ&A.2026年3月25日更新.
- 横浜市.HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の接種について.
- Lei J, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. N Engl J Med. 2020;383:1340-1348. PubMed.
- Falcaro M, et al. The effects of the national HPV vaccination programme in England, UK, on cervical cancer and grade 3 cervical intraepithelial neoplasia incidence. Lancet. 2021;398:2084-2092. PubMed.
- CDC. Human Papillomavirus (HPV) Vaccine Safety.
- Suzuki S, Hosono A. No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women. Papillomavirus Res. 2018;5:96-103. PubMed.
- Kyrgiou M, et al. Obstetric outcomes after conservative treatment for cervical intraepithelial lesions and early invasive disease. BMJ. 2016;354:i3633. PubMed.
- World Health Organization. Human papillomavirus vaccines: WHO position paper, December 2022.
- Brotherton JML, et al. Early effect of the HPV vaccination programme on cervical abnormalities in Victoria, Australia. Lancet. 2011;377:2085-2092. PubMed.










