育児を楽しめなくてもいい

 先日こんな記事を見つけて、「あ~こんなことを言われるからますます子育て中のママが追い詰められてしまうんだよな~」と感じました。
  http://spotlight-media.jp/article/131622381010152972

 私も以前、育児と家事でいっぱいいっぱいになったために色んな方にアドバイスや助けを求めたことがありますが、その時に似たような追い詰められ方をしたんですよね。
 この記事、「オヤノミカタ」の視点で書いてあるようなんですが、本質的には「子育てを楽しいと感じられないあなたが悪い」と言っているようなものです。子育てを楽しいと感じられないなんて、やっぱり私は子育てに向いていないのね・・・とショックを受けてしまうママさんもいるかもしれません。
 子育ては大変です。楽しいなんて感じられない時があって当然です。だから、私は子育てを「楽しもう」と思わなくてもいいのだと思っています。

 どうせやらなければいけないことなのだから、大変大変と思わずに何か楽しめる要素を探してみようとか、できるだけ楽しめるように工夫してみようと、当事者が「自発的に」思うのはよいことです。嫌な仕事をイヤイヤやるより、少しでも楽しめることがないか視点を変えてみるというのは有効な方法ではあります。
 でも、そもそも子育てを「楽しまなければいけない」という考えを他人から押し付けられること自体が、子育てで疲弊している母親にとっては負担になるわけです。

 子育ての「先輩」たちが言ってしまうアドバイスで、最も破壊力が大きいなと感じたのは、「今が一番大変な時期だけど、でも一番可愛い時期よね」という言葉です。これは、親の介護で疲弊しきっている人に「最後に親孝行ができていいわよね。感謝しないと」と言ってしまうのと同じくらい、言われた本人にとっては大きなダメージになります。
 どちらも、当事者が「自発的に」発するべき言葉であって、周りが押し付けてはいけないことなのです。

 女性だから母性本能があるだろうとか、望んで産んだ子どもなんだから目の中に入れても痛くないくらいかわいいだろうとか、子育ては大変ながらもやっぱり楽しいだろうとか、そういった価値観の押しつけは、子育て中の母親にとっては苦痛なだけです。
 比較的若い年齢で「今後妊娠は希望しないから」と避妊相談にいらっしゃる方の中には、「正直子どもがそんなにかわいいとは思えないんですよ。だから1人で十分なんです」という方もいらっしゃいます。子どもがかわいいと思えなかったり、育児が楽しいと思えなかったりすることを「母親失格」と思って自分を責めてしまう方も少なくありません。

 そもそも、子育ては大変なんです。なぜって、人間らしい生活をしばらくの間あきらめなければいけなくなるわけですから。
 ご飯を温かいうちに食べるとか、座って食事をとるとか、ゆっくり湯船につかって入浴するとか、一晩中邪魔されずにぐっすり眠るとか、行きたい時にトイレに行くとか、そういった「本来できて当たり前のこと」ができなくなるわけです。一時的なことであっても、小さなストレスの積み重ねは、育児を「楽しめない」ものにするには十分だと感じています。

 大変なものは大変なんだと思っていいし、言ってもいいんです。「大変だけどでも楽しいよね~」なんて頑張らなくていいんです。「大変だからもう嫌!」って言っていいんだと思います。そう言えない空気を作ることは、母親を追い詰めて、虐待や殺害にまで追い込んでしまうことになりかねません。
 育児に向いていない人が産むケースなんてたくさんあります。かく言う私も育児向きではありません。完璧主義で、計画性があって、予定通りに事が進まないとイライラする性格ですから、育児に向いているはずがありませんよね(笑)でも、子どもは欲しいと思いましたし、子どもを見てほっこりしたり「かわいいな~」とデレデレしたりすることもあります。
 
 子どもがかわいいと思えなくても、育児を楽しいと思えなくても、それは母親の責任ではありません。母親が自分を責める必要もありません。「私はそう思えない」と周りに大きな声で言える環境こそが、本当に必要な「支援」なんだと思います。

プロフィールD.JPG
清水(旧姓:須藤) なほみ
ポートサイド女性総合クリニック
~ビバリータ~ 院長
歌って踊れる産婦人科医
 
「全ての女性は美しくなる権利がある」をコンセプトに、女性の美と健康をサポートするために女性医療を皆様のもとにお届けしています。
5歳から始めたクラシックバレエは、ミュージカルとの出会いでコンテンポラリーダンスに変身しました♪
 
所属学会:日本産婦人科学会・日本思春期学会・日本性感染症学会・日本不妊カウンセリング学会
 
日本家族計画協会認定思春期保健談員
不妊カウンセリング学会認定カウンセラー


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