子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)は受けるべき?

子宮頚がんワクチンの積極的接種勧奨は再開されています(横浜 婦人科 女医)

国が一時期」「子宮頸がんワクチンの接種を積極的に推奨しない」といった、中途半端な指針を発表してしまったせいで、いまだに娘さんを持つお母さんも、もしかしたら接種対象であるご本人も混乱してしまっているかもしれませんね。

「子宮頚がんワクチンは受けるべきなのか?」「副反応は大丈夫なのか?」といったことが気になって、知恵袋などで相談していらっしゃる方も見受けられます。

女性の性と健康を守りたいという思いから活動しているいち産婦人科医の立場からも、子宮頸がんのリスクを抱えうる一人の女性という立場からも、そして二人の娘を持つ母親という立場からも、このワクチンの接種を「推奨しない」つもりは全くありません。

私自身の個人的スタンスは、「必要がある人には勧めるけれど強要はしない」という立ち位置です。接種しないという選択に対してあれこれ言うつもりはありません。ただ、その選択の根拠が間違った情報によるものであるとしたら、それは正していきたいと考えています。

 

 

HPVワクチンは何歳で打った方がよい?(横浜駅 婦人科 女医)

また、接種は勧めるけれど急がせるつもりもありません。つまり、11歳や12歳ですぐに接種した方がいいですよ、と言うつもりはありません。

このワクチンの有効性を十分に得ようと思ったら、HPVに感染する前=性交渉を開始する前に接種する必要があります。「性交渉前」という時期が、必ずしも11歳や12歳で終わるわけではないので、例えば16~17歳まで性行動を控えられると思われれば、その時期を待って本人にワクチンの必要性を説明し、接種するかどうかの意思確認をしてもいいわけです。

セックスを待てるのであれば、痛みに敏感な&筋肉が未発達なローティーンで接種しなくても済みます。

私なら娘に、「セックスはとても素晴らしいラブコミュニケーションの方法だけど、お母さん的にはあまり早くからセックスはしてほしくないなと思っているよ。でもすごく好きな相手ができて、もしかしたらセックスするかもしれないと思ったら、その前に知っておくべきことやしておくべき予防があるからちゃんとお話ししようね」と伝えると思います。

ただし、このワクチンが公費(無料)で接種できる年齢の上限は高校1年生ですから、無料接種期間中に接種したい場合は、遅くとも高校1年生の9月には接種を開始する必要があります。

また、シルガード9(9価ワクチン)は、14歳以下で接種を開始すれば2回の接種で済みますので、「注射を打つ回数を減らしたい」という場合は、14歳以下での接種をお勧めします。

 

子宮頚がんワクチンは安全?危ない?(横浜市 婦人科 女医)

 

そもそも、国が一時的に接種を「推奨しない」とした理由は、ワクチン接種後に原因不明の痛みを訴える人が予想外に多かったから、ということのようですが、実際クリニックで同じワクチンを接種した人の中で、何日も続く強い痛みを訴えたり全身の痛みを訴えた方はいらっしゃいません。
ワクチンの安全性を検証する委員会のメンバーに産婦人科医が1人も含まれておらず、多くが小児科医であったことから推察すると、検討対象となった症例の多くは低年齢の方であった可能性が考えられます。

11歳と18歳では、腕の筋肉の発達具合も違いますし、痛みに対する過敏さも異なります。何より、筋肉注射に慣れていない医療者が打てば、ワクチンの種類に関係なく痛みを訴える人が増える可能性はあり得ます。

同じワクチンが世界100か国以上で認可され、中には大規模に接種をしている国があるにもかかわらず、日本が問題にしている副反応は何も問題になっていません。
なので、ワクチン安全性の検討内容そのものは、多角的に見直す必要があります。。

もちろん、ワクチンで副反応が起きるケースがゼロではありませんから、「100%絶対に安全なワクチンですよ」ということはできません。きちんと副反応によるデメリットもご説明したうえで、最終的には接種するかどうかを決めていただくことになります。
ただ、錯綜している情報に惑わされないで、もう一度このワクチンの必要性について考えてほしいなと思うのです。
私がワクチン接種を勧める理由は次のようなものです。

*10代のうちに性行動を開始しないことを期待するのは現実的ではない
*HPVはいったん感染すると治療はできないので感染前の予防が非常に大事
*9価ワクチンが承認されたので子宮頚がんの原因の89%が予防できる
*副反応の頻度と子宮頸がんの罹患率は比べ物にならないほど副反応が少ない
*日本人の子宮頸がん検診受診率はわずか20%程度で若い人ほど受けていない
*検診で早期発見できない子宮頸がんがありその原因のほとんどがHPV18型
*ワクチン接種することで産婦人科とつながるきっかけを持つことができ検診につなげられる