それでもあなたは「言いワケ」を続けますか?

 クリニックでは禁煙指導やダイエット指導などの生活改善のアドバイスも行っています。ダイエットが必要な方には、食事の記録をつけていただいたり、普段の運動習慣の有無などを伺って、「今の状態でできる範囲の改善方法」をお伝えします。食事記録をつけていただくと、本当に「納得」な内容でして、「この食事では健康な体になることは無理でしょう」と太鼓判を押したくなってしまうようなラインナップだったりするのです。それらを拝見すると、「やっぱり病気になる人は『病気になりたくて』自ら病気になっているんだな~」と実感します。だって、病気になるような生活や食事を、わざわざ自分で選んで実践しているわけですから。
 
 生活や食事の指導だけではありません。子育て中のお母さんが「イライラする」と言って受診なさったら、イライラを和らげる薬をただ処方して終わりなのではなく、「どんな時にイライラしやすいのか」「毎日の状況がどのようになっているのか」を伺って、「自分で状況や時間やコントロールすることで感情もコントロール下に戻す」といった方法もアドバイスさせていただいたりします。
 更年期の症状が辛いという方がいらっしゃったら、親の介護といった負担がないか、夫婦関係は良好か、子育てが一段落して「子どもという盾」がなくなっていないか、などもお話しの中で伺いながら、「いっぱいいっぱいにならない方法」や「自分の主導権を取り戻す方法」をアドバイスさせていただいたりします。

 こういったいろんなアドバイスをしていると、病気や不調がよくなる方とそうでない方との反応ははっきりと分かれます。
 不調が続く方の最大の特徴は「言いワケ」です。例えば、先日「すさまじい食事内容」を記録してきてくださった方は、どんなに「できる範囲の食事改善」を勧めても「仕事が忙しすぎて疲れ切っているので何も考えられないし食事なんていちいち気にしていられない」とおっしゃいます。仕事の状況を伺うと、確かにそれはお辛いでしょう、という状況なので、それなら職場の産業医や労務課に相談して就労時間を調整してもらったり、場合によっては診断書を発行して休息が取れるようにもできますよと提案したら「小さい職場なのでそんなことをしたらそこにいられなくなる」と突っぱねられました。「今の仕事はやめたくてしょうがない」とのことなので、それなら転職しては?と提案したら「1人暮らしで生活していかないといけないので仕事をやめるわけにはいかない」とのことです。
 ここまで来れば皆さんお分かりでしょう?この方の「言いワケ」は、要するに「私は何も変えられません」と言っていることになります。言いワケを言うということは「他者原因」で考えているということなんですね。原因が自分にあるのではなく、誰かが悪い・職場が悪い・今の生活環境が悪い・・・と「自分以外のもの」に原因を見出しているのです。そして、それらに対して自分から働きかけたり変化を起こすことに関して「お手上げ」状態を維持しようとしています。

 このような患者様には、私は常に次のようにお伝えしています。「もちろん、今のままの状態を続けて体からのアラームを薬で押さえ続けることもできますし、根本的な原因としっかり向かい合って『本来のなりたい自分』になることもできます。目に見えている不調をモグラたたきのように押さえ続けるか、根っこの部分にアプローチするかは、あなた次第ですから、どちらを選択してもいいんですよ」と。
 言いワケをし続けて、生活習慣病を引き起こすケースもあるでしょう。自分自身ががんなどの「入院を余儀なくされる」病気になることもありますし、親が認知症になる場合もありますし、子どもが大きな病気になることもあります。アラームが小さいうちに「原因となる根」を掘り起こして枯らしておけばそうはならないのですが、「言い訳をやめよう」と思うタイミングは人それぞれなのです。私たち医者は、ただその言い訳に付き合っていくしかありません。だって、医者が病気を治すわけではないのですから。
 

 それでもあなたは「言いワケ」を続けますか?