PMS・PMDDの治療|ピル・SSRI・漢方の選び方
PMS・PMDDの治療は、最も困っている症状と重症度に合わせて選びます。月経痛や過多月経もある方、精神症状が中心の方、妊娠を希望する方では、適した治療が異なります。治療の柱は、症状記録と生活調整、OC・LEPなどのホルモン療法、SSRI、認知行動療法、症状ごとの薬、漢方薬です。[1][2]
一つの方法で十分に改善しなくても、診断を見直し、薬の種類・飲み方を変更したり、婦人科と心療内科・精神科が連携したりすることで治療を続けられます。
治療を選ぶ時に確認すること
- 主な症状が身体症状か、精神症状か
- 仕事・学校・家事・人間関係への影響
- PMS、PMDD、PMEのどれが考えられるか
- 月経痛、過多月経、片頭痛、子宮内膜症などの併存
- 妊娠希望と避妊の希望
- 喫煙、血栓症、高血圧、前兆のある片頭痛などホルモン剤のリスク
- うつ病、双極症、不安症、ADHDなどの治療歴
治療前と開始後も症状日記を続けると、「何となく楽になった」だけでなく、症状、生活障害、副作用の変化を比較できます。
PMS・PMDDの主な治療法を比較
| 治療 | 向いていることが多い症状・状況 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 生活調整・運動 | 軽症から重症まで治療の土台として | これだけで改善しない場合もあり、本人の努力不足とは考えない |
| 認知行動療法(CBT) | 気分症状、ストレス、症状による生活障害への対処 | 効果を感じるまで時間が必要なことがある |
| OC・LEP | 月経痛・過多月経を伴う、排卵を抑えたい、避妊も希望 | エストロゲン含有製剤では血栓症などの適否確認が必要 |
| SSRI | イライラ、落ち込み、不安など精神症状が強いPMS・PMDD | 吐き気、不眠、眠気、性機能への影響、開始時の焦燥、急な中止による離脱症状 |
| 対症療法 | 頭痛、腹痛、乳房痛など特定の身体症状 | 月経前症状全体への効果は限定的 |
| 漢方薬 | 複数の身体・精神症状があり、漢方を希望する | 体質・症状に合わせる。副作用や他薬との併用に注意 |
| GnRHアゴニスト等 | 他の治療で改善しない重症例 | 更年期症状・骨量低下があり、専門的な管理が必要 |
症状記録・生活習慣の調整
睡眠不足、過度な飲酒、カフェイン、食事の乱れ、強いストレスが症状を悪化させている場合は、調整により負担が軽くなることがあります。無理のない範囲で、次の方法を試します。
- 起床・就寝時刻をできるだけ一定にする
- ウォーキングなど続けられる有酸素運動を行う
- 食事を極端に抜かず、月経前の過食・飲酒・カフェインとの関係を記録する
- 症状が強くなる時期は、重要な予定を詰めすぎない
- 家族や職場・学校と、必要な配慮を具体的に相談する
生活調整だけで治らないからといって、努力が足りないわけではありません。生活への影響が大きい場合は、薬物療法や心理療法を早めに組み合わせます。
認知行動療法・カウンセリング
認知行動療法(CBT)は、症状が強い時の考え方・行動のパターンを整理し、ストレスや対人関係、仕事への影響を減らす治療です。「症状は気の持ちよう」という意味ではなく、身体症状や薬物療法と並行して使える方法です。
うつ病、不安症、トラウマ、発達特性、対人関係の問題が重なっている場合は、心理職や心療内科・精神科との連携が役立ちます。[2]
低用量ピル・OC・LEPによる治療
OC・LEPは排卵を抑え、周期的なホルモン変動を小さくします。月経痛や過多月経を伴う方、避妊も希望する方では選択しやすい治療です。ドロスピレノンと低用量エストロゲンを含む配合薬には、PMDDを中心とした研究で月経前症状と生活機能障害を改善する可能性が示されています。[3]
ただし、すべてのピルに同じ根拠があるわけではなく、全員の精神症状が改善するとも限りません。連続・延長投与で休薬回数を減らす方法が合う方もいますが、周期投与よりすべての症状に優れるとは断定できません。
日本で承認されているドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合LEPの効能は月経困難症であり、PMS・PMDDそのものを効能とする薬ではありません。保険適用は診断・処方目的・製剤によって異なります。[4]
処方前に確認する主な項目
- 血栓症の既往・家族歴
- 前兆のある片頭痛
- 喫煙、年齢、血圧、肥満
- 手術予定や長期間動けない状態
- 乳がん・肝疾患などの既往
- 妊娠の可能性
服用中に片脚の痛み・腫れ、突然の息苦しさ・胸痛、激しい頭痛、視覚・言語の異常などがあれば、服用を中止して緊急に受診してください。
黄体ホルモン剤・ミレーナはPMSに効きますか?
黄体ホルモン単剤は、製剤によって排卵抑制の程度が異なり、PMS・PMDDへの効果が十分確立していないものもあります。気分変化を感じる方もいるため、開始後の記録が大切です。
ミレーナは生理痛・過多月経には有効ですが、多くの方で排卵が続くため、PMS・PMDDの第一選択とは限りません。出血や痛みが軽くなることで間接的に負担が減ることはあります。ミレーナの効果・デメリットを詳しく見る
SSRIによる治療
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、精神症状が強いPMS・PMDDの主要な治療です。研究では、PMS・PMDDの症状を減らす効果が示され、月経周期を通して毎日服用する方法は、黄体期だけ服用する方法より効果が大きい可能性があります。[5]
一方、黄体期のみ、または症状が始まる時期から服用する方法が合う方もいます。月経周期が不規則な方、PMEが疑われる方、うつ病・不安症を併存する方では、連日服用を選ぶことがあります。
SSRIを使う時の注意
- 吐き気、下痢、頭痛、眠気、不眠、性欲低下などが起こることがある
- 開始直後や増量時に、焦燥・不安・希死念慮が強くなることがある
- 双極症が隠れている場合は、躁状態を誘発する可能性がある
- 自己判断で急に中止すると、めまいなどの離脱症状が出ることがある
- 妊娠希望・妊娠中は、利益とリスクを個別に検討する
日本では、PMS・PMDDそのものを効能として承認されたSSRIはなく、PMS・PMDDへの処方は適応外使用・保険適用外となります。精神症状が重い場合、効果が乏しい場合、副作用がある場合は心療内科・精神科と連携します。日本産婦人科医会は、黄体期のみの投与と周期を通した投与の両方を選択肢としています。[6]
頭痛・腹痛・むくみなどへの対症療法
頭痛、腹痛、腰痛、乳房痛には鎮痛薬を使用することがあります。月経関連片頭痛では、一般的な鎮痛薬だけでなく片頭痛の治療が必要です。前兆のある片頭痛ではエストロゲンを含む配合薬を使用できません。
むくみが強い方に利尿薬を検討することもありますが、電解質異常や血圧への影響があるため自己判断では使用しません。症状だけを一時的に抑える治療であり、PMS・PMDD全体の治療とは分けて考えます。
漢方薬・サプリメント・ハーブ
漢方薬は、イライラ、気分の落ち込み、むくみ、冷え、頭痛など、症状の組み合わせや体質をみて選びます。漢方薬にも肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症などの副作用があり、他の漢方薬との成分重複にも注意が必要です。
カルシウム、ビタミン類、チェストベリーなどは研究されていますが、効果の確実性、適量、製品品質は一定ではありません。高用量のビタミンB6は末梢神経障害の原因になり得ます。セントジョーンズワートは、ピル、抗うつ薬など多くの薬と相互作用するため、自己判断で併用しないでください。
「天然」「オーガニック」であれば安全とは限りません。使用中のサプリメント・ハーブは、商品名と含有量が分かるものを診察時にお持ちください。
治療しても改善しない場合
次の点を見直します。
- 症状記録から、本当に月経前に限った症状か確認する
- PME、双極症、甲状腺疾患、貧血、片頭痛、子宮内膜症などを再評価する
- 薬の飲み方、期間、副作用、飲み忘れを確認する
- OC・LEPの種類変更、SSRI、心理療法、併科診療を検討する
- 難治性の重症例では、専門医がGnRHアゴニスト等を検討する
GnRHアゴニストは卵巣機能を一時的に抑えますが、更年期症状や骨量低下を起こすため、一般的な第一選択ではありません。手術は極めて例外的な選択で、十分な診断・治療と専門的評価なしに行うものではありません。[2]
妊娠希望・思春期の治療
妊娠を希望する方
妊娠を目指している時期は、排卵を抑えるOC・LEPは使いません。症状記録、生活調整、心理療法、症状ごとの薬を中心に、必要に応じて妊娠中の安全性も考えて薬を選びます。服用中のSSRIを妊娠が分かった時に自己判断で急に中止せず、処方医へご相談ください。
思春期
学校生活への影響、自傷・希死念慮、月経痛・過多月経を確認します。OC・LEPやSSRIを使う場合は、本人に目的と副作用を説明し、開始後の気分変化を丁寧に確認します。診断や相談のために内診が必須というわけではありません。
治療効果はいつ判断しますか?
治療開始後も症状日記を続け、通常は2~3周期を目安に効果と副作用を評価します。ただし、SSRI開始後の強い焦燥・希死念慮、ホルモン剤使用中の血栓症を疑う症状などは、予定の再診を待たずに連絡・受診してください。
効果判定では、症状の点数だけでなく、欠勤・欠席が減ったか、家事や人間関係への影響が改善したかも確認します。
PMS・PMDDの治療についてよくある質問
Q. PMSにはピルとSSRIのどちらがよいですか?
月経痛・過多月経や避妊希望があり、排卵を抑えたい方にはOC・LEPが合うことがあります。精神症状が強いPMS・PMDDにはSSRIが合うことがあります。併用する場合もあり、安全性と主症状で選びます。
Q. SSRIは毎日飲まなければいけませんか?
毎日服用する方法と、黄体期または症状が始まる時期だけ服用する方法があります。月経周期、PMEや併存疾患の有無、副作用を確認して決めます。
Q. 漢方薬だけで治療できますか?
軽症や身体症状が中心の場合に漢方薬が合う方はいます。生活障害や精神症状が強い場合は、OC・LEP、SSRI、心理療法、精神科連携も含めて検討します。
Q. ミレーナでPMSは治りますか?
ミレーナは生理痛・過多月経には有効ですが、排卵が続く方が多く、PMS・PMDDを確実に抑える治療ではありません。痛みや出血の負担が減ることで間接的に楽になる方はいます。
Q. 治療を始めたら一生続けますか?
一生続けると決まっているわけではありません。効果、副作用、年齢、妊娠希望、症状の変化を定期的に確認し、減量・中止・変更を相談します。
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横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。症状、月経痛、妊娠希望、薬へのご希望を伺い、治療の選択肢をご説明します。
PMS・PMDDの初診予約は、お電話(045-440-5577)でご相談ください。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月6日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会.月経前症候群・月経前不快気分障害(PMS・PMDD)に対する診断・治療指針.2025.
- American College of Obstetricians and Gynecologists. Management of Premenstrual Disorders. 2023.
- Ma S, et al. Oral contraceptives containing drospirenone for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2023;6:CD006586. PubMed.
- PMDA.ヤーズ配合錠 電子添文.2026年8月改訂.
- Jespersen C, et al. Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2024. PubMed.
- 日本産婦人科医会.PMS/PMDDの専門科へのコンサルトのタイミングは?.2026.










