更年期障害の診断基準と検査方法|血液検査だけでは決まりません

更年期障害には、FSHがいくつ以上なら確定、という一律の診断基準はありません。年齢、月経の変化、症状、生活への影響を確認し、似た症状を起こす病気を必要に応じて除外して診断します。ホルモン検査は役立つ場合がありますが、1回の採血だけで更年期障害かどうかを判定することはできません。[1]

 

更年期障害の診断の考え方

日本産科婦人科学会の用語では、更年期に現れる多様な症状のうち、器質的変化に起因しない症状を「更年期症状」と呼び、その中でも日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」とします。

診断では、主に次の4点を確認します。

  1. 閉経前後の時期に当たるか、月経がどう変化しているか
  2. どの症状が、いつから、どの程度続いているか
  3. 仕事、家事、睡眠など日常生活にどの程度支障があるか
  4. 症状を説明するほかの病気や薬剤の影響がないか

更年期障害は「検査で異常がないから気のせい」という病気ではありません。一方で「40~50代の不調はすべて更年期」と決めつけず、危険な病気や治療可能な病気を見逃さないことが大切です。

診察で確認すること

  • 最終月経、月経周期、出血量、不正出血
  • ほてり、発汗、睡眠、気分、頭痛、動悸、関節痛、泌尿生殖器症状
  • 症状が起こる時刻・頻度と生活への影響
  • 妊娠の可能性と避妊方法
  • 乳がん・婦人科がん、血栓症、脳卒中、心疾患、肝疾患、片頭痛などの既往
  • 家族歴、喫煙、飲酒、体重変化
  • 服用中の薬・サプリメント
  • 乳がん検診・子宮頸がん検診の受診歴

血圧、体重・BMIも確認します。更年期は高血圧、脂質異常症、糖尿病、骨量低下などが現れやすくなる時期でもあります。

症状評価表・更年期チェックリスト

簡易更年期指数(SMI)や日本人女性の更年期症状評価表などを使い、症状の種類と強さを整理することがあります。これらは治療前後の変化を確認するうえで有用ですが、点数だけで診断したり、HRTの適否を決めたりするものではありません。[1]

気分の落ち込みが強い場合は、抑うつ・不安の質問票を併用することがあります。自傷念慮、強い抑うつ、日常生活が保てない状態がある場合は、早めに精神科・心療内科と連携します。

FSH・エストラジオールの血液検査は必要ですか?

45歳以上で、典型的な症状と月経の変化がある場合、ホルモン検査が必須とは限りません。更年期移行期はFSHやエストラジオール(E2)が日ごと・周期ごとに大きく変動するため、1回の数値はその時点の一断面にすぎません。[2]

状況 ホルモン検査の考え方
45歳以上・典型的な症状 問診と月経歴を中心に判断し、FSH・E2を測定しないこともあります。
40~44歳で閉経が疑われる 早発閉経などの評価のため、FSHなどを検討します。
40歳未満で無月経・低エストロゲン症状 早発卵巣不全(POI)を含む原因検索が必要です。自己判断で「若年性更年期」とせず受診してください。
子宮摘出後で月経から判断できない 年齢・症状に加え、必要に応じてFSH・E2を参考にします。
ホルモン薬を使用中 ピルやHRTなどが数値と出血に影響するため、検査の解釈に注意が必要です。

FSHが高い、E2が低いという結果だけで症状の原因や治療効果が決まるわけではありません。症状が改善しているかを最も重視します。

ほかに行うことがある血液検査

症状や健診歴に応じて、次の検査を選びます。全員に一律の「更年期検査セット」が必要なわけではありません。

  • 血算・鉄関連検査:過多月経、疲労、息切れ、めまいがある場合の貧血評価
  • 甲状腺機能:動悸、発汗、疲労、冷え、体重変化、月経異常がある場合
  • 肝機能:全身状態の確認、HRTや薬剤選択の参考
  • 脂質・血糖:生活習慣病と心血管リスクの評価
  • 妊娠反応:月経が遅れており妊娠の可能性がある場合
  • その他:症状から疑われる病気に応じた検査

職場健診や特定健診の結果をお持ちの場合、重複する検査を省けることがあります。

婦人科診察・超音波検査

不正出血、過多月経、下腹部痛、腹部膨満などがある場合は、内診や経腟超音波検査で子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、卵巣腫瘍、子宮内膜の状態などを確認します。

閉経後出血、子宮内膜の肥厚、出血リスクがある場合は、子宮内膜細胞診・組織診、子宮鏡検査などを検討することがあります。必要な検査は症状と診察所見によって異なります。

更年期障害と区別する主な病気

主な訴え 確認する病気・状態の例
ほてり・動悸・発汗 甲状腺機能亢進症、不整脈、貧血、薬剤の影響
疲労・冷え・体重増加 甲状腺機能低下症、貧血、睡眠障害、肝疾患
気分の落ち込み・不安 うつ病、不安症、適応障害、薬剤・アルコールの影響
頭痛・めまい 片頭痛、耳科疾患、脳・神経疾患、貧血、高血圧
関節痛・こわばり 関節リウマチ、変形性関節症、腱鞘炎
不正出血・過多月経 子宮筋腫、ポリープ、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、悪性疾患

HRTを始める前に確認すること

HRTを検討する場合は、症状と診断に加えて、治療の利益とリスクを判断する情報を確認します。

  • 原因不明の性器出血がないか
  • 乳がん・子宮体がんなどの既往と家族歴
  • 血栓症、脳卒中、心筋梗塞の既往・リスク因子
  • 肝疾患、胆のう疾患、高血圧、糖尿病、脂質異常症、片頭痛
  • 子宮の有無
  • 乳がん検診・子宮頸がん検診の受診状況

乳がん検診や子宮頸がん検診は、HRTのためだけに特別な頻度で行うのではなく、年齢・既往・地域の推奨と個別リスクに沿って受けます。出血などの症状があれば、検診とは別に診断のための検査が必要です。

骨密度検査が勧められることがある方

  • 40歳未満の早発卵巣不全、45歳未満の早発閉経
  • 低体重、喫煙、多量飲酒
  • 骨折歴や骨粗鬆症の家族歴がある
  • ステロイド薬を長期間使用している
  • 骨量低下につながる病気・治療歴がある

骨密度検査の時期は年齢だけでなく、これらのリスク因子を確認して決めます。

更年期障害の診断・検査についてよくある質問

Q. FSHが正常なら更年期障害ではありませんか?

いいえ。更年期移行期のFSHは変動するため、1回正常でも更年期障害を否定できません。症状、月経、年齢、ほかの病気の可能性を合わせて判断します。

Q. 更年期チェックの点数が高ければHRTが必要ですか?

点数は症状整理の目安です。HRTの適否は、最もつらい症状、持病、リスク、子宮の有無、本人の希望などを確認して決めます。

Q. 30代でも更年期のような症状はありますか?

あります。甲状腺疾患、貧血、精神疾患などのほか、40歳未満では早発卵巣不全(POI)の可能性もあります。月経不順・無月経を伴う場合は早めに婦人科を受診してください。

Q. 初診日にHRTを始められますか?

問診、診察、検診歴などから安全に開始できると判断すれば開始できる場合があります。不正出血や持病がある場合は、必要な検査・他科確認を先に行います。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。

参考文献

  1. 日本産婦人科医会.更年期障害の検査・診断.2025.
  2. National Institute for Health and Care Excellence. Menopause: identification and management(NG23). Updated 2024.
  3. European Society of Human Reproduction and Embryology. Guideline on premature ovarian insufficiency. 2024.