PMOS(旧称・多嚢胞性卵巣症候群PCOS)とは?名称変更の理由と全身管理
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、2026年5月に「多分泌代謝性卵巣症候群(Polyendocrine Metabolic Ovarian Syndrome:PMOS)」へ名称変更されました。
新しい名称は、この病気が卵巣の「嚢胞」だけの問題ではなく、複数のホルモン、排卵、糖代謝、子宮内膜、皮膚症状、こころの健康、妊娠まで関わる全身性の症候群であることを表しています。[1][2]
ただし、病気そのものや過去の診断が変わったわけではありません。2028年の国際ガイドラインで完全実装されるまでの移行期間は、PMOSとPCOSの両方が使われます。日本内分泌学会は、日本語名として「多分泌代謝性卵巣症候群」を今後使用予定としています。[3]
PMOSで多い受診理由が、月経周期が39日以上になる、3か月以上来ないなどの月経不順です。しかし、月経だけを整えて終わるのではなく、妊娠希望、子宮内膜、血糖・脂質・血圧、ニキビ・多毛、睡眠、メンタルヘルスまで、年齢と目的に合わせて確認することが大切です。
PMOS(旧称PCOS)とは
PMOSは、卵胞が途中まで育っても排卵に至りにくく、月経不順、無月経、排卵障害などが起こる症候群です。アンドロゲンの影響により、ニキビ、多毛、頭髪が薄くなるなどの症状が現れることもあります。
「卵巣の壁が厚くて排卵できない病気」「肥満の方だけがなる病気」と単純に説明できるものではありません。ホルモン、卵巣機能、代謝、遺伝的要因、環境などが関係する多様な状態で、やせ型・標準体重の方にもみられます。
名称変更によって、過去のPCOS診断が無効になることはありません。診断書や検査結果に「PCOS」「多嚢胞性卵巣症候群」と書かれていても、基本的には同じ症候群を指します。
なぜPCOSからPMOSへ名称変更されたのですか?

「嚢胞」という言葉が実態と合っていなかった
超音波で多く見えるのは、病的な嚢胞ではなく、発育途中の小さな卵胞です。PMOSの方全員に多嚢胞様の卵巣所見があるわけではなく、多嚢胞様に見えるだけでPMOSと診断することもできません。
卵巣だけの病気と誤解されやすかった
PMOSには、アンドロゲン、インスリン、LH、AMHなど複数のホルモン・代謝経路が関係します。月経不順や不妊だけでなく、耐糖能異常、2型糖尿病、脂質異常症、睡眠時無呼吸、子宮内膜増殖症、不安・抑うつなどへの配慮も必要です。[4]
思春期から更年期以降まで管理が必要
症状は思春期から現れ、妊娠を希望する時期、妊娠中、更年期以降の代謝管理まで影響します。PMOSという名称は、月経を起こすことや妊娠させることだけをゴールにせず、生涯の健康を支える必要性を示しています。
PMOSという名前が表すもの
| 文字 | 意味 | 診療で確認すること |
|---|---|---|
| P:Polyendocrine | 複数の内分泌・ホルモン系 | アンドロゲン、LH・FSH、インスリンなど |
| M:Metabolic | 代謝 | 血糖、脂質、血圧、体重変化、睡眠 |
| O:Ovarian | 卵巣・排卵 | 月経周期、排卵、妊娠希望、卵巣所見・AMH |
| S:Syndrome | 症候群 | 症状や検査所見の組み合わせには個人差がある |
「多分泌」は、すべてのホルモンが高くなるという意味ではありません。複数の内分泌経路と代謝が相互に関係する、多様な症候群であることを表しています。
PMOSでみられる主な症状
- 月経周期が39日以上になる、数か月来ない
- 排卵が起こりにくく、妊娠まで時間がかかる
- ニキビ、多毛、頭髪が薄くなるなどのアンドロゲン関連症状
- 少量の不正出血が長引く
- 体重が増えやすい、血糖・脂質・血圧の異常がある
- いびき、起床時の疲労感、日中の眠気
- 不安、抑うつ、ボディイメージの悩み
すべての症状がそろうわけではありません。日本人では多毛や肥満が目立たず、月経不順だけで受診してPMOSが分かることもあります。
PMOSを全身疾患として管理する理由
| 領域 | 主な問題 | 管理の目的 |
|---|---|---|
| 月経・子宮内膜 | 希発月経、無月経、不正出血 | 子宮内膜増殖症・子宮体がんリスクを下げる |
| 排卵・妊孕性 | 排卵障害、妊娠まで時間がかかる | 妊娠希望の時期に合わせて治療する |
| 代謝 | 耐糖能異常、2型糖尿病、脂質・血圧異常 | 体型にかかわらず早期発見・予防する |
| 皮膚・毛髪 | ニキビ、多毛、頭髪の変化 | 症状と生活の質を改善する |
| 睡眠・こころ | 睡眠時無呼吸、不安、抑うつ、摂食行動 | 見逃さず必要な支援へつなぐ |
| 妊娠 | 妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、早産など | 妊娠前から母子のリスクを管理する |
PMOSは「月経が来れば治療終了」という病気ではありません。症状、年齢、妊娠希望、検査結果に応じて、必要な項目を定期的に確認します。
PMOSの診断は超音波やAMHだけでは決まりません
日本の2024年診断基準では、類似する病気を除外したうえで、成人は次の3項目をすべて満たす場合に診断します。[5]
- 月経周期異常
- 多嚢胞卵巣またはAMH高値
- アンドロゲン過剰症またはLH高値
卵巣が多嚢胞様に見えるだけ、AMHが高いだけではPMOSではありません。甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、エネルギー不足による無月経、早発卵巣不全、妊娠などを区別します。
PMOSの治療は妊娠希望と症状で選びます
すぐに妊娠を希望しない場合は、黄体ホルモン製剤や低用量・超低用量ピルなどで月経周期を管理し、子宮内膜を保護します。ニキビ、多毛、血糖・脂質異常、睡眠やこころの問題には、それぞれ必要な治療や生活支援を組み合わせます。
妊娠を希望する場合は、排卵の状態に加えて、卵管、子宮、年齢、パートナー側の要因などを確認し、必要に応じて排卵誘発や不妊治療を行います。
PMOSと妊娠・次世代への影響
PMOSの方も自然妊娠または治療によって妊娠できる方が多くいます。一方、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、早産などが増えるため、妊娠前から血糖・血圧・服薬を確認することが大切です。[4]
PMOSの母親から生まれた娘は、将来PMOSと診断される割合が高い傾向があります。動物研究では胎内アンドロゲン曝露による世代間影響が示されていますが、人で「母体の高テストステロンが娘のPMOSを直接引き起こす」という因果関係は確立していません。
月経不順とPMOSの関係
PMOSは月経不順の代表的な原因ですが、月経が遅れる原因はPMOSだけではありません。妊娠、急なダイエット、運動量の増加、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、早発卵巣不全などでも月経は不規則になります。
周期が39日以上になることを繰り返す、3か月以上月経が来ない、ニキビ・多毛を伴う、妊娠を希望しているのに排卵日が分からない場合は、婦人科で原因を確認してください。
PMOS・PCOSについてよくある質問
Q. PCOSとPMOSは別の病気ですか?
いいえ、同じ症候群です。PMOSは2026年に発表された新名称で、2028年までの移行期間は両方の名称が使われます。
Q. 過去にPCOSと診断されました。診断を受け直す必要がありますか?
名称変更だけを理由に診断を受け直す必要はありません。ただし、月経、妊娠希望、血糖・脂質・血圧などは年齢と状況に応じて見直します。
Q. やせていてもPMOSになりますか?
なります。肥満のないPMOSも少なくありません。体重だけでは診断や代謝リスクを判断できません。
Q. PMOSは一生治らない病気ですか?
症状や排卵状態は年齢、体重、生活、治療によって変化します。「完治かどうか」だけで考えず、現在の目的に合わせて月経、子宮内膜、妊娠、代謝を管理します。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
公開日:2026年8月17日。更新日・最終医学確認:2026年9月25日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・検査・処方に代わるものではありません。
参考文献
- Teede HJ, et al. Polyendocrine metabolic ovarian syndrome, the new name for polycystic ovary syndrome. Lancet. 2026. doi:10.1016/S0140-6736(26)00717-8. PubMed.
- Endocrine Society.Polyendocrine Metabolic Ovarian Syndrome: New name to improve diagnosis and care.2026.
- 日本内分泌学会.多嚢胞性卵巣症候群.2026年9月8日更新.
- Teede HJ, et al. International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome 2023.
- 日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会.多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について.










