多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)|2024年診断基準・症状・治療
結論:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵しにくいことを中心に、月経不順、無月経、ニキビ、多毛などがみられる症候群です。卵巣の超音波所見だけ、またはAMH高値だけでは診断しません。2024年の日本の診断基準に沿い、月経周期、卵巣所見またはAMH、アンドロゲンまたはLHを組み合わせ、似た病気を除外して判断します。[1]
PCOSとは
PCOSでは、卵胞が途中まで育っても排卵に至りにくく、月経が遅れる、数か月来ない、不規則な出血が続くなどの症状が現れます。アンドロゲンの影響により、ニキビや多毛がみられることもあります。
「卵巣の壁が厚くて排卵できない病気」と単純に説明できるものではありません。ホルモン、卵巣機能、代謝、遺伝的要因などが関係する多様な状態です。肥満の方だけに起こる病気ではなく、やせ型や標準体重の方にもみられます。
PCOSでみられる症状
- 月経周期が39日以上になる
- 月経が3か月以上来ない
- 初経から周期がなかなか安定しない
- 排卵が起こりにくく、妊娠まで時間がかかる
- ニキビが治りにくい
- 顔や体の毛が濃くなった
- 少量の出血が長引く
- 体重増加、血糖・脂質の異常を伴う
すべての症状がそろうわけではありません。日本人では、月経不順が主な症状で、多毛や肥満が目立たない場合もあります。
日本産科婦人科学会のPCOS診断基準(2024)
成人では、類似する病気を除外したうえで、次の3項目をすべて満たす場合にPCOSと診断します。[1]
- 月経周期異常:無月経、希発月経、無排卵周期症のいずれか
- 多嚢胞卵巣またはAMH高値
- アンドロゲン過剰症またはLH高値
AMHは診断の一項目になりましたが、測定法、年齢、ホルモン剤の影響などを考慮する必要があります。AMHだけでPCOS、妊娠率、いわゆる「卵巣年齢」を決めることはできません。
PCOSと区別する病気
甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、非古典型先天性副腎過形成、クッシング症候群、アンドロゲン産生腫瘍、機能性視床下部性無月経、妊娠などでも似た症状が起こります。急に多毛が進む、声が低くなるなど男性化が急速な場合は、早めの精密検査が必要です。
思春期のPCOS診断は慎重に
初経後しばらくは月経周期が不規則になりやすく、超音波で小さな卵胞が多く見えることもあります。そのため、成人と同じ方法で安易にPCOSと診断しません。国内の2024年基準では、18歳未満または初経後8年未満の方は、月経周期異常と、アンドロゲン過剰症またはLH高値を中心に「PCOS疑い」「PCOSリスク」として慎重に評価し、経過をみます。[1]
PCOSの検査
- 月経歴、体重変化、ニキビ・多毛、妊娠希望の問診
- 妊娠反応
- LH、FSH、テストステロン、プロラクチン、甲状腺機能など
- 必要に応じてAMH
- 子宮・卵巣の超音波検査
- 血圧、体重、血糖・HbA1c、脂質などの代謝評価
ホルモン剤の使用中は検査値に影響します。自己判断で中止せず、服用中の薬を医師へお知らせください。
PCOSを放置するとどうなる?
子宮内膜への影響
排卵しない状態ではプロゲステロンが十分に分泌されず、子宮内膜へエストロゲンの刺激が続くことがあります。無月経が長く続くと、子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスク上昇と関連するため、子宮内膜を保護する治療が必要です。[2]
妊娠への影響
排卵回数が少ないため妊娠の機会は減りますが、PCOSだから妊娠できないという意味ではありません。原因に合った排卵治療で妊娠が期待できます。
代謝とこころの健康
PCOSは耐糖能異常、2型糖尿病、脂質異常症などと関連し、体型にかかわらずリスク評価が重要です。また、不安、抑うつ、ボディイメージや生活の質への影響にも配慮が必要です。[3]
妊娠を希望していない場合の治療
治療の目的は、月経周期の管理、子宮内膜保護、生理痛・ニキビ・多毛などの改善、代謝リスクの低減です。状態に応じて次を組み合わせます。
- 定期的な黄体ホルモン投与
- 低用量・超低用量ピル
- 食事、運動、睡眠など生活習慣への支援
- 血糖異常などがある場合の内科的管理
- ニキビは皮膚科治療を含めた対応
「ピルでPCOSそのものが治る」というより、服用中の周期と症状を管理し、子宮内膜を守る治療です。中止後に元の月経不順が再び現れることがあります。
妊娠を希望している場合の治療
排卵の有無、卵管、パートナー側の要因などを評価し、必要に応じて排卵誘発を行います。薬の選択は年齢、体重、検査結果、治療歴をもとに決めます。卵巣過剰刺激や多胎妊娠のリスクを避けるため、自己流で薬を使わず超音波などで経過を確認します。専門的な不妊治療が必要な場合は連携施設へご紹介します。[2]
よくあるご質問
Q. 超音波で「多嚢胞」と言われたらPCOSですか?
いいえ。超音波所見だけでは診断しません。月経周期異常、アンドロゲンまたはLHの所見、類似疾患の除外が必要です。
Q. AMHが高ければPCOSですか?
AMH高値は2024年基準の一項目ですが、それだけではPCOSではありません。年齢と測定法を考慮し、ほかの項目と合わせます。
Q. やせていてもPCOSになりますか?
なります。肥満のないPCOSも少なくありません。体重だけで除外できません。
Q. PCOSは一生治らない病気ですか?
症状や排卵状態は年齢、体重、生活、治療で変化します。「完治かどうか」だけで考えず、現在の目的に合わせて月経、子宮内膜、妊娠、代謝を長期的に管理します。
横浜でPCOS・生理不順をご相談になりたい方へ
ポートサイド女性総合クリニック ビバリータは横浜駅から徒歩6分です。女性医師が2024年の国内診断基準を踏まえ、妊娠希望の有無に合わせて検査と治療をご提案します。
関連ページ:生理不順の検査/生理不順と妊娠・妊活
執筆・医学監修:清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医/ポートサイド女性総合クリニック院長
《公開日:2026年8月17日》
《最終更新日:2026年8月17日》
参考文献
- 日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会.多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について.
- 日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会.本邦における多囊胞性卵巣症候群の治療指針(full version).2025.
- Teede HJ, et al. Recommendations from the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome. Hum Reprod. 2023;38:1655-1679.
中には「肥満」が含まれています。










