多のう胞性卵巣症候群の治療

 治療の基本は排卵障害に対するものです。

 

 すぐに妊娠の希望がない場合は、月経不順を改善するためにピルでホルモンバランスを整えます。多のう胞性卵巣症候群の方が月経不順のままでいると、子宮体がんのリスクが高くなるということが指摘されています。ピルはこの子宮体がんのリスクを劇的に下げてくれるので、妊娠を希望するまではピルを飲み続けておくことをお勧めしています。

 また、ピルには男性ホルモンを抑える働きのあるものもあるので、ニキビや多毛などの男性化兆候の改善にも有効です。

 

 妊娠の希望がある場合は、排卵誘発を行っていきます。軽度の排卵障害であればセキソビットやクロミッドといった飲み薬で排卵を促します。卵胞の育ちがよくない場合は、注射でもっと強力に卵胞を育てていきます。

 ただし、多のう胞性卵巣症候群の方は、排卵刺激によって卵胞が同時にたくさん育ちすぎてしまう「卵巣過剰刺激症候群」になりやすいので、排卵刺激の強さは慎重に調節していく必要があります。

 

 最近は、インスリン抵抗性があると排卵の妨げになることが分かってきました。そのため、糖尿病の治療薬である「メトホルミン」を単独で又はクロミッドと一緒に使って排卵誘発を行うこともあります。

 インスリン抵抗性は肥満によっても悪化します。なので、適正体重まで減量することも排卵障害を改善するには非常に重要になってきます。肥満の方の場合、体重を5~7%減らすだけでも排卵率が上がるというデータもあります。

 肥満を伴う多のう胞性卵巣症候群の方は、まず適切な食事で体重を減らすことに重点を置いた方がいいでしょう。