がんで死なないために最も重要なことは?

  川島なお美さんの死や、北斗晶さんの乳がん手術の報道を受けて、がん治療についての様々な意見が飛び交っていますが、中には医療者から見ると明らかに間違っている内容や、今現在がんの治療を受けている方を混乱させてしまうような内容もあって、読めばよむほどモヤッとしてしまいます。

 私がまだ研修医の頃、がんセンターに勤務していた時に担当させていただいていた卵巣がんの再発患者さんが教えてくださったことが、とても印象的でした。
 「せんせ~、がんで死なないために一番重要なことって分かる?『いつ』『誰に』がんを発見してもらうかってことだよ」
 その方は、がんの自助グループにも入っていらして、多くのがん患者さんと接する中で出てきた意見なのだと思います。その時も、今思い返しても、もっともな意見だと思うのです。

 「いつ」発見されるか、つまりがんのごく初期の段階で発見できるか、手術もできない程進行した段階で見つかるかによって「予後」つまりどのくらいそのがんが「治せるか」またはどのくらい「生きられるか」は決まってしまうと言っても過言ではありません。
 ある意味、誰が手術しても取切れるくらい初期の初期で見つかれば、がんで命を落とすリスクはほとんどないわけですし、逆に全身に転移しているような状態で見つかれば、その先化学療法を選択しようが自然療法を選択しようが生命予後にほとんど差は出ないわけです。

 ちなみに、私の父親は食道がんの4期、つまり全身に転移してすでに「末期」といえる状態でがんが発見されました。自覚症状があったにもかかわらず、本人が半年以上放置していたのです。もちろん、定期検診なんて受けていませんでした。
 発見された段階で、どのような治療を選択しても父親の生命予後はあまり変わらないだろうと分かりましたから、家族の立場としては「できる限り口から摂取可能な状態を保つこと」「わずかな可能性にかけて負担が大きい治療を行うよりも除痛を中心とした治療を行うこと」を希望しました。ただ、本人が何をどう説明しても(「身辺整理をし始めてください」と言われても)、がんは「治る」と思っていたため、化学療法を行うことを希望してしまったんですが・・・結局、全身状態が悪すぎて、化学療法は1回しか行えず、発見から8か月後にこの世を去りました。

 「誰に」発見してもらうか、これは、がんを疑った段階で適切な検査や治療に導ける医師に出会えるか、そして、がんの状態に応じて最も有効な治療を選択できる医師に出会えるか、ということです。
 川島なお美さんが、がんが発見されてから手術を受けるまでに半年も時間をかけてしまったことは、生命予後を悪くしてしまった一因と言わざるを得ません。もし、確定診断のためにもすぐに手術を受けた方がよいということを熱心に説明してもらっていたら、少しは早く有効な治療を受けられたかもしれませんが、どんな医師に出会っても本人が「納得がいくまで説明を求める」というスタンスでセカンドオピニオンを求めてドクターショッピングをしてしまっては、結果は同じだったのかもしれません。

 大事なことは、治療を開始する時期を遅らせてしまわないこと、治療の有効性と体への負担のどちらが「より大きいのか」をきちんと見極めることです。そして、それらを一般の方が自分の知識だけで行おうとしても、なかなか難しいということを知っておかなければいけないと思います。

 がんの治療を選択する上で、いわゆる西洋医学的な治療を何も受けないという選択も、本人が納得した上での選択であれば、大事な選択肢だと考えています。「どの治療法を選ぶか」も含めて、それがその人の「寿命」なのだと思うのです。例え生命予後が悪くなっても、抗がん剤は使いたくないと本人が考えていれば、その選択は本人にとって「正解」です。
 ただ、その選択をする上で「選考にする情報」が間違っていては危険です。今後、ネット上に流れている情報の中でいくつか気になったものをピックアップしていきたいと思います。

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清水(旧姓:須藤) なほみ
ポートサイド女性総合クリニック
~ビバリータ~ 院長
歌って踊れる産婦人科医
 
「全ての女性は美しくなる権利がある」をコンセプトに、女性の美と健康をサポートするために女性医療を皆様のもとにお届けしています。
5歳から始めたクラシックバレエは、ミュージカルとの出会いでコンテンポラリーダンスに変身しました♪
 
所属学会:日本産婦人科学会・日本思春期学会・日本性感染症学会・日本不妊カウンセリング学会
 
日本家族計画協会認定思春期保健談員
不妊カウンセリング学会認定カウンセラー


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