マンモグラフィーで乳がんのリスクは上がるのか?

 以前からマンモグラフィーの被ばく線量に関してはご質問を頂くこともありましたが、最近やたらと「マンモグラフィーによる被ばくが乳がんの原因になる」といった記事が目につくようになってきました。
 私自身は婦人科の専門ですから、婦人科の検診として何の検診がどの程度有効であるかは、医学的知識としても、そしていらっしゃる患者様を拝見して感じることからも、確信をもってご説明できます。
 マンモグラフィーに関しては乳腺外科の専門になりますので、私自身がマンモグラフィーの検査を行ったりその結果をご説明することはありません。なので、マンモグラフィーの被ばく線量については、一般的な医学的考察からそのリスクを考えることしかできませんが、結論から言うとマンモグラフィーの被ばく線量はがんの原因になるほど高いものではありません。

 マンモグラフィーの有効性とリスクについてはこちらの記事http://www.jbcsftguideline.jp/category/cq/index/cqid/500001がよくまとまっていますので、こ難しい説明や「エビデンス」がお好きな方は、この解説を参考にしていただくとよいと思います。
 マンモグラフィーの被ばく線量が他のレントゲン検査に比べて高いように思われているようですが、実際は胸のレントゲン検査による被ばく線量をさほど変わりません。なぜ被ばく線量が下げられるのかというと、マンモグラフィーでは強く乳房を圧迫することによって、できるだけ乳腺を薄くして低い線量で済むようにしているからです。

 実際、マンモグラフィーによる被ばく線量がどのくらいかを数値に表すと、実効線量が0.05~0.15mSvになります。人が普通に日常生活を送っていても、自然界からある程度の放射線を浴びますが、それが年間約2.4mSvなのです。つまり、例え1年間に10回マンモグラフィーをとっても、自然に浴びる放射線量より少ないということです。ちなみに、飛行機に乗ると被ばく線量は上がるのですが、東京~サンフランシスコを飛行機で移動した場合の自然被ばく線量は約0.038mSvと言われています。もし、マンモグラフィーで乳がんになるのだとしたら、国際線の客室乗務員の方の乳がんリスクはどうなるでしょう?

 ではマンモグラフィーは全く乳がんのリスクにならないのかというと、リスクが「ゼロ」とは言えません。それは、被爆による「確定的影響」と「確率的影響」というものがあるからです。確定的影響は、ある一定の線量を超えるとがんのリスクが高くなりますよ、というものです。これは組織(臓器)によってどのくらいの線量を超えると危険なのかが決まっていまして、マンモグラフィーの場合、例え毎年マンモグラフィーをとっても乳腺の「ここが危険」というラインは超えません。つまり確定的影響はないと言えます。
 一方、確率的影響はどのレベルでリスクが上がるかといった線引きがありません。もしかしたら、たった1回のマンモグラフィーが乳がんを発生しさせてしまうかもしれないというものです。この確率は「ゼロではない」としか言いようがありません。例えば、乳がんになりやすい遺伝子を持った肥満で乳製品が大好きで妊娠・出産経験がない女性がマンモグラフィーを受けた後に乳がんを発症した場合、もしかしたらマンモグラフィーのせいで乳がんができたのかもしれないけれどその他のリスク要因もあるから断言はできない、ということになります。

 では、全員がマンモグラフィーを受けた方がいいのかというとそうではありません。少なくとも、30歳以下の人はマンモグラフィーを受けるメリットがそれほど高くはない又はデメリットが上回る可能性があるので、乳がん検診を受ける場合は超音波検査を受けた方がよいといえます。30代前半についても、マンモグラフィーより超音波検査の方がよいでしょう。
 逆に40歳以上の方については、マンモグラフィーによる検診が有効といえます。ただし、乳腺の密度が高い方はマンモグラフィーだけでは見落としのリスクがありますので、超音波検査との併用検診が勧められます。マンモグラフィーと超音波検査は、お互いの「発見しにくい異常」を補い合える特性がありますので、一緒に受けることで精度は上がります。

 検診を受けるデメリットの1つとして、過剰に異常をひっかけてしまうというものがあります。確かに、検診で「もしかしたら乳がんかもしれないから精密検査を受けて下さい」と言われて、細胞診などの詳しい検査を受けたらなんでもなかった、というケースはしばしば見受けられます。
 検診は、できるだけ見落とさないように小さな異常も「疑いあり」に入れるため、このようなことが起こりうるのです。本当に乳がんの人だけをピックアップするように異常と判定する境界線を下げると、見落としが増えるということになります。検診の目的を考えると、ある程度過剰に異常が出てしまうのはやむを得ない部分があります。
 毎年検診を受けていれば、前の検査結果との比較ができますから、この過剰に異常を指摘されるということが少なくはなってきます。
 
 乳がん検診も子宮がん検診も、受けるデメリットより受けないデメリットが大きいことは、とても進行したがんを拝見するたびに痛感します。検診は、適切な方法で受ければやはり有効性の方が高いのです。
 ただし、検診を受けるよりもっと大切なことがあります。それは、「がんにならない習慣」を身に着けることです。がんになる人は、必ずその原因となる行動・食生活・思考のパターンがあります。それを変えずして、がんを恐れて不安な中で検診を受けても、がんを防ぐことはできないのです。



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清水(旧姓:須藤) なほみ
ポートサイド女性総合クリニック
~ビバリータ~ 院長
歌って踊れる産婦人科医
 
「全ての女性は美しくなる権利がある」をコンセプトに、女性の美と健康をサポートするために女性医療を皆様のもとにお届けしています。
5歳から始めたクラシックバレエは、ミュージカルとの出会いでコンテンポラリーダンスに変身しました♪
 
所属学会:日本産婦人科学会・日本思春期学会・日本性感染症学会・日本不妊カウンセリング学会
 
日本家族計画協会認定思春期保健談員
不妊カウンセリング学会認定カウンセラー