生理不順

 

妊娠に対していつまでも受け身であり続けたいあなたへ

 月経不順の患者様を拝見していると、しばしば遭遇するのが「現時点で自分が妊娠を望んでいるかどうかの結論を『保留』にしておくため」に排卵しにくい状態を作り出しているというケースです。

 「生理不順」を主訴に受診なさった場合、まずは超音波検査で子宮や卵巣に異常がないかをみたり、ホルモンのバランスを調べたりします。ホルモンの結果や基礎体温から排卵をしていないことが分かった場合、妊娠の希望があれば「排卵誘発」を行う必要があります。つまり、薬を使って排卵を促すという治療を行い、妊娠を目指せるようにするということです。

 ところが、患者様に「今妊娠を希望されていますか?」と伺うと「そんなに積極的には希望していません」と言われ、「では避妊と治療を兼ねてピルを処方しましょうか?」とご提案すると「妊娠する可能性を『ゼロ』にはしたくないです」と言われることがしばしばあるのです。つまり、積極的に妊娠も目指そうとはしないし、確実な避妊もしないということです。「妊娠したらしたでうれしい」とおっしゃるのですが、だからと言って薬を使ってまで妊娠は目指したくないのだそうです。

 こういったケースでは、本音では強く妊娠を望んでいないけれど「私は妊娠したくありません(=私は母親になりたくありません)」とはっきりと意思表明することに抵抗を感じていることがほとんどです。なので、生理は来るけれど排卵はしないという、妊娠はしにくいけれど健康に大きな害はない、非常に宙ぶらりんな状況をあえてキープしようとするのです。

  妊娠したくない理由は人によって様々ですが、「そもそも子どもが好きではない」「自分のやりたいことを優先したい」という場合や、妊娠を人生の中で「経験すべきノルマ」のようにとらえていて「年も年だし周りもうるさいし本当はそろそろ妊娠しないと『いけない』のだろうけれど…」と思っている場合もあります。また、妊娠・出産によって自分の健康が失われるのではないかとか、自分のための時間が無くなるのではないかという心配があり、『妊娠したいけれどしたくない』というダブルバインド状態になっている方もかなりいらっしゃいます。

 これらの、何らかの理由で「潜在意識が妊娠を望んでいない」という場合に、本人がきちんと「私は今は妊娠したくありません」とか「この先もずっと産む気はありません」という意思をはっきり表明できればいいのですが、女性が「子どもを望まない」と口にすること自体が何となくタブー視されている感覚があるのか、はっきりと口にせず「体で無言の抵抗をする」方が少なくありません。その結果が無排卵や不妊症という状態です。

 また、中には「今自分が妊娠したいのかどうか」の結論を「自分で」出すことを避けようとして、無排卵になる方もいらっしゃいます。自分の意思をはっきり決めないということは、自分の人生に対して責任をとらなくていい状態をキープしようとするということです。

 妊娠についていえば、「妊娠する」という選択をして積極的に妊娠を目指すと、妊娠出産によって起こりうるトラブルや『思うようにいかない』ことを全て自分が「妊娠する」という選択をしたことによる結果として引き受けなければならなくなります。簡単に言うと、何か嫌なことがあった時に「人のせい」にできなくなるのです。なので、「妊娠できたらできたでうれしい」という、「私が積極的に望んだわけではないけれど、妊娠したから産んだのよ」という、どこかで責任をとらなくてよい「逃げ場」をキープしておく方が都合がよいわけです。

 逆に、積極的に「妊娠しない」という選択をして、最終的に子どものいない人生を歩んだ時、いざ妊娠のタイムリミットをむかえたり「1人」ということを実感したりしても、それによって引き起こされる感情も状況も自分の責任として受け止めなければいけなくなります。排卵障害やその他の「病気」を作り出すことによって、「本当は子どもが欲しかったのだけれど病気のせいでできなかったの」ということにしておけば、「妊娠しない」という選択を自分がしたわけではないという逃げ場ができます。

 「妊娠したいのかしたくないのか」という問いかけに対して、答えに「正解」はありません。また、「現時点で」の答えなので、1か月後に計画変更することもあり得ます。なので、どんな答えであってもよいのですが、答えを出すこと自体を「保留」にしてしまって、自分の人生に責任をとらない生き方を選択することは、あまりお勧めはできません。

 生理不順や排卵障害だけでなく、子宮や卵巣の病気がある人は、一度自分の胸に手を当てて、「私は今妊娠したいのか?」「私は将来妊娠したいのか?」についての答えを導き出してみるとよいでしょう。もしかしたら、なぜ今その病気をやっているのかのヒントが隠れているかもしれません。

日付:2018年1月11日  カテゴリー:生理不順

ページの上部へ

月経不順の背景を見極める


 月経不順の方には、以前ご紹介したチェックリストをつけて頂いていますが、患者様が10代や20代前半の「自立」していない方だと、あまりチェックがつかないこともしばしばあります。

 月経不順という状態を自ら作り出しているということは、必ず何らかの卵巣機能を抑えておきたい理由があるはずなんですが、若い方だとそれを自覚しにくいのかなという印象です。


 比較的多くの方がチェックをつける項目は「月経は面倒なもの」「月経がこない方が楽」という項目です。そもそも、月経自体がネガティブなものに捉えられてしまっている可能性は大いにあります。月経があるせいで生活に制限がかかったり、男性と同じパフォーマンスが得られなかったりすると、「あー、だから、女って面倒だわ」と思うのは無理ないことです。実は、この「女って○○だ」という信じ込みが、自ら卵巣機能を抑える理由になっているケースが多いのです。


 でも、10代の女の子にジェンダーバイアスや女性性の話をしてもなかなかピンと来ないようで、核心に触れられないこともしばしば。そんな中で、最近編み出した魔法の質問があります。


 「お母さんの人生を一言で表すと?」



 その答えから導き出される信じ込みが、月経不順になるのに十分なものであることが分かってきました。


 一番多い答えは何だと思いますか?


 


「大変そう」


 


です。「ちなみにお父さんは?」と聞くと、これまた吹き出したくなるくらい納得の答えが返ってきます。


 


 お母さんの人生を「大変」だと思っていたら、わざわざ大変な人生を歩もうとしなくなるのは当然ですよね?


 お母さんになることを、あるいは女性として生きることを、潜在意識は拒否し始めるわけです。もう、なぜわざわざ卵巣機能を抑えるのか、分かりますよね?


 


 こうしたケースでは、お母さんの人生の意味付けや、本人の女性として生きる意味について、カウンセリングで改善を図ることが有効です。


 月経不順が続く方は、1度自問自答してみると、改善の手がかりがつかめるかも知れませんね

日付:2017年1月4日  カテゴリー:生理不順

ページの上部へ