子宮頸がん・前がん病変の治療|CINと妊孕性温存

 

子宮頸部の異常は、すべて同じ治療を行うわけではありません。CIN1は経過観察が中心、CIN3やAISは円錐切除術などが検討され、浸潤がんでは病期・組織型・体の状態・妊娠希望に応じて手術、放射線治療、薬物療法などを選択します。[1][2]

 

「高度異形成なら必ず子宮を取る」「浸潤がんなら必ず卵巣も取る」というものではありません。一方、妊孕性を残す治療には適応条件と再発・妊娠上のリスクがあります。病理結果を正確に確認し、将来の妊娠希望を治療前に担当医へ伝えることが大切です。

 
 

治療を決める前に確認すること

  • 組織診または円錐切除標本の病理診断
  • CIN1・CIN2・CIN3、AIS、浸潤がんのどれか
  • 病変の位置・範囲、子宮頸管内まで広がっているか
  • 浸潤の深さ、腫瘍径、脈管侵襲、切除断端
  • 画像検査で分かる周囲組織・リンパ節・他臓器への広がり
  • 年齢、合併症、妊娠希望

細胞診のASC-US・LSIL・HSILはスクリーニング上の判定です。細胞診だけで治療を決めず、原則としてコルポスコピー・組織診などで病変を確認します。

CIN1・CIN2・CIN3の治療

診断 意味 一般的な対応
CIN1 軽度の扁平上皮内病変 自然に消退することも多く、細胞診・HPV検査・コルポスコピーなどで経過観察
CIN2 中等度の扁平上皮内病変 年齢、妊娠希望、病変の持続、コルポ所見、HPV型などを踏まえ、経過観察または治療
CIN3 高度の扁平上皮内病変。上皮内がんを含む 円錐切除術などによる診断・治療を検討

経過観察とは「何もしない」ことではありません。決められた間隔で細胞診、HPV検査、コルポスコピーなどを行い、消退・持続・進行を確認します。途中で受診を中断すると、治療が必要な変化を見逃す可能性があります。

AIS(上皮内腺がん)の治療

AISは、子宮頸管の腺細胞に生じる上皮内がんです。病変が頸管の奥に広がる、複数の場所に存在する、境界が見えにくいことがあるため、CIN3とは管理が異なります。

まず円錐切除術で病変の広がり、切除断端、浸潤の有無を詳しく調べます。妊娠希望がない場合は単純子宮全摘出術が検討されます。妊娠希望があり、浸潤がなく、切除断端陰性などの条件を満たして子宮を温存する場合は、再発を見逃さない厳密なフォローが必要です。[2]

円錐切除術とは

円錐切除術は、子宮頸部を円錐状に切り取り、病変を治療すると同時に、浸潤の有無や病変の広がりを詳しく調べる手術です。CIN3、AIS、一部のごく早期の子宮頸がんなどで行います。

円錐切除術で確認すること

  • 病変が切除範囲に収まっているか
  • 切除断端に病変が残っていないか
  • 浸潤があるか、ある場合は深さと広がり
  • 脈管侵襲があるか

円錐切除後も再発・残存病変の可能性があるため、細胞診やHPV検査などの定期検査が必要です。

妊娠・出産への影響

円錐切除は子宮を残せる治療ですが、切除する深さや回数によっては、将来の妊娠で早産などのリスクが高くなることがあります。治療前に妊娠希望を伝え、病変を安全に治療できる範囲で切除方法を検討します。治療後に妊娠した場合は、産科で円錐切除歴を必ず伝えてください。[1]

浸潤性子宮頸がんの治療

子宮頸がんの治療は、病期だけでなく、扁平上皮がん・腺がんなどの組織型、腫瘍の大きさ、リンパ節転移、年齢、体の状態、妊娠希望などを踏まえて決めます。

治療 概要
手術 病変の広がりに応じ、円錐切除、子宮頸部摘出、単純・準広汎・広汎子宮全摘出などを検討。リンパ節評価を組み合わせる場合がある
放射線治療 体の外から照射する外部照射と、腟から線源を入れる腔内照射などを組み合わせる
同時化学放射線療法 放射線治療と抗がん薬を同時に行い、効果を高める。局所進行がんなどで標準的に用いられる
薬物療法 再発・転移などの状況に応じ、抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを検討
緩和ケア 痛み、出血、だるさ、不安などを和らげ、治療中の生活を支える。がんの段階を問わず必要に応じて併用

病期が同じでも、最適な治療は一人ひとり異なります。手術と放射線治療の長所・短所、合併症、治療後の生活への影響を確認して選択します。[1][2]

妊娠を希望する場合の治療

前がん病変から一部の早期子宮頸がんでは、条件を満たせば子宮を残す治療を検討できます。選択肢には円錐切除術や、子宮体部を残して子宮頸部を切除する広汎子宮頸部摘出術などがあります。

ただし、妊孕性温存治療は誰にでも行えるわけではありません。病変の大きさ・深さ・組織型・リンパ節転移の可能性などを慎重に評価します。通常より切除範囲を限定することで再発リスクが変わる可能性があり、治療後の流産・早産リスクや妊娠方法についても確認が必要です。[1]

「いつか妊娠したい」という希望も、治療方法の選択に関わります。具体的な予定がなくても、治療前に担当医へ伝えてください。必要に応じ、生殖医療の専門家への相談も検討します。

子宮頸がんでは卵巣も取りますか?

子宮を摘出する場合でも、卵巣を必ず同時に切除するわけではありません。年齢、閉経前か、がんの組織型と広がり、卵巣転移のリスク、放射線治療の予定などを踏まえて判断します。

閉経前に両側卵巣を切除すると、急に女性ホルモンが低下し、更年期症状や骨・心血管への影響が生じます。卵巣を残す利益と腫瘍学的な安全性を専門医と相談します。

治療後のフォロー

治療後は、再発・残存病変、HPVの持続、治療による合併症を確認するため、定期的な診察・検査が必要です。検査内容と間隔は、元の病変、切除断端、HPV結果、治療法などで異なります。

治療後に次の症状がある場合は、予定の受診日を待たずに担当医へ相談してください。

  • 不正出血、性交後出血
  • 水っぽい・血の混じったおりもの
  • 持続する下腹部痛・腰痛
  • 脚のむくみ
  • 排尿・排便の変化

子宮頸がん・CINの治療についてよくある質問

Q. CIN1はすぐに治療しなくてよいですか?

多くは経過観察ですが、放置してよいという意味ではありません。決められた間隔の検査で、消退・持続・進行を確認します。

Q. CIN2なら必ず円錐切除が必要ですか?

必ずではありません。年齢、妊娠希望、病変の持続期間、コルポ所見、HPV型、通院継続の可否などを踏まえて経過観察または治療を選びます。

Q. 円錐切除をすれば必ず完治しますか?

CIN3などを完全に切除できれば治癒が期待できますが、切除断端やHPV持続などにより残存・再発することがあります。治療後の定期検査は必要です。

Q. 子宮頸がんの治療後でも妊娠できますか?

子宮を残す治療ができた場合は妊娠を目指せる可能性があります。ただし、病変の条件、再発リスク、治療後の早産リスクなどを考慮する必要があります。治療前から婦人科腫瘍と生殖医療の両面で相談してください。

当院での対応について

ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~では、子宮頸がん検診、HPV検査、コルポスコピー・組織診、治療後の一部のフォローを行います。

CIN3・AISで円錐切除術が必要な場合や、子宮頸がんが疑われる・診断された場合は、治療可能な専門医療機関へご紹介します。妊娠希望がある方は、紹介前の段階からお伝えください。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年10月20日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の治療方針に代わるものではありません。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス.子宮頸がん 治療.
  2. 日本婦人科腫瘍学会.子宮頸癌治療ガイドライン2022年版.
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス.子宮頸がん 検査.