不妊症の治療

不妊症の治療には次のようなものがあります。

 

1)タイミング法

 排卵の時期(月経開始から12日~15日くらい)に超音波で卵巣の中の卵(卵胞)の育ち具合を確認し、排卵のタイミングをより正確に予測して夫婦生活のタイミングを合わせる方法です。

 

2)内服薬による排卵誘発

 クロミッドやセキソビットという飲み薬を使って排卵を促す方法です。月経の3日目~5日目から5日間服用します。

 セキソビットの方がクロミッドより排卵を促す力は弱めなので、元々の排卵障害の程度に合わせて使い分けていきます。

 セキソビットの場合多胎になるリスクはほとんどありませんが、クロミッドでは双胎になる確立がわずかに高くなります。

 

3)内服薬と注射薬による排卵誘発

 クロミッドのみでは十分に卵が育たない場合や、卵は育つけれど排卵しない場合に注射を追加して排卵を促す方法です。卵を育てる注射はクロミッドに比べて作用が強いので、卵が複数育ってしまったり、育ちすぎて卵巣全体が腫れてしまったりする(卵巣過剰刺激症候群)ことがあります。

 

4)注射薬による排卵誘発

 クロミッドでは卵の発育が見られない場合に、月経の3~5日目から連日注射を行うことによって排卵を促していく方法です。

 クロミッドのみに比べて多胎になるリスクや卵巣過剰刺激症候群になるリスクが高くなります。

 

5)人工授精

 精液を洗浄・濃縮して、子宮内へ直接注入する方法です。精子の数が少なかったり精子の運動率が悪い場合は人工授精の対象になります。

 また、精液検査に異常がなくても、妊娠率を上げるために体外受精に進む前の段階として行うこともあります。5回以上繰り返しても累積の妊娠率はあまり上がらないため、通常は5~6回までを目処に行っていきます。

 

6)体外受精・顕微授精

 卵巣を刺激して一度に複数の卵を育て、卵巣から採ってきた卵子に精子を受精させて、受精卵を子宮内に戻す方法です。精子が非常に少ない場合や運動率が悪い場合、顕微鏡下で卵子に直接精子を注入する顕微授精を行います。

 体外受精による妊娠率は施設によって異なりますが、1回で約30%です。

 

 一般的には、1の方法から順により効率のいい方法へと徐々に段階を上げていく「ステップアップ」という方法をとります。ただし、年齢的にあまりのんびりできなかったり、元々排卵障害や卵管閉塞などの異常があったりした場合は、必ずしも1から順に段階を追っていかず、いきなり体外受精を選択することもあります。

 

 基礎体温できちんと排卵が確認でき、不妊検査で何の異常もなかった場合、まずは6ヶ月くらいを目処にタイミング法で様子をみます。それでも妊娠に到らない場合、例え自力で排卵していても弱い排卵誘発剤を使うことによって妊娠率が上がるため、内服薬による排卵誘発を6ヶ月行っていきます。それでも妊娠しなければ、人工授精を5~6回行い、最終的には体外受精へと進んでいきます。

 不妊検査で排卵障害やホルモン異常があった場合は、すぐに排卵誘発剤を使ったり、ホルモン異常に対する治療を行います。また、筋腫や子宮内のポリープなど、明らかに不妊の原因となっている病気が見つかった場合はそちらの治療を先に行います。

 

 子宮卵管造影検査で、卵管がつまっている=卵管閉塞という結果だった場合は、ステップアップではなく初めから体外受精を選択するしかなくなります。

 精液検査で異常があった場合も、人工授精または体外受精や顕微授精が初めから必要になります。

 

 どの治療をどのくらい続けるかは、年齢や不妊期間によって異なってきますが、大切なのは漫然と治療を続けるのではなく、適切なタイミングで次のステップに進んでいくことです。

 もちろん、絶対に自然妊娠でなければ受け入れられないという場合は、あえて人工授精や体外受精を行わず、自然に任せるという方法も選択肢の一つです。ただし、その場合は「やっぱり早い段階で体外受精をしておけばよかった」と後から後悔しないように、年齢的なリスクなどきちんと理解した上で納得して選択していくことが重要になってきます。