生理不順・無月経の治療|ピル・黄体ホルモン・妊娠希望別に解説
結論:生理不順・無月経の治療は、原因、年齢、妊娠希望、エストロゲンが足りているか、子宮内膜を保護する必要があるかで変わります。ピルだけが治療ではありません。原因疾患の治療、食事と運動の見直し、黄体ホルモン、ホルモン補充、排卵誘発などから選びます。
治療前に原因を確認する理由
無月経には、体重減少性無月経のようにエストロゲンが低い状態と、PCOSのように排卵しないままエストロゲンの刺激が続く状態があります。前者では骨を守ること、後者では子宮内膜を守ることが重要です。症状だけでは区別できないため、妊娠反応、血液検査、超音波検査などで原因を確認します。[1]
原因疾患を治療する
- 甲状腺機能異常:甲状腺疾患の治療を行います。
- 高プロラクチン血症:原因薬剤の見直しや、必要に応じてプロラクチンを下げる治療を行います。
- 下垂体・副腎などの病気:専門診療科と連携します。
- 早発卵巣不全(POI):妊娠希望だけでなく、骨や心血管の健康を考えてホルモン補充などを検討します。[2]
妊娠を希望していない場合の治療
黄体ホルモン製剤
慢性的に排卵しにくい方では、一定期間ごとに黄体ホルモンを使用して消退出血を起こし、子宮内膜を保護する方法があります。エストロゲンを含まないため、低用量ピルが適さない方の選択肢になる場合があります。
低用量ピル・超低用量ピル
出血時期を整える、生理痛や出血量を軽くする、ニキビを改善する、慢性無排卵に伴う子宮内膜増殖を防ぐなどの目的で使用します。PCOSの月経周期異常や高アンドロゲン症状にも選択肢となります。[3]
ピル服用中に起こる出血は、排卵を伴う自然月経とは異なります。「ピルを飲めば元の原因が治る」「卵巣を休ませると将来排卵しやすくなる」という意味ではありません。服用前からPCOSなどがあれば、中止後に元の周期へ戻ることがあります。
血栓症、前兆のある片頭痛、喫煙、高血圧などによりエストロゲンを含む薬が適さない場合があります。自己判断で開始せず、既往歴と併用薬を確認します。
★★「ピルでは根本治療にならない?」「やめるとまた生理不順に戻る?」「将来の妊娠に影響する?」という疑問については、
生理不順はピルをやめたら元に戻る?根本治療・妊娠への影響
で詳しく解説しています。
ホルモン補充
エストロゲンが不足する無月経やPOIでは、骨などへの長期的な影響を考えてエストロゲンと黄体ホルモンを補うことがあります。排卵を抑えるピルと、生理的なホルモンを補う治療は目的が異なります。
ダイエット・運動・ストレスによる無月経の治療
機能性視床下部性無月経では、利用できるエネルギーを回復させることが治療の中心です。摂取量を増やす、運動量を調整する、必要に応じて体重を回復する、心理的ストレスや摂食障害へ対応することを組み合わせます。[4]
低用量ピルを飲んで出血が起きても、エネルギー不足が解消したとは判断できません。骨密度を上げる目的だけでピルを使うことは推奨されておらず、まず原因への介入が必要です。生活・栄養への介入後も無月経が続く場合は、ホルモン補充を個別に検討します。
妊娠を希望している場合の治療
妊娠希望がある場合は、出血を定期的に起こすだけでなく、排卵の有無と原因を評価します。PCOS、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、エネルギー不足などを治療し、必要に応じて排卵誘発を検討します。
妊娠希望がある方にピルを処方することは、通常、妊娠を成立させる治療そのものではありません。生理不順だから必ず不妊というわけではありませんが、無月経・希発月経があれば1年間待たず早めに相談できます。[5]
卵管検査、精液検査、高度な排卵誘発、生殖補助医療が必要な場合は、不妊治療専門施設へご紹介します。
治療せず経過を見られる場合
一時的な周期のずれで、妊娠がなく、周期が自然に正常範囲へ戻り、ほかの症状もない場合は記録しながら経過を見ることがあります。ただし、基礎体温が二相に見えるという理由だけで長い周期を放置してよいとは限りません。周期の長さ、年齢、妊娠希望、子宮内膜とホルモンの状態で判断します。
漢方薬は使えますか?
冷え、むくみ、気分変動などの随伴症状や体質を考慮し、補助的に漢方薬を使う場合があります。ただし、妊娠、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、POIなどの診断と標準治療を漢方薬だけで代替することはできません。効果と副作用を確認しながら個別に判断します。
よくあるご質問
Q. 3か月に1回、生理を起こせば十分ですか?
原因と子宮内膜の状態によります。慢性無排卵では一定間隔で子宮内膜を保護する治療が必要ですが、適切な間隔や薬は一律ではありません。低エストロゲン状態では別の治療が必要なため、自己判断で薬を使わないでください。
Q. ピルをやめると生理不順に戻りますか?
服用前からPCOSや排卵障害があった場合、中止後に元の周期へ戻ることがあります。ピルのせいで悪化したというより、元の原因が再び見える状態です。中止後に3か月月経がない場合はご相談ください。
Q. 薬を飲まず生活改善だけで治せますか?
エネルギー不足や一部のPCOSでは生活・栄養への介入が重要です。一方、甲状腺疾患、POI、子宮内膜保護が必要な慢性無排卵などでは薬が必要なことがあります。
Q. 出血が起これば排卵したということですか?
いいえ。無排卵でも不規則な出血が起こり、黄体ホルモンやピルによる消退出血もあります。出血の有無だけでは排卵を確認できません。
横浜で生理不順・無月経の治療をご相談になりたい方へ
当院では、原因と妊娠希望を確認し、治療の目的を共有したうえで選択肢をご提案します。横浜駅から徒歩6分、女性医師の婦人科です。
関連ページ:検査の流れ/低用量ピルについて/生理不順と妊娠・妊活
執筆・医学監修:清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医/ポートサイド女性総合クリニック院長
《公開日:2026年8月10日》
《最終更新日:2026年8月10日》
参考文献
- Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Current evaluation of amenorrhea. 2024.
- ESHRE/ASRM/CRE-WHiRL/IMS Guideline Group. Evidence-based guideline: Premature Ovarian Insufficiency. 2024.
- Teede HJ, et al. Recommendations from the 2023 International Evidence-based Guideline for PCOS. Hum Reprod. 2023;38:1655-1679.
- Gordon CM, et al. Functional Hypothalamic Amenorrhea: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. 2017.
- Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Fertility evaluation of infertile women. 2021.










