ダイエット・運動・ストレスで生理が来ない|女性アスリートに多い体重減少性・視床下部性無月経
結論:食事制限、急な体重減少、運動量の増加、強い心理的ストレスが重なると、体が「妊娠に使えるエネルギーが不足している」と判断し、排卵と月経を止めることがあります。これを機能性視床下部性無月経と呼びます。体重が標準範囲でも起こり、長く続くと骨密度低下や妊娠への影響があるため、早めの評価が必要です。[1]
なぜダイエットや運動で生理が止まる?
排卵には、脳の視床下部から分泌されるGnRHというホルモンのリズムが必要です。食事から取るエネルギーが少ない、運動で消費するエネルギーが多い、心理的負担が強い状態では、このリズムが弱まり、LH・FSH、卵巣からのエストロゲンが低下します。
重要なのは体重の数字だけではありません。BMIが正常でも、短期間で体重が減った、脂質や炭水化物を極端に控えた、部活動やトレーニング量が増えた、休養が不足している場合に起こります。
こんな変化はありませんか?
- ダイエットを始めてから周期が長くなった
- 3か月以上生理が来ていない
- 食事量は変えていないつもりだが運動量が増えた
- 体重や体脂肪への不安が強く、食べることが怖い
- 疲れやすい、寒がり、集中できない、眠りにくい
- 疲労骨折や繰り返すけががある
- 競技成績が下がった
アスリートでは、利用可能エネルギー不足が月経だけでなく、骨、免疫、代謝、心血管、心理面、競技パフォーマンスへ影響する「REDs(スポーツにおける相対的エネルギー不足)」として捉えます。[2]
「ストレスが原因」と決めつけないことが大切
機能性視床下部性無月経は、ほかの病気を除外して診断します。妊娠、PCOS、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、早発卵巣不全などでも月経が止まります。月経が来ないという症状だけでは区別できません。
放置した場合のリスク
骨密度の低下・疲労骨折
エストロゲン不足と栄養不足が続くと、骨を作る力が低下します。特に10代〜20代は最大骨量を獲得する時期のため、将来の骨の健康にも影響します。月経を薬で起こすだけでは、エネルギー不足と骨への影響が解決しないことがあります。[1]
妊娠への影響
排卵が止まるため、妊娠しにくくなります。エネルギー状態が回復すると排卵が戻ることがありますが、妊娠を希望する場合も、まず全身状態と栄養を整えることが重要です。
全身とこころへの影響
強いエネルギー不足は、徐脈、低血圧、電解質異常、気分の落ち込み、摂食障害などを伴うことがあります。婦人科だけでなく、内科、心療内科・精神科、管理栄養士、スポーツ医などの連携が必要な場合があります。
緊急の評価が必要なサイン
- 失神、胸痛、息苦しさがある
- 脈が極端に遅い、血圧が低く強いふらつきがある
- 水分や食事が取れない
- 嘔吐、下剤・利尿薬の使用が続いている
- 急激な体重減少がある
- 自分を傷つけたい気持ちがある
これらがある場合は通常の予約日を待たず、救急医療機関や適切な診療科へご相談ください。
婦人科で行う検査
妊娠反応、体重と変化量、食事・運動・ストレス、服薬状況を確認し、FSH、LH、エストラジオール、プロラクチン、甲状腺機能などを調べます。必要に応じて血算、生化学、電解質、超音波検査を行います。6か月以上の無月経、重い栄養不足、骨折歴などがある場合は骨密度検査を検討します。[1]
治療の中心はエネルギー不足の回復
- 摂取エネルギーを増やす:食事量だけでなく、炭水化物、脂質、たんぱく質を含む全体のバランスを見直します。
- 運動量を調整する:一時的な強度・頻度の低下や休養日を検討します。
- 必要に応じて体重を回復する:目標は一律ではなく、月経があった時期の体重や全身状態を参考にします。
- 心理面へ対応する:食行動への不安、完璧主義、競技や仕事のプレッシャーがあれば専門家と連携します。
月経再開までの期間には個人差があります。体重だけでなく、エネルギー利用、睡眠、ストレス、ホルモン状態を継続して確認します。
ピルを飲めば解決しますか?
低用量ピルを服用すると出血を起こせますが、自然な排卵が回復したことや、エネルギー不足が解消したことを示しません。骨密度改善だけを目的に低用量ピルを使うことは推奨されていません。生活・栄養への介入後も無月経が続く場合には、状況に応じて経皮エストラジオールと黄体ホルモンなどのホルモン補充を検討します。[1]
よくあるご質問
Q. 何kg減ると生理が止まりますか?
決まった数字はありません。減少の速さ、元の体重、食事内容、運動量、体質、ストレスによって異なります。
Q. 標準体重ならダイエットは原因ではありませんか?
標準体重でも起こります。現在のBMIより、短期間の体重変化と摂取・消費エネルギーの差が重要です。
Q. 生理が戻るまで運動を全部やめる必要がありますか?
必ずしも一律に中止するわけではありませんが、健康状態によっては休止が必要です。競技特性と全身状態を見ながら、安全な運動量を個別に決めます。
Q. 生理がないだけで体調は良いので、様子を見てもよいですか?
自覚症状が少なくても骨への影響が進むことがあります。3か月以上来ない場合は評価を受けてください。
横浜でダイエット・運動後の無月経をご相談になりたい方へ
当院では、体重の数字だけで責めることなく、食事、運動、仕事・学校、心理的負担を含めて一緒に整理します。横浜駅から徒歩6分、女性医師の婦人科です。
関連ページ:検査の流れ/10代の生理不順・無月経
執筆・医学監修:清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医/日本医師会認定健康スポーツ医/ポートサイド女性総合クリニック院長
《公開日:2026年8月10日》
《最終更新日:2026年8月10日》
参考文献
- Gordon CM, et al. Functional Hypothalamic Amenorrhea: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. 2017.
- Mountjoy M, et al. 2023 International Olympic Committee’s consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport (REDs). Br J Sports Med. 2023;57:1073-1097.
- 日本産婦人科医会.思春期女子の月経異常―続発無月経.










