天然型黄体ホルモン(エフメノ)のメリットと乳がんリスク

天然型黄体ホルモン(微粒子化プロゲステロン)は、体内で作られるプロゲステロンと同じ化学構造をもつ薬です。子宮がある方が全身用エストロゲンを使う際に、子宮内膜増殖症・子宮体がんを防ぐ目的で併用します。日本ではエフメノカプセル100mgが承認されています。[1]

観察研究では、天然型プロゲステロンを組み合わせたHRTは、一部の合成黄体ホルモンを使うHRTより乳がんリスクが低い可能性が示されています。しかし、「天然型なら乳がんリスクがゼロ」「長期間でも必ず上がらない」とは言えません。特に5年を超える長期使用のデータは限定的です。[2][3]

 

HRTで黄体ホルモンを使う理由

エストロゲンは更年期症状を改善しますが、子宮がある方が全身用エストロゲンだけを続けると、子宮内膜が増殖し、子宮内膜増殖症・子宮体がんのリスクが上がります。黄体ホルモンはエストロゲンによる子宮内膜への刺激を抑え、内膜を保護します。

子宮の状態 黄体ホルモン
子宮がある 全身用エストロゲンに原則として併用が必要
子宮を摘出している 通常は不要。ただし子宮内膜症などで個別判断することがある

黄体ホルモンは、つらい時だけ飲む薬ではありません。処方された日数・量を守ることが子宮内膜保護に重要です。

「天然型」とは

天然型(微粒子化)プロゲステロンは、植物由来原料などから製造されますが、最終的な有効成分は体内のプロゲステロンと同じ構造です。「天然型」という言葉は、無加工の自然物や副作用のないサプリメントという意味ではありません。

医薬品として承認された天然型プロゲステロンと、個人輸入・調剤による未承認のいわゆる「バイオアイデンティカルホルモン」は区別が必要です。承認医薬品は含量、品質、用法・用量、安全性情報が審査されています。

天然型プロゲステロンのメリット

  • 体内のプロゲステロンと同じ化学構造
  • 承認された用法でエストロゲン投与時の子宮内膜増殖症を抑える
  • 観察研究では、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性
  • 観察研究では、血栓症への影響が比較的小さい可能性
  • 眠気が出る性質を、就寝前の服用で受け入れやすい方がいる

これらは平均的な傾向であり、全員に同じ効果・副作用になるわけではありません。

天然型プロゲステロンと乳がんリスク

乳がんリスクに関する代表的なデータには、フランスのE3Nコホートなどの観察研究があります。これらでは、エストロゲン+天然型プロゲステロンは、エストロゲン+一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性が示されました。[3]

2018年の系統的レビューは、エストロゲン+微粒子化プロゲステロンについて、5年以内の使用では乳がんリスク増加を示さないとまとめています。一方、5年を超える使用ではリスク上昇の可能性を示す根拠が限られており、結論は確定していません。黄体ホルモンの種類にかかわらず、併用HRTの説明では乳がんリスクを扱うべきとしています。[2]

ここから言えること・言えないこと

言えること 言えないこと
天然型は、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性がある 天然型なら乳がんにならない
5年以内の使用については比較的安心できるデータがある 5年を超えて何年使ってもリスクが上がらない
黄体ホルモンの種類を選ぶことはリスク低減の一要素 検診や定期的な利益・リスクの見直しが不要になる

観察研究は実際の診療に近い長期データを得られる一方、薬を選んだ背景などの影響を完全には除けません。長期の無作為化比較試験が不足しているため、数字を確定的に説明しないことが重要です。

血栓症リスクとの関係

HRTの血栓症リスクには、主にエストロゲンの投与経路が大きく関係します。貼り薬・ジェルなどの経皮エストラジオールは、経口エストロゲンより静脈血栓症リスクが低いと考えられています。黄体ホルモンも種類によって影響が異なり、天然型プロゲステロンは一部の合成黄体ホルモンより血栓症リスクへの影響が小さい可能性があります。[4]

ただし、血栓症の既往、喫煙、肥満、長期不動、手術、がんなど本人側のリスクも重要です。「経皮エストラジオール+天然型プロゲステロンなら血栓症はゼロ」とは説明できません。

エフメノの飲み方

日本の電子添文では、エストロゲン製剤との併用で、次のいずれかの方法が承認されています。実際の処方は月経状態、出血の希望、副作用などにより医師が決めます。[1]

  • 持続的併用:100mgを1日1回、就寝前に服用
  • 周期的併用:エストロゲン開始日を1日目として、15~28日目に200mgを1日1回、就寝前に服用

眠気・めまいが現れることがあるため、就寝前に服用します。服用後の自動車運転や危険を伴う作業は避けてください。飲み忘れた場合は自己判断で2回分をまとめず、処方時の指示または医療機関・薬剤師に確認します。

主な副作用・デメリット

  • 眠気、傾眠、めまい
  • 不正出血、予定された消退出血
  • 頭痛
  • 乳房の張り・痛み
  • 腹部膨満感、吐き気
  • 気分の変化

眠気が強い、転倒しそうになる、出血量が多い、出血が長引く場合は処方医へ相談してください。黄体ホルモンを自己判断で減量・中止すると、子宮内膜保護が不十分になるおそれがあります。

天然型が必ず最適とは限りません

天然型プロゲステロンは有力な選択肢ですが、次のような場合は別の方法が合うことがあります。

  • 眠気・めまいが強く、継続が難しい
  • 周期的な出血を避けたい、または出血パターンが合わない
  • 飲み忘れが多い
  • 持病や併用薬との関係で別の黄体ホルモンが適する
  • 子宮を摘出しており、黄体ホルモン自体が通常不要

薬の名称だけで選ぶのではなく、エストロゲンの経路と量、黄体ホルモンの用法、本人のリスクを一つの処方設計として考えます。

天然型黄体ホルモンについてよくある質問

Q. エフメノは乳がんリスクを上げませんか?

一部の合成黄体ホルモンより低い可能性はありますが、リスクゼロを証明した薬ではありません。5年を超える長期データは限定的で、定期的に継続の利益とリスクを見直します。

Q. 「天然型」なら副作用はありませんか?

副作用はあります。特に眠気、めまい、不正出血、乳房の張りなどに注意します。医薬品として用法どおりに使用します。

Q. 眠れないのでエフメノだけ飲んでもよいですか?

睡眠薬として自己使用する薬ではありません。HRTで子宮内膜を保護する目的と処方全体を確認して使用します。

Q. 出血があるのでエフメノをやめてもよいですか?

自己判断で中止せず受診してください。投与法に伴う出血か、子宮内膜や子宮の病変による出血かを確認し、処方を調整します。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。

参考文献

  1. PMDA.エフメノカプセル100mg 医療用医薬品情報・電子添文.2025年10月改訂.
  2. Stute P, et al. The impact of micronized progesterone on breast cancer risk: a systematic review. Climacteric. 2018;21:111-122.
  3. Fournier A, et al. Unequal risks for breast cancer associated with different hormone replacement therapies: results from the E3N cohort study. Breast Cancer Res Treat. 2008;107:103-111.
  4. British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
  5. Asi N, et al. Progesterone vs. synthetic progestins and the risk of breast cancer: a systematic review and meta-analysis. Syst Rev. 2016;5:121.
  6. 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.