HRTは何歳から何歳まで?開始時期・継続期間・やめどき

HRTは、月経が完全に止まるまで待たなければ始められない治療ではありません。更年期移行期に、ほてり・発汗・寝汗などで生活に支障があり、診察で適応があると判断されれば開始できます。一方、60歳を超えてから、または閉経後10年以上経ってから初めて開始する場合は、心血管疾患・脳卒中・血栓症などの絶対リスクが高くなるため、より慎重な評価が必要です。[1]

「5年で必ずやめる」「65歳で全員中止」という一律の期限はありません。症状、骨折リスク、乳がん・心血管リスク、投与経路、本人の希望を定期的に確認し、継続・減量・中止を個別に決めます。

 

先に結論:開始・継続年齢の目安

状況 考え方
閉経前・月経が不規則 症状と適応があれば開始可能。出血方法と避妊を別に考える。
60歳未満または閉経後10年以内 禁忌がなければ、つらい症状に対する利益とリスクのバランスが一般に良好。
60歳以上または閉経後10年超で新規開始 一律禁止ではないが、絶対リスクが上がるため個別評価。低用量・経皮剤などを慎重に検討。
65歳以上で継続中 年齢だけで一律中止しない。明確な目的、定期評価、リスク低減を前提に継続できる場合がある。
40歳未満の早発卵巣不全 自然閉経と別に考え、禁忌がなければ平均的な閉経年齢までホルモン補充を勧めることが多い。

生理があるうちからHRTを始められますか?

始められる場合があります。ほてり・寝汗などは、最後の月経より前の更年期移行期から現れることが多く、治療を12か月の無月経まで待つ必要はありません。

ただし、閉経前は卵巣からのホルモン分泌も変動しているため、不正出血が起こりやすくなります。月経状況に合わせて周期的に黄体ホルモンを使う方法などを選びます。

HRTには避妊効果がありません。月経が不規則でも排卵・妊娠の可能性は残るため、必要な期間はコンドーム、子宮内避妊具、適切なホルモン避妊法などを別に相談します。

「60歳未満・閉経後10年以内」の意味

国際的な専門学会は、禁忌のない健康な女性が、60歳未満または閉経後10年以内にHRTを開始する場合、つらい血管運動神経症状の治療と骨量減少予防について、利益とリスクのバランスが一般に良好としています。[1]

これは「60歳の誕生日を迎えたら危険になる」という境界線ではありません。年齢と閉経からの期間が長くなるほど、心血管疾患、脳卒中、静脈血栓症などのもともとの絶対リスクが上がるため、開始時期を判断する目安です。

50代で開始して60歳を超えた方と、70歳で初めて開始する方では、同じ年齢でも考え方が異なります。

60歳を超えてから初めてHRTを始める場合

60歳以上、または閉経後10年以上経ってからの新規開始は一律禁止ではありませんが、次の点をより慎重に確認します。

  • 症状が本当にエストロゲン低下によるものか
  • 冠動脈疾患、脳卒中、静脈血栓症の既往・リスク
  • 乳がん・子宮体がんなどの既往
  • 原因不明の性器出血
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満
  • 全身HRTではなく局所治療で対応できる症状か

開始する場合は、症状に必要な低用量から、経皮エストラジオールなど非経口経路を優先して検討することがあります。[2]

HRTは何年まで続けられますか?

使用期間に一律の上限はありません。血管運動神経症状が続く期間には個人差があり、60代以降もつらい症状が残る方がいます。生活の質への利益があり、本人が継続を希望し、禁忌がなく、定期的に評価できる場合は長期継続を検討できます。[3]

一方、期間が長くなるほど注意すべきリスクもあります。特に子宮がある方のエストロゲン+黄体ホルモン併用療法では、黄体ホルモンの種類と使用期間により乳がんリスクが変わる可能性があります。

「できるだけ短期間」という言葉だけで必要な治療を打ち切るのではなく、継続する医学的な目的があるか、より低い量や局所治療でよいかを毎年見直すことが重要です。

65歳になったら中止しなければいけませんか?

年齢だけを理由に65歳で一律中止する必要はありません。The Menopause Societyの2022年ポジションステートメントは、持続するほてり、生活の質、骨粗鬆症予防などの明確な目的があり、利益とリスクを定期的に再評価する場合、65歳を超えた継続を検討できるとしています。[3]

年齢が上がるほど、低用量と非経口経路の選択、血圧・生活習慣病・乳房・出血の確認がより重要になります。継続しているから安全、年齢だけで危険、のどちらでもありません。

継続中に毎年見直すこと

  • 治療を続ける目的:ほてり、睡眠、GSM、骨量など
  • 現在も十分な効果があるか
  • 不正出血、乳房症状、頭痛、皮膚症状など
  • 乳がん、血栓症、脳心血管疾患などの新しいリスク
  • 血圧、体重、喫煙、持病、服用薬の変化
  • 投与経路・用量・黄体ホルモンの種類を改善できないか
  • 継続・減量・中止についての本人の希望

定期的な検診は必要ですが、検診を受ければすべてのHRTリスクがなくなるわけではありません。症状と処方の妥当性を一緒に見直します。

HRTのやめどきと中止方法

次のような時に、減量・中止・別の治療への変更を相談します。

  • 症状が落ち着き、本人が中止を希望する
  • 効果より副作用・負担が大きい
  • 新たな禁忌や大きなリスクが見つかった
  • 局所症状だけになり、腟の局所治療へ切り替えられる
  • 手術・長期不動などで一時中止が必要と判断された

急に中止しても、徐々に減量してもよい場合があります。どちらがほてりの再発を確実に防ぐという明確な差はありません。再発が心配な方は、用量を下げる、貼付間隔を医師の指示で調整するなど段階的な方法を相談します。

中止後に症状が再発した場合は、再開、より低用量、局所治療、非ホルモン治療などを再検討できます。

40歳未満の早発卵巣不全(POI)は別に考えます

40歳未満で卵巣機能が低下する早発卵巣不全(POI)や、両側卵巣摘出などによる早い時期の低エストロゲン状態は、自然な閉経年齢の更年期と同じではありません。治療しない期間が長いと、骨・心血管・泌尿生殖器などへの影響が懸念されます。

禁忌がなければ、平均的な自然閉経年齢ごろまでホルモン補充を勧めることが一般的です。この期間は「通常より早く失われたホルモンを補う」という意味合いが強く、50歳前後から初めるHRTの年齢リスクと同じようには考えません。[4]

POIでも自然排卵・妊娠が起こる可能性があるため、妊娠希望と避妊について個別に相談します。

HRTの年齢・期間についてよくある質問

Q. 生理があるうちにHRTを始めてもよいですか?

症状と適応があれば開始できます。月経の状態に合わせて投与法を選び、妊娠の可能性がある間は別に避妊を考えます。

Q. 60歳になったらHRTをやめるべきですか?

60歳で一律中止する必要はありません。開始時期、症状、投与経路、乳がん・心血管・血栓症リスクを定期的に見直して判断します。

Q. HRTは5年以上続けられますか?

続けられる場合があります。特に併用HRTでは乳がんリスクが期間とともに変化する可能性があるため、黄体ホルモンの種類を含めて毎年評価します。

Q. やめたら症状が戻りました。再開できますか?

再開できる場合があります。現在の年齢、閉経からの期間、新しい持病・リスクを再評価し、低用量や経皮剤、非ホルモン治療も含めて選びます。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。

参考文献

  1. The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
  2. British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
  3. The Menopause Society. Women aged older than 65 years may be able to safely continue taking hormone therapy. 2024.
  4. European Society of Human Reproduction and Embryology. Guideline on premature ovarian insufficiency. 2024.
  5. National Institute for Health and Care Excellence. Menopause: identification and management(NG23). Updated 2024.
  6. 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.