PMS(月経前症候群)とは?症状・PMDDとの違い・治療
PMS(月経前症候群)は、月経前に心身の症状が繰り返し現れ、月経が始まると軽くなる病気です。イライラや気分の落ち込みだけでなく、眠気、集中力低下、頭痛、乳房の張り、むくみ、腹部膨満感など、症状は人によって異なります。症状によって仕事・学校・家事・人間関係に支障が出る場合は、我慢せず治療を検討できます。[1]
PMSは「本人の性格」や「我慢不足」ではありません。また、単純に女性ホルモンが多い・少ないために起こるとも限りません。症状の出る時期を記録し、PMDD(月経前不快気分障害)、PME(月経前増悪)、身体・精神疾患などと区別したうえで、症状と希望に合う治療を選びます。
PMS(月経前症候群)とは
日本産科婦人科学会では、PMSを「月経前3~10日の黄体期に続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに減弱あるいは消失するもの」としています。[1]実際の症状開始日は個人差があり、月経前の約1~2週間に現れることもあります。
月経前に多少の体調変化があっても、日常生活への影響がほとんどなければ治療を必要としないこともあります。症状の数よりも、毎月同じ時期に繰り返すか、月経後に軽くなるか、生活にどの程度影響するかが大切です。
PMSの主な症状
| 種類 | 主な症状 |
|---|---|
| 気分・こころ | イライラ、怒りっぽさ、気分の落ち込み、不安、涙もろさ、気分の波 |
| 思考・行動 | 集中しにくい、意欲低下、人との関わりを避ける、過食、食欲の変化 |
| 睡眠・全身 | 眠気、不眠、疲れ、だるさ、むくみ、体重増加感 |
| 痛み・身体 | 頭痛、乳房の張り、腹部膨満感、腰痛、関節痛、肌荒れ |
頭痛や腹痛が強い場合は、月経関連片頭痛、子宮内膜症、月経困難症などが重なっていることがあります。すべてをPMSだけで説明せず、症状に応じて評価します。
PMS・PMDD・PMEの違い
| 状態 | 症状の特徴 | 診断・治療のポイント |
|---|---|---|
| PMS | 月経前に身体・精神症状が現れ、月経開始後に軽くなる | 症状記録と生活への影響を確認し、主症状に合う治療を選ぶ |
| PMDD | 抑うつ、不安、気分の波、強いイライラなど精神症状が目立ち、仕事・学校・人間関係への影響が大きい | 厳密な診断基準があり、SSRI、OC・LEP、心理療法、精神科連携などを検討 |
| PME(月経前増悪) | うつ病、不安症、双極症、ADHD、片頭痛などの症状が月経周期を通してあり、月経前にさらに悪化する | もともとの病気の治療と月経周期への対応を並行して行う |
月経後も症状が続くからといって、「月経と無関係」とは限りません。PMEや、PMS・PMDDと別の病気の併存もあります。特に双極症を見落として抗うつ薬を開始すると症状が不安定になることがあるため、躁状態・軽躁状態の経験も確認します。[2]
PMSの原因はホルモンバランスの乱れ?
PMS・PMDDの原因は完全には解明されていません。多くの方ではホルモン値そのものに明らかな異常があるのではなく、排卵後に起こる正常なエストロゲン・プロゲステロンの変動と、その代謝物に脳や体が強く反応することが関係すると考えられています。セロトニンやGABAなどの神経伝達系も関与します。
「プロゲステロンだけが悪い」「ホルモンを測れば原因が分かる」という単純な病態ではありません。睡眠不足、ストレス、痛み、生活環境は症状を増幅することがありますが、ストレスだけが原因でもありません。
PMS・PMDDはどう診断しますか?
PMSを確定する血液検査やホルモン検査はありません。診断の中心は、月経周期と症状を毎日記録することです。原則として少なくとも2周期、症状の種類・強さ・生活への影響・月経日を前向きに記録します。[3]
問診では、月経周期、妊娠の可能性、使用中の薬、甲状腺疾患、貧血、片頭痛、子宮内膜症、うつ病・不安症・双極症・発達特性などを確認します。必要な場合だけ、血液検査、超音波検査、心理検査などを追加します。
PMS・PMDDの治療
治療は、最も困っている症状、生活への影響、妊娠希望、月経痛・過多月経の有無、片頭痛、血栓症リスクなどから選びます。一つの方法で改善しない場合も、治療法や薬の種類を変更・併用できます。[4]
- 症状記録・生活調整:睡眠、運動、食事、カフェイン・アルコール、仕事量を見直す
- 認知行動療法・心理的支援:症状への対処と生活への影響を減らす
- OC・LEP:排卵を抑え、周期的なホルモン変動を小さくする
- SSRI:精神症状が強いPMS・PMDDで、連日または黄体期のみ使用する
- 対症療法:頭痛・腹痛には鎮痛薬など、主症状に応じた治療
- 漢方薬:症状と体質を確認して選択する
- 専門治療:難治例ではGnRHアゴニストなどを専門医が検討する
ドロスピレノンを含む配合薬にはPMDDを中心とした研究がありますが、全員の精神症状に同じ効果があるわけではありません。また、日本ではPMS・PMDDそのものに対するOC・LEPやSSRIは保険適用外で、月経困難症など併存する病気への処方では保険診療となる場合があります。[5]
PMSで婦人科を受診する目安
- 毎月、仕事・学校・家事を休むほどつらい
- 家族・パートナー・職場との関係に影響している
- 気分の落ち込み、不安、イライラを自分で制御しにくい
- 月経痛、過多月経、頭痛、不正出血もある
- セルフケアで改善しない
- PMDDではないか心配
死にたい気持ち、自傷したい気持ち、他人を傷つけそうな感覚、幻覚・妄想、眠らなくても活動できるほどの高揚がある場合は、月経時期にかかわらず緊急の評価が必要です。一人にならず、身近な方に伝え、119番または救急医療機関へ連絡してください。日本産婦人科医会も、希死念慮や重大な生活障害がある場合の早期専門科連携を勧めています。[2]
思春期・更年期にもPMSはありますか?
思春期
排卵を伴う月経が始まると、10代でもPMS・PMDDは起こります。欠席、成績低下、部活動への影響、家族との衝突なども重要な生活障害です。診断のために内診が必須というわけではなく、症状記録と問診を中心に評価できます。
更年期移行期
月経周期が不規則になる時期には、PMSに似た気分変化、ほてり、睡眠障害が起こることがあります。もともとのPMS・PMDD、PME、更年期症状、うつ病・不安症などを区別し、年齢、喫煙、片頭痛、血栓症リスクを考慮して治療を選びます。
PMSについてよくある質問
Q. 生理前にイライラすればPMSですか?
イライラだけでは診断できません。月経前に繰り返し、月経後に軽くなるか、生活にどの程度影響するかを確認します。月経周期を通して症状がある場合はPMEや別の病気も検討します。
Q. PMSとPMDDの違いは何ですか?
PMDDは、抑うつ、不安、気分の波、強いイライラなどが目立ち、仕事・学校・人間関係への影響が大きい月経前の病態です。症状数や時期を含む厳密な診断基準があります。
Q. ホルモン検査でPMSと分かりますか?
特定のホルモン値だけでPMSを診断することはできません。診断の中心は少なくとも2周期の症状記録です。別の病気が疑われる時は、甲状腺機能や貧血などの検査を行います。
Q. PMSは何科を受診すればよいですか?
月経周期との関連、月経痛、過多月経などがあれば婦人科へご相談ください。精神症状が強い場合や月経後も続く場合は、心療内科・精神科と連携して診療することがあります。
Q. PMSはピルを飲めば必ず治りますか?
必ずではありません。OC・LEPで改善する方がいる一方、PMDDの精神症状にはSSRIや心理療法が合うこともあります。安全性と主症状を確認して選びます。
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PMS・PMDDの初診予約は、お電話(045-440-5577)でご相談ください。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月7日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会.月経前症候群・月経前不快気分障害(PMS・PMDD)に対する診断・治療指針.2025.
- 日本産婦人科医会.PMS/PMDDの専門科へのコンサルトのタイミングは?.2026.
- Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. Managing premenstrual syndrome (PMS).
- American College of Obstetricians and Gynecologists. Management of Premenstrual Disorders. 2023.
- Ma S, et al. Oral contraceptives containing drospirenone for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2023;6:CD006586. PubMed.










