子宮体がんの治療と予防|手術・妊孕性温存・再発治療
子宮体がんの治療は、手術が中心です。がんの進行期、組織型、悪性度、分子生物学的な特徴、年齢、合併症、妊娠希望などを確認し、手術、薬物療法、放射線治療を組み合わせます。[1][2]
ごく早期で一定の条件を満たし、妊娠を強く希望する方では、子宮を摘出せず黄体ホルモンで治療する選択肢があります。ただし対象は限られ、再発リスクがあるため、婦人科腫瘍と生殖医療の連携が可能な専門施設で行います。
治療方針を決める要素
- 病気の広がりを示す進行期
- 類内膜がん、漿液性がん、明細胞がんなどの組織型
- がん細胞の悪性度を示すグレード
- 子宮筋層への浸潤、リンパ節・遠隔転移
- MMR、MSI、p53、POLEなどの分子生物学的特徴
- 年齢、肥満、糖尿病、心血管疾患などの全身状態
- 妊娠希望と妊孕性温存の適応
同じ「子宮体がん」でも性質と再発リスクは異なります。手術で得られた病理結果も含めて、術後の追加治療を決めます。
子宮体がんの手術
手術が可能な場合は、子宮全摘術と両側付属器摘出術(両側の卵巣・卵管の摘出)が基本です。がんの性質や広がりに応じて、リンパ節の評価・郭清などを追加します。
早期がんでは、条件を満たせば腹腔鏡手術やロボット支援手術が可能な場合があります。進行がんでは開腹手術や腫瘍減量術を検討します。手術方法は、病期と施設の体制によって異なります。
手術によって子宮を摘出すると妊娠はできなくなり、両側の卵巣を閉経前に摘出すると外科的閉経になります。治療前に、妊孕性、卵巣機能、術後の生活への影響について説明を受けます。
術後の追加治療
手術後は、進行期、組織型、グレード、筋層浸潤、リンパ管・血管侵襲、リンパ節転移などから再発リスクを評価します。
- 低リスク:追加治療を行わず経過観察になることが多い
- 中・高リスク:化学療法や放射線治療を検討
- 進行がん:化学療法を中心に、手術・放射線治療などを組み合わせる
薬物療法では、白金製剤とタキサン系薬剤を組み合わせた化学療法などが用いられます。病気の状態や分子検査結果によって、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬、ホルモン療法を検討する場合があります。
遺伝子・分子検査と治療選択
子宮体がんでは、腫瘍のMMRタンパク免疫染色やMSI検査などが、薬物療法の選択やリンチ症候群を考える手がかりになります。
MSI-Highやミスマッチ修復機能欠損(dMMR)があるがんでは、免疫チェックポイント阻害薬が選択肢になることがあります。検査結果がリンチ症候群を疑う場合は、遺伝カウンセリングを経て、必要に応じて生殖細胞系列の遺伝学的検査を検討します。[3]
妊娠を希望する場合の妊孕性温存治療
子宮体がんの標準治療は子宮摘出ですが、次のような条件を満たす場合に限り、子宮を残す黄体ホルモン療法を検討できることがあります。
- 妊娠を強く希望している
- 子宮内膜異型増殖症、または類内膜がんグレード1相当
- がんが子宮内膜にとどまり、筋層浸潤や子宮外病変を認めない
- 治療の限界と再発リスクを理解し、厳密な経過観察ができる
高用量黄体ホルモン療法を行い、定期的に子宮内膜組織診・画像検査で効果を確認します。病変が消失しても再発する可能性があるため、妊娠可能になった後は効率よく妊娠を目指し、出産希望を終えた後に子宮摘出を相談することがあります。[4]
治療が効かない、進行する、再発する場合は子宮摘出が推奨されます。妊孕性温存治療は、一般の月経不順に対する黄体ホルモン治療とは目的・用量・管理方法が異なります。
子宮内膜増殖症・異型増殖症の治療
異型のない子宮内膜増殖症
黄体ホルモン製剤やレボノルゲストレル放出子宮内システムなどを用い、定期的な子宮内膜組織診で改善を確認することがあります。肥満、排卵障害、エストロゲン単独使用などの背景も見直します。
子宮内膜異型増殖症
子宮体がんの前がん病変で、すでに子宮体がんが併存している場合があります。妊娠希望がない場合の標準治療は子宮全摘術です。妊娠を強く希望する場合は、十分な組織評価を行った上で専門施設における黄体ホルモン療法を検討します。
子宮体がんの予防のためにできること
月経不順・無排卵を放置しない
排卵が少なく月経が何か月も来ない状態では、子宮内膜がエストロゲンの刺激を受け続けることがあります。妊娠を希望しない時期も、低用量ピルや黄体ホルモンなどで定期的に子宮内膜を保護する治療が必要な場合があります。
適正体重と代謝管理
肥満、体重増加、糖尿病、メタボリックシンドロームは子宮体がんのリスク上昇と関連します。極端な減量ではなく、食事、運動、睡眠を含む継続可能な体重・代謝管理を行います。[5]
ホルモン剤を適切に使う
子宮がある方が全身用エストロゲンを使用する場合は、原則として黄体ホルモンを併用し子宮内膜を保護します。配合経口避妊薬の使用歴は子宮体がんリスクの低下と関連しますが、がん予防だけを目的に全員へ処方する薬ではありません。
タモキシフェンを使用している方は、不正出血があれば婦人科へ相談してください。症状がない方が自己判断で内膜検査を繰り返したり、タモキシフェンを中止したりするのではなく、乳腺科の主治医と連携して判断します。
リンチ症候群と子宮体がん
リンチ症候群は、大腸がん、子宮体がん、卵巣がん、尿路系がんなどのリスクが高くなる遺伝性腫瘍です。
子宮体がん・大腸がんを若く発症した血縁者がいる、家系内に関連がんが複数ある、腫瘍のMMR・MSI検査で特徴的な結果が出た場合は、遺伝カウンセリングを検討します。病的バリアントが確認された方では、定期管理や、妊娠・出産希望を終えた後のリスク低減手術について専門施設で相談します。
治療後の経過観察
治療後は、再発リスクと治療からの期間に応じて、問診、内診、超音波、血液検査、CTなどを必要に応じて行います。
不正出血、下腹部痛、咳・息苦しさ、下肢のむくみ、体重減少など新しい症状がある場合は、次の予約日を待たず治療施設へ相談してください。
子宮体がんの治療・予防についてよくある質問
Q. 子宮体がんは必ず子宮を摘出しますか?
標準治療は子宮摘出です。ただし、ごく早期で一定の条件を満たし妊娠を強く希望する場合に、専門施設で黄体ホルモンによる温存治療を検討できます。
Q. 月経不順ならピルを飲めば体がんを完全に予防できますか?
子宮内膜を保護しリスクを下げる効果は期待できますが、完全に予防できるわけではありません。不正出血があれば服用中でも診察が必要です。
Q. タモキシフェンを飲んでいるので中止した方がよいですか?
自己判断で中止しないでください。乳がん治療上の利益を踏まえ、不正出血がある場合に乳腺科と婦人科で対応を相談します。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年10月19日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。
参考文献
- 日本婦人科腫瘍学会.子宮体がん.
- 日本婦人科腫瘍学会.子宮体がん治療ガイドライン2023年版.
- 国立がん研究センター がん情報サービス.遺伝性腫瘍.
- 国立がん研究センター がん情報サービス.子宮体がん(子宮内膜がん)治療.
- National Cancer Institute. Endometrial Cancer Causes, Risk Factors, and Prevention.










