PMOS(旧称PCOS)と妊娠|合併症と子どもへの影響

 

PMOS(旧称PCOS)の方は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群・妊娠高血圧腎症、早産などのリスクが一般より高いことが報告されています。

一方で、「PMOSなら妊娠できない」「必ず妊娠合併症が起こる」という意味ではありません。妊娠前から血圧・血糖・服薬などを確認し、妊娠後も適切に管理することが大切です。[1]

 

また、PMOSの母親から生まれた娘は、成長後にPMOSと診断される割合が高いという研究があります。ただし、その理由は遺伝、胎内環境、出生後の環境などが複雑に関係すると考えられ、「妊娠中の母体テストステロンが高いと、胎児が必ずPMOSになる」と人で証明されたわけではありません。[2][3]

 

妊娠を希望したら確認したいこと

  • 月経周期と排卵の有無、妊娠を希望する時期
  • 血圧、体重の変化、血糖・耐糖能
  • 服用中の薬やサプリメントが妊娠中も使用できるか
  • 葉酸の摂取、喫煙・飲酒、睡眠、食事、運動
  • 不安・抑うつ、摂食の問題などメンタルヘルス
  • 不妊期間や年齢に応じた精液検査・卵管検査などの必要性

PMOSでは体格にかかわらず耐糖能異常のリスクがあります。国際ガイドラインでは、妊娠を希望する時点で75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を検討するよう推奨しています。妊娠前に行っていない場合は、初回妊婦健診時に行い、正常でも妊娠24~28週に再検することが推奨されています。[1]

月経が不規則で排卵日を予測できない場合は、自己流で長期間待たず、早めに婦人科へご相談ください。排卵の確認や排卵誘発が必要になることがあります。

PMOSで増える可能性がある妊娠中・出産時のリスク

主なリスク 診療で行うこと
妊娠糖尿病 妊娠前または妊娠初期のOGTT、妊娠24~28週の再検、必要に応じた食事・血糖管理
妊娠高血圧症候群・妊娠高血圧腎症 妊娠前から血圧を確認し、妊婦健診で血圧・尿蛋白・症状を評価
流産 出血・腹痛がある時の評価。すべての流産を予防できる薬があるわけではない
早産 子宮収縮、出血、破水感などの症状があれば早めに受診
胎児発育不全・低出生体重 妊婦健診と超音波で胎児の発育を確認
帝王切開 母体・胎児の状態と分娩経過に応じて分娩方法を判断

リスクの程度は、年齢、体格、血圧、血糖、治療による妊娠かどうか、単胎か多胎かなどによって異なります。PMOSという診断名だけで個人の経過を決めつけることはできません。

妊娠前のOGTTと血圧測定が重要です

空腹時血糖やHbA1cだけでは、食後の血糖異常を見逃すことがあります。OGTTは、空腹時とブドウ糖液を飲んだ後の血糖を測定し、糖を処理する力を詳しく調べる検査です。

妊娠前に血糖異常や高血圧が分かれば、妊娠前から治療や生活調整を始められます。妊娠後も、頭痛、目がちらつく、急なむくみ、みぞおちの痛み、強いだるさなどがある場合は、次の健診を待たず産科へ連絡してください。

妊娠前後の薬について

メトホルミン

メトホルミンは、PMOSの代謝管理や排卵治療で使用されることがあります。しかし、妊娠中の使用によって、妊娠糖尿病、妊娠12週以降の流産、妊娠高血圧症、妊娠高血圧腎症などを確実に予防できることは示されていません。特定の状況で使用を検討することはありますが、子どもへの長期的影響には不明な点が残ります。自己判断で開始・中止せず、処方医と産科医へ確認してください。[1]

ピル・黄体ホルモン剤

月経管理に使うピルは、妊娠を希望する時には中止して治療方針を切り替えます。黄体ホルモン剤は種類と目的によって扱いが異なるため、妊娠判明後も自己判断で継続・中止しないでください。

抗アンドロゲン薬・ニキビ治療薬

抗アンドロゲン薬や一部のニキビ治療薬には、妊娠中に使用できないものがあります。妊娠を考え始めた時点で、婦人科・皮膚科へ薬の見直しをご相談ください。

PMOSは子どもへ受け継がれますか?

人の研究で分かっている「関連」と、動物研究から考えられる「仕組み」は分けて理解する必要があります。

PMOSのなりやすさには家族性があり、母親がPMOSの場合、娘が将来PMOSと診断される割合は高いと報告されています。ただし、単一の遺伝子だけで決まる遺伝病ではなく、必ず娘へ受け継がれるわけでもありません。[2]

世代をまたぐ関連には、複数の遺伝的要因、胎内のホルモン・代謝環境、生活環境などが関係すると考えられています。現時点では、それぞれがどの程度影響するかを個人ごとに予測する検査はありません。

妊娠中の高テストステロンと胎児のPMOSリスク

研究から分かっていること まだ分からないこと
PMOS女性では、妊娠中のアンドロゲン値が高いことがある 母体血のテストステロン値が、胎児の曝露量をそのまま表すか
PMOS女性の娘は、後にPMOSと診断される割合が高いという人の研究がある その関連のうち、遺伝・胎内環境・出生後環境が占める割合
マウスでは、妊娠中のアンドロゲン曝露により、子や孫の世代にPMOS様の特徴が現れた研究がある 動物で使った曝露条件が人の通常の妊娠に当てはまるか
胎内環境が世代間連鎖へ関与する可能性が研究されている 母体テストステロンを下げれば、子どものPMOSを予防できるか

2019年の研究では、PMOS女性の娘でPMOS診断が多いという人のデータに加え、妊娠後期のマウスへアンドロゲンを投与すると、複数世代にPMOS様の特徴がみられました。これは胎内環境が関与する可能性を示す重要な研究ですが、動物実験の結果をそのまま人の因果関係として説明することはできません。[2]

一方、人の研究では、PMOS女性の妊娠中テストステロン値が高くても、女児のアンドロゲン曝露の指標に差がなく、母体テストステロン値との関連も認めなかった報告があります。したがって、「妊娠中の高テストステロンが胎児のPMOSを起こす」と断定できる段階ではありません。[3]

妊娠中のホルモン値を自己流の薬やサプリメントで下げることは勧められません。子どものPMOS予防を目的に母体テストステロンを下げる標準治療も、現在は確立していません。

世代間連鎖は「母親のせい」という意味ではありません

PMOSは、遺伝的背景とさまざまな環境要因が重なって生じる多因子性の症候群です。妊娠中の食事や体重、ホルモン値だけを原因にすることはできません。研究で世代間の関連が示されても、それは母親の行動に責任があるという意味ではありません。

妊娠前からできることは、特別な「PMOS予防法」を行うことではなく、血糖・血圧・服薬を確認し、喫煙を避け、無理のない食事・運動・睡眠を整え、必要な妊婦健診を受けることです。

娘の月経が始まった後に気をつけること

母親がPMOSでも、症状のない子どもに血液検査や超音波検査を繰り返す必要はありません。初経後は周期が安定するまで時間がかかるため、大人と同じ基準だけで診断すると過剰診断につながります。

ただし、初経から1年以上経過しても極端に月経間隔が長い、初経から3年以上経過後も周期が21日未満または35日を超える、1年以上経過後に90日以上月経がない、強いニキビや多毛がある場合は婦人科へご相談ください。思春期では、月経周期とアンドロゲン過剰の両方を慎重に評価し、超音波やAMHだけで診断しません。[1]

妊娠希望時・妊娠中の受診目安

妊娠前に婦人科へ相談したい場合

  • 月経が不規則で排卵日が分からない
  • 3か月以上月経が来ない
  • 妊娠に備えて薬を見直したい
  • 血糖・血圧・体重について心配がある
  • 妊娠を希望しているが、排卵していない可能性がある

妊娠中に早めに産科へ連絡したい症状

  • 多量の出血、強い腹痛
  • 激しい頭痛、目がちらつく、みぞおちの痛み
  • 急なむくみ、急激な体重増加
  • 規則的な子宮収縮、破水感
  • 強い口渇、頻尿、著しいだるさ

受診先や緊急度は妊娠週数と症状で異なります。妊娠中は、通院中の産科から案内された連絡方法に従ってください。

PMOSと妊娠についてよくある質問

Q. PMOSだと妊娠できませんか?

いいえ。自然に排卵して妊娠する方もいます。排卵が不規則・無排卵の場合は、妊娠まで時間がかかるため、排卵誘発などの治療を検討します。

Q. PMOSの妊娠はすべてハイリスク妊娠ですか?

一般より合併症の割合は高いものの、全員に合併症が起こるわけではありません。年齢、血圧、血糖、体格、不妊治療、多胎妊娠などを含めて個別に評価します。

Q. 娘には必ずPMOSが遺伝しますか?

必ず発症するわけではありません。家族性はありますが、複数の遺伝的要因、胎内環境、出生後の環境などが複雑に関係します。

Q. 妊娠中のテストステロンを下げれば、子どものPMOSを予防できますか?

そのような予防効果が確立した治療はありません。自己判断でホルモン薬やサプリメントを使用せず、血糖・血圧・服薬など、妊娠の安全に必要な管理を優先します。

Q. メトホルミンは妊娠後も続けた方がよいですか?

使用目的と背景によって異なります。妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などを一律に予防できる薬ではなく、子どもへの長期的影響には不明な点もあるため、処方医と産科医が個別に判断します。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

公開日・最終医学確認:2026年9月25日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方・妊娠管理に代わるものではありません。

参考文献

  1. Teede HJ, et al. International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome 2023.
  2. Risal S, et al. Prenatal androgen exposure and transgenerational susceptibility to polycystic ovary syndrome. Nat Med. 2019;25:1894-1904. PubMed.
  3. Glintborg D, et al. Prenatal testosterone exposure in girls born from pregnancies with polycystic ovary syndrome. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104:4558-4566. PubMed.