更年期障害の治療法|HRT・漢方・生活改善の選び方

更年期障害の治療は、ホルモン補充療法(HRT)だけではありません。最もつらい症状、月経の状態、子宮の有無、持病、乳がん・血栓症などのリスク、ご希望に合わせて、HRT、漢方薬、腟の局所治療、心理・睡眠への治療、生活の調整を組み合わせます。

ほてり・発汗にはHRTが最も効果の高い治療ですが、不眠や気分の落ち込み、関節痛などは別の原因が重なっていることもあります。症状ごとに治療目標を決め、効果を確認しながら調整することが大切です。[1]

 

更年期障害の治療を選ぶ4つのポイント

  1. 最も困っている症状:ほてり、睡眠、気分、痛み、腟・尿の症状など
  2. 安全性:乳がん、血栓症、脳卒中、肝疾患、原因不明の出血など
  3. 月経と子宮の状態:月経の有無、子宮があるか、不正出血があるか
  4. 希望と生活:ホルモンを使うか、貼り薬・塗り薬・飲み薬のどれが続けやすいか

治療は一度決めたら固定ではありません。効果、副作用、生活や希望の変化に応じて変更できます。

治療法の比較

治療法 期待できること 注意点
HRT ほてり・発汗・寝汗に最も有効。睡眠や生活の質、骨量維持にも利益が期待できる。 適応・禁忌を確認する。子宮がある方は原則として黄体ホルモンを併用。
漢方薬 複数の不定愁訴が重なる場合、HRTを希望しない・使えない場合の選択肢。 体質と症状で処方が異なる。甘草による偽アルドステロン症など副作用にも注意。
局所治療 腟乾燥、性交痛、外陰部症状、排尿症状に対して保湿剤・潤滑剤・腟エストロゲンなど。 出血、感染、皮膚疾患など別の原因を確認する。
心理・睡眠治療 認知行動療法、カウンセリング、症状に応じた睡眠薬・抗うつ薬など。 うつ病、不安症、睡眠時無呼吸などは専門的な評価が必要。
生活の調整 運動、睡眠、食事、禁煙、体重管理、症状の引き金への対策。 生活改善だけで十分でない場合は我慢せず薬物療法を検討する。

ホルモン補充療法(HRT)

HRTは、低下・変動するエストロゲンを補う治療です。ほてり・発汗・寝汗などの血管運動神経症状に最も効果が高く、閉経関連尿路性器症候群(GSM)や骨量低下にも効果が期待できます。[1]

HRTで改善が期待できる症状

  • ほてり、のぼせ、発汗、寝汗
  • ほてりに伴う不眠・疲労
  • 腟の乾燥、性交痛など
  • 更年期症状による生活の質の低下

気分の落ち込み、関節痛、頭痛などが改善する方もいますが、ほかの病気が原因の場合や、HRTだけでは十分に改善しない場合があります。

子宮がある方・ない方で処方が異なります

子宮がある方に全身作用のあるエストロゲンを単独で続けると、子宮内膜増殖症・子宮体がんのリスクが上がります。そのため、原則として子宮内膜を守る黄体ホルモンを併用します。子宮を摘出している方は、通常エストロゲン単独を検討します。[2]

HRTの貼り薬・ジェル・飲み薬と黄体ホルモンの選び方

漢方薬

漢方薬は、HRTを希望しない方、HRTが使えない方、複数の症状が重なっている方に用いることがあります。日本で更年期障害によく使われる処方には、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸などがありますが、同じ症状でも体力、冷え、のぼせ、むくみ、精神症状などによって選択が異なります。[3]

漢方薬も副作用がないわけではありません。甘草を含む処方では、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、筋力低下などを起こす偽アルドステロン症に注意します。複数の医療機関や市販薬で同じ生薬が重ならないよう、お薬手帳をご提示ください。

腟の乾燥・性交痛・頻尿への局所治療

腟・外陰部の乾燥、性交痛、頻尿、尿意切迫感、繰り返す尿路感染などを閉経関連尿路性器症候群(GSM)と呼びます。症状が局所に限られる場合は、全身HRTではなく、次の治療を検討します。

  • 腟・外陰部用の保湿剤
  • 性交時の潤滑剤
  • 腟に使用するエストロゲン製剤
  • 感染、皮膚疾患、骨盤底機能障害などがある場合の治療

GSMはほてりと異なり、閉経後に徐々に進み、自然に改善しにくいことがあります。出血、悪臭のあるおりもの、外陰部の病変がある場合は先に診察が必要です。

不眠・不安・気分の落ち込みへの治療

ほてりや寝汗が不眠の原因なら、HRTなどで血管運動神経症状を治療すると睡眠が改善することがあります。一方、慢性不眠、うつ病、不安症、睡眠時無呼吸症候群などが重なっている場合は、それぞれの治療が必要です。

  • 睡眠習慣の調整、認知行動療法
  • カウンセリング、ストレス要因への支援
  • 症状と診断に応じた睡眠薬、抗うつ薬など
  • 精神科・心療内科・睡眠専門外来との連携

抗うつ薬の一部は、HRTを使えない方のほてりに用いられることがありますが、日本での承認・保険適用は薬剤と目的によって異なります。自己判断で服用せず、医師とご相談ください。[4]

生活でできる対策

  • 運動:無理のない有酸素運動と筋力トレーニングを続ける
  • 睡眠:起床時刻を整え、就寝前の飲酒や長時間のスマートフォンを控える
  • ほてり対策:重ね着、室温調整、携帯扇風機などを利用し、飲酒・辛い物など個人の誘因を記録する
  • 食事:極端な制限を避け、たんぱく質、カルシウム、ビタミンDを意識する
  • 禁煙:心血管・骨・がんリスクを下げるために重要
  • 体重管理:急な減量を避け、筋肉量を保つ

運動や生活調整は健康維持に重要ですが、「これだけで必ず更年期障害が治る」というものではありません。生活に支障がある場合は医療的な治療を併用します。

サプリメント・エクオール・プラセンタについて

サプリメントや健康食品は、製品ごとに成分量、品質、効果、安全性の根拠が異なります。HRTと同等の効果が確認されているわけではなく、「天然だから安全」とも限りません。薬との相互作用や、乳がんなどホルモン感受性疾患がある方への影響にも注意が必要です。

プラセンタ製剤もHRTとは異なる治療です。献血制限など製剤固有の注意点があります。使用中のものは市販品を含めて医師にお知らせください。

治療開始後の流れ

  1. 改善したい症状と治療目標を決める
  2. 少量または標準的な方法で治療を開始する
  3. 数週間~数か月で効果、副作用、出血を確認する
  4. 十分な効果がなければ、診断、量、剤形、別の原因を見直す
  5. 安定後も定期的に継続の利益とリスクを確認する

HRTは、処方された用法どおりに使用してください。つらい時だけ1~2錠飲む、自己判断で黄体ホルモンを休む、貼付量を急に増減する、といった使い方は避けてください。出血や副作用がある場合は処方医へ相談します。

更年期障害の治療についてよくある質問

Q. 更年期障害は自然に治るまで我慢するしかありませんか?

いいえ。症状が生活に影響していれば治療の対象です。HRT、漢方、局所治療、心理・睡眠治療などから希望と安全性に合う方法を選べます。

Q. HRTと漢方薬を併用できますか?

症状に応じて併用することがあります。ただし、漢方薬にも副作用や重複処方の問題があるため、すべての薬・市販品を医師にお知らせください。

Q. HRTは症状がある時だけ使ってよいですか?

自己判断での頓用は勧められません。特に子宮がある方では黄体ホルモンの用法が子宮内膜保護に重要です。処方されたスケジュールで使用してください。

Q. 治療しても改善しない場合はどうしますか?

診断、薬の量・剤形、服薬状況、甲状腺疾患・貧血・うつ病・睡眠障害など別の原因を見直し、必要に応じて他科と連携します。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年8月29日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。

参考文献

  1. The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
  2. 日本産婦人科医会.更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT).2025.
  3. 日本産婦人科医会.更年期障害に対する漢方療法.2025.
  4. The North American Menopause Society. The 2023 nonhormone therapy position statement. Menopause. 2023;30:573-590.