横浜市のHPV単独検診とは?当院510件の結果と受けるメリット

横浜市では2025年1月から、30~60歳の子宮頸がん検診に「HPV検査単独法」が導入されました。HPV検査は、子宮頸がんの原因となるハイリスクHPVへの感染を先に調べ、陽性者だけに同じ検体で細胞診を追加する方法です。細胞診より高度な前がん病変を見逃しにくく、陰性の場合は将来の発症リスクが低いことをより確かに予測できます。[1][2]

当院では2025年1月~12月に、横浜市のHPV単独検診を510件実施しました。HPV陽性は38件(7.45%)で、陽性者のうち12件(31.6%)に細胞診異常がありました。精密検査によってCIN1以上が10件見つかり、そのうち30代の1人はCIN3と診断され、子宮を残す円錐切除術につながりました。[9]

子宮頸がん検診の目的は、症状が出てからがんを見つけることではなく、できるだけ「がんになる前」の異形成段階で発見することです。特に30代は、妊娠・出産を考える時期と子宮頸がんが増える時期が重なります。症状がなくても、対象となる時期に検診を受け、陽性後の追跡を中断しないことが重要です。

 

横浜市HPV単独検診の対象・費用・間隔

年齢 横浜市の検査方法 受診間隔 自己負担額
20~29歳 子宮頸部細胞診 2年度に1回 1,360円
30~60歳 HPV検査単独法 原則、30歳から5歳刻みの節目年齢 2,000円
61歳以上 子宮頸部細胞診 2年度に1回 1,360円

HPV検査を受けるには、横浜市から届く受診券バーコードシールと本人確認書類が必要です。初回は受診日時点で30~60歳であれば受けられます。2回目以降の時期は、年齢と前回結果によって異なります。妊婦健診のクーポンを使用する30歳以上の妊婦は細胞診になります。[1]

※対象、費用、無料措置は変更されることがあります。受診時点の横浜市の案内をご確認ください。治療中・経過観察中の方は住民検診ではなく、主治医の指示による検査が必要です。

当院の2025年HPV単独検診510件の結果


2025年1月~12月の当院院内集計。CIN3の1人は円錐切除術につながりました。
集計項目 件数 割合
検査総数 510件 ―
HPV陽性 38件 全受診者の7.45%
HPV陽性かつ細胞診異常 12件 HPV陽性者の31.6%
CIN1以上を確認 10件 全受診者の2.0%
CIN2以上を確認 2件 全受診者の0.39%
CIN3を確認 1件 全受診者の0.20%

※当院の実診療における院内集計であり、査読を受けた研究ではありません。組織診はHPV陽性者全員ではなく、トリアージ細胞診で異常があった方に実施しています。そのため、上記は「検診を起点に確認された病変の割合」であり、受診者全体の真の有病率を示すものではありません。[9]

院内データから分かる4つのこと

1.約13人に1人がHPV陽性でした

510件中38件がHPV陽性で、陽性率は7.45%でした。HPV陽性は「がんがある」という意味ではなく、子宮頸がんにつながる可能性のあるハイリスクHPVが検出されたという意味です。

2.HPV陽性者の約7割は、その時点の細胞診に異常がありませんでした

HPV陽性38件のうち、細胞診異常は12件でした。言い換えると26件(68.4%)では、トリアージ細胞診に異常が確認されませんでした。これは「もう検査不要」という意味ではありません。細胞がまだ変化していない段階でリスクを把握できたと考え、横浜市の案内に従って1年後にHPV検査を受け、陰性化したか、持続感染しているかを確認します。

3.細胞診異常12件のうち、組織診で10件にCIN1以上が見つかりました

細胞診異常の内訳はLSIL 7件、ASC-US 5件でした。組織診では、異形成なし2件、CIN1 8件、CIN2 1件、CIN3 1件でした。細胞診と組織診の診断名は必ずしも一致しないため、細胞診異常だけで病変の程度を決めず、コルポスコピー・生検で確認する必要があります。

4.CIN3の1人は30代で、円錐切除術につながりました

CIN3は浸潤がんではありませんが、治療せずに経過すると一部が浸潤がんへ進む可能性がある高度な前がん病変です。この方は円錐切除術を受け、子宮を残した治療につながりました。1人の事例を全員に当てはめることはできませんが、症状のない30代で検診を受ける意義を示す例です。

HPV陽性者の半数以上が30代でした

HPV陽性者38人の年代別内訳。30代が20人で、陽性者全体の52.6%を占めました。
年代 HPV陽性件数 陽性者38人に占める割合
30代 20件 52.6%
40代 8件 21.1%
50代 7件 18.4%
60代 3件 7.9%

今回の陽性者で最も多かったのは30代でした。ただし、年代別の受診総数を分母にした集計ではないため、「30代の陽性率が最も高い」とまでは言えません。

それでも30代は、子宮頸がんが増え始める時期であり、妊娠・出産を考える時期とも重なります。妊娠してから異形成や子宮頸がんが見つかると、検査・治療の時期と妊娠管理を同時に考える必要があります。妊娠を希望する方こそ、妊娠前を含め、対象時期の検診を後回しにしないことをおすすめします。

検出されたHPV型

HPV型 検出件数
16型 7件
18型 3件
その他のハイリスク型 34件

1人から複数の型が検出される重複感染があるため、型別の件数は延べ数で、合計はHPV陽性者38人を超えます。16型・18型だけでなく、その他のハイリスク型でも異形成や子宮頸がんにつながる可能性があるため、型名だけで自己判断せず、検診結果に示された次の検査を受けることが大切です。

なぜHPV検査単独法が有効なのですか?

子宮頸がんの多くは、ハイリスクHPVの持続感染から始まります。細胞診が「すでに起きている細胞の形の変化」を見る検査であるのに対し、HPV検査はその前段階にある「発がんリスクの高いウイルス感染」を調べます。

複数の研究をまとめたCochraneレビューでは、CIN2以上を見つける感度は、代表的なHPV検査で89.9%、従来法の細胞診で62.5%、液状化細胞診で72.9%でした。一方、HPV検査は一過性感染も拾うため、細胞診より特異度が低く、不要な紹介・追加検査が増える可能性があります。[4]

つまり、HPV検査は「陽性者全員をすぐ生検する検査」ではありません。まず感度の高いHPV検査でリスクがある方を拾い、同じ検体の細胞診で精密検査が必要な方を絞り込みます。陰性の場合は高度病変を見逃す可能性が低いため、対象年齢と精度管理が守られれば、検診間隔を原則5年に延ばせます。欧州の無作為化試験をまとめた研究でも、HPV検査を基盤とした検診は細胞診より浸潤がんの予防効果が高いことが示されています。[5]

HPV検査後の流れ

HPV検査 トリアージ細胞診 横浜市の判定 次の対応
陰性 通常は実施しない 精検不要 年齢に応じて1~5年後にHPV検査
陽性 異常なし 要追跡検査 1年後にHPV検査
陽性 異常あり 要確定精検 速やかにコルポスコピー・生検など

HPV陽性・細胞診異常なしは、「異常なし」ではなく「1年後の確認が必要」という結果です。HPV検査単独法の効果は、陽性者が決められた追跡検査や精密検査を受けることで初めて得られます。

20代は、なぜHPV検査ではなく細胞診なのですか?

20代はHPVに感染する機会が比較的多い一方、その多くは一過性で、時間とともに検出されなくなります。20代全員にHPV検査を行うと、将来問題にならない感染まで多数拾い、不安や不要な再検査・コルポスコピーを増やす可能性があります。厚生労働省の検討でも、20代では一過性感染が多いことから、HPV検査単独法は30歳以降、20代は細胞診とされています。[3]

横浜市では20~29歳は2年度に1回の細胞診が対象です。細胞診は、すでに生じている細胞変化を直接確認するため、20代の検診方法として利益と不利益のバランスがよいと考えられています。

ただし、性交後出血、不正出血、血の混じったおりものなどがある場合は、年齢や検診時期にかかわらず診察が必要です。症状がある方は「次の検診」を待たず、婦人科を受診してください。

検診のメリットは、妊孕性を考えられる段階で見つけること

子宮頸がんは、HPVの持続感染からCIN1・CIN2・CIN3という異形成を経て、時間をかけて浸潤がんへ進むことが多い病気です。症状のない時期に検診を受ければ、がんになる前の異形成、またはごく早期の段階で発見できる可能性が高まります。

CIN1は直ちに手術をせず経過観察となることが多く、CIN2も年齢・妊娠希望・病変の経過などを踏まえて慎重に管理します。CIN3では円錐切除術などが検討され、子宮を残せる場合があります。ごく早期の子宮頸がんでも、条件を満たせば妊孕性温存治療が選択肢になりますが、病変が進行すると子宮摘出や放射線治療などが必要になる可能性が高まります。[6]

一方、円錐切除術などの子宮頸部治療は、将来の早産リスクを高めることがあります。[7]検診は必要な病変を早く見つけるために重要ですが、不要な治療を増やさないことも同じように大切です。そのため、HPV検査陽性だけで治療せず、細胞診・コルポスコピー・組織診を順に行って、本当に治療が必要かを判断します。

HPV検診だけでは不十分な点

  • HPV陽性だけでは、感染が一過性か持続性か、異形成があるかは確定できない
  • 陰性でも、将来の新しいHPV感染やすべての子宮頸がんを永久に否定するものではない
  • 検査には偽陰性・偽陽性があり、100%の検査ではない
  • HPV陽性後の1年後検査や精密検査を受けなければ、検診の効果が十分に得られない
  • 不正出血などの症状がある方を診断する検査ではない
  • 子宮体がん、卵巣がん、性感染症などをまとめて調べる検査ではない

検診は「受けて終わり」ではありません。結果を確認し、指定された次回時期を守るところまでが検診です。

検診を補完するのが、適切な時期のHPVワクチン接種です

ワクチンは一次予防、検診は二次予防です。どちらか一方で十分というものではありません。

HPV検診は、すでに起きている感染や細胞変化を早く見つける方法で、HPVへの感染そのものを防ぐ検査ではありません。これを補完するのがHPVワクチンです。

HPVワクチンは、ワクチンに含まれる型への新しい感染を予防します。既存のHPV感染を消したり、現在の異形成を治したりするものではないため、感染前の適切な年齢で接種するほど効果が期待できます。日本の定期接種は小学6年生~高校1年生相当の女子が対象です。[8]

ワクチンですべての発がん性HPVを防げるわけではなく、接種前に成立した感染への治療効果もありません。したがって、ワクチン接種後も対象年齢になったら検診が必要です。若い時期のワクチン接種で感染リスクを下げ、成人後の検診で前がん病変を見逃さないことが、子宮頸がん予防の二本柱です。

HPVワクチンの効果・副反応・接種回数を詳しく見る

当院で横浜市HPV単独検診を受ける流れ

  1. WEBまたは電話で子宮頸がん検診を予約する
  2. 受診券バーコードシールと本人確認書類を持参する
  3. 問診後、腟鏡を使用して子宮頸部から検体を採取する
  4. 結果を確認し、次回検診・1年後追跡検査・精密検査のいずれかへ進む

採取そのものは通常短時間で終わります。月経量が多い日は正確な検査が難しいことがあるため、可能であれば出血の多い時期を避けてご予約ください。強い痛みが心配な方、性交経験がない方、妊娠中・妊娠の可能性がある方は事前にお伝えください。

横浜市のHPV単独検診についてよくある質問

Q. HPV陽性なら、子宮頸がんですか?

いいえ。HPV陽性はハイリスクHPVが検出されたという結果で、がんや異形成の診断ではありません。同じ検体の細胞診と、その後に必要な検査で病変の有無を確認します。

Q. HPV陽性でも細胞診が正常なら、もう心配ありませんか?

「要追跡検査」にあたり、1年後のHPV検査が必要です。持続感染しているか、陰性化したかを確認するまで追跡を中断しないでください。

Q. 20代でも希望すればHPV検査を受けた方がよいですか?

平均的なリスクの20代の住民検診では、横浜市は2年度に1回の細胞診を採用しています。20代は一過性HPV感染が多く、HPV検査を一律に行うと不要な追加検査が増えるためです。過去の異常や免疫低下などがある方は、一般の検診とは別に医師へご相談ください。

Q. HPVワクチンを接種していれば検診は不要ですか?

必要です。ワクチンはすべての発がん性HPV型を防ぐわけではなく、接種前の感染を治療するものでもありません。接種歴にかかわらず、対象年齢と検査間隔に従って検診を受けます。

Q. 30代で妊娠を希望しています。検診は妊娠後でもよいですか?

妊娠前に対象となる検診を済ませておくと、異常が見つかった場合の精密検査や治療時期を落ち着いて相談できます。すでに妊娠している方は、妊婦健診の案内に従って細胞診を受けてください。

Q. 不正出血がありますが、市の検診を予約すればよいですか?

不正出血、性交後出血、血の混じったおりものなどがある場合は、無症状者向けの検診ではなく婦人科診察を受けてください。症状に応じて保険診療で必要な検査を行います。

横浜駅近くでHPV単独検診をご希望の方へ

横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~は、横浜市子宮頸がん検診の実施医療機関です。女性医師が検査を行い、HPV陽性後の追跡検査、コルポスコピー・組織診にも対応しています。専門医療機関での治療が必要な場合は、結果に応じてご紹介します。

WEB予約・予約方法はこちら
お電話でのご予約:045-440-5577

この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年10月2日。本ページは一般的な医療情報と当院の院内集計であり、個別の診断・検査・治療方針に代わるものではありません。横浜市の制度・費用は変更される場合があります。

参考文献・集計資料

  1. 横浜市.子宮頸がん検診 HPV検査.2026年9月11日更新.
  2. 国立がん研究センターがん対策研究所.HPV検査単独法による子宮頸がん検診.2026年4月1日更新.
  3. 厚生労働省.第32回がん検診のあり方に関する検討会 議事録.
  4. Koliopoulos G, et al. Cytology versus HPV testing for cervical cancer screening in the general population. Cochrane Database Syst Rev. 2017;8:CD008587. PMC.
  5. Ronco G, et al. Efficacy of HPV-based screening for prevention of invasive cervical cancer: follow-up of four European randomised controlled trials. Lancet. 2014;383:524-532. PubMed.
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス.子宮頸がん 治療.
  7. Kyrgiou M, et al. Adverse obstetric outcomes after local treatment for cervical preinvasive and early invasive disease. BMJ. 2016;354:i3633. PubMed.
  8. 厚生労働省.HPVワクチン.
  9. ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~.2025年1月~12月 横浜市HPV検査単独法 院内集計(検査総数510件).