プラセンタ注射は更年期に効く?効果・副作用と献血の新基準

 

【2026年10月から献血基準が変わりました】

 
プラセンタ注射を受けた方も、最終投与日から3か月を経過すれば献血できるようになりました。

以前は、メルスモンやラエンネックを一度でも注射した方は、期間を定めず献血をご遠慮いただく扱いでした。2026年10月1日からこの基準が変更され、最終使用日から3か月経過後は献血可能となりました。[3][4]

※ほかの病気、服用薬、渡航歴、当日の体調などによって献血できない場合があります。最終的な可否は献血当日の問診と健診医の判断になります。

プラセンタ注射のうち「メルスモン」は、日本で更年期障害に対する効能・効果が承認されている医療用医薬品です。ほてり、発汗、冷え、不眠、疲労感、肩こり、頭痛、イライラなどの更年期症状が軽くなる方がいます。

ただし、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。また、プラセンタ注射は女性ホルモンそのものを補うホルモン補充療法(HRT)ではなく、骨粗しょう症や腟の萎縮などを予防する効果がHRTと同じように確認されているわけでもありません。

 
 

プラセンタ注射とは

医療用のプラセンタ注射は、ヒトの胎盤を原料として製造された医薬品です。更年期障害に使用するメルスモンには、ヒト胎盤由来の胎盤絨毛分解物が含まれています。[1]

「プラセンタ=胎盤ホルモン」と説明されることがありますが、メルスモンはエストロゲンやプロゲステロンを補充するホルモン剤ではありません。ヒト胎盤由来のアミノ酸など複数の微量成分を含む製剤で、詳しい作用機序はまだ十分には解明されていません。

したがって、プラセンタ注射とHRTは異なる治療です。プラセンタを使用しているからといって、HRTと同じように女性ホルモンを補えているわけではありません。

 

メルスモンとラエンネックの違い

製剤 国内で承認されている効能・効果 更年期障害への保険適用
メルスモン 更年期障害、乳汁分泌不全 診断・保険上の条件を満たす場合に適用
ラエンネック 慢性肝疾患における肝機能の改善 更年期障害には保険適用されない

更年期障害の治療として保険適用になるプラセンタ注射はメルスモンです。ラエンネックにもヒト胎盤由来成分が含まれますが、承認されている治療目的が異なります。[4]

美容、アンチエイジング、単なる疲労回復などを目的とした使用は、更年期障害に対する保険診療とは異なり、原則として自費診療になります。

プラセンタ注射で改善が期待できる更年期症状

更年期障害では、卵巣機能の低下だけでなく、自律神経の変化、睡眠、心理的ストレス、生活環境などが重なり、さまざまな症状が現れます。

メルスモンの投与によって、次のような症状が軽くなる方がいます。

  • ほてり、のぼせ、発汗
  • 冷え
  • 疲労感、だるさ
  • 不眠、眠りの浅さ
  • イライラ、気分の不安定さ
  • 頭痛、肩こり、腰痛

電子添文には、更年期障害患者31人に2週間で6回投与した国内試験で、24人に改善が認められたと記載されています。[1]

また、108人を対象とした無作為化二重盲検比較試験でも、4週間のヒト胎盤エキス投与によって、更年期症状を評価する指標がプラセボより改善しました。[2]

一方、これらは比較的小規模かつ短期間の研究です。どの症状に、どのくらいの頻度で、何年間投与するのが最適か、長期間使用した場合の効果や安全性については、十分に確立していない部分があります。

プラセンタ注射で「できること」と「できないこと」

期待できること 同じ効果が確認されていないこと
更年期に伴う複数の自覚症状を軽くする 低下した女性ホルモンを直接補う
疲労感、ほてり、睡眠などが改善する可能性 骨粗しょう症を予防・治療する
HRTを希望しない場合の選択肢の一つ 腟の萎縮や性交痛を確実に改善する
HRTや漢方薬と異なる方法で症状に対応する 心血管疾患や認知症を予防する

プラセンタ注射は、「更年期に必要な治療をすべて代わりに行える注射」ではありません。

特に、強いほてり・発汗・寝汗、腟の乾燥、骨量低下などがある場合は、HRTや腟用エストロゲン、骨粗しょう症治療など、症状と目的に合った治療を検討する必要があります。

プラセンタ・HRT・漢方薬の違い

治療 特徴 向いていることが多い方
プラセンタ注射 ヒト胎盤由来成分を皮下注射する。ホルモン剤ではない 複数の更年期症状があり、注射による治療を希望する方
ホルモン補充療法(HRT) 低下・変動するエストロゲンを補う。ほてり・発汗・寝汗への効果が高い 血管運動神経症状、腟症状、骨量低下などがある方
漢方薬 冷え、のぼせ、むくみ、精神症状など、症状と体質に合わせて選ぶ 症状が多彩な方、HRTを希望しない・使用しにくい方

どの治療が最も適しているかは、改善したい症状、年齢、閉経からの期間、子宮や乳房の病気、血栓症リスク、通院のしやすさなどによって異なります。

プラセンタ注射、HRT、漢方薬を状況に応じて併用することもありますが、治療を重ねれば必ず効果が強くなるわけではありません。一定期間ごとに効果を評価し、必要性を見直します。

プラセンタ注射は何回受ければよいですか?

メルスモンの電子添文上の用法・用量は、通常、1日1回2mLを毎日または隔日に皮下注射する方法です。[1]

実際の投与頻度は、症状、効果、通院可能な頻度などを確認して決めます。数回で変化を感じる方もいれば、十分な改善が得られない方もいます。

漫然と続けるのではなく、開始前に「どの症状を改善したいか」を決め、数週間から数か月ごとに次の点を確認します。

  • ほてり、発汗、睡眠、疲労感などが改善したか
  • 日常生活や仕事への支障が減ったか
  • 注射による痛みや副作用が負担になっていないか
  • ほかの治療へ切り替えた方がよくないか

効果が感じられない場合は、更年期以外の原因や、治療方法そのものを見直します。

「更年期だと思っていたら別の病気」ということもあります

疲労感、動悸、発汗、不眠、気分の落ち込みなどは、更年期障害だけに起こる症状ではありません。

必要に応じて、次のような病気が隠れていないか確認します。

  • 甲状腺機能異常
  • 貧血
  • 糖尿病
  • 高血圧、不整脈などの循環器疾患
  • うつ病、不安症、睡眠障害
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 婦人科疾患や悪性疾患

プラセンタ注射を続けていても症状が改善しない場合は、注射の回数だけを増やすのではなく、診断を見直すことが大切です。

プラセンタ注射の副作用と注意点

メルスモンで報告されている主な副作用には、次のものがあります。

  • 注射部位の痛み、赤み
  • 悪寒、吐き気、発熱
  • 発疹、かゆみなどの過敏症
  • まれな重いアレルギー反応・ショック

これまでにメルスモンから変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)などが伝播したという報告はありません。

原料となる胎盤には、提供者の問診や感染症検査が行われ、製造工程でも加熱・高圧蒸気滅菌などの安全対策が実施されています。しかし、ヒト胎盤を原料とする特定生物由来製品である以上、未知の感染症を含めた感染伝播リスクを完全にゼロとは言い切れません。[1]

2026年10月に献血基準が変わったことは、感染症の理論的リスクが完全に消失したという意味ではありません。国内外のvCJD発生状況やリスク評価を踏まえて、献血制限の取り扱いが見直されたものです。

2026年10月から、投与終了3か月後に献血可能になりました

時期 プラセンタ注射後の献血
2026年9月30日まで 使用歴がある方は、期間を定めず原則として献血を見合わせ
2026年10月1日から 最終使用日から3か月間は献血を見合わせ、3か月経過後は献血可能

対象となる国内承認製剤は、次の2種類です。

  • メルスモン
  • ラエンネック

継続して定期的に注射している場合は、最後に注射した日から3か月経過するまで献血できません。献血を予定している方は、最終投与日を記録しておき、献血受付時の問診でプラセンタ注射歴を申告してください。

なお、プラセンタ配合のサプリメント、ドリンク、化粧品は、もともとこの献血制限の対象ではありません。

一方、美容目的で使用されるヒト幹細胞培養上清液や胎盤由来コラーゲン製剤は、今回の基準変更の対象外です。日本赤十字社は、これらを使用した方については、従来どおり献血をご遠慮いただくと案内しています。[3]

プラセンタ注射は保険適用になりますか?

メルスモンは、更年期障害と診断され、保険診療上の条件を満たす場合に保険適用となります。

単なる疲労回復、美肌、アンチエイジングなどを目的とした注射は、更年期障害の保険診療には該当しません。「更年期の年齢だから自動的に保険になる」というものでもなく、症状や診断を確認したうえで判断します。

なお、美容やアンチエイジングに対する効果は、医薬品として承認された効能・効果ではありません。目的、期待できる効果、費用、継続期間を確認したうえで検討してください。

プラセンタ注射についてよくある質問

Q. プラセンタ注射は女性ホルモンですか?

いいえ。ヒト胎盤由来成分を含む医薬品ですが、エストロゲンやプロゲステロンを補充するHRTとは異なります。

Q. ほてりや発汗に必ず効きますか?

改善する方はいますが、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。強いほてりや寝汗にはHRTの方が適することもあります。

Q. プラセンタ注射を受けると、もう献血できないのですか?

2026年10月1日から基準が変わり、メルスモンまたはラエンネックの最終投与日から3か月経過後は献血可能となりました。ただし、ほかの献血基準と当日の健診医の判断も適用されます。

Q. 注射を継続しながら献血できますか?

最後の注射から3か月経過する必要があるため、継続して定期的に注射している間は献血できません。献血を希望する場合は、治療を中断してよいか主治医と相談してください。

Q. プラセンタ注射で骨粗しょう症を予防できますか?

骨粗しょう症の予防・治療効果は確立していません。骨量低下がある場合は、骨密度検査やHRT、骨粗しょう症治療薬などを別に検討します。

Q. HRTとプラセンタ注射を併用できますか?

症状や治療目的によって併用することはあります。ただし、併用による必要性と効果を定期的に確認し、漫然と治療を増やさないことが大切です。

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プラセンタ注射だけでなく、HRT、漢方薬、生活調整などを比較し、症状とご希望に合う治療をご提案します。プラセンタ注射を希望される場合も、まず更年期以外の病気が隠れていないかを確認します。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年10月31日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・治療・献血可否の判断に代わるものではありません。献血基準は変更されることがあるため、献血時には日本赤十字社の最新情報をご確認ください。

参考文献

  1. PMDA.メルスモン 医療用医薬品情報・電子添文.2023年12月改訂.
  2. Lee YK, et al. Efficacy and safety of human placenta extract in alleviating climacteric symptoms: prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Obstet Gynaecol Res. 2009;35:1096-1101. PubMed.
  3. 日本赤十字社.英国を含む欧州等滞在歴に基づく献血制限の撤廃およびヒト胎盤エキス注射剤使用歴に関する献血基準の変更.2026年10月1日施行.
  4. 厚生労働省.欧州等滞在歴及びヒト胎盤エキス注射剤使用歴に係る献血制限の見直しについてのQ&A.2026年10月.