月経前症候群(PMS)

PMS(月経前症候群)とは?症状・PMDDとの違い・治療

PMS(月経前症候群)は、月経前に心身の症状が繰り返し現れ、月経が始まると軽くなる病気です。イライラや気分の落ち込みだけでなく、眠気、集中力低下、頭痛、乳房の張り、むくみ、腹部膨満感など、症状は人によって異なります。症状によって仕事・学校・家事・人間関係に支障が出る場合は、我慢せず治療を検討できます。[1]

PMSは「本人の性格」や「我慢不足」ではありません。また、単純に女性ホルモンが多い・少ないために起こるとも限りません。症状の出る時期を記録し、PMDD(月経前不快気分障害)、PME(月経前増悪)、身体・精神疾患などと区別したうえで、症状と希望に合う治療を選びます。

 

PMS(月経前症候群)とは

日本産科婦人科学会では、PMSを「月経前3~10日の黄体期に続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに減弱あるいは消失するもの」としています。[1]実際の症状開始日は個人差があり、月経前の約1~2週間に現れることもあります。

月経前に多少の体調変化があっても、日常生活への影響がほとんどなければ治療を必要としないこともあります。症状の数よりも、毎月同じ時期に繰り返すか、月経後に軽くなるか、生活にどの程度影響するかが大切です。

PMSの主な症状

種類 主な症状
気分・こころ イライラ、怒りっぽさ、気分の落ち込み、不安、涙もろさ、気分の波
思考・行動 集中しにくい、意欲低下、人との関わりを避ける、過食、食欲の変化
睡眠・全身 眠気、不眠、疲れ、だるさ、むくみ、体重増加感
痛み・身体 頭痛、乳房の張り、腹部膨満感、腰痛、関節痛、肌荒れ

頭痛や腹痛が強い場合は、月経関連片頭痛、子宮内膜症、月経困難症などが重なっていることがあります。すべてをPMSだけで説明せず、症状に応じて評価します。

PMS・PMDD・PMEの違い

状態 症状の特徴 診断・治療のポイント
PMS 月経前に身体・精神症状が現れ、月経開始後に軽くなる 症状記録と生活への影響を確認し、主症状に合う治療を選ぶ
PMDD 抑うつ、不安、気分の波、強いイライラなど精神症状が目立ち、仕事・学校・人間関係への影響が大きい 厳密な診断基準があり、SSRI、OC・LEP、心理療法、精神科連携などを検討
PME(月経前増悪) うつ病、不安症、双極症、ADHD、片頭痛などの症状が月経周期を通してあり、月経前にさらに悪化する もともとの病気の治療と月経周期への対応を並行して行う

月経後も症状が続くからといって、「月経と無関係」とは限りません。PMEや、PMS・PMDDと別の病気の併存もあります。特に双極症を見落として抗うつ薬を開始すると症状が不安定になることがあるため、躁状態・軽躁状態の経験も確認します。[2]

PMSの原因はホルモンバランスの乱れ?

PMS・PMDDの原因は完全には解明されていません。多くの方ではホルモン値そのものに明らかな異常があるのではなく、排卵後に起こる正常なエストロゲン・プロゲステロンの変動と、その代謝物に脳や体が強く反応することが関係すると考えられています。セロトニンやGABAなどの神経伝達系も関与します。

「プロゲステロンだけが悪い」「ホルモンを測れば原因が分かる」という単純な病態ではありません。睡眠不足、ストレス、痛み、生活環境は症状を増幅することがありますが、ストレスだけが原因でもありません。

PMS・PMDDはどう診断しますか?

PMSを確定する血液検査やホルモン検査はありません。診断の中心は、月経周期と症状を毎日記録することです。原則として少なくとも2周期、症状の種類・強さ・生活への影響・月経日を前向きに記録します。[3]

問診では、月経周期、妊娠の可能性、使用中の薬、甲状腺疾患、貧血、片頭痛、子宮内膜症、うつ病・不安症・双極症・発達特性などを確認します。必要な場合だけ、血液検査、超音波検査、心理検査などを追加します。

PMS・PMDDの診断基準、症状記録、検査について詳しく見る

PMS・PMDDの治療

治療は、最も困っている症状、生活への影響、妊娠希望、月経痛・過多月経の有無、片頭痛、血栓症リスクなどから選びます。一つの方法で改善しない場合も、治療法や薬の種類を変更・併用できます。[4]

  • 症状記録・生活調整:睡眠、運動、食事、カフェイン・アルコール、仕事量を見直す
  • 認知行動療法・心理的支援:症状への対処と生活への影響を減らす
  • OC・LEP:排卵を抑え、周期的なホルモン変動を小さくする
  • SSRI:精神症状が強いPMS・PMDDで、連日または黄体期のみ使用する
  • 対症療法:頭痛・腹痛には鎮痛薬など、主症状に応じた治療
  • 漢方薬:症状と体質を確認して選択する
  • 専門治療:難治例ではGnRHアゴニストなどを専門医が検討する

ドロスピレノンを含む配合薬にはPMDDを中心とした研究がありますが、全員の精神症状に同じ効果があるわけではありません。また、日本ではPMS・PMDDそのものに対するOC・LEPやSSRIは保険適用外で、月経困難症など併存する病気への処方では保険診療となる場合があります。[5]

低用量ピル・LEP、SSRI、漢方薬など治療法の選び方を見る

PMSで婦人科を受診する目安

  • 毎月、仕事・学校・家事を休むほどつらい
  • 家族・パートナー・職場との関係に影響している
  • 気分の落ち込み、不安、イライラを自分で制御しにくい
  • 月経痛、過多月経、頭痛、不正出血もある
  • セルフケアで改善しない
  • PMDDではないか心配

死にたい気持ち、自傷したい気持ち、他人を傷つけそうな感覚、幻覚・妄想、眠らなくても活動できるほどの高揚がある場合は、月経時期にかかわらず緊急の評価が必要です。一人にならず、身近な方に伝え、119番または救急医療機関へ連絡してください。日本産婦人科医会も、希死念慮や重大な生活障害がある場合の早期専門科連携を勧めています。[2]

思春期・更年期にもPMSはありますか?

思春期

排卵を伴う月経が始まると、10代でもPMS・PMDDは起こります。欠席、成績低下、部活動への影響、家族との衝突なども重要な生活障害です。診断のために内診が必須というわけではなく、症状記録と問診を中心に評価できます。

更年期移行期

月経周期が不規則になる時期には、PMSに似た気分変化、ほてり、睡眠障害が起こることがあります。もともとのPMS・PMDD、PME、更年期症状、うつ病・不安症などを区別し、年齢、喫煙、片頭痛、血栓症リスクを考慮して治療を選びます。

PMSについてよくある質問

Q. 生理前にイライラすればPMSですか?

イライラだけでは診断できません。月経前に繰り返し、月経後に軽くなるか、生活にどの程度影響するかを確認します。月経周期を通して症状がある場合はPMEや別の病気も検討します。

Q. PMSとPMDDの違いは何ですか?

PMDDは、抑うつ、不安、気分の波、強いイライラなどが目立ち、仕事・学校・人間関係への影響が大きい月経前の病態です。症状数や時期を含む厳密な診断基準があります。

Q. ホルモン検査でPMSと分かりますか?

特定のホルモン値だけでPMSを診断することはできません。診断の中心は少なくとも2周期の症状記録です。別の病気が疑われる時は、甲状腺機能や貧血などの検査を行います。

Q. PMSは何科を受診すればよいですか?

月経周期との関連、月経痛、過多月経などがあれば婦人科へご相談ください。精神症状が強い場合や月経後も続く場合は、心療内科・精神科と連携して診療することがあります。

Q. PMSはピルを飲めば必ず治りますか?

必ずではありません。OC・LEPで改善する方がいる一方、PMDDの精神症状にはSSRIや心理療法が合うこともあります。安全性と主症状を確認して選びます。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年9月7日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会.月経前症候群・月経前不快気分障害(PMS・PMDD)に対する診断・治療指針.2025.
  2. 日本産婦人科医会.PMS/PMDDの専門科へのコンサルトのタイミングは?.2026.
  3. Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. Managing premenstrual syndrome (PMS).
  4. American College of Obstetricians and Gynecologists. Management of Premenstrual Disorders. 2023.
  5. Ma S, et al. Oral contraceptives containing drospirenone for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2023;6:CD006586. PubMed

日付:2026年9月7日  カテゴリー:婦人科の病気,月経前症候群(PMS)

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PMS・PMDDの診断と検査|症状記録とPMEとの違い

PMS・PMDDの診断で最も重要なのは、月経周期と症状を毎日記録することです。症状を確認できる血液検査やホルモン検査はなく、原則として少なくとも2周期、症状の種類・強さ・生活への影響を前向きに記録します。[1][2]

「生理前にイライラする」という記憶だけでは、PMS・PMDD、もともとの病気が月経前に悪化するPME、月経と関係なく続く心身の病気を正確に区別できません。診断名を急ぐより、症状の時間的なパターンと危険な症状の有無を確認することが大切です。

 

PMSと診断する時に確認するパターン

  • 症状が排卵後から月経前に現れる、または明らかに強くなる
  • 月経が始まると数日以内に軽くなる
  • 月経後から次の排卵までに、症状がほとんどない・明らかに軽い期間がある
  • 同じパターンが複数の月経周期で繰り返される
  • 仕事、学校、家事、対人関係などに影響している
  • 薬、アルコール・カフェイン、別の身体・精神疾患だけでは説明できない

日本産科婦人科学会では、月経前3~10日に続く精神・身体症状が月経開始とともに軽くなるものをPMSと定義しています。症状が出る日数には個人差があります。[1]

PMDDの診断で確認すること

PMDDは、月経前の精神症状と生活障害が特に強い病態で、PMSより厳密な診断基準を用います。主に次の点を確認します。

  • 多くの月経周期で、月経前の最終週に症状が強くなる
  • 月経開始後数日以内に軽くなり、月経後の週には最小限になる
  • 抑うつ気分、不安、気分の不安定さ、強いイライラ・怒りのうち少なくとも一つがある
  • 身体症状や意欲・集中力・睡眠・食欲の変化などを含め、合計5項目以上の症状がある
  • 仕事、学校、社会活動、家族・パートナーとの関係に明らかな支障がある
  • 別の精神疾患の単なる悪化ではない
  • 正式な確認では、原則として2周期以上の日々の記録で症状パターンを確かめる

「症状が5つあれば自動的にPMDD」というわけではありません。時期、重症度、生活への影響、別の病気の可能性を合わせて医師が判断します。[3]

PME(月経前増悪)との違い

PMEは、もともとある病気や特性の症状が月経前に悪化する状態です。月経後にも症状が残ることが多く、PMS・PMDDとは治療の優先順位が異なります。

症状の経過 考える状態 対応
月経前だけ症状が現れ、月経後はほぼ元に戻る PMS・PMDD 月経前症状を中心に治療
症状は周期を通してあり、月経前にさらに悪化する PME 基礎疾患の治療と月経周期への対応を並行
月経との一定した関係がない 身体・精神疾患、睡眠、薬剤、環境要因など 症状に応じた診療科で評価

PMEを起こし得る病気には、うつ病、不安症、双極症、ADHD、片頭痛、てんかん、過敏性腸症候群などがあります。PMS・PMDDとこれらの病気が併存する場合もあります。[4]

症状日記は何を記録しますか?

受診前から記録できる場合は、月経開始日を1日目として、毎日同じ時間帯に次の項目を書きます。アプリでも紙でも構いません。

記録項目 記録例
月経 出血なし・少量・中等量・多量
精神症状 落ち込み、不安、イライラ、気分の波、集中力低下
身体症状 頭痛、乳房痛、むくみ、腹部膨満、眠気、疲労
強さ 0=なし、1=軽い、2=中等度、3=強い
生活への影響 欠勤・欠席、家事、勉強、対人関係への影響
関連事項 睡眠時間、服薬、飲酒、強いストレス、頭痛薬の使用

DRSP(Daily Record of Severity of Problems)などの評価票を使うこともあります。記録は診断だけでなく、治療開始後に本当に症状が改善したか確認するためにも役立ちます。

血液検査・ホルモン検査・内診は必要ですか?

PMS・PMDDだけを診断するための血液検査、ホルモン検査、超音波検査はありません。症状から別の病気が疑われる場合に、必要な検査を追加します。

症状・状況 検討する確認・検査
月経が遅れている、妊娠の可能性 妊娠反応
強い疲労、息切れ、過多月経 血算、鉄欠乏の評価
動悸、体重変化、暑がり・寒がり 甲状腺機能など
強い月経痛、性交痛、骨盤痛 婦人科診察、超音波検査など
不正出血、月経不順 妊娠、貧血、ホルモン関連検査、超音波検査など
抑うつ、躁状態、不安、発達特性 精神症状の評価、必要に応じて専門科へ相談

症状がPMS・PMDDに典型的で、月経痛・不正出血などがなければ、初診時に内診を行わないこともあります。年齢、性交経験、症状、治療方法に応じて必要性をご説明します。

初診では何を伝えればよいですか?

  • 最終月経と普段の月経周期
  • 困っている症状と、始まる日・軽くなる日
  • 仕事・学校・家事・人間関係への影響
  • 自傷や希死念慮、過去の精神科治療
  • 頭痛の種類、前兆を伴う片頭痛の有無
  • 現在の薬・サプリメント、喫煙、持病
  • 妊娠希望と避妊の希望

症状日記が完成するまで受診を待つ必要はありません。強い症状がある場合は先に受診し、診察と並行して記録を始めます。

精神科・心療内科と連携する目安

  • 死にたい気持ち、自傷行為がある
  • 精神症状で仕事・学校へ行けない、家庭生活を保てない
  • 症状が月経後も強く続く
  • 躁状態・軽躁状態、幻覚、妄想、解離症状が疑われる
  • SSRIを使用しても改善しない、または副作用・症状悪化がある

婦人科から精神科へ紹介することは、治療を手放すことではありません。月経管理は婦人科、精神症状の評価・薬剤調整は精神科という形で、並行して診療できます。[4]

今すぐ自分や他人を傷つける可能性がある場合は、一人にならず、119番または救急医療機関へ連絡してください。

PMS・PMDDの診断についてよくある質問

Q. 症状日記を2周期つけないと受診できませんか?

受診できます。まず現在の症状と危険性を評価し、必要な治療を相談しながら記録を始めます。正式な診断の確認には、原則として2周期以上の前向きな記録が役立ちます。

Q. 生理が不規則でもPMSを診断できますか?

診断できますが、排卵や月経との関係を確認しにくいことがあります。出血日だけでなく毎日の症状を記録し、妊娠、甲状腺疾患、PCOS、更年期移行期など月経不順の原因も調べます。

Q. ホルモン値が正常ならPMSではありませんか?

ホルモン値が正常でもPMS・PMDDは起こります。正常な周期変動に対する脳や体の感受性が関係すると考えられており、診断は症状の周期性を中心に行います。

Q. PMDDのセルフチェックだけで診断できますか?

セルフチェックは受診の目安にはなりますが、確定診断ではありません。症状の時期、生活への影響、PMEや別の精神疾患の可能性を医師が確認します。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年9月6日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・検査に代わるものではありません。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会.月経前症候群・月経前不快気分障害(PMS・PMDD)に対する診断・治療指針.2025.
  2. Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. Managing premenstrual syndrome (PMS).
  3. American College of Obstetricians and Gynecologists. What I Wish Everyone Knew About Premenstrual Dysphoric Disorder.
  4. 日本産婦人科医会.PMS/PMDDの専門科へのコンサルトのタイミングは?.2026.
  5. Yoshimi K, et al. Practical diagnosis and treatment of premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder by psychiatrists and obstetricians/gynecologists in Japan. PCN Rep. 2024;3:e234. PubMed

日付:2026年9月6日  カテゴリー:婦人科の病気,月経前症候群(PMS)

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PMS・PMDDの治療|ピル・SSRI・漢方の選び方

PMS・PMDDの治療は、最も困っている症状と重症度に合わせて選びます。月経痛や過多月経もある方、精神症状が中心の方、妊娠を希望する方では、適した治療が異なります。治療の柱は、症状記録と生活調整、OC・LEPなどのホルモン療法、SSRI、認知行動療法、症状ごとの薬、漢方薬です。[1][2]

一つの方法で十分に改善しなくても、診断を見直し、薬の種類・飲み方を変更したり、婦人科と心療内科・精神科が連携したりすることで治療を続けられます。

 

治療を選ぶ時に確認すること

  • 主な症状が身体症状か、精神症状か
  • 仕事・学校・家事・人間関係への影響
  • PMS、PMDD、PMEのどれが考えられるか
  • 月経痛、過多月経、片頭痛、子宮内膜症などの併存
  • 妊娠希望と避妊の希望
  • 喫煙、血栓症、高血圧、前兆のある片頭痛などホルモン剤のリスク
  • うつ病、双極症、不安症、ADHDなどの治療歴

治療前と開始後も症状日記を続けると、「何となく楽になった」だけでなく、症状、生活障害、副作用の変化を比較できます。

PMS・PMDDの主な治療法を比較

治療 向いていることが多い症状・状況 主な注意点
生活調整・運動 軽症から重症まで治療の土台として これだけで改善しない場合もあり、本人の努力不足とは考えない
認知行動療法(CBT) 気分症状、ストレス、症状による生活障害への対処 効果を感じるまで時間が必要なことがある
OC・LEP 月経痛・過多月経を伴う、排卵を抑えたい、避妊も希望 エストロゲン含有製剤では血栓症などの適否確認が必要
SSRI イライラ、落ち込み、不安など精神症状が強いPMS・PMDD 吐き気、不眠、眠気、性機能への影響、開始時の焦燥、急な中止による離脱症状
対症療法 頭痛、腹痛、乳房痛など特定の身体症状 月経前症状全体への効果は限定的
漢方薬 複数の身体・精神症状があり、漢方を希望する 体質・症状に合わせる。副作用や他薬との併用に注意
GnRHアゴニスト等 他の治療で改善しない重症例 更年期症状・骨量低下があり、専門的な管理が必要

症状記録・生活習慣の調整

睡眠不足、過度な飲酒、カフェイン、食事の乱れ、強いストレスが症状を悪化させている場合は、調整により負担が軽くなることがあります。無理のない範囲で、次の方法を試します。

  • 起床・就寝時刻をできるだけ一定にする
  • ウォーキングなど続けられる有酸素運動を行う
  • 食事を極端に抜かず、月経前の過食・飲酒・カフェインとの関係を記録する
  • 症状が強くなる時期は、重要な予定を詰めすぎない
  • 家族や職場・学校と、必要な配慮を具体的に相談する

生活調整だけで治らないからといって、努力が足りないわけではありません。生活への影響が大きい場合は、薬物療法や心理療法を早めに組み合わせます。

認知行動療法・カウンセリング

認知行動療法(CBT)は、症状が強い時の考え方・行動のパターンを整理し、ストレスや対人関係、仕事への影響を減らす治療です。「症状は気の持ちよう」という意味ではなく、身体症状や薬物療法と並行して使える方法です。

うつ病、不安症、トラウマ、発達特性、対人関係の問題が重なっている場合は、心理職や心療内科・精神科との連携が役立ちます。[2]

低用量ピル・OC・LEPによる治療

OC・LEPは排卵を抑え、周期的なホルモン変動を小さくします。月経痛や過多月経を伴う方、避妊も希望する方では選択しやすい治療です。ドロスピレノンと低用量エストロゲンを含む配合薬には、PMDDを中心とした研究で月経前症状と生活機能障害を改善する可能性が示されています。[3]

ただし、すべてのピルに同じ根拠があるわけではなく、全員の精神症状が改善するとも限りません。連続・延長投与で休薬回数を減らす方法が合う方もいますが、周期投与よりすべての症状に優れるとは断定できません。

日本で承認されているドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合LEPの効能は月経困難症であり、PMS・PMDDそのものを効能とする薬ではありません。保険適用は診断・処方目的・製剤によって異なります。[4]

処方前に確認する主な項目

  • 血栓症の既往・家族歴
  • 前兆のある片頭痛
  • 喫煙、年齢、血圧、肥満
  • 手術予定や長期間動けない状態
  • 乳がん・肝疾患などの既往
  • 妊娠の可能性

服用中に片脚の痛み・腫れ、突然の息苦しさ・胸痛、激しい頭痛、視覚・言語の異常などがあれば、服用を中止して緊急に受診してください。

黄体ホルモン剤・ミレーナはPMSに効きますか?

黄体ホルモン単剤は、製剤によって排卵抑制の程度が異なり、PMS・PMDDへの効果が十分確立していないものもあります。気分変化を感じる方もいるため、開始後の記録が大切です。

ミレーナは生理痛・過多月経には有効ですが、多くの方で排卵が続くため、PMS・PMDDの第一選択とは限りません。出血や痛みが軽くなることで間接的に負担が減ることはあります。ミレーナの効果・デメリットを詳しく見る

SSRIによる治療

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、精神症状が強いPMS・PMDDの主要な治療です。研究では、PMS・PMDDの症状を減らす効果が示され、月経周期を通して毎日服用する方法は、黄体期だけ服用する方法より効果が大きい可能性があります。[5]

一方、黄体期のみ、または症状が始まる時期から服用する方法が合う方もいます。月経周期が不規則な方、PMEが疑われる方、うつ病・不安症を併存する方では、連日服用を選ぶことがあります。

SSRIを使う時の注意

  • 吐き気、下痢、頭痛、眠気、不眠、性欲低下などが起こることがある
  • 開始直後や増量時に、焦燥・不安・希死念慮が強くなることがある
  • 双極症が隠れている場合は、躁状態を誘発する可能性がある
  • 自己判断で急に中止すると、めまいなどの離脱症状が出ることがある
  • 妊娠希望・妊娠中は、利益とリスクを個別に検討する

日本では、PMS・PMDDそのものを効能として承認されたSSRIはなく、PMS・PMDDへの処方は適応外使用・保険適用外となります。精神症状が重い場合、効果が乏しい場合、副作用がある場合は心療内科・精神科と連携します。日本産婦人科医会は、黄体期のみの投与と周期を通した投与の両方を選択肢としています。[6]

頭痛・腹痛・むくみなどへの対症療法

頭痛、腹痛、腰痛、乳房痛には鎮痛薬を使用することがあります。月経関連片頭痛では、一般的な鎮痛薬だけでなく片頭痛の治療が必要です。前兆のある片頭痛ではエストロゲンを含む配合薬を使用できません。

むくみが強い方に利尿薬を検討することもありますが、電解質異常や血圧への影響があるため自己判断では使用しません。症状だけを一時的に抑える治療であり、PMS・PMDD全体の治療とは分けて考えます。

漢方薬・サプリメント・ハーブ

漢方薬は、イライラ、気分の落ち込み、むくみ、冷え、頭痛など、症状の組み合わせや体質をみて選びます。漢方薬にも肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症などの副作用があり、他の漢方薬との成分重複にも注意が必要です。

カルシウム、ビタミン類、チェストベリーなどは研究されていますが、効果の確実性、適量、製品品質は一定ではありません。高用量のビタミンB6は末梢神経障害の原因になり得ます。セントジョーンズワートは、ピル、抗うつ薬など多くの薬と相互作用するため、自己判断で併用しないでください。

「天然」「オーガニック」であれば安全とは限りません。使用中のサプリメント・ハーブは、商品名と含有量が分かるものを診察時にお持ちください。

治療しても改善しない場合

次の点を見直します。

  1. 症状記録から、本当に月経前に限った症状か確認する
  2. PME、双極症、甲状腺疾患、貧血、片頭痛、子宮内膜症などを再評価する
  3. 薬の飲み方、期間、副作用、飲み忘れを確認する
  4. OC・LEPの種類変更、SSRI、心理療法、併科診療を検討する
  5. 難治性の重症例では、専門医がGnRHアゴニスト等を検討する

GnRHアゴニストは卵巣機能を一時的に抑えますが、更年期症状や骨量低下を起こすため、一般的な第一選択ではありません。手術は極めて例外的な選択で、十分な診断・治療と専門的評価なしに行うものではありません。[2]

妊娠希望・思春期の治療

妊娠を希望する方

妊娠を目指している時期は、排卵を抑えるOC・LEPは使いません。症状記録、生活調整、心理療法、症状ごとの薬を中心に、必要に応じて妊娠中の安全性も考えて薬を選びます。服用中のSSRIを妊娠が分かった時に自己判断で急に中止せず、処方医へご相談ください。

思春期

学校生活への影響、自傷・希死念慮、月経痛・過多月経を確認します。OC・LEPやSSRIを使う場合は、本人に目的と副作用を説明し、開始後の気分変化を丁寧に確認します。診断や相談のために内診が必須というわけではありません。

治療効果はいつ判断しますか?

治療開始後も症状日記を続け、通常は2~3周期を目安に効果と副作用を評価します。ただし、SSRI開始後の強い焦燥・希死念慮、ホルモン剤使用中の血栓症を疑う症状などは、予定の再診を待たずに連絡・受診してください。

効果判定では、症状の点数だけでなく、欠勤・欠席が減ったか、家事や人間関係への影響が改善したかも確認します。

PMS・PMDDの治療についてよくある質問

Q. PMSにはピルとSSRIのどちらがよいですか?

月経痛・過多月経や避妊希望があり、排卵を抑えたい方にはOC・LEPが合うことがあります。精神症状が強いPMS・PMDDにはSSRIが合うことがあります。併用する場合もあり、安全性と主症状で選びます。

Q. SSRIは毎日飲まなければいけませんか?

毎日服用する方法と、黄体期または症状が始まる時期だけ服用する方法があります。月経周期、PMEや併存疾患の有無、副作用を確認して決めます。

Q. 漢方薬だけで治療できますか?

軽症や身体症状が中心の場合に漢方薬が合う方はいます。生活障害や精神症状が強い場合は、OC・LEP、SSRI、心理療法、精神科連携も含めて検討します。

Q. ミレーナでPMSは治りますか?

ミレーナは生理痛・過多月経には有効ですが、排卵が続く方が多く、PMS・PMDDを確実に抑える治療ではありません。痛みや出血の負担が減ることで間接的に楽になる方はいます。

Q. 治療を始めたら一生続けますか?

一生続けると決まっているわけではありません。効果、副作用、年齢、妊娠希望、症状の変化を定期的に確認し、減量・中止・変更を相談します。

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この記事の執筆・医学監修

清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長

更新日・最終医学確認:2026年9月6日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会.月経前症候群・月経前不快気分障害(PMS・PMDD)に対する診断・治療指針.2025.
  2. American College of Obstetricians and Gynecologists. Management of Premenstrual Disorders. 2023.
  3. Ma S, et al. Oral contraceptives containing drospirenone for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2023;6:CD006586. PubMed
  4. PMDA.ヤーズ配合錠 電子添文.2026年8月改訂.
  5. Jespersen C, et al. Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2024. PubMed
  6. 日本産婦人科医会.PMS/PMDDの専門科へのコンサルトのタイミングは?.2026.

日付:2026年9月6日  カテゴリー:婦人科の病気,月経前症候群(PMS)

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生理前のイライラは本当に生理のせい?

「月経前症候群」は生理前だけに起きる不調

生理前に心身の不調が出て、生理が来るとスッキリ改善する状態を「月経前症候群」と言います。

人によって出る症状は様々で、腹痛や腰痛などの身体症状がメインで出る人もいれば、気分の落ち込みやイライラなどの精神症状がメインで出る人もいます。

 

多くの場合、生理が来る1週間くらい前から心身の不調が出始めて、遅くとも生理の3日目くらいには一通りの不調が消えていきます。

生理前もイライラするし、生理後もイライラするという場合は「月経前」ではないので「月経前症候群=PMS」とは異なる病気ということになります。

 

排卵に伴うホルモンの「波」が悪さをして、心身の不調を引き起こしている場合は、ピルや黄体ホルモン剤によって排卵をおさえることが症状の軽減につながる場合があります。

 

生理前の不調はすべてPMS?

 

ただ、月経前に出ている症状が、すべてPMSとは限りません。

 

生理前の腹痛や腰痛が、実は子宮内膜症による症状だったり、生理直前に出る頭痛が片頭痛の月経周期増悪の場合もあります。

また、生理前の精神症状だと思っていた症状が、実は精神科的な病気の月経周期増悪だったり、発達障害による症状であることもあります。

 

厳密に「月経前症候群」なのかそれ以外の病気なのかを判別することが難しい場合もありますが、どのような症状がいつ出ているのかを記録したり、精神科的な診察によってある程度鑑別することが可能です。

 

PMSなのかどうかは「記録」をつけると見えやすくなる

 

気分の落ち込みやイライラなどの精神症状を、「いつ・誰に(何に)対して・どの様なシチュエーションで」感じたのかを詳細に記録して頂くと、それらの症状が「生理のせいではない」ということに気付く方も少なくありません。

ある患者様は、「生理前になると怒りが制御できなくなる」とおっしゃって受診なさいましたが、記録を2カ月ほどつけていただいた時点で、ご自身で「生理前じゃないですね」と気づかれました。その方の場合は、イライラを感じる対象が特定の人物に限定しており、しかもその相手が「何をした時に怒りが爆発しやすいのか」が、記録をつけるだけで客観的に自覚できるようになったのです。

 

 

普段からイライラしやすいけれど、生理前に特に「爆発」しやすいという人は、普段から「表に出してはいけない」と思ってしまっている怒りやその他の感情がないかチェックしてみるといいでしょう。

それらの感情を、「生理前だけは生理の『せいにして』表に出せる」状態を作り出していないかを見直してみることをお勧めします。

 

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日付:2026年6月6日  カテゴリー:月経前症候群(PMS)

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