婦人科の病気

 

不妊症の治療

不妊症の治療には次のようなものがあります。

 

1)タイミング法

 排卵の時期(月経開始から12日~15日くらい)に超音波で卵巣の中の卵(卵胞)の育ち具合を確認し、排卵のタイミングをより正確に予測して夫婦生活のタイミングを合わせる方法です。

 

2)内服薬による排卵誘発

 クロミッドやセキソビットという飲み薬を使って排卵を促す方法です。月経の3日目~5日目から5日間服用します。

 セキソビットの方がクロミッドより排卵を促す力は弱めなので、元々の排卵障害の程度に合わせて使い分けていきます。

 セキソビットの場合多胎になるリスクはほとんどありませんが、クロミッドでは双胎になる確立がわずかに高くなります。

 

3)内服薬と注射薬による排卵誘発

 クロミッドのみでは十分に卵が育たない場合や、卵は育つけれど排卵しない場合に注射を追加して排卵を促す方法です。卵を育てる注射はクロミッドに比べて作用が強いので、卵が複数育ってしまったり、育ちすぎて卵巣全体が腫れてしまったりする(卵巣過剰刺激症候群)ことがあります。

 

4)注射薬による排卵誘発

 クロミッドでは卵の発育が見られない場合に、月経の3~5日目から連日注射を行うことによって排卵を促していく方法です。

 クロミッドのみに比べて多胎になるリスクや卵巣過剰刺激症候群になるリスクが高くなります。

 

5)人工授精

 精液を洗浄・濃縮して、子宮内へ直接注入する方法です。精子の数が少なかったり精子の運動率が悪い場合は人工授精の対象になります。

 また、精液検査に異常がなくても、妊娠率を上げるために体外受精に進む前の段階として行うこともあります。5回以上繰り返しても累積の妊娠率はあまり上がらないため、通常は5~6回までを目処に行っていきます。

 

6)体外受精・顕微授精

 卵巣を刺激して一度に複数の卵を育て、卵巣から採ってきた卵子に精子を受精させて、受精卵を子宮内に戻す方法です。精子が非常に少ない場合や運動率が悪い場合、顕微鏡下で卵子に直接精子を注入する顕微授精を行います。

 体外受精による妊娠率は施設によって異なりますが、1回で約30%です。

 

 一般的には、1の方法から順により効率のいい方法へと徐々に段階を上げていく「ステップアップ」という方法をとります。ただし、年齢的にあまりのんびりできなかったり、元々排卵障害や卵管閉塞などの異常があったりした場合は、必ずしも1から順に段階を追っていかず、いきなり体外受精を選択することもあります。

 

 基礎体温できちんと排卵が確認でき、不妊検査で何の異常もなかった場合、まずは6ヶ月くらいを目処にタイミング法で様子をみます。それでも妊娠に到らない場合、例え自力で排卵していても弱い排卵誘発剤を使うことによって妊娠率が上がるため、内服薬による排卵誘発を6ヶ月行っていきます。それでも妊娠しなければ、人工授精を5~6回行い、最終的には体外受精へと進んでいきます。

 不妊検査で排卵障害やホルモン異常があった場合は、すぐに排卵誘発剤を使ったり、ホルモン異常に対する治療を行います。また、筋腫や子宮内のポリープなど、明らかに不妊の原因となっている病気が見つかった場合はそちらの治療を先に行います。

 

 子宮卵管造影検査で、卵管がつまっている=卵管閉塞という結果だった場合は、ステップアップではなく初めから体外受精を選択するしかなくなります。

 精液検査で異常があった場合も、人工授精または体外受精や顕微授精が初めから必要になります。

 

 どの治療をどのくらい続けるかは、年齢や不妊期間によって異なってきますが、大切なのは漫然と治療を続けるのではなく、適切なタイミングで次のステップに進んでいくことです。

 もちろん、絶対に自然妊娠でなければ受け入れられないという場合は、あえて人工授精や体外受精を行わず、自然に任せるという方法も選択肢の一つです。ただし、その場合は「やっぱり早い段階で体外受精をしておけばよかった」と後から後悔しないように、年齢的なリスクなどきちんと理解した上で納得して選択していくことが重要になってきます。

日付:2010年6月6日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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不妊治療のゴールは?

 不妊治療の現場にいると、どんなにがんばっても赤ちゃんを授かれないケースに遭遇することもあります

 特に、年齢的なタイムリミットを越えてしまっていると、どうにもならないこともあるんですね。
 不妊カウンセリング学会の講義でそういった事例を聞く中で、不妊治療のゴールは「妊娠」ではない、そんなふうに感じたことがありました。
 何というか、「妊娠」しても解決しないものが根っこにあるというか、妊娠しなくてもそれを解決すればゴールが見えるというか・・・

 講義を聞く中で、不妊で悩む方に必要なのは「受け入れと選択」なんだという事に気づきました。
 妊娠しにくいという事実・妊娠できないという事実・妊娠しない自分・妊娠を目指せないパートナー・理解の無い周囲・子どもがいない未来・・・色々否定してきているものを「受け入れる」。そして、「今のままの自分でいいんだ。今のままの自分で十分完璧で何も欠けてはいないんだ」という「自己受容」がなにより大事なんです。

 これって、不妊に限らず、自己否定に陥っているケース全てにいえることなんだとは思います。自分は何かが「欠けている」という認識から、「このままでいいんだ」という認識へ変わっていく、そのプロセスをサポートする必要があるんだと思います。
 「女は産んで一人前」とか「子育てを経験していないと人として未成熟」なんて周りからのプレッシャーは、単なる価値観の押し付けです。そんな声が気にならなくなるくらい、「私は私!」と思えること、これが一番大事なのかなと感じたんですよね。

 そしてもう一つ、「自分で選択した」という実感。これが大事なんです。
 「自然妊娠が望めない」のではなく「積極的に赤ちゃんを迎えにいく」という選択をする。
 「産めない」のではなくて「産まない」という選択をする。
 「子どもがいない人生」ではなく「子どもを作らない人生」を選択する。

 人生の中で、思い通りにならないことなんて、妊娠・出産だけじゃなくてもたくさんあるじゃないですか。それでも、最終的な結論は「自分で選択したんだ」という実感が、自分の人生を積極的に主体的に生きるという意味で必須なんです。
 仕方なく、今の人生を余儀なくされたのではなく、きちんと自分の意思で自分の手で「選び取った」と胸を張れる。そう思えるようになるまで治療や相談にお付き合いしていくことが、不妊治療には必要なんだなと思います。

日付:2010年6月5日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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主な性病

 性病=性感染症は、性交渉でうつる感染症全ての総称です。10代から20代前半を中心に広がっており、特に自覚症状が出にくいタイプの病気が蔓延しつつあります。

 予防はコンドームを初めから正しく使うこと!これしかありません。診断や治療の方法は感染の種類によって異なります。

 

 

・クラミジア感染症

 感染力が強く症状がほとんど出ないために、特に女性の感染者が増えています20-24歳の女性で、症状がない人も含めると6.4%、つまり16人に1人がクラミジアにかかっていることが推定されています。診断方法はおりものの検査か血液検査。治療法は抗生物質の服用です。

 

・淋病

 クラミジアと同様症状が出にくく、また、薬が効かない「耐性菌」が増えているためにじわじわと広がっています。診断方法はおりものの検査のみ。治療は抗生物質を点滴や筋肉注射します。

 

・性器ヘルペス

 「単純ヘルペスウイルス」というウイルスによる感染症です。最近は感染力があるのに自覚症状はない「不顕性感染」が増えているため、特に男性から女性へ気づかずに感染してしまうケースが増えています。

 発症すると外陰部に水ぶくれができて尿がしみたり強い痛みが出ます。診断方法は水ぶくれなどの見た目で判断できますが、血液検査や水ぶくれをこすって検査を行なう事もあります。治療は抗ウイルス薬の塗り薬や飲み薬ですが、重症だと点滴が必要になります。

 

・尖圭コンジローマ

 HPVの6型や11型が原因で外陰部や肛門周囲に「イボ」ができる病気です。コンドームで防ぎきれないことがあるのと、再発しやすいので、かかると厄介。イボを見れば一目で診断できます。治療はイボをレーザーや電気メスで切り取るか、塗り薬を一定期間使用します。

 

HPV感染症

 HPVの中でも子宮頸癌の原因となるハイリスクタイプに感染したら要注意です。性交経験のある女性の7~8割が50歳までに1度はかかると言われているくらいメジャーなウイルス。診断はおりものの検査で行います。

 HPVに対する治療薬はありませんが、9割の人は1度かかっても自然に治ります。また、16型・18型を防ぐワクチンが発売されたので、子宮頸がんの6割はワクチンで予防できるようになりました。

 

・トリコモナス腟炎

 細菌よりも大きな「原虫」が感染して炎症を起こします。おりものが泡立ったようになって、強い痒みが出ることが多いのが特徴。おりものを取って顕微鏡を見ればすぐに診断できます。治療は、飲み薬又は腟剤を10~14日間使って行います。

 

・毛じらみ

 陰毛に特有の「しらみ」が毛から毛へ移動して感染します。痒みや点状の出血で気づくことが多い。診断は毛根についている卵か、しらみそのものを見つけること。治療は毛を全部剃ってしまうか、スミスリンパウダーを毛に振り掛けて洗い流します。

 

・B型肝炎・C型肝炎

 B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる感染症です。性交渉以外にも輸血や医療行為中の血液との接触などによって感染することもあります。感染してもほとんど症状が出ません。診断は血液検査で行ないます。

 

・HIV/AIDS

 HIVウイルスによる感染症で、ウイルスによって免疫不全を発症した状態が「AIDS」です。先進国の中で唯一日本だけが新規感染者が増えており、1日3~4人の感染者が報告されています。特に、20代~30代では異性間での感染が増えているのが特徴です。

 診断は血液検査で行ないます。ウイルスを体から排除する治療薬はありませんが、ウイルスの活動を抑えて発症しないようにすることは可能です。

日付:2010年5月20日  カテゴリー:婦人科の病気,性病

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クラミジア

 妊娠初期の検査では、必ずクラミジア感染の有無を調べることになっています。クラミジアはセックスによって感染する性病=STDの一種なんですが、自覚症状がほとんどないために知らないうちに感染していることがあります。

 感染に気付かず、治療しないままにしていると、お産の時に赤ちゃんに産道感染して、新生児の肺炎や結膜炎を引き起こすことも。だから、お産になる前に感染の有無を調べて、あらかじめ治療するようにしてあるんですね。

 

 このクラミジア、10代や20代前半の女性だと17~20人に1人は感染しているというくらい、メジャーなSTDです。症状が出にくいので検査されていないだけで、実際はもっと多いのではないかと考えられています。

 現場での印象でも、過去の感染を含めると10%以上の人が検査で陽性を示すように感じています。これは、妊婦健診と不妊検査に来られた方全員にクラミジアの検査をして発見されたものです。症状を訴えて受診された方からクラミジアが検出される率はもっと高くなります。

 

 クラミジアは妊婦さんだけが注意しなければいけないわけではありません。感染による炎症がお腹の中に広がると、卵管の周りに癒着をおこして、卵管の通りが悪くなることがあります。これらの癒着は、将来の不妊や子宮外妊娠のリスクを高めてしまうんです。10代の頃の感染が、30代になって不妊治療の際に発見される、といったケースも実際にありえるんです。

 クラミジアの感染そのものは、適切な抗生物質を飲めば治療可能です。最近は4錠を一度に飲むだけで、治療はできます。でも、いったんお腹の中に起こった癒着は治りません。

 

 クラミジア感染を予防するためには、セーファーセックスを心がける!これしかありません。セーファーセックスとは、不特定多数の人と関係をもたない・コンドームを正しく使う・パートナーと一緒に定期的に検査を受ける、といった心がけで、STDのリスクを出来るだけ下げようというものです。セックスをする限り100%STDを予防することはできません。コンドームでも防ぐことの難しいSTDもあるんです。

 ただコンドームを使うだけでは実は不十分で、やはりお互いにきちんと検査を受けておくことが大切だと感じています。

 最近はブライダルチェクといって、結婚前に不妊の要素や性感染症がないか調べる検診もあります。結婚して、いざ妊娠を目指したら先に性感染症にかかってしまった、なんて、悲しすぎますからね。

 

 避妊に関して心配する人はまあまあいますが、性感染症に関しては無頓着な人が多いような気がします。性感染症の検査は、特別な人だけがするものではなくて、お互いを思いやって付き合いを深めていく人同士がするものなんですね。

 検査をしようと切り出すのは、とっても勇気が要ることかもしれません。初めは誤解を招くかもしれません。でも、もしそういった話をして離れていってしまうような相手なら、きっとその先いい関係は築いていけないんじゃないかしら。自分がどれだけ真剣にお互いのことを考えて、将来のこともちゃんと考えているのか伝えれば、真意は汲み取ってもらえるんじゃないかと思います。

日付:2010年5月20日  カテゴリー:婦人科の病気,性病

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性器ヘルペス

 性器ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス」というウイルスが外陰部に感染することで起こる性感染症の1つです。このウイルスは、「水疱瘡」の原因ウイルスの親戚みたいなもので、症状や感染後の潜伏の仕方など色々共通点も多いんですよ。ただ異なるのは、性器ヘルペスはその名の通り外陰部にしか感染・発症しないという点。

 でも、最近はオーラルセックスが一般化してきたので、この性器ヘルペスのウイルスが口に感染しているケースも増えてきているようです。なので「口唇・性器ヘルペス」と呼ぶ事もあります。

 

 性器同士の接触がなくても、口から性器への感染もありうるので、本人に「心当たり」がなくても感染していることがあるわけです。女性に比べて男性の方が症状が出にくいので、「症状はないけれど人にうつす力はある」ということがありえますから、ちょっとヤッカイなんですよね。

 コンドームをしっかり、正しく使用していれば、感染のリスクを下げる事はできますが、ヘルペスもコンジローマも感染の範囲が広いのでコンドームだけでは覆いきれない部分にウイルスがいたら感染する可能性はあります。

 

 主な症状は、外陰部の違和感・痛痒さ・尿がしみる・歩くとこすれて痛い・足の付け根のリンパ節が腫れる、などです。性器に水泡=水ぶくれや、びらん・潰瘍ができるので、ひどくなると痛すぎて歩けなくなったり尿ができなくなったりして入院が必要になることもあります。

 初めは何となく痒いかな、という程度で、市販のお薬で様子をみていたけれど改善せずに痛みが出てきた、というパターンが多いですね。市販のお薬で2~3日様子を見ても改善しない場合は、早めに婦人科を受診することをお勧めします。

 

 治療は、抗ウイルス薬の飲み薬や塗り薬です。症状の程度にもよりますが、5~10日間の治療で一旦よくなることが多いですね。塗り薬を塗る時は、素手で患部を触らず、綿棒などでお薬をつけるようにしなければいけません。

 よほど密接な接触をしなければ、人にうつす事はありませんから、お風呂につかっても問題ないのですが、症状がある間はお湯がしみたりしますからシャワー程度にしておいた方がいいですね。

 

 よく、プールや温泉で感染することはないのかと聞かれることがありますが、ヘルペスもほかの性病と同様性交渉以外で感染することはほとんどありません。

 ただ、症状が出た時期=感染した時期とは限らないので、感染源を特定できないこともよくあります。感染してもしばらく症状がないままで経過し、体力が落ちた時に初めて症状が出ることもあるので、まったく性交渉がない時期に突然症状が出て驚かれる方もいらっしゃるんですよ。

 

 このヘルペスがヤッカイなのは、一度感染するとウイルスを完全に体から排除する事ができないという点です。いったん体に入ったウイルスは、症状が治まっても「神経節」というところにひそんだ状態になるんですね。普段は何も悪さはしませんが、体力が落ちたりして免疫力が下がると、また活動しだして症状が再発します。

 再発の場合、初感染の時よりは症状は軽めにすむ事が多いんですが、結構不愉快な症状なのでご本人のQOLは著しく下がってしまいます。できるだけ体力を落とさないようにする事が大切ですが、年に6回以上再発を繰り返してしまうようなケースでは「維持療法」と言って、少量の抗ウイルス薬を飲み続けて再発しなくする方法もありますから、1人で悩まずにまずは婦人科で相談してみてくださいね。

日付:2010年5月2日  カテゴリー:婦人科の病気,性病

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HPV感染

 いまや、1日3人の新規HIV感染者が出ているという現実。

 20~24歳の女性の15人に1人はクラミジアに感染しているのではないかと予測されています。20代で不妊症になっている女性の約3割からクラミジア抗体が検出されているんですよ。

 

 中でも、最も自覚しにくくて最も広がっているのがHPV感染です。

 HIVやクラミジアくらいは高校生でも知っている人が多いと思いますが、HPVについて知っている方はまだまだ少ないのではないでしょうか?

 

 HPVというのは、ヒューマンパピローマウイルスのことで、約100種類の型に分かれているウイルスです。子宮頸部には性的接触でしか感染せず、性交経験のある女性の7~8割は一生に一度は感染すると言われているくらい、非常にポピュラーな性感染症なんですね。専門家の先生は、「風邪のウイルスのようなもの」とおっしゃっていました。

 なぜこのHPVが問題になってきているかというと、HPVの「ハイリスクタイプ」に分類される型に感染すると、将来子宮頸癌になるリスクが高くなるからです。ハイリスクタイプには、16型・18型・31型・33型・35型・52型・58型・・・というようにいくつかのタイプが含まれます。

 

 性風俗関係の仕事についている女性=コマーシャルセックスワーカー(CSW)のHPVハイリスクタイプの感染率は、ここ数年でほぼ変わらず、48~61%で推移しているそうです。一方、一般の受診者の中で感染率を調べると、10代で46.7%・20代で21.7%とかなり高いことが分かります。

 つまり、性感染症は「風俗嬢だけがかかる病気」じゃなくて、普通の人でもかかりうるものなんです。

 例えパートナーが一人であっても、相手が病原菌を持っていれば感染するわけですからね。

 

 10代のうちからHPVに感染していれば、当然将来子宮頸癌になるリスクは高くなります。逆に、HPVにかからなければ子宮頸癌にはほとんどならないと言えます。

 ここで誤解していただきたくないのが、感染したからといって必ず癌になるわけでもなければ、子宮頸癌になった人が「性的活動が活発だった」から癌になったわけでもないということです。

 HPVは性感染症ですが、癌は感染がきっかけでその後病変が進んだだけですから。癌になることと性的活動の活発さは関係ありません。

 実際、HPV感染が「持続するリスク」とパートナーの数は比例しますが、感染による病変が「進行するリスク」はパートナーの数と関係ないというデータも出ています。

 

 HPVに感染しても、それだけでは癌に進んでいきません。感染が持続することで、「異形成」という状態から「上皮内癌」→「進行癌」と進んでいきます。どのくらい感染が持続すると癌になっていくのかというと、5年以上の持続感染によって病変が進んでいくと言われているんですね。

 ただ、体には自然な免疫機能というものが備わっていますから、1度感染しても2年以内に90%の人がウイルスが勝手に消えていきます。つまり、10代や20代のうちに約80%の人がいったんHPVに感染するけれど、そのうち10%弱の人だけが30歳以降も感染が持続し、そのうち1~2%の人が癌に進んでいく、というわけです。

 

 このHPV感染に対し、何をすればいいのでしょうか。

 できることはたくさんあります。

 

 最も強調すべきことは「早すぎるセックスは危険だ」ということをきちんと教えていくことだと思います。

 10代に対して、セックスを禁止することはできません。でも、「先延ばしにすることにメリットはあるよ」と伝えることは大事だと思うんですよね。

 もう一つ、今すぐできることは、コンドームによる予防です。感染を予防する方法は、性交渉をしないかコンドームを使うかしかないんですね。

 

 そして、さらに大事なことは、セックスの経験があったら何歳であっても、1年に1回の子宮癌検診を受けることです。検診によって細胞の変化を早いうちに見つけたり、HPVに感染していることが分かれば、癌になってしまう前に適切な治療ができますから。

 検診の目的は、癌になる手前もしくはごく初期の癌の段階で発見することで、子宮を残したまま完治することができるようにすること、つまり子宮を失わずに治療をすることなんです。

 

 さらに、これにプラスして有効な予防ができるように、昨年末から接種可能になったのがHPV予防のワクチンです。海外では、主に中学生に、国が公費負担でHPVワクチンの接種をしているんですよ。

 日本では2価ワクチン(16型・18型のみを予防するワクチン)が承認・発売されています。まだ公費負担になっている地域はごくわずかなので、ほとんどは自費での接種になるんですけれど。

 

 ワクチンを接種すると、ちょうどインフルエンザの予防接種をしたのと同じように、型が一致するウイルスには感染しません。

 臨床試験での有効性は100%で、大きな副作用は見られていません。きちんと接種すれば、終生免疫つまりその後一生16型と18型には感染しない可能性が高いと言われています。

 

 12歳でワクチンを接種すると、約73%の子宮頸癌を予防することができると予想されています。これってすごいことなんですよ。ワクチン予防できる癌なんてそうそうありませんから。

 年間8000人が新たに子宮頸癌になり、年間7000人が新たに上皮内癌(癌のごくごく初期)になっているのって、あまり知られていませんよね。乳癌が増えていることは、ピンクリボンキャンペーンなどの効果で結構皆さんご存知なんですが、実は20代や30代の女性の癌の中では、乳がんよりも子宮頸がんが多いんです。

 

 ワクチンを打たないで将来子宮頸癌になった人の治療にかかる医療費などを計算すると、12歳でのワクチン接種代金を国が負担したとしても、190億円の医療費及び労働損失の抑制につながるそうです。

 世界では一般的になっているHPVのワクチンが、早く日本でも中学校ですべての女性に接種できるようになって欲しいですね。

 

 HPVワクチンの話しをすると、必ずと言っていいほど聞こえてくるのが「そんなものを中学生に打ったら中学生にセックスを推奨しているようなものじゃないか」というご意見なんですが・・・

 それって「ヘルメットをかぶせたら無謀な運転をしてしまうからヘルメットなんかかぶせない方がいい」って言っているようなものです。

 

 有効な予防手段を講じることと、性行動の抑制につながる情報を提供することは全く異なる角度からのアプローチです。若い女性の健康を守るためには、ワクチンもコンドーム教育も性教育も、全部必要なんですよね。

日付:2010年5月2日  カテゴリー:婦人科の病気,性病

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尖圭コンジローマ

 クラミジアほど多くはないのですが、時々見かけるのが尖圭コンジローマ。これは、ヒト乳頭腫ウイルス(ヒューマンパピローマウイルス=HPV)というウイルス感染によって、外陰部や子宮頚部などにイボができる性感染症です。専門家が診れば一目で分かる特徴的なイボなんですが、自分でイボに気付ける人は稀です。大抵は何かの検査の際に偶然見付かったり、外陰部のかゆみや灼熱感が気になって受診したらイボを指摘されたというケースがほとんどですね。
 コンジローマの厄介なところは、イボの部分に皮膚や粘膜が触れると感染してしまう可能性があるので、イボの場所によってはコンドームで防ぎきれないという点です。一旦発症したら、完全にイボがなくなるまで、性的な接触は控えなければいけません。
 また、一度感染したウイルスを完全に無くすことはできないので、3ヶ月以内に約25%の人が再発してしまいます。

 主な治療法は、レーザーや電気メスでイボを焼き切るか、軟膏による治療です。

 焼いた方がイボそのものは早くなくなりますが、その後新たなイボが出現しないか経過を見ていく必要がありますし、再発に対して軟膏を併用しなければいけないこともあります。どちらにしろ、他の性感染症に比べてしつこいのが特徴です。

 もう一つ気を付けなければいけないのが、HPVの「ハイリスクタイプ」に感染すると、子宮頚部の細胞に変化が起きやすく、将来子宮頚癌になるリスクが高くなってしまうということ。
 誤解のないように補足しますが、コンジローマにかかった人全てが子宮頚癌になりやすいわけでもなければ、子宮頚癌になった人全てがコンジローマになっていたわけでもありません。コンジローマの原因になるのはHPVの6型や11型の「ローリスクタイプ」。がんの原因となるハイリスクタイプとは種類が異なります。

 ただ、複数のタイプに同時に感染しているケースもあるので注意が必要なんですね。癌になりかけの状態(異形成といいます)も含め、子宮頚癌の約8割にハイリスクタイプHPVの感染を認めています。
 なので、万が一コンジローマにかかってしまったら、必ず定期的に子宮癌検診を受けるように気を付けましょう。感染してしまったものはどうすることもできませんが、いたずらに不安がる必要もないですよ。ちゃんと指示された間隔で検診を受ければいいわけですから。

 コンジローマは先に書いたように、コンドームだけでは予防することは難しい病気です。お互いがちゃんと検査をして、やはりハイリスクな相手との接触を避けるしかありません。
 難しいのは、誰が「ハイリスク」なのか、パッと見では分からないんですよね。もちろん、パートナーに失礼な行為をしないって事は大前提ですが、特定の人としか関係をもっていなくても、その人が感染しているかどうかが分かっていなければ、安心はできないということ。
 感染のリスクがある行為というのは、オーラルセックスも含めた全ての性的な接触であることをきちんと認識して、お互いの健康を侵害しないように思いやってほしいですね。

日付:2010年5月2日  カテゴリー:婦人科の病気,性病

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トリコモナス腟炎

 トリコモナスは、正確には「原虫」と言って、とっても小さな寄生虫の仲間です。ウイルスや細菌ほど小さくはないので、おりものを採って顕微鏡で見てみると、チョコチョコと泳ぎ回っているのを見ることができます。ほとんどが性交渉による感染ですが、稀にタオルや温泉などで感染する事もあるようです。実際、患者様の中にも「全く心当たりがないんですが」という方もいらっしゃいます。
 感染すると、女性の場合はやや黄色がかった泡状のおりものが増えて強い痒みを伴います。痒みという自覚症状が出やすいので、女性の性感染症の中では珍しく、「気付かずに放置する」という危険性は少ないんですね。逆に、男性側は感染していても何の症状も出ない事の方が多いので、たいていは女性側が診断されることで男性側の感染が判明します。

 治療は、原虫に対する飲み薬と腟剤の併用で10日間しっかり行います。治療後2週間で再検査をし、トリコモナスが検出されなかったらその時点で治療終了です。再検査で完治を確認するまでは、もちろん性交渉は厳禁ですよ。
 男性は、泌尿器科で診断を受け、治療してもらう事になります。どんな性感染症も、2人そろって治療しなければ意味がありませんから、「どっちがうつした」なんて議論はおいといて、まずはきちんと治療してくださいね。

 以前トリコモナス腟炎にかかって治療したことがある方が、またトリコモナスが陽性になった場合、「再発」と「再感染」の2つの可能性があります。
 「再発」は以前の治療が不十分で、なりを潜めていたトリコモナスが再度増えてきた、というもの。「再感染」は、前回の感染は完治していたけれど新たに感染してしまった、というもの。
 後者の場合、パートナーが治療していなかったか、新たにどこかで感染してきたかのどちらかの可能性が出てきます。

 

 性感染症は、繰り返すごとに不妊やHIVなど深刻な感染症にかかるリスクが高くなっていきます。不完全な治療や感染を何度も繰り返すことは、絶対に避けてほしいと思います。万が一性感染症にかかったら、パートナーと一緒にきちんと治療をし、今後は確実に予防するように心がけてくださいね。

日付:2010年5月2日  カテゴリー:婦人科の病気,性病

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おりものの異常の見分け方

おりものとは?

おりものは、腟や子宮の出口で作られる分泌物が混ざったものです。腟内に潤いを保ち、雑菌が入ってきたり増えたりするのを防ぐ働きを持っています。口の中の唾液や目にとっての涙と同じようなものです。

おりものの中には、デーテルライン桿菌という「善玉菌」がいて、大腸菌やカンジダ真菌などの雑菌が増えないように働いています。この善玉菌が少なくなったりいなくなったりすると、腟内の抵抗力が落ちて感染を起こしやすくなってしまいます。

 

よく、抗生物質を飲むとカンジダ腟炎になる方がいらっしゃいますが、これは、抗生物質によって一時的に善玉菌まで除菌されてしまうためです。カンジダはカビの一種で抗生物質は効きませんから、善玉菌によるバリアがなくなると増えやすくなるのです。

 また、おりものを気にしすぎるあまり、トイレに行くたびにビデで洗ってしまう方がいらっしゃるようですが、これは善玉菌まで洗い流してしまうので返って感染を起こしやすくしてしまいます。ビデを使うのは月経の時期だけにして、洗いすぎないように気をつけましょう。

 

 

健康なときもおりものは多少出ます

 婦人科を受診なさるきっかけで「月経不順」や「不正出血」と並んで多いのが「おりものが気になる」という訴えです。でも、実際拝見すると、本当に異常なおりものが出ている方はそれほど多くなく、ほとんどのケースが「気にしすぎ」です。

正常なおりものは、半透明~白っぽい色で卵白のように少し粘り気があります。乾くと、少しポソポソしたクリーム色の状態になることがありますが、これは異常ではありません。月経直後は臭いが強めのこともありますが、それ以外の時期はあまり臭いがないのが普通です。おりものシートをつけっぱなしたり、タンポンを入れっぱなしたりすると雑菌が増えるため臭いが強くなることがあります。

 

 

おりものの量は個人差があり

 おりものはホルモンの影響を受けて状態や量が変わるので、排卵期や月経直前はおりものが増えた感じになります。おりものの量も汗と同じように個人差があるので、ちょっと多めだなと思っても多少下着につく程度の量はあまり気にする必要はありません。

 たまに「ずっとおりものシートをつけていないと染み出てきてしまうんです」という人がいますが、感染がないことを確認できていれば無理に治療をする必要はありません。ただ、おりものシートを常用していることがおりものを増やす原因になっていることはあるので、シートをつけっぱなしにするのはやめましょう。

 

 排卵期や月経前は、病気でなくてもおりものの量が一時的に増えます。それ以外に、感染があったり、腟内に異物があったりすると量が増えます。おりものがずっと多いなと思ったら一度はきちんと検査を受けた方がいいでしょう。

 ただし、「おりものが増えていない=病気ではない」とは言い切れませんから、おりものの「量」だけで異常の有無を判断することはできません。

日付:2010年4月21日  カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気

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病気が疑われるおりものの異常

病気が疑われるおりものは?

 おりものの状態だけで病気の有無を判断することはできませんから、気になったらまずは病院で検査を受けることが大事です。腟の中から直接おりものを取って調べるので、下着を取って内診台に上がる必要があります。検査自体は、綿棒でおりものをとるだけなので痛みもなく数秒で終わります。

 ただ、結果が出るまでには数日~1週間程度かかることがほとんどですから、たいていはまず検査だけをして1~2週間後に結果を聞きに行き、異常があれば薬を処方してもらうといった流れが一般的です。ただし、おりものを見ただけで明らかに病気が疑わしい時は、検査結果を待たずに薬が出されることもあります。

 

検査代金は何の検査をするかによって異なりますが、クラミジア・淋菌・一般の雑菌をひと通り調べると初診料を含めて8000~10000円くらいになります。症状があれば保険がききますから、保険証を使えば実際支払うのは2500~3000円ですむはずです。

一緒に子宮癌の検査をしたりすることもありますから、余裕を持って5000円~8000円くらい持っていれば安心でしょう。

 

 

 病気が疑われるおりものの状態は次のようなものがあります。

 

*おりものの中に血液が混ざる(ピンク色や茶色のおりもの)

 不正出血のサインです。子宮癌やクラミジア頚管炎・子宮頚管ポリープなどの可能性があります。

 いったん治まっても必ず婦人科で検査を受けましょう。

 

*水っぽいおりものが流れ出るくらい多い

 クラミジア頚管炎の可能性があります。性交渉は控えて早めに検査を受けましょう。クラミジアはひどくなると熱が出たり下腹全体が痛くなったりすることがあります。

 抗生物質を1~2週間飲めば治療は可能ですが、卵管にまで炎症が広がると不妊症の原因になります。

 

*くすんだ黄緑色の鼻水のようなおりものが出る

 淋菌感染症や、大腸菌などの雑菌による細菌性腟炎の可能性があります。雑菌なら自然に治ることもありますが淋菌の場合は抗生物質の点滴でしっかり治療する必要があります。

 雑菌でも腟内に抗生物質のタブレットを入れることで殺菌できます。

 

*ヨーグルト状のポソポソしたおりものが多くて痒みがある

 カンジダ腟炎が疑われます。自然に治ることもありますが、何度も繰り返したり痒みがひどい場合は受診しましょう。

 

*魚の腐ったようなツンとした臭いが強い

 雑菌が増えていたり腟内に異物が入っている可能性があります。2~3日様子を見て改善しないようなら早めに受診した方がいいでしょう。

 雑菌の場合、1週間ほど腟内に抗生物質のタブレットを入れることで改善が期待できます。

 

*クリーム色の泡立ったようなおりものが出て強い痒みがある

 トリコモナス腟炎が疑われます。性交渉を控えて早めに検査を受ける必要があります。

 飲み薬と膣内に入れるタブレットを10日ほど使えば治療できます。

 

これらの症状がある時は、基本的に病院で検査してもらいましょう。特に、血液が混ざっている場合は、癌の可能性もありますから注意が必要です。

病気の種類によっては、おりものの異常だけでなく、痒みや下腹部の痛みをともなうこともあります。おりもの以外の症状がある場合は、自己判断で様子を見たりせずに受診した方がいいと思ってください。

日付:2010年4月21日  カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気

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