婦人科の病気
更年期のホルモン補充療法(HRT)の選び方|貼り薬・ジェル・飲み薬
更年期のHRTは、エストロゲンの「量」だけでなく、飲む・貼る・塗るという投与経路、子宮の有無、黄体ホルモンの種類と使い方で選びます。貼り薬・ジェルなどの経皮エストラジオールは、経口剤より静脈血栓症リスクが低いと考えられ、血栓症リスク因子がある方では第一選択として検討されます。ただし、どの方法でもリスクが完全にゼロになるわけではありません。[1][2]
HRTとは
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期に低下・変動するエストロゲンを補い、ほてり、発汗、寝汗、腟の乾燥などを改善する治療です。血管運動神経症状に最も効果の高い治療で、骨量減少を抑える効果もあります。[3]
HRTは避妊薬ではありません。閉経前で妊娠の可能性がある場合は、避妊を別に考える必要があります。
最初に決めること:子宮があるか
| 子宮の状態 | 基本的なHRT | 理由 |
|---|---|---|
| 子宮がある | エストロゲン+黄体ホルモン | 黄体ホルモンで子宮内膜増殖症・子宮体がんを防ぐため |
| 子宮を摘出している | 原則としてエストロゲン単独 | 保護すべき子宮内膜がないため |
子宮内膜症の既往、子宮体がん治療後などでは個別の判断が必要です。子宮がある方が自己判断で黄体ホルモンだけを中止すると、子宮内膜を守れなくなるため避けてください。
エストロゲン:貼り薬・ジェル・飲み薬の違い
| 投与経路 | 特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 貼り薬 | 皮膚から吸収。肝臓の初回通過を避け、経口剤より血栓症リスクが低いと考えられる。交換頻度は製剤による。 | かぶれ、はがれ、貼付部位のローテーションが必要。 |
| ジェル | 皮膚に塗って吸収。経皮剤として血栓症リスクの面で利点がある。 | 毎日塗布する製剤が多い。乾くまで衣服・他者との接触に注意。 |
| 飲み薬 | 使用しやすく、皮膚トラブルがない。 | 肝臓の初回通過があり、経皮剤より静脈血栓症リスクが高い。 |
| 腟剤 | 腟乾燥・性交痛など局所症状を中心に治療。 | 全身のほてりを治す目的の製剤ではない。出血・感染などを確認。 |
経皮エストロゲンは血栓症リスクが低い?
飲み薬のエストロゲンは腸から吸収された後に肝臓を通り、凝固系に影響します。貼り薬やジェルは皮膚から直接吸収され、肝臓の初回通過を避けるため、観察研究や専門学会の指針では、経口剤より静脈血栓症リスクが低いと考えられています。[2]
日本産婦人科医会も、肥満、加齢、脂質異常症、高血圧、糖尿病、慢性炎症性疾患、片頭痛などの血栓症リスクや胆のう・肝臓疾患がある場合、経皮エストラジオールを第一選択としています。[1]
ただし、「貼り薬なら血栓症は絶対に起こらない」という意味ではありません。血栓症の既往、喫煙、肥満、長期不動、手術予定、遺伝的素因などを確認し、リスクが高い場合はHRT以外を含めて検討します。
黄体ホルモンの選び方
子宮がある方では、全身用エストロゲンに十分な黄体ホルモンを組み合わせる必要があります。黄体ホルモンには、天然型(微粒子化)プロゲステロンと合成黄体ホルモンがあり、眠気、出血パターン、代謝・血栓・乳房への影響などが異なります。
| 種類 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 天然型(微粒子化)プロゲステロン | 体内のプロゲステロンと同じ構造。観察研究では一部の合成黄体ホルモンより乳がん・血栓症リスクが低い可能性。 | 眠気・めまいが出ることがある。乳がんリスクがゼロではなく、長期データは限定的。 |
| 合成黄体ホルモン | 複数の種類があり、子宮内膜保護作用、出血、代謝への影響が異なる。 | 製剤・用量・期間により乳房や血栓への影響が異なる。 |
天然型プロゲステロンが全員に最適とは限りません。眠気、出血、費用、併存疾患、飲み方を踏まえて選びます。
周期的投与と連続投与
| 方法 | 使い方の概要 | 出血の特徴 |
|---|---|---|
| 周期的併用法 | エストロゲンを継続し、黄体ホルモンを一定期間併用する。 | 黄体ホルモン終了後に予定された消退出血が起こることがある。閉経移行期や閉経後早期に選ぶことがある。 |
| 持続的併用法 | エストロゲンと黄体ホルモンを原則毎日併用する。 | 最初は不正出血が起こることがあるが、その後無出血を目指す。通常は閉経後に選ぶ。 |
月経の状態、閉経からの期間、出血への希望によって選びます。自己判断で黄体ホルモンの日数を減らさないでください。
HRTと乳がんリスク
乳がんへの影響は一つの数字で説明できません。子宮の有無、エストロゲン単独か併用療法か、黄体ホルモンの種類、使用期間、もともとの乳がんリスクによって異なります。
- 子宮がある方のエストロゲン+黄体ホルモン併用療法では、使用期間とともに乳がんリスクがわずかに上がる可能性があります。
- 天然型(微粒子化)プロゲステロンは、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性が観察研究で示されています。
- 天然型でも乳がんリスクがゼロになるわけではなく、5年を超える長期使用の根拠は限定的です。[4]
- 乳がん検診を推奨される間隔で受け、乳房の変化があれば受診します。
過去または現在の乳がんがある方は、全身HRTを通常は使用せず、がん治療医と連携して非ホルモン治療や局所症状への対応を検討します。
HRTを使用できない・慎重に判断する主な状態
適否は製剤の電子添文、病歴、治療目的を確認して個別に判断します。主な例は次のとおりです。
- 診断されていない原因不明の性器出血
- 乳がんやエストロゲン依存性悪性腫瘍の既往・治療中
- 静脈血栓塞栓症、脳卒中、心筋梗塞などの既往・活動性疾患
- 重い肝疾患
- 妊娠または妊娠の可能性
- 製剤成分への過敏症
片頭痛、高血圧、糖尿病、脂質異常症、胆のう疾患、子宮筋腫・子宮内膜症などがあっても、一律にHRTが使えないとは限りません。投与経路・量を含めて慎重に選びます。
開始後に起こりやすい症状
- 不正出血、予定された消退出血
- 乳房の張り・痛み
- むくみ、腹部膨満感
- 頭痛
- 貼付部位のかぶれ
- 天然型プロゲステロンによる眠気・めまい
開始後の軽い症状は数か月で落ち着くことがありますが、出血量が多い、長く続く、いったん止まった後に再び出血する場合は評価が必要です。胸痛、突然の息切れ、片脚の腫れ、神経症状は緊急受診してください。
HRT中の定期確認
- 症状が改善しているか
- 出血・乳房症状・皮膚症状などの副作用
- 血圧、体重、生活習慣
- 新しい病気・手術予定・服薬の変化
- 乳がん検診・子宮頸がん検診など年齢に応じた検診
- 継続の利益とリスク、減量・中止の希望
HRTの量、方法、期間は個別化し、少なくとも定期的に見直します。年齢だけで機械的に中止するのではなく、症状と健康状態を確認して判断します。
HRTの選び方についてよくある質問
Q. 貼り薬なら血栓症になりませんか?
経口エストロゲンよりリスクは低いと考えられますが、ゼロではありません。血栓症の既往、肥満、喫煙、手術予定などを確認して選びます。
Q. 子宮があるのにエストロゲンだけを使えますか?
全身用エストロゲンを使う場合は、原則として子宮内膜保護のため黄体ホルモンが必要です。自己判断で黄体ホルモンを中止しないでください。
Q. 天然型黄体ホルモンなら乳がんリスクはありませんか?
リスクがゼロとはいえません。一部の合成黄体ホルモンより低い可能性はありますが、主に観察研究に基づき、5年を超える長期データは限定的です。
Q. HRTで太りますか?
HRTが直接大きな体重増加を起こすという明確な証拠はありません。更年期には加齢、筋肉量低下、睡眠や活動量の変化で体重が増えやすくなります。むくみを感じる場合は処方を調整します。
横浜駅近くでHRTをご相談になりたい方へ
横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が、子宮の有無、症状、持病、血栓症・乳がんリスク、生活上の希望を確認し、剤形と組み合わせをご提案します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産婦人科医会.更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT).2025.
- British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
- The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
- Stute P, et al. The impact of micronized progesterone on breast cancer risk: a systematic review. Climacteric. 2018;21:111-122.
- PMDA.エストラーナテープ 医療用医薬品情報・電子添文.2025年10月改訂.
- PMDA.エフメノカプセル100mg 医療用医薬品情報・電子添文.2025年10月改訂.
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.
天然型黄体ホルモン(エフメノ)のメリットと乳がんリスク
天然型黄体ホルモン(微粒子化プロゲステロン)は、体内で作られるプロゲステロンと同じ化学構造をもつ薬です。子宮がある方が全身用エストロゲンを使う際に、子宮内膜増殖症・子宮体がんを防ぐ目的で併用します。日本ではエフメノカプセル100mgが承認されています。[1]
観察研究では、天然型プロゲステロンを組み合わせたHRTは、一部の合成黄体ホルモンを使うHRTより乳がんリスクが低い可能性が示されています。しかし、「天然型なら乳がんリスクがゼロ」「長期間でも必ず上がらない」とは言えません。特に5年を超える長期使用のデータは限定的です。[2][3]
HRTで黄体ホルモンを使う理由
エストロゲンは更年期症状を改善しますが、子宮がある方が全身用エストロゲンだけを続けると、子宮内膜が増殖し、子宮内膜増殖症・子宮体がんのリスクが上がります。黄体ホルモンはエストロゲンによる子宮内膜への刺激を抑え、内膜を保護します。
| 子宮の状態 | 黄体ホルモン |
|---|---|
| 子宮がある | 全身用エストロゲンに原則として併用が必要 |
| 子宮を摘出している | 通常は不要。ただし子宮内膜症などで個別判断することがある |
黄体ホルモンは、つらい時だけ飲む薬ではありません。処方された日数・量を守ることが子宮内膜保護に重要です。
「天然型」とは
天然型(微粒子化)プロゲステロンは、植物由来原料などから製造されますが、最終的な有効成分は体内のプロゲステロンと同じ構造です。「天然型」という言葉は、無加工の自然物や副作用のないサプリメントという意味ではありません。
医薬品として承認された天然型プロゲステロンと、個人輸入・調剤による未承認のいわゆる「バイオアイデンティカルホルモン」は区別が必要です。承認医薬品は含量、品質、用法・用量、安全性情報が審査されています。
天然型プロゲステロンのメリット
- 体内のプロゲステロンと同じ化学構造
- 承認された用法でエストロゲン投与時の子宮内膜増殖症を抑える
- 観察研究では、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性
- 観察研究では、血栓症への影響が比較的小さい可能性
- 眠気が出る性質を、就寝前の服用で受け入れやすい方がいる
これらは平均的な傾向であり、全員に同じ効果・副作用になるわけではありません。
天然型プロゲステロンと乳がんリスク
乳がんリスクに関する代表的なデータには、フランスのE3Nコホートなどの観察研究があります。これらでは、エストロゲン+天然型プロゲステロンは、エストロゲン+一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性が示されました。[3]
2018年の系統的レビューは、エストロゲン+微粒子化プロゲステロンについて、5年以内の使用では乳がんリスク増加を示さないとまとめています。一方、5年を超える使用ではリスク上昇の可能性を示す根拠が限られており、結論は確定していません。黄体ホルモンの種類にかかわらず、併用HRTの説明では乳がんリスクを扱うべきとしています。[2]
ここから言えること・言えないこと
| 言えること | 言えないこと |
|---|---|
| 天然型は、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性がある | 天然型なら乳がんにならない |
| 5年以内の使用については比較的安心できるデータがある | 5年を超えて何年使ってもリスクが上がらない |
| 黄体ホルモンの種類を選ぶことはリスク低減の一要素 | 検診や定期的な利益・リスクの見直しが不要になる |
観察研究は実際の診療に近い長期データを得られる一方、薬を選んだ背景などの影響を完全には除けません。長期の無作為化比較試験が不足しているため、数字を確定的に説明しないことが重要です。
血栓症リスクとの関係
HRTの血栓症リスクには、主にエストロゲンの投与経路が大きく関係します。貼り薬・ジェルなどの経皮エストラジオールは、経口エストロゲンより静脈血栓症リスクが低いと考えられています。黄体ホルモンも種類によって影響が異なり、天然型プロゲステロンは一部の合成黄体ホルモンより血栓症リスクへの影響が小さい可能性があります。[4]
ただし、血栓症の既往、喫煙、肥満、長期不動、手術、がんなど本人側のリスクも重要です。「経皮エストラジオール+天然型プロゲステロンなら血栓症はゼロ」とは説明できません。
エフメノの飲み方
日本の電子添文では、エストロゲン製剤との併用で、次のいずれかの方法が承認されています。実際の処方は月経状態、出血の希望、副作用などにより医師が決めます。[1]
- 持続的併用:100mgを1日1回、就寝前に服用
- 周期的併用:エストロゲン開始日を1日目として、15~28日目に200mgを1日1回、就寝前に服用
眠気・めまいが現れることがあるため、就寝前に服用します。服用後の自動車運転や危険を伴う作業は避けてください。飲み忘れた場合は自己判断で2回分をまとめず、処方時の指示または医療機関・薬剤師に確認します。
主な副作用・デメリット
- 眠気、傾眠、めまい
- 不正出血、予定された消退出血
- 頭痛
- 乳房の張り・痛み
- 腹部膨満感、吐き気
- 気分の変化
眠気が強い、転倒しそうになる、出血量が多い、出血が長引く場合は処方医へ相談してください。黄体ホルモンを自己判断で減量・中止すると、子宮内膜保護が不十分になるおそれがあります。
天然型が必ず最適とは限りません
天然型プロゲステロンは有力な選択肢ですが、次のような場合は別の方法が合うことがあります。
- 眠気・めまいが強く、継続が難しい
- 周期的な出血を避けたい、または出血パターンが合わない
- 飲み忘れが多い
- 持病や併用薬との関係で別の黄体ホルモンが適する
- 子宮を摘出しており、黄体ホルモン自体が通常不要
薬の名称だけで選ぶのではなく、エストロゲンの経路と量、黄体ホルモンの用法、本人のリスクを一つの処方設計として考えます。
天然型黄体ホルモンについてよくある質問
Q. エフメノは乳がんリスクを上げませんか?
一部の合成黄体ホルモンより低い可能性はありますが、リスクゼロを証明した薬ではありません。5年を超える長期データは限定的で、定期的に継続の利益とリスクを見直します。
Q. 「天然型」なら副作用はありませんか?
副作用はあります。特に眠気、めまい、不正出血、乳房の張りなどに注意します。医薬品として用法どおりに使用します。
Q. 眠れないのでエフメノだけ飲んでもよいですか?
睡眠薬として自己使用する薬ではありません。HRTで子宮内膜を保護する目的と処方全体を確認して使用します。
Q. 出血があるのでエフメノをやめてもよいですか?
自己判断で中止せず受診してください。投与法に伴う出血か、子宮内膜や子宮の病変による出血かを確認し、処方を調整します。
横浜駅近くでHRT・エフメノをご相談になりたい方へ
横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。現在の処方で眠気や出血がつらい方、経皮エストロゲンと天然型プロゲステロンの組み合わせを相談したい方もご相談ください。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- PMDA.エフメノカプセル100mg 医療用医薬品情報・電子添文.2025年10月改訂.
- Stute P, et al. The impact of micronized progesterone on breast cancer risk: a systematic review. Climacteric. 2018;21:111-122.
- Fournier A, et al. Unequal risks for breast cancer associated with different hormone replacement therapies: results from the E3N cohort study. Breast Cancer Res Treat. 2008;107:103-111.
- British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
- Asi N, et al. Progesterone vs. synthetic progestins and the risk of breast cancer: a systematic review and meta-analysis. Syst Rev. 2016;5:121.
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.
HRTは何歳から何歳まで?開始時期・継続期間・やめどき
HRTは、月経が完全に止まるまで待たなければ始められない治療ではありません。更年期移行期に、ほてり・発汗・寝汗などで生活に支障があり、診察で適応があると判断されれば開始できます。一方、60歳を超えてから、または閉経後10年以上経ってから初めて開始する場合は、心血管疾患・脳卒中・血栓症などの絶対リスクが高くなるため、より慎重な評価が必要です。[1]
「5年で必ずやめる」「65歳で全員中止」という一律の期限はありません。症状、骨折リスク、乳がん・心血管リスク、投与経路、本人の希望を定期的に確認し、継続・減量・中止を個別に決めます。
先に結論:開始・継続年齢の目安
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 閉経前・月経が不規則 | 症状と適応があれば開始可能。出血方法と避妊を別に考える。 |
| 60歳未満または閉経後10年以内 | 禁忌がなければ、つらい症状に対する利益とリスクのバランスが一般に良好。 |
| 60歳以上または閉経後10年超で新規開始 | 一律禁止ではないが、絶対リスクが上がるため個別評価。低用量・経皮剤などを慎重に検討。 |
| 65歳以上で継続中 | 年齢だけで一律中止しない。明確な目的、定期評価、リスク低減を前提に継続できる場合がある。 |
| 40歳未満の早発卵巣不全 | 自然閉経と別に考え、禁忌がなければ平均的な閉経年齢までホルモン補充を勧めることが多い。 |
生理があるうちからHRTを始められますか?
始められる場合があります。ほてり・寝汗などは、最後の月経より前の更年期移行期から現れることが多く、治療を12か月の無月経まで待つ必要はありません。
ただし、閉経前は卵巣からのホルモン分泌も変動しているため、不正出血が起こりやすくなります。月経状況に合わせて周期的に黄体ホルモンを使う方法などを選びます。
HRTには避妊効果がありません。月経が不規則でも排卵・妊娠の可能性は残るため、必要な期間はコンドーム、子宮内避妊具、適切なホルモン避妊法などを別に相談します。
「60歳未満・閉経後10年以内」の意味
国際的な専門学会は、禁忌のない健康な女性が、60歳未満または閉経後10年以内にHRTを開始する場合、つらい血管運動神経症状の治療と骨量減少予防について、利益とリスクのバランスが一般に良好としています。[1]
これは「60歳の誕生日を迎えたら危険になる」という境界線ではありません。年齢と閉経からの期間が長くなるほど、心血管疾患、脳卒中、静脈血栓症などのもともとの絶対リスクが上がるため、開始時期を判断する目安です。
50代で開始して60歳を超えた方と、70歳で初めて開始する方では、同じ年齢でも考え方が異なります。
60歳を超えてから初めてHRTを始める場合
60歳以上、または閉経後10年以上経ってからの新規開始は一律禁止ではありませんが、次の点をより慎重に確認します。
- 症状が本当にエストロゲン低下によるものか
- 冠動脈疾患、脳卒中、静脈血栓症の既往・リスク
- 乳がん・子宮体がんなどの既往
- 原因不明の性器出血
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満
- 全身HRTではなく局所治療で対応できる症状か
開始する場合は、症状に必要な低用量から、経皮エストラジオールなど非経口経路を優先して検討することがあります。[2]
HRTは何年まで続けられますか?
使用期間に一律の上限はありません。血管運動神経症状が続く期間には個人差があり、60代以降もつらい症状が残る方がいます。生活の質への利益があり、本人が継続を希望し、禁忌がなく、定期的に評価できる場合は長期継続を検討できます。[3]
一方、期間が長くなるほど注意すべきリスクもあります。特に子宮がある方のエストロゲン+黄体ホルモン併用療法では、黄体ホルモンの種類と使用期間により乳がんリスクが変わる可能性があります。
「できるだけ短期間」という言葉だけで必要な治療を打ち切るのではなく、継続する医学的な目的があるか、より低い量や局所治療でよいかを毎年見直すことが重要です。
65歳になったら中止しなければいけませんか?
年齢だけを理由に65歳で一律中止する必要はありません。The Menopause Societyの2022年ポジションステートメントは、持続するほてり、生活の質、骨粗鬆症予防などの明確な目的があり、利益とリスクを定期的に再評価する場合、65歳を超えた継続を検討できるとしています。[3]
年齢が上がるほど、低用量と非経口経路の選択、血圧・生活習慣病・乳房・出血の確認がより重要になります。継続しているから安全、年齢だけで危険、のどちらでもありません。
継続中に毎年見直すこと
- 治療を続ける目的:ほてり、睡眠、GSM、骨量など
- 現在も十分な効果があるか
- 不正出血、乳房症状、頭痛、皮膚症状など
- 乳がん、血栓症、脳心血管疾患などの新しいリスク
- 血圧、体重、喫煙、持病、服用薬の変化
- 投与経路・用量・黄体ホルモンの種類を改善できないか
- 継続・減量・中止についての本人の希望
定期的な検診は必要ですが、検診を受ければすべてのHRTリスクがなくなるわけではありません。症状と処方の妥当性を一緒に見直します。
HRTのやめどきと中止方法
次のような時に、減量・中止・別の治療への変更を相談します。
- 症状が落ち着き、本人が中止を希望する
- 効果より副作用・負担が大きい
- 新たな禁忌や大きなリスクが見つかった
- 局所症状だけになり、腟の局所治療へ切り替えられる
- 手術・長期不動などで一時中止が必要と判断された
急に中止しても、徐々に減量してもよい場合があります。どちらがほてりの再発を確実に防ぐという明確な差はありません。再発が心配な方は、用量を下げる、貼付間隔を医師の指示で調整するなど段階的な方法を相談します。
中止後に症状が再発した場合は、再開、より低用量、局所治療、非ホルモン治療などを再検討できます。
40歳未満の早発卵巣不全(POI)は別に考えます
40歳未満で卵巣機能が低下する早発卵巣不全(POI)や、両側卵巣摘出などによる早い時期の低エストロゲン状態は、自然な閉経年齢の更年期と同じではありません。治療しない期間が長いと、骨・心血管・泌尿生殖器などへの影響が懸念されます。
禁忌がなければ、平均的な自然閉経年齢ごろまでホルモン補充を勧めることが一般的です。この期間は「通常より早く失われたホルモンを補う」という意味合いが強く、50歳前後から初めるHRTの年齢リスクと同じようには考えません。[4]
POIでも自然排卵・妊娠が起こる可能性があるため、妊娠希望と避妊について個別に相談します。
HRTの年齢・期間についてよくある質問
Q. 生理があるうちにHRTを始めてもよいですか?
症状と適応があれば開始できます。月経の状態に合わせて投与法を選び、妊娠の可能性がある間は別に避妊を考えます。
Q. 60歳になったらHRTをやめるべきですか?
60歳で一律中止する必要はありません。開始時期、症状、投与経路、乳がん・心血管・血栓症リスクを定期的に見直して判断します。
Q. HRTは5年以上続けられますか?
続けられる場合があります。特に併用HRTでは乳がんリスクが期間とともに変化する可能性があるため、黄体ホルモンの種類を含めて毎年評価します。
Q. やめたら症状が戻りました。再開できますか?
再開できる場合があります。現在の年齢、閉経からの期間、新しい持病・リスクを再評価し、低用量や経皮剤、非ホルモン治療も含めて選びます。
横浜駅近くでHRTの開始・継続をご相談になりたい方へ
横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。これからHRTを始めたい方、60歳・65歳を迎えて継続に迷う方、他院から継続処方をご希望の方も、これまでの治療内容と検診結果をご持参のうえご相談ください。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
- British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
- The Menopause Society. Women aged older than 65 years may be able to safely continue taking hormone therapy. 2024.
- European Society of Human Reproduction and Embryology. Guideline on premature ovarian insufficiency. 2024.
- National Institute for Health and Care Excellence. Menopause: identification and management(NG23). Updated 2024.
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.
生理痛(月経困難症)|原因・受診目安・検査・ピル・ミレーナ
生理痛で学校や仕事、家事を休む、鎮痛薬を飲んでも動けない、年々痛みが強くなる場合は、「体質だから」と我慢せず婦人科へご相談ください。
日常生活に支障を来す生理痛は月経困難症と呼ばれます。子宮や卵巣に明らかな病気がない「機能性月経困難症」と、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などが原因となる「器質性月経困難症」があり、問診や診察、必要に応じた超音波検査で見分けます。治療には鎮痛薬、低用量・超低用量ピル(LEP)、黄体ホルモン製剤、ミレーナなどの選択肢があります。[1][2]
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~は横浜駅から徒歩6分です。女性医師が、痛みの程度、月経量、年齢、妊娠希望、既往歴を確認し、無理のない検査と治療をご提案します。
生理痛の治療を先に知りたい方へ
- 生理痛に使うピルの効果・副作用:毎日内服し、痛み・出血・周期を管理したい方へ
- 生理痛に使うミレーナの効果・デメリット:毎日の服薬を避け、過多月経も軽くしたい方へ
- 生理痛にはピルとミレーナのどちらがよい?:違いを比較して選びたい方へ
- ピルを休薬せずに飲み続ける方法:出血と痛みが起こる回数を減らしたい方へ
生理痛で受診する目安
| 状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 突然の激しい下腹部痛、失神・強いめまい、冷汗、妊娠反応陽性と腹痛・出血、高熱を伴う | 月経痛と思い込まず、夜間・休日を含め救急医療機関へ |
| 学校・仕事を休む、鎮痛薬が効きにくい、年々悪化する、月経以外にも痛む、性交痛・排便痛がある | 早めに婦人科を予約 |
| 出血量が多い、大きな血の塊が続く、息切れ・動悸・疲れやすさがある | 過多月経や貧血も含めて相談 |
| 軽い痛みで市販薬が効き、生活に支障がない | 月経日・痛み・服薬を記録。繰り返し悪化するなら相談 |
月経困難症とは
月経困難症は、月経に伴って起こり、日常生活に支障を来す症状の総称です。下腹部痛や腰痛だけでなく、吐き気、頭痛、疲労感、下痢、気分の落ち込みなどを伴うことがあります。[1]
痛みの感じ方には個人差があります。「何点以上なら病気」と決めるのではなく、学校・仕事・家事・睡眠にどの程度影響するか、鎮痛薬が必要か、以前より悪化しているかが受診判断の大切な材料です。
生理痛の主な原因
機能性月経困難症
超音波検査などで明らかな病変が見つからないタイプです。子宮内膜で作られるプロスタグランジンが子宮を強く収縮させ、痛み、吐き気、下痢などを引き起こすと考えられています。初経後数年の10代からみられます。
器質性月経困難症
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、卵巣の病変、骨盤内炎症、子宮や腟の形態異常などが原因となるタイプです。年々悪化する、月経以外にも痛い、性交痛・排便痛がある、出血量が増えた場合は背景疾患を確認します。子宮内膜症は、若い方でも持続する月経痛の原因になり得ます。[2][3]
強い生理痛があるから必ず子宮内膜症になるわけではありません。一方、検査で異常が見えないことだけを理由に、強い痛みを放置する必要もありません。
生理痛の診察・検査
まず、痛みが始まった年齢、月経との関係、鎮痛薬の種類と効き方、出血量、性交痛・排便痛、妊娠の可能性、家族歴などを伺います。症状に応じて腹部・骨盤の診察、超音波検査、妊娠検査、血液検査などを組み合わせます。
超音波検査で卵巣チョコレート嚢胞、子宮腺筋症、子宮筋腫などが分かることがありますが、表在性の子宮内膜症は画像に写らないことがあります。超音波が正常でも、痛みの強さや経過をもとに治療し、必要に応じて専門施設への紹介や追加検査を検討します。[2][3]
性交経験がない方、内診に不安がある方には、症状とご希望を確認し、経腹超音波などから相談します。
生理痛・月経困難症の治療
| 治療 | 主な特徴 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| NSAIDsなどの鎮痛薬 | 痛みの原因となるプロスタグランジンの産生を抑える標準治療 | 胃腸・腎臓・喘息・アレルギー、他の薬との重複 |
| 低用量・超低用量ピル(LEP) | 子宮内膜を薄く保ち、痛みや出血を軽くする。周期投与・連続投与がある | 血圧、喫煙、片頭痛、血栓症リスクなど |
| 黄体ホルモン製剤 | 子宮内膜症の痛みなどに用いる。エストロゲンを含まない選択肢 | 不正出血などの副作用 |
| ミレーナ(LNG-IUS) | 子宮内で黄体ホルモンを放出し、最長5年間、月経量と痛みを減らす | 挿入処置、初期の不正出血、位置ずれ・脱出など |
| 原因疾患への治療 | 子宮内膜症、腺筋症、筋腫などに応じて薬物療法や手術を検討 | 年齢、症状、妊娠希望、病変の大きさ・位置 |
NSAIDsと低用量ピルはいずれも機能性月経困難症の代表的な治療です。低用量ピルは痛みを軽減しますが、不正出血、頭痛、吐き気などが起こることがあり、血栓症リスクを含めた適否確認が必要です。[4][5]
生理痛にはピルとミレーナ、どちらがよい?
毎日服用して出血日も調整したい、PMSやニキビも含めて相談したい方にはピルが向くことがあります。毎日の服薬を避けたい、過多月経が強い、エストロゲンを含むピルが適さない方にはミレーナが選択肢になります。
ただし、ミレーナは子宮内への挿入が必要で、最初の数か月は不正出血が起こりやすい一方、ピルには毎日の服用と血栓症リスクの評価が必要です。「どちらが強いか」ではなく、治したい症状と安全性、生活に合うかで選びます。
10代の生理痛も我慢する必要はありません
生理痛で保健室へ行く、学校を休む、試験や部活動に影響する場合は受診の対象です。10代の多くは機能性月経困難症ですが、鎮痛薬やホルモン治療を適切に行っても3〜6か月で改善しない場合は、子宮内膜症なども考えて再評価します。[6]
初診から必ず内診をするわけではありません。ご本人の不安や性交経験を確認し、問診、腹部の診察、経腹超音波など、相談できる方法から始めます。
生理痛についてよくある質問
Q. 生理痛で病院へ行くのは大げさですか?
大げさではありません。痛みで日常生活に支障がある、鎮痛薬が効かない、痛みが悪化している場合は月経困難症として診察・治療の対象です。
Q. 超音波検査で異常がなければ、我慢するしかありませんか?
いいえ。画像に異常が見えない機能性月経困難症も治療できます。また、子宮内膜症は画像に写らないこともあるため、症状と治療への反応を含めて評価します。
Q. 痛み止めを毎月飲むと効かなくなりますか?
通常の用法で毎月数日使用することで、必ず耐性がつくわけではありません。効きにくい場合は、服用のタイミング、成分、用量、背景疾患を確認します。自己判断で増量せずご相談ください。
Q. ピルやミレーナで将来妊娠しにくくなりませんか?
これらは可逆的な治療で、適切な使用が将来の不妊の原因になるという根拠はありません。妊娠希望が生じたらピルを中止し、ミレーナを除去します。もともとの子宮内膜症などが妊孕性に影響することはあります。
横浜駅近くで生理痛・月経困難症をご相談になりたい方へ
「検査で何もなかったら恥ずかしい」「内診が怖い」「ピルとミレーナのどちらが合うか分からない」という段階でもご相談いただけます。横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診療します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
横浜駅から徒歩6分。月経困難症、ピル外来、PMS、婦人科検診などを診療しています。
本ページは一般的な医療情報を提供するもので、個別の診断・処方に代わるものではありません。
公開日:2026年8月26日
最終医学確認:2026年8月29日
参考文献
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2026.CQ305 機能性月経困難症の治療は? 刊行物案内.
- Becker CM, et al. ESHRE guideline: endometriosis. Hum Reprod Open. 2022;2022(2):hoac009. ESHRE.
- National Institute for Health and Care Excellence. Endometriosis: diagnosis and management(NG73). Updated 2024.
- Marjoribanks J, et al. Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(7):CD001751. Cochrane.
- Schroll JB, et al. Combined oral contraceptive pill for primary dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2023;7:CD002120. PubMed.
- ACOG Committee Opinion No. 760. Dysmenorrhea and Endometriosis in the Adolescent. Obstet Gynecol. 2018;132:e249-e258. PubMed.
日付:2026年8月29日 カテゴリー:生理痛
生理痛がひどい時は?受診の目安と考えられる病気
生理痛で動けない、学校や仕事を休む、鎮痛薬が効かない、以前より悪化している場合は、婦人科を受診する目安です。突然の激痛、失神、強い出血、発熱、妊娠の可能性を伴う痛みは、通常の生理痛以外の緊急疾患も考え、救急医療機関へご相談ください。
ひどい生理痛は、子宮や卵巣に明らかな病変がない機能性月経困難症のこともあれば、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、卵巣の病変などが原因のこともあります。痛みの強さだけで原因を判断せず、症状の経過と必要な検査を組み合わせます。[1][2]
すぐに医療機関へ相談した方がよい痛み
- 突然始まった、これまでにない激しい下腹部痛
- 意識が遠のく、失神、冷汗、顔面蒼白、強いめまい
- 妊娠検査が陽性、または妊娠の可能性があり、腹痛や出血がある
- 38度前後の発熱、悪臭のあるおりもの、強い吐き気を伴う
- 1〜2時間でナプキンがいっぱいになる出血が続き、ふらつく
異所性妊娠、卵巣茎捻転、卵巣出血、骨盤内感染症などは「生理が来たから月経痛」とは限りません。夜間・休日に上記症状がある場合は、診療時間を待たず救急相談・救急医療機関を利用してください。
早めに婦人科を予約した方がよい生理痛
- 生理のたびに学校・仕事・家事・部活動を休む
- 市販の鎮痛薬を正しく飲んでも効きにくい
- 鎮痛薬の量や回数が増えている
- 初経の頃より痛みが強くなっている、年々悪化する
- 月経前から痛み、月経後も痛みが残る
- 性交痛、排便痛、排尿時痛、月経以外の骨盤痛がある
- 出血量が多い、血の塊が多い、貧血症状がある
- 妊娠を希望しており、強い生理痛がある
痛みの点数が同じでも、日常生活への影響は人によって異なります。「救急車を呼ぶほどではないから」と受診を先延ばしにする必要はありません。
ひどい生理痛で考えられる主な原因
| 主な原因 | みられやすい特徴 |
|---|---|
| 機能性月経困難症 | 初経後数年から。月経開始前後に強く、1〜3日程度で軽くなることが多い |
| 子宮内膜症 | 年々悪化する月経痛、性交痛、排便痛、月経以外の骨盤痛。不妊を伴うこともある |
| 子宮腺筋症 | 強い月経痛と過多月経。子宮が大きくなることがある |
| 子宮筋腫 | 過多月経、貧血、圧迫感。場所や大きさにより痛みを伴う |
| 卵巣嚢胞・卵巣腫瘍 | 片側の痛み、急な激痛。捻転や破裂では緊急受診が必要 |
| 骨盤内感染症 | 発熱、おりものの変化、性交痛、月経に限らない下腹部痛 |
| 子宮・腟の形態異常 | 初経後早期から極めて強い痛み、月経血の流出障害など |
10代では多くが機能性月経困難症ですが、治療しても改善しない場合は子宮内膜症を含む二次性の原因を再評価します。子宮内膜症は、超音波で異常がなくても完全には否定できません。[2][3]
生理痛がひどい時に自分でできる対処
- 処方薬・市販薬は説明書どおりに使用し、同じ成分の重複を避ける
- 痛みが強くなり切る前、月経開始または痛みの始まりに合わせて鎮痛薬を使う
- 腹部を温め、無理のない姿勢で休む
- 月経日、痛みの点数、出血量、飲んだ薬と時刻、効果を記録する
NSAIDsは月経困難症に有効ですが、胃潰瘍、腎疾患、NSAIDsで悪化する喘息、アレルギー、妊娠の可能性、他の薬との併用などに注意が必要です。[4]自己判断で規定量を超えたり、複数の鎮痛薬を重ねたりしないでください。
婦人科では何を調べますか?
問診では、いつから痛いか、月経の何日前から何日目まで痛いか、日常生活への影響、出血量、鎮痛薬の使い方、月経以外の痛み、妊娠の可能性を確認します。
必要に応じて妊娠検査、血液検査、超音波検査を行います。内診や経腟超音波が難しい方は、年齢・性交経験・症状・ご希望に応じ、経腹超音波などの方法を相談します。すべての方に同じ検査を行うわけではありません。
ひどい生理痛の治療
治療は鎮痛薬だけではありません。痛みの程度、月経量、背景疾患、年齢、妊娠希望に応じて次の選択肢を組み合わせます。
- NSAIDsなどの鎮痛薬
- 低用量・超低用量ピル(LEP)
- 黄体ホルモン製剤
- ミレーナ(LNG-IUS)
- 貧血があれば鉄剤
- 子宮内膜症、腺筋症、筋腫などに対する専門治療・手術
低用量ピルは機能性月経困難症の痛みを軽減し、連続・延長投与では出血と痛みが起きる回数を減らせることがあります。[5]ただし、治療法は安全性と希望を確認して選びます。
ひどい生理痛についてよくある質問
Q. 生理痛がひどいのに超音波で異常なしと言われました
機能性月経困難症は画像に明らかな異常がなくても強い痛みが起こります。また、子宮内膜症には超音波で見えない病変もあります。痛みの経過と治療への反応をみながら再評価します。
Q. 毎月鎮痛薬を飲んでもよいですか?
適した薬を用法どおり数日使用することは一般的な治療です。ただし、毎回効かない、必要量が増える、副作用がある場合は、薬の選び方や背景疾患を見直します。
Q. 生理痛が強いと将来、子宮内膜症になりますか?
強い・持続する生理痛は子宮内膜症を疑う手掛かりですが、必ず子宮内膜症になるという意味ではありません。症状が続く場合は、適切な評価と治療を受けることが重要です。
生理痛について次に読むページ
横浜駅近くでひどい生理痛をご相談になりたい方へ
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~では、痛みを我慢できるかではなく、日常生活への影響と症状の経過を重視します。横浜駅から徒歩6分、女性医師が診察します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断に代わるものではありません。
公開日:2026年8月26日
最終医学確認:2026年8月29日
参考文献
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2026.CQ305.刊行物案内.
- Becker CM, et al. ESHRE guideline: endometriosis. Hum Reprod Open. 2022;2022(2):hoac009. ESHRE.
- National Institute for Health and Care Excellence. Endometriosis: diagnosis and management (NG73). Updated 2024.
- Marjoribanks J, et al. Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(7):CD001751. Cochrane.
- Schroll JB, et al. Combined oral contraceptive pill for primary dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2023;7:CD002120. PubMed.
日付:2026年8月29日 カテゴリー:生理痛
生理痛の検査|内診は必要?超音波で何が分かる?
生理痛の診察で、全員に内診を行うわけではありません。痛みの始まり方、月経量、年齢、性交経験、妊娠の可能性などを確認し、必要に応じて妊娠検査、超音波検査、血液検査を組み合わせます。性交経験がない方や内診に不安がある方は、経腹超音波などから相談できます。
検査の目的は、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、卵巣嚢胞、感染症、貧血など、治療方針が変わる原因を見つけることです。ただし、超音波が正常でも機能性月経困難症はあり、子宮内膜症もすべての病変が画像に写るわけではありません。[1][2]
最初に詳しく伺うこと
- 初経年齢、月経周期、出血日数
- いつから痛むか、月経の何日前から何日目まで続くか
- 学校・仕事・睡眠・家事への影響
- 鎮痛薬の名前、飲む時刻、回数、効き方
- 月経量、血の塊、息切れ・動悸・疲れやすさ
- 性交痛、排便痛、排尿時痛、月経以外の骨盤痛
- 妊娠の可能性、避妊法、妊娠希望
- 発熱、おりものの変化、性感染症の可能性
- 子宮内膜症などの家族歴、手術歴、服用薬
月経日・痛みの点数・出血量・服薬時刻をスマートフォンなどに記録しておくと、診断と治療効果の判定に役立ちます。
生理痛で行う主な検査
| 検査 | 主に確認すること | 全員に必要? |
|---|---|---|
| 妊娠検査 | 妊娠、異所性妊娠などの可能性 | 性交機会、月経の遅れ、急な痛みがある場合など |
| 超音波検査 | 卵巣嚢胞、チョコレート嚢胞、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮の形態など | 症状・年齢・経過に応じて実施 |
| 内診 | 圧痛、子宮・付属器の大きさや動き、おりものなど | 必ずではない。必要性を説明して相談 |
| 血液検査 | 貧血、炎症など。症状に応じて他項目 | 過多月経、発熱、全身症状などがある場合 |
| 性感染症検査 | クラミジア・淋菌など、骨盤内感染の原因 | 性交歴、痛み、おりもの、診察所見に応じて |
| MRI | 腺筋症、深部子宮内膜症、複雑な病変などの詳しい評価 | 超音波や症状から必要な場合に紹介・実施 |
超音波検査で分かること・分からないこと
超音波検査には、腟から細いプローブを入れる経腟超音波と、お腹の上から見る経腹超音波があります。経腟超音波は骨盤内を詳しく観察しやすく、卵巣子宮内膜症性嚢胞や深部子宮内膜症などを確認するために有用です。NICEの2024年更新では、子宮内膜症が疑われる方に経腟超音波を提示し、適さない・希望しない場合は経腹超音波を検討するよう勧めています。[2]
一方、表在性の小さな子宮内膜症病変は画像で確認できないことがあります。超音波が正常でも、症状が強い、治療で改善しない場合は、診断を打ち切らず再評価します。[1]
性交経験がない方・内診が不安な方へ
初診時から必ず腟鏡診や経腟超音波を行うわけではありません。まず問診で症状を確認し、腹部の診察や経腹超音波から始められる場合があります。
経腹超音波は膀胱に尿がたまった状態の方が見えやすいため、検査前の排尿を控えていただくことがあります。経腹超音波で十分に見えず、詳しい評価が必要な場合は、理由と選択肢を説明し、ご本人と相談します。痛みや不安を我慢して検査を受ける必要はありません。
検査が正常でも生理痛は治療できます
子宮や卵巣に明らかな病変がない機能性月経困難症でも、プロスタグランジンによる子宮収縮などで強い痛みが起こります。検査結果が正常であることは「気のせい」「我慢すべき」という意味ではありません。
症状と安全性に応じて、NSAIDs、低用量・超低用量ピル、黄体ホルモン製剤、ミレーナなどで治療します。3〜6か月の適切な治療で改善しない場合は、服薬方法、別の原因、子宮内膜症の可能性を見直します。[3]
腫瘍マーカーだけで子宮内膜症は診断できません
CA125などが子宮内膜症で上昇することはありますが、月経、良性疾患、妊娠などでも変動し、正常でも子宮内膜症を否定できません。NICEは子宮内膜症の診断に血清CA125を使わないよう勧めています。[2]
腫瘍マーカーは、超音波所見や症状などから医師が必要と判断した場合に、目的を説明して行います。
生理痛の検査についてよくある質問
Q. 生理中でも婦人科を受診できますか?
はい。痛みが強い時や緊急性がある時は、出血中でも受診してください。予定検査の内容によっては月経後が見やすいこともあるため、予約時にご相談ください。
Q. 生理痛だけでも内診をされますか?
内診は全員に必須ではありません。年齢、性交経験、症状、緊急性を確認し、必要性と方法をご説明したうえで相談します。
Q. 超音波で異常がなければ子宮内膜症ではありませんか?
いいえ。卵巣のチョコレート嚢胞や深部病変は見つかることがありますが、表在性の病変は写らないことがあります。症状や治療への反応も含めて判断します。
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横浜駅近くで生理痛の検査をご希望の方へ
内診や痛みへの不安も含めてお伝えください。横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
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公開日:2026年8月26日
最終医学確認:2026年8月29日
参考文献
- Becker CM, et al. ESHRE guideline: endometriosis. Hum Reprod Open. 2022;2022(2):hoac009. ESHRE.
- National Institute for Health and Care Excellence. Endometriosis: diagnosis and management (NG73). Updated 2024.
- ACOG Committee Opinion No. 760. Dysmenorrhea and Endometriosis in the Adolescent. Obstet Gynecol. 2018;132:e249-e258. PubMed.
日付:2026年8月29日 カテゴリー:生理痛
生理痛の治療|痛み止め・ピル・黄体ホルモン・ミレーナ
生理痛の治療は、鎮痛薬だけではありません。NSAIDs、低用量・超低用量ピル(LEP)、黄体ホルモン製剤、ミレーナなどから、痛み・出血量・背景疾患・妊娠希望・安全性・生活に合う方法を選びます。子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などがあれば、その病気に応じた治療も検討します。[1]
「痛み止めは根本治療にならないから我慢する」「ピルは怖いから使えない」と一律に考える必要はありません。それぞれのメリットと注意点を理解し、治療目標に合う方法を選ぶことが大切です。
生理痛の主な治療法を比較
| 治療 | 期待する効果 | 主な注意点 | 向いていることが多い方 |
|---|---|---|---|
| NSAIDs | 痛みの原因となるプロスタグランジン産生を抑える | 胃腸・腎臓・喘息・アレルギー、併用薬 | 月経時の数日だけ治療したい方 |
| アセトアミノフェン | 痛みを軽くする | 過量、肝機能、配合薬との重複 | NSAIDsが使いにくい方など |
| 低用量・超低用量ピル(LEP) | 子宮内膜を薄くし、痛み・出血を軽減。周期・出血日も管理 | 毎日服用、血栓症、頭痛・吐き気・不正出血など | 周期管理、PMS・ニキビなども相談したい方 |
| 黄体ホルモン製剤 | 子宮内膜症に伴う痛みなどを軽減 | 不正出血、製剤ごとの副作用 | エストロゲンを含む薬が適さない方など |
| ミレーナ(LNG-IUS) | 最長5年間、月経量と生理痛を軽減 | 挿入処置、初期の不正出血、位置ずれ・脱出など | 過多月経、飲み忘れを避けたい方、長期治療を希望する方 |
| 手術・専門治療 | 筋腫、嚢胞、深部病変などの原因を治療 | 侵襲、再発、妊娠への影響を個別評価 | 薬で不十分、病変が大きい、緊急性がある方など |
優劣は一つではありません。まず鎮痛薬で十分な方もいれば、痛みが毎月の生活を妨げるためホルモン治療が合う方、過多月経を伴うためミレーナが合う方もいます。
痛み止め(NSAIDs)の使い方
イブプロフェン、ロキソプロフェンなどのNSAIDsは、月経困難症の痛みに有効な標準治療です。Cochraneレビューでは、プラセボより痛みを軽減しましたが、胃腸症状などの有害事象も増えました。どのNSAIDsが常に最も優れるかは明確ではありません。[2]
鎮痛薬は痛みが最高潮になってからより、月経開始または痛みが始まる時点で使う方が効果を得やすいことがあります。月経日が予測できる方は医師の指示のもと、痛みが強くなる前から使用することもあります。
- 商品名ではなく有効成分を確認し、重複服用を避ける
- 用法・用量を守り、自己判断で増量しない
- 胃潰瘍、腎疾患、喘息、アレルギー、妊娠の可能性、抗凝固薬などがある方は事前に相談する
- 毎月効かない場合は、我慢や増量ではなく診断と治療を見直す
低用量・超低用量ピル(LEP)
ピルは排卵を抑え、子宮内膜を薄く保つことで、月経時に作られるプロスタグランジンや出血量を減らし、生理痛を軽くします。Cochraneレビューでは、低用量ピルは機能性月経困難症に有効でした。[3]
毎月の消退出血を起こす周期投与と、実薬を長く続けて出血回数を減らす連続・延長投与があります。連続投与は、出血や痛みが起きる日数を減らす点で有利な可能性がありますが、不正出血が起こることがあります。[3][4]
エストロゲンを含むピルは、血栓症の既往、前兆のある片頭痛、年齢と喫煙状況などによって適さない場合があります。処方前に血圧、既往歴、家族歴、喫煙、頭痛を確認します。[5]
黄体ホルモン製剤
ジエノゲストなどの黄体ホルモン製剤は、子宮内膜症に伴う痛みの治療などに用います。エストロゲンを含まないため、エストロゲン配合薬が適さない方にも選択肢となります。
一方、不正出血が続くことがあります。製剤により適応、用量、費用、副作用が異なるため、病気の有無と治療目的に合わせて選びます。子宮内膜症のホルモン治療は痛みを軽減し、治療終了後の将来の妊孕性へ永続的な悪影響を与えるものではないと説明されています。[6]
ミレーナ(LNG-IUS)
ミレーナは子宮内に装着し、レボノルゲストレルを放出する子宮内システムです。日本では避妊だけでなく、過多月経と月経困難症に適応があり、最長5年間使用します。子宮内膜を薄くすることで月経量と生理痛を軽くします。[7]
主な作用は子宮内ですが、ホルモンの血中移行はゼロではありません。「全身副作用が絶対にない」とは言えません。また、挿入時の痛み、数か月続くことがある不正出血、位置ずれ・脱出、感染、まれな穿孔などを事前に説明します。
温める・運動・生活上の工夫
腹部を温める、無理のない運動、睡眠を整えることが補助になる方もいます。運動は生理痛を軽くする可能性が報告されていますが、研究の質には限界があります。[8]
生活改善だけで強い生理痛を我慢する必要はありません。また、「冷えを治せば根本治療になる」と一般化することもできません。生活上の工夫と、効果が確認された薬物治療を必要に応じて組み合わせます。
治療を選ぶ時に確認すること
- 痛みだけか、過多月経、PMS、ニキビなども治療したいか
- 毎日薬を飲めるか、長期に手間の少ない方法を希望するか
- 出血日を調整したいか、出血回数を減らしたいか
- 近い将来の妊娠希望があるか
- 前兆のある片頭痛、血栓症、喫煙、高血圧、肝疾患などがないか
- 子宮内への挿入処置を希望できるか
生理痛の治療についてよくある質問
Q. 痛み止めは対症療法だから飲まない方がよいですか?
いいえ。NSAIDsは痛みの原因に関わるプロスタグランジン産生を抑える標準治療です。効きにくい場合は我慢せず、服用時期や別の治療を見直します。
Q. ピルは何か月で効きますか?
最初の周期から軽くなる方もいますが、数周期かけて痛みや出血が変化することがあります。3〜6か月適切に使用しても改善しない場合は、薬の種類や背景疾患を再評価します。
Q. 生理痛の治療で保険は使えますか?
月経困難症の診断で処方するLEPや、過多月経・月経困難症に対するミレーナなど、保険適用となる治療があります。症状、診断、薬剤により異なるため診察時にご確認ください。
治療法を詳しく選ぶ
横浜駅近くで生理痛の治療をご相談になりたい方へ
痛みの強さだけでなく、月経量、PMS、妊娠希望、既往歴、生活上の希望を伺って治療を選びます。横浜駅から徒歩6分、女性医師が診察します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日:2026年8月29日
最終医学確認:2026年8月29日。
本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2026.CQ305.刊行物案内.
- Marjoribanks J, et al. Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(7):CD001751. Cochrane.
- Schroll JB, et al. Combined oral contraceptive pill for primary dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2023;7:CD002120. PubMed.
- Damm T, et al. Continuous vs. cyclic combined hormonal contraceptives for treatment of dysmenorrhea: a systematic review. Contracept X. 2019;1:100002. PubMed.
- CDC. U.S. Medical Eligibility Criteria for Combined Hormonal Contraceptives. 2024.
- National Institute for Health and Care Excellence. Endometriosis: diagnosis and management (NG73). Updated 2024.
- PMDA.ミレーナ52mg 医療用医薬品情報.
- Armour M, et al. Exercise for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2019;9:CD004142. Cochrane.
日付:2026年8月29日 カテゴリー:生理痛
ピルは生理痛に効く?効果・副作用・いつから効くか
低用量・超低用量ピル(LEP)は、生理痛を軽くする効果が確認されている治療です。排卵を抑えて子宮内膜を薄く保ち、月経時のプロスタグランジンと出血量を減らすことで痛みを軽減します。数周期かけて改善することがあり、周期投与と連続・延長投与から症状に合う方法を選びます。[1]
ピルが適しているかは、年齢、血圧、喫煙、片頭痛、血栓症リスク、既往歴などで異なります。「生理痛には全員ピル」ではなく、鎮痛薬、黄体ホルモン製剤、ミレーナなども含めて選びます。
※一般の方向けに、エストロゲンとプロゲスチンを含むOC・LEPをまとめて「ピル」と表記します。避妊目的のOCと月経困難症治療のLEPでは、適応・保険の扱いが異なります。
ピルはなぜ生理痛に効くのですか?
機能性月経困難症では、子宮内膜で作られるプロスタグランジンが子宮を強く収縮させ、痛み、吐き気、下痢などを起こします。
ピルを服用すると排卵と大きなホルモン変動が抑えられ、子宮内膜が厚くなりにくくなります。その結果、出血量とプロスタグランジンが減り、子宮の収縮と痛みが軽くなります。Cochraneレビューでは、配合ピルは機能性月経困難症の痛みを軽減しました。[1]
ピルはいつから生理痛に効きますか?
最初の服用周期から軽くなる方もいますが、出血量や痛みが安定するまで数周期かかることがあります。飲み始めには不正出血、吐き気、頭痛、乳房の張りなどがみられ、時間とともに軽くなることもあります。
3〜6か月、正しく服用しても痛みが十分改善しない場合は、次の点を見直します。
- 飲み忘れや服用方法に問題がないか
- 製剤や投与方法が症状に合っているか
- 子宮内膜症、腺筋症、筋腫などが隠れていないか
- 痛みが月経以外にも広がっていないか
「効かないから自己判断で倍量にする」「休薬を勝手に変える」のではなく、処方医へご相談ください。
周期投与と連続投与の違い
| 項目 | 周期投与 | 連続・延長投与 |
|---|---|---|
| 出血 | 原則として約4週間ごとに消退出血 | 実薬期間を延ばし、出血回数を減らす |
| メリット | 出血時期を予測しやすい | 痛み・頭痛・不調が起こる回数を減らせる可能性 |
| 注意点 | 休薬期に痛みや頭痛が出ることがある | 途中の不正出血が起こりやすい |
連続・延長投与は月経困難症の痛む日数を減らす可能性がありますが、研究の確実性には限界があります。[1][2]製剤ごとの承認された飲み方に従い、希望と出血パターンを相談して選びます。
ピルは生理痛の根本治療ではないのですか?
ピルは服用中に痛みと出血を抑える治療です。子宮筋腫を消失させたり、すべての子宮内膜症病変をなくしたりする薬ではありません。その意味では原因によって「根治薬」ではない場合があります。
しかし、痛みで生活が妨げられる日を減らし、症状をコントロールすること自体が重要な治療です。「根本治療ではないから意味がない」ということではありません。病変がある場合は、症状、妊娠希望、病変の状態に応じて手術や他の薬を検討します。
ピルをやめたら生理痛は戻りますか?
ピルで症状が抑えられていた場合、中止後に排卵と自然月経が再開すると、生理痛が戻ることがあります。これはピルで体が悪くなったためではなく、薬で抑えていた症状が再び現れたものです。
中止後の状態は、もともとの生理痛の原因、年齢、子宮内膜症などの経過によって異なります。妊娠希望や副作用で中止する際は、次の治療や痛み止めの使い方も相談すると安心です。
ピルで将来妊娠しにくくなりませんか?
ピルの適切な使用が将来の不妊の原因になるという根拠はありません。避妊法中止後の妊娠をまとめた系統的レビューでは、経口避妊薬の使用期間や種類による妊孕性回復への明らかな悪影響は認められませんでした。[3]
中止後すぐに排卵・妊娠する可能性があります。妊娠を希望しない場合は、中止日から別の避妊が必要です。妊娠しにくさがある場合は、ピルより、もともとの子宮内膜症、年齢、卵管、精子などの要因を分けて評価します。
ピルの主な副作用と血栓症
飲み始めには、不正出血、吐き気、頭痛、乳房の張りなどが起こることがあります。多くは時間とともに軽くなりますが、生活に支障がある場合は製剤変更などを相談します。
まれですが重要な副作用が血栓症です。次の症状があれば服用を中止し、速やかに救急医療機関を受診してください。
- 片脚の急な痛み・腫れ
- 突然の息切れ、胸痛
- 突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、手足の脱力
- 急な視力障害
前兆のある片頭痛、血栓症の既往、35歳以上で喫煙する方などでは、配合ピルが適さないことがあります。[4]黄体ホルモン製剤やミレーナなど、エストロゲンを含まない選択肢もあります。
生理痛でピルを希望する時の診察
問診、血圧測定、頭痛・喫煙・血栓症リスクの確認を行います。生理痛の経過や月経量から必要と判断した場合は、超音波検査や血液検査を提案します。全員に一律の内診や腫瘍マーカー検査が必要なわけではありません。
痛みだけでなく、出血日を調整したい、PMSやニキビも相談したい、毎日の服用が難しいなどのご希望をお伝えください。
生理痛とピルについてよくある質問
Q. 10代でも生理痛にピルを使えますか?
初経後で、骨成長や既往歴などを確認し、医学的に適していれば選択肢になります。年齢だけで一律に不可ではありません。
Q. ピルを飲むと毎月の生理はなくなりますか?
周期投与では休薬・偽薬期間に消退出血が起こります。連続・延長投与では出血回数を減らせますが、途中で不正出血することがあります。
Q. ピルとミレーナ、どちらが生理痛に効きますか?
どちらも月経困難症の治療に使われます。ピルは周期・出血日の管理や全身症状にも向き、ミレーナは過多月経と長期管理、飲み忘れ回避に向きます。安全性と希望で選びます。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年8月29日。
本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- Schroll JB, et al. Combined oral contraceptive pill for primary dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2023;7:CD002120. PubMed.
- Damm T, et al. Continuous vs. cyclic combined hormonal contraceptives for treatment of dysmenorrhea: a systematic review. Contracept X. 2019;1:100002. PubMed.
- Girum T, Wasie A. Return of fertility after discontinuation of contraception: a systematic review and meta-analysis. Contracept Reprod Med. 2018;3:9. PubMed.
- CDC. U.S. Medical Eligibility Criteria for Combined Hormonal Contraceptives. 2024.
日付:2026年8月29日 カテゴリー:生理痛
ピルを休薬せずに飲み続けるとどうなる?連続服用を解説
連続・延長投与用のピルを、決められた方法で休薬せずに飲み続けても、子宮に血がたまることはありません。ピルは子宮内膜を薄く保つため、毎月出血を起こす医学的必要はありません。連続服用では、消退出血と生理痛が起こる回数を減らせる一方、途中の不正出血が起こりやすいという特徴があります。[1][2]
ただし、どのピルも自己判断で同じように連続服用できるわけではありません。製剤ごとに承認された用法が異なります。飲み忘れや出血時の対応を含め、処方時の説明と添付文書に従ってください。
※この記事では、月経困難症治療に使う低用量・超低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を、一般的な呼び方として「ピル」と表記します。
周期投与と連続・延長投与の違い
| 項目 | 周期投与 | 連続・延長投与 |
|---|---|---|
| 実薬の飲み方 | 21日または24日など、製剤ごとの期間で服用後に休薬・偽薬 | 実薬を通常より長く続け、決められた時点で休薬 |
| 出血 | 原則として約4週間ごとに消退出血 | 出血回数を減らせるが、途中で不正出血することがある |
| 向く症状 | 定期的な出血を希望、出血日を予測したい | 生理痛、休薬期の頭痛・不調、出血日数を減らしたい |
ピル服用中の休薬・偽薬期間に起きる出血は、排卵後の自然月経ではなく、ホルモン量が下がることで起きる「消退出血」です。毎月の休薬は健康のために不可欠な仕組みではなく、歴史的に自然な周期を模して設定された経緯があります。[1]
休薬しないと子宮に血がたまりますか?
血はたまりません。ピルは子宮内膜を厚くしにくくします。出血の材料となる内膜自体が薄く保たれるため、出血しない期間の血液や老廃物が子宮内に蓄積するわけではありません。
数か月出血がなかった後に、数か月分が一度に出るわけでもありません。また、毎月出血することに「デトックス」の医学的効果はありません。
ただし、不正出血が続く、急に出血量が増えた、強い腹痛がある、飲み忘れや妊娠の可能性がある場合は、自己判断で放置せず処方医へご相談ください。
ピルを連続服用する主なメリット
- 消退出血が起こる回数を減らせる
- 生理痛や腰痛、吐き気などが起こる日数を減らせる可能性がある
- 休薬期の頭痛や体調不良が起こる回数を減らせる可能性がある
- 年間の出血日数・総出血量を減らせることがある
- 仕事、学校、旅行、スポーツへの月経の影響を減らしやすい
2023年のCochraneレビューでは、連続投与は標準的な周期投与より月経困難症に有効である可能性が示されました。ただし、長期的な比較データには限界があります。[2]別の系統的レビューでも、連続投与は痛む日数を減らす可能性がある一方、エビデンスの質は低いとされています。[3]
「連続服用をすれば、将来の子宮内膜症発症を確実に予防できる」とは言えません。子宮内膜症に伴う痛みの治療や、手術後の痛みの再発抑制にホルモン治療を使うことと、症状のない方の将来発症を保証して防ぐことは分けて考えます。[4]
連続服用のデメリット・不正出血
最も多い困りごとは、実薬を飲み続けている途中の不正出血や点状出血です。特に開始後数か月は起こりやすく、時間とともに減る方もいます。出血が起きたことだけで、薬が効いていない、病気が悪化したとは限りません。
一方、次のような場合は診察が必要です。
- ナプキンが短時間でいっぱいになる大量出血
- 強い腹痛、発熱、悪臭のあるおりものを伴う
- 飲み忘れがあり、妊娠の可能性がある
- 長く安定していたのに急に出血パターンが変わった
- 処方どおり休薬しても出血が長引く
連続投与に使う主なピルと飲み方
以下は日本で月経困難症などに使われる代表例です。実際の服用は処方された製剤の説明に従ってください。
ヤーズフレックス・ドロエチフレックス
1日1錠を服用し、開始後24日目までは出血の有無にかかわらず継続します。25日目以降に3日間連続して出血・点状出血がみられた場合、または連続服用が120日に達した場合は、翌日から4日間休薬します。4日間の休薬後は、出血が続いていても5日目から服用を再開します。[5]
ドロエチフレックス配合錠「バイエル」は、2026年8月17日に発売されたヤーズフレックス配合錠のオーソライズドジェネリックです。当院では院内処方を取り扱っています。
ジェミーナ
製剤には周期投与と77日間の延長投与の用法があります。処方されたシートと指示に従い、休薬期間や切り替えを自己判断で変更しないでください。
「ドロエチの偽薬を飛ばす」など、承認された用法と異なる飲み方を希望する場合も、自己判断ではなく医師へご相談ください。
出血がないと妊娠に気づけないのでは?
消退出血があることだけで妊娠を完全に否定できず、出血がないことだけで妊娠とも限りません。連続服用中でも、飲み忘れ、嘔吐・下痢、相互作用のある薬などで効果が下がる可能性があります。
飲み忘れがあり性交した、妊娠症状がある、休薬しても出血がないなど心配があれば、妊娠検査の時期と服用継続について処方医または薬剤師へ確認してください。
連続服用は血栓症リスクをなくす方法ではありません
休薬を減らしても、エストロゲンを含む配合ピルであることは変わりません。血栓症の既往、前兆のある片頭痛、年齢と喫煙状況などにより使用できない場合があります。[6]
片脚の急な痛み・腫れ、突然の息切れ・胸痛、突然の激しい頭痛、手足の脱力、急な視力障害があれば、服用を中止し救急医療機関を受診してください。
ピルの連続服用についてよくある質問
Q. 休薬しないと血がたまりますか?
たまりません。ピルで子宮内膜が薄く保たれるため、出血しない期間の血液や老廃物が蓄積することはありません。
Q. 不正出血が出たら、すぐ休薬してよいですか?
製剤と服用日数によって対応が異なります。ヤーズフレックス・ドロエチフレックスでは、開始後24日目までは原則として服用を続け、25日目以降の出血条件に従います。自己判断せず処方時の指示を確認してください。
Q. ずっと休薬しない方が内膜症予防になりますか?
連続投与は痛みや出血日数を減らせる可能性がありますが、将来の子宮内膜症発症を確実に予防すると断定はできません。治療目的と製剤の用法に合わせます。
Q. 毎月出血がないと体に悪くありませんか?
ピル服用中の消退出血を毎月起こす医学的必要はありません。ただし、製剤ごとに定められた休薬・服用方法を守ることが必要です。
横浜駅近くでピルの連続服用をご相談になりたい方へ
現在の症状、休薬期の不調、不正出血、希望する出血回数を伺い、製剤と飲み方をご提案します。横浜駅から徒歩6分、女性医師が診察します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年8月29日。
本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- American College of Obstetricians and Gynecologists. General Approaches to Medical Management of Menstrual Suppression: ACOG Clinical Consensus No. 3. Obstet Gynecol. 2022;140:528-541. PubMed.
- Schroll JB, et al. Combined oral contraceptive pill for primary dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2023;7:CD002120. PubMed.
- Damm T, et al. Continuous vs. cyclic combined hormonal contraceptives for treatment of dysmenorrhea: a systematic review. Contracept X. 2019;1:100002. PubMed.
- Becker CM, et al. ESHRE guideline: endometriosis. Hum Reprod Open. 2022;2022(2):hoac009. ESHRE.
- ドロエチフレックス配合錠「バイエル」電子添文.2026年8月改訂.添付文書.
- CDC. U.S. Medical Eligibility Criteria for Combined Hormonal Contraceptives. 2024.
日付:2026年8月29日 カテゴリー:生理痛
生理痛にはピルとミレーナ、どちらがよい?違いを比較
生理痛にはピルもミレーナも有効な選択肢ですが、向いている症状と負担が異なります。出血日を調整したい、排卵を抑えたい、PMSなどの周期症状も相談したい方にはピルが合うことがあります。毎日の服薬を避けたい、過多月経を長期間治療したい、エストロゲンを含む薬が適さない方にはミレーナが合うことがあります。
「どちらが強いか」ではなく、治療したい症状、血栓症リスク、挿入処置への希望、妊娠希望の時期、飲み忘れの可能性で選びます。[1][2]
先に結論:ピル向き・ミレーナ向きの目安
ピルが向くことが多い方
- 生理痛を軽くし、出血日や周期も調整したい
- 連続・延長投与で出血回数を減らしたい
- 排卵前後や休薬期の症状、ニキビなども含めて相談したい
- 子宮内への挿入処置を希望しない
- 毎日の服用を続けられる
ミレーナが向くことが多い方
- 生理痛に加えて過多月経が強い
- 毎日の服薬や飲み忘れを避けたい
- 最長5年間の長期治療を希望する
- エストロゲンを含む配合ピルが適さない、または希望しない
- 避妊も同時に希望する
ピルとミレーナの違いを比較
| 比較項目 | ピル(主にOC・LEP) | ミレーナ(LNG-IUS) |
|---|---|---|
| 使い方 | 毎日1錠服用 | 子宮内に装着 |
| 使用期間 | 服用を続けている間 | 最長5年間 |
| 生理痛 | 軽減が期待できる | 軽減が期待できる |
| 過多月経 | 月経量を減らす | 月経量を大きく減らすことが期待できる |
| 出血日の調整 | しやすい。連続投与で回数を減らす方法もある | 狙った日に出血させる方法ではない。初期は不規則 |
| 排卵 | 配合ピルでは通常抑える | 排卵が続く方が多い |
| PMS・周期症状 | 製剤・症状により改善することがある | 排卵変動が残るため、主目的には向かないことがある |
| 主な負担 | 毎日の服薬、飲み忘れ | 挿入・除去の処置 |
| よくある困りごと | 不正出血、吐き気、頭痛、乳房の張り | 初期の不正出血、挿入時痛、下腹部痛 |
| 重要なリスク | エストロゲン含有製剤では血栓症 | 位置ずれ・脱出、感染、まれな穿孔 |
| 妊娠希望時 | 服用を中止 | 除去する |
| 費用・保険 | 治療用LEPは保険適用となる場合。毎月・数か月ごとに処方 | 月経困難症・過多月経なら保険適用となる場合。初回処置の負担 |
※日本では、避妊目的のOCと、月経困難症などの治療目的で使うLEPは承認上の位置づけが異なります。保険診療のLEPを「避妊薬」として一括説明せず、治療目的・製剤を確認します。
生理痛と過多月経にはどちらがよい?
ピルは機能性月経困難症の痛みを軽減する効果が確認されています。[3]ミレーナも日本で月経困難症と過多月経に適応があり、子宮内膜を薄くすることで症状を軽くします。[2]
痛みが中心で、出血日を調整したい方はピルが使いやすいことがあります。過多月経が強く、長期に月経量を減らしたい方はミレーナが合うことがあります。子宮内腔を変形させる筋腫などがある場合、ミレーナが適さない・脱出しやすいことがあるため、超音波で確認します。
PMS・精神的不調・ニキビも治したい場合
配合ピルは排卵を抑えてホルモン変動を小さくするため、製剤と症状によってはPMS・PMDD、休薬期の頭痛、ニキビなどが改善することがあります。ただし、すべての症状に同じ効果があるわけではなく、前兆のある片頭痛では配合ピルが使えません。[4]
ミレーナは排卵が続く方が多く、PMS・PMDDや排卵関連症状を確実に抑える治療ではありません。生理痛と過多月経が軽くなることで気分の負担が間接的に減る方はいますが、気分変化を副作用として感じる可能性もあります。
全身副作用・血栓症で比べる
エストロゲンを含む配合ピルでは、まれですが血栓症が重要な副作用です。血栓症の既往、前兆のある片頭痛、年齢と喫煙状況、高血圧などで適否を判断します。[4]
ミレーナはエストロゲンを含まず、配合ピルと同じ血栓症リスク評価を必要としません。ただし「全身作用がない」わけではなく、レボノルゲストレルの血中移行は限られるもののゼロではありません。また、挿入に伴う位置ずれ・脱出、感染、まれな穿孔など、ピルにはないリスクがあります。
出産経験がなくてもミレーナを選べますか?
未経産でもミレーナは選択肢になります。CDCのガイダンスでも、IUDは若年者・未経産者を含め使用できる方法とされています。[5]
ただし、出産経験がない方では挿入時の痛みが強い、子宮の入口が通りにくいことがあります。「ほとんど痛くない」「必ず無麻酔で入る」とは言えません。子宮の形、出血・感染の有無、処置への希望を確認して相談します。
将来の妊娠への影響
ピルもミレーナも可逆的な方法です。ピルは中止後、ミレーナは除去後に妊娠を目指せます。避妊法中止後の妊娠をまとめた研究では、経口避妊薬や子宮内避妊法の使用が妊孕性の長期低下につながるという明らかな証拠はありませんでした。[6]
一方、生理痛の原因である子宮内膜症や年齢などが妊孕性に影響することがあります。妊娠希望の時期が近い場合は、薬・器具だけでなく背景疾患の評価も行います。
迷った時の選び方
- 最も改善したい症状を決める:痛み、出血量、PMS、周期調整
- 安全性を確認する:片頭痛、血栓症、喫煙、血圧、感染・出血、子宮形態
- 生活上の負担を比べる:毎日の服薬か、挿入処置か
- 妊娠希望の時期と治療期間を確認する
- 初期の不正出血や副作用を許容できるか考える
どちらかを一度選んだら変更できないわけではありません。副作用、治療効果、希望の変化に応じて、ピルからミレーナへ、またはミレーナから別の治療へ変更できます。
ピルとミレーナについてよくある質問
Q. 40代なら必ずミレーナの方がよいですか?
年齢だけでは決まりません。喫煙、片頭痛、血圧、血栓症リスク、過多月経、子宮の状態、妊娠希望を確認して選びます。
Q. ミレーナならホルモン副作用はゼロですか?
ゼロではありません。主な作用は子宮内で血中移行量は限られますが、頭痛、気分変化、乳房症状、皮膚症状などが起こる可能性があります。
Q. ピルとミレーナを同時に使うことはありますか?
通常の月経困難症治療で常に併用するわけではありません。特定の症状や出血への対応で一時的に別のホルモン薬を使うことはありますが、医師が目的と安全性を確認します。
横浜駅近くでピル・ミレーナをご相談になりたい方へ
治療したい症状と生活上の希望を伺い、両方のメリット・デメリットをご説明します。横浜駅から徒歩6分、女性医師が診察します。
ピル・月経困難症の相談はWEB予約をご利用いただけます。ミレーナの挿入予約はお電話(045-440-5577)でご相談ください。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年8月28日。
本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方・処置に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2026.CQ305・CQ403.刊行物案内.
- PMDA.ミレーナ52mg 医療用医薬品情報・電子添文.2026年8月改訂.
- Schroll JB, et al. Combined oral contraceptive pill for primary dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2023;7:CD002120. PubMed.
- CDC. U.S. Medical Eligibility Criteria for Combined Hormonal Contraceptives. 2024.
- CDC. Intrauterine Contraception: U.S. Selected Practice Recommendations. 2024.
- Girum T, Wasie A. Return of fertility after discontinuation of contraception: a systematic review and meta-analysis. Contracept Reprod Med. 2018;3:9. PubMed.
日付:2026年8月28日 カテゴリー:子宮内避妊具,生理痛










