婦人科の病気

 

不妊が心配な時はまずご相談下さい

 「不妊の相談」にいらっしゃる患者様には、すでに妊娠を目指してから2年以上たっている本当の「不妊症」の方と、まだ妊娠を目指し始めて間もないあるいはこれから妊娠を目指したいのだけど「何となく不妊症じゃないか心配」という方がいらっしゃいます。
 どちらの場合も、まずは不妊症の基本的な検査を行ってその後の治療方針を決めていきます。
 「不妊症」の定義に当てはまらなくても、より効率よく妊娠を目指したいと思ったら、早い段階で婦人科に行くのは選択の一つとしてありなんですよ。
 もちろん、30歳以下でまだ年齢的にそれ程あせる必要がない方の場合、月経が順調で特に婦人科の病気をしたことがなければ、まずは基礎体温をつけながら1年くらい自然に任せても全然問題ありません。
 人によっては、病院で検査を受けたり、排卵の時期のタイミング指導を受けたりすること自体がプレッシャーになってしまうという方もいらっしゃいますからね。
 ただ、一度も婦人科検診を受けたことがない方や、月経不順の方は、妊娠したいなと思ったら一度はきちんと検査を受けておいた方が安心です。
 また、35歳以上の方は、「自然」にこだわりすぎるあまり1年や2年を無駄に過ごしてしまうということはできれば避けた方がいいでしょう。
 不妊の相談をしたからといってすぐにあれこれ治療をしなければいけないわけではありません。
 検査で大きな異常がないかを確認し、タイミング法だけで様子を見れそうなのか、排卵誘発剤を使った方がいいのかなどの「見通し」を立てていくことが大事なんです。
 いきなり検査をしたり、治療の選択をするのはちょっと・・・でも、不妊症について気になる、という方には「不妊カウンセリング」も行っています。
 不妊カウンセリングは、不妊症の検査や治療にはどのようなものがあって、どういったタイミングで何を行っていったらいいのかをお話しする特殊外来です。
 お話しのみの場合自費診療になりますが、まずは話だけ聞きたいという場合もお気軽にご相談くださいね。

日付:2010年10月19日  カテゴリー:不妊症,診療メニュー紹介

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多のう胞性卵巣症候群とは

 多のう胞性卵巣症候群(PCOS)とは、卵巣の中で卵の元=卵胞がうまく育たず、きちんと排卵しないために月経不順や不妊症の原因となる病気です。

 次のすべての条件に当てはまった場合に、多のう胞性卵巣症候群と診断されます。

 

  1)無月経・月経不順などの症状がある

  2)血液検査(ホルモン値の検査)でLH/FSH > 1

  3)超音波で卵巣の中に10個以上の卵胞が並んでいる(多のう胞性卵巣)所見がある

 

 多のう胞性卵巣症候群の症状として、一番代表的なものが月経不順又は無月経ですが、これらの症状は排卵がうまくいきにくくなるために起きてくるものです。

 排卵障害があるので、少量の出血がダラダラ続いたり、月経周期がもともと不規則であまり一定にならないという方が多く見受けられます。

 

 それ以外にも、ホルモンの異常として男性ホルモンの増加やインスリン抵抗性が見られることがあります

 男性ホルモンが増えると、多毛やニキビなどの「男性化兆候」という症状が現れます。あごの周りなどにできやすい大人ニキビがなかなか治らなかったり、口の周りやお尻~太ももの産毛が濃くなったりします。

 

 インスリン抵抗性というのは、血糖値をコントロールしているインスリンというホルモンが有効に働きにくくなることです。そのために、血糖値やコレステロールが高くなったり、太りやすくなったりすることがあります。

 なので、多のう胞性卵巣症候群の症状の中には「肥満」が含まれています。

日付:2010年7月11日  カテゴリー:多のう胞性卵巣症候群,婦人科の病気

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多のう胞性卵巣症候群の治療

 治療の基本は排卵障害に対するものです。

 

 すぐに妊娠の希望がない場合は、月経不順を改善するためにピルでホルモンバランスを整えます。多のう胞性卵巣症候群の方が月経不順のままでいると、子宮体がんのリスクが高くなるということが指摘されています。ピルはこの子宮体がんのリスクを劇的に下げてくれるので、妊娠を希望するまではピルを飲み続けておくことをお勧めしています。

 また、ピルには男性ホルモンを抑える働きのあるものもあるので、ニキビや多毛などの男性化兆候の改善にも有効です。

 

 妊娠の希望がある場合は、排卵誘発を行っていきます。軽度の排卵障害であればセキソビットやクロミッドといった飲み薬で排卵を促します。卵胞の育ちがよくない場合は、注射でもっと強力に卵胞を育てていきます。

 ただし、多のう胞性卵巣症候群の方は、排卵刺激によって卵胞が同時にたくさん育ちすぎてしまう「卵巣過剰刺激症候群」になりやすいので、排卵刺激の強さは慎重に調節していく必要があります。

 

 最近は、インスリン抵抗性があると排卵の妨げになることが分かってきました。そのため、糖尿病の治療薬である「メトホルミン」を単独で又はクロミッドと一緒に使って排卵誘発を行うこともあります。

 インスリン抵抗性は肥満によっても悪化します。なので、適正体重まで減量することも排卵障害を改善するには非常に重要になってきます。肥満の方の場合、体重を5~7%減らすだけでも排卵率が上がるというデータもあります。

 肥満を伴う多のう胞性卵巣症候群の方は、まず適切な食事で体重を減らすことに重点を置いた方がいいでしょう。

日付:2010年7月11日  カテゴリー:多のう胞性卵巣症候群,婦人科の病気

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妊娠したいと思ったらすべきこと

 外来に「不妊の相談」と言っていらっしゃった方に、「避妊しなくなって何年ですか?」と伺うと「半年くらい」という答えが返ってくることも結構あるんです。医学的に「不妊」というのは、妊娠を目指しても1年以上妊娠しない状態をいいます。以前は「2年以上たっても妊娠しない場合」を不妊としていましたが、妊娠を目指し始める年齢が上がってきていることなどを考慮して、「1年」に変更されました。普通は、避妊をしなければ1年で85%、2年で90%の人が妊娠します。なので、1年経っても妊娠しない15%の人が不妊ということになっています。

 最近は、妊娠を目指し始める年齢が高くなっているせいか、「不妊症が増えている!」なんて脅されてしまっているせいか、ちょっとうまくいかないとすぐに「不妊症なんじゃないか」と焦ってしまうようです。もちろん、年齢によっては1年も様子をみていたら妊娠可能年齢を通り越してしまうこともありますから、スタートがゆっくりだった方はのんびりしすぎてもいけないのですが。
 中には、「結婚したのに妊娠しないんです」と相談にいらっしゃって、よくよくお話を伺うと、実は夫婦生活を持っていなかった、というレアケースもあったりします。

 妊娠したいなと思ったら、自分で出来ることは、まず基礎体温をつけることです。不妊治療の最初に挙げられているタイミング法というのは、基礎体温で排卵のリズムをつかんで、排卵のタイミングを狙ってチャンスを持つという方法です。基礎体温をつけ続けていると、ちゃんと排卵していれば、月経と月経のちょうど真ん中辺りで、体温が上がる日があります。一般的には、そのちょっと前の体温が一番下がった日が排卵日なんて言われていますが、体温が上がってから排卵することもあります。
 そもそも、基礎体温をつけてみれば分かりますが、何処が「一番低い」のかは、その日が過ぎてみないと分かりませんから。ただ、つけ続けていると、だいたい何日目で体温が上がるのか、自分のリズムがつかめてきます。そうしたら、そろそろかな、という日と高温期に入った日にチャンスを持てばいいわけです。もちろんそれ以外の日も夫婦生活を持った方が、より妊娠率はたかまります。もし、数か月つけてもイマイチ排卵日が分からないという場合は、ちゃんと排卵しているのか、早いうちに一度婦人科で相談してみた方がいいですね。

 病院で超音波検査をすれば、正確な排卵日が予測できるのですが、病院に行かずよりピンポイントで排卵日を予測したい人にお勧めなのが、最近は薬局でも手に入る「排卵日チェッカー」です。これは、尿中に出るLHという排卵命令のホルモンの濃度を調べる検査です。ちょうど妊娠判定用のスティックと同じ様に、尿をかけてしばらくすると線が現れる仕組みになっています。この排卵日チェッカーを、そろそろかなという日の前日くらいから連日で使用して、途中で「陽性」の反応が出たら、その日から翌日くらいが排卵日と予測できるんです。
 
 病院にかからずに出来ることはここまでですが、これ以外にもっと大切なのが、日々の生活習慣の見直しです。体重オーバーであれば、妊娠前に健康体重くらいまではコントロールしておく方が安全ですし、タバコは完全に禁煙を目指すべきです。それから、腰周りが冷えて血流が悪い状態だと、妊娠しづらくなってしまいますから、冷え症を改善する工夫もしてみてくださいね。

 そして何より、一度も婦人科検診を受けたことの無い方は、検診をして何も異常が無いことを確認してから、妊娠を目指してほしいと思います。
 妊娠を目指したらしばらくは病院にかからず、基礎体温をつけながら様子をみる方がほとんどだと思いますが、「そろそろ」と思った段階で病院に相談しに行った方がベターなケースもあります。例えば、甲状腺の病気などの内科疾患を治療中の方や、握りこぶし大以上の大きさの子宮筋腫がある方など。それから、年齢的に1年も無駄にしたくないという方は、これから妊娠を目指し始めるという時に言ったん婦人科を受診しましょう。

 女性には、妊娠可能な年齢にどうしてもリミットがついて回ります。これは、卵巣にあらかじめ寿命があるためで、医学の技術を総動員すればある程度は伸ばせるものの、やはり限界はあります。最近は35歳以上の、いわゆる高齢初産なんて全然珍しくなくなりましたが、医学的には30歳を過ぎると妊娠率は徐々に下がっていき、35歳以降はその下がり方が急下降になっていきます。

 35歳を過ぎたら、半年経って妊娠しなければ病院で相談したほうがベターでしょう。40歳を超えると自然妊娠はかなり難しくなってきますから、38歳を過ぎて妊娠を目指し始める時は、最初から病院でサポートしてもらった方が効率はいいと言えます。40歳以降で妊娠を目指し始める場合は、あらかじめ高度な不妊治療も視野に入れて、不妊専門の病院へ相談しに行くことをお勧めします。

 クリニックでは、「とりあえず相談だけしてみたい」という方には、不妊カウンセリング(自費でのカウンセリングになります)をお勧めしております。受診していきなり検査や治療を受けるのではなく、ご自身にとってのベストな「妊活法」を知りたいという方は、お気軽にご相談ください。 

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日付:2010年6月10日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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妊娠前に必要なメンテナンス

 将来の妊娠のために、今しておくべきこと、実はいろいろあります。今のうちにしておいた方がいいメンテナンスと、そろそろ妊娠を考えたいと思ったときにしておくべきことを挙げてみました。

1)本当に妊娠を望むまできちんと避妊をする
 当たり前の事ですが、自分で「妊娠したい」と思うまではピルか子宮内避妊具でしっかり避妊しましょう。避妊は女性が自分の手で確実に行うべきものです。最近の中絶手術は、ちゃんとした病院で受けさえすれば非常に安全に受けられるようにはなってきていますが、リスクを負わないにこした事はありません。

2)妊娠を目指すまではコンドームを必ず使う
 コンドームは確実な避妊にはなりませんが、性感染症予防のためには不可欠です。コンドームを外していいのは妊娠を目指す時だけと考えておきましょう。逆に、いざ妊娠を目指すようになったら、コンドームを外す前に「妊娠前検診」の1つとして、ご夫婦で性感染症を一通り調べておく事をお勧めします。

3)毎年婦人科検診を受ける
 20歳を過ぎたら子宮頚がん検診は必須です。それに加えて、1年に1回は超音波の検査を受けて、内膜症や子宮筋腫や卵巣腫瘍がないかどうかチェックしておくといいでしょう。普通の癌検診だけではこれらの病気は発見しにくいんです。超音波検査は非常に多くの情報を得られるので、少々お金がかかってもぜひ毎年受けてくださいね。何もなければ毎年安心できますし、万が一何か病気が見つかっても、早期に対処したり予防的治療を早く開始する事によって、将来の不妊のリスクを下げる事ができます。

4)生活習慣病対策をしておく
 妊娠前からコレステロールが高かったり糖尿病予備軍だったりすると、妊娠をきっかけにそれらが悪化して母子ともに危険な状態になることもあります。また、糖尿病に気付かずにコントロールが悪い状態で妊娠すると、約2割と言う高い確率で奇形が発生するとのデータもあります。特に、血縁の方に糖尿病・高脂血症・高血圧、の方がいる場合は、毎年一般の健康診断を受けて、日々の食事や生活習慣にも気をつけておきましょう。

5)適正体重を維持する
 生活習慣病予防にも通じますが、体重は少なすぎても多すぎてもよくありません。適正体重を維持する事で、ホルモンバランスが悪くなるのも防ぐ事ができますし、妊娠してからの体重管理もしやすくなります。いざ妊娠したいと思ったときに焦らなくてすむように、自分でうまくコントロールできなければお早めに専門家に相談してみてくださいね。

6)風疹抗体価を確認しておく
 妊娠中に風疹に罹ると、「先天性風疹症候群」といって胎児に重篤な奇形が出てしまうことがあります。風疹に罹った事のある方や予防接種をしたことのある方は、妊娠中に風疹にかかる心配がありません。自分が風疹に罹った事があるかどうかはっきりしない方は、一度抗体価を測っておくことをお勧めします。もし抗体がなければ、妊娠を目指す前に予防接種を受けておけば安心ですよ。

7)レントゲン検査と薬の服用は注意しておく
 すでに妊娠を目指している方の場合ですが、後からいらない不安を抱えなくてすむように、妊娠を目指している間はやたらとレントゲン検査を受けたりを飲んだりしないようにしておきましょう。と言っても注意が必要な時期は決まっていますから、そこを外せばいいわけです。レントゲン検査の場合、受けるなら月経周期の10日までが原則です。月経が始まって10日までなら、まだ排卵前ですから、その後妊娠しても放射線の影響は全く心配ありません。ちなみに、例え妊娠に気付かずに、歯や胸のレントゲンをとっても胎児には影響ないといわれています。お薬は、次の月経の予定日を過ぎても月経がこなかったら、そこから飲むのをやめれば問題ありません。次の月経予定日より前、つまり妊娠3週までのお薬は、胎児に影響があれば妊娠は成立しないので心配ありません。

日付:2010年6月9日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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不妊症とは

 最近は35歳以上の初産婦さんも珍しくなくなってきましたが、生物学的に最も妊娠・出産に適している年齢は、実は25~26歳です。30歳を過ぎると妊娠率は徐々に低下していき、35歳を過ぎると急激に下がっていきます。初婚年齢がどんどん上がるにつれて、妊娠を目指すに当たっては不利な条件がどうしても増えてきてしまいます。

  子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科合併症が増える

  糖尿病や高血圧などの内科的合併症が増える

  性感染症による不妊のリスク

  ホルモンのアンバランス

  卵子そのものの劣化などなど・・・・

 性感染症や内膜症やホルモンのバランスに関しては、日頃のメンテナンスや心がけで予防することができますが、加齢に伴う変化は自分ではどうする事もできません。不妊外来に通っている方の最も大きな原因は「加齢」、つまり年齢とともに卵子が妊娠に適さない状態になってしまうわけです。

 医学的に「不妊症」と定義されているのは、2年間普通に妊娠を目指しても妊娠に至らない場合とされています。だいたい、避妊をせずに普通にチャンスを持てば、1年間で85%・2年間で90%の方が妊娠します。つまり、不妊症の検査をして例え何も異常がなくても、2年間妊娠にいたらなかったらその時点で「不妊症」という診断になるんです。

 最近は、年齢的なこともあって、まだ2年経っていないけれど不妊治療を開始したいとご希望される方も増えてきました。確かに、35歳を越えて妊娠を目指し始めた場合、ある程度効率よく妊娠する方法を考えた方が賢明といえます。 

 別にお薬を使うだけが不妊治療ではなくて、漢方で体質を改善しながら基礎体温をつけてチャンスのタイミングを見ていく「タイミング法」も治療のひとつですから、1年経っても妊娠しない場合は早い時期に1度病院で相談してみるといいでしょう。

日付:2010年6月8日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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不妊症の検査

 不妊に関する検査には色々なものがあります。

 病院によって若干メニューは異なってくると思いますが、代表的なものをご紹介していきましょう。

1)基礎体温
 「検査」ではありませんが、非常に重要なデータです。妊娠を目指すなら最低でも3~4ヶ月は続けてつけてみましょう。

2)ホルモン検査
 血液検査でホルモンのバランスを調べます。調べるホルモンは、主に、LH・FSH・プロラクチン・卵胞ホルモン・黄体ホルモン、です。基礎値を調べるには、月経周期の3~5日目に採血をします。黄体ホルモンだけは、高温期に入って1週間目くらいに測るのが理想的です。

3)合併症の検査
 血液検査で、甲状腺機能異常・糖尿病・自己免疫疾患などがないか、おりものの検査でクラミジア感染症がないかを調べます。検査の時期は、月経周期のいつでもかまいません。

4)超音波検査
 子宮の形・大きさ・筋腫やポリープの有無、卵巣の状態を調べます。これも、月経周期のどの時期でもできますが、できれば排卵のちょっと前に診て、「卵胞」という卵の元がどのくらい育っているかを確認できると排卵の時期がある程度予測しやすくなります。

5)子宮卵管造影検査
 子宮の出口から細いチューブを子宮内に入れ、造影剤を流して子宮の形及び卵管の通り具合を調べるレントゲン検査です。レントゲンを使う検査なので、必ず月経後から次の排卵まで(低温期)に行ないます。卵管の通りが悪い場合、検査をすると同時に、造影剤で圧力をかけて卵管を通す治療にもなりますので、毎月ちゃんと排卵があるのになかなか妊娠しないという場合は、この検査を早めに受けておいた方がいいでしょう。
 造影剤の圧力で腹痛を感じる方は、かなりの頻度でいらっしゃいます。特に、卵管が詰まっていたりすると痛みを生じやすいのですが、卵管の通り具合は超音波では分かりませんので、不妊期間が2年以上の方は早めに受けておいた方がいい検査です。

6)フーナーテスト
 排卵の時期にしか行ないません。朝チャンスを持って、すぐに受診していただき、頚管粘液(排卵の時期の増えるおりもの)の中の精子の運動具合を調べる検査です。頻度はそれほど多くないのですが、女性の頚管粘液と男性の精子の相性が悪く、精子が子宮内にたどり着く前に運動できなくなってしまう事があります。
 このテストで、精子の運動が悪くなっている場合、人工授精の対象となります。

7)精液検査
 男性側の検査で、泌尿器科でも産婦人科でもどちらでも受けることができます。不妊症の中で約3割は男性側に原因がありますので、この検査も早い時期にしておいた方がいいですね。中には、なかなかご主人の理解が得られずに検査を受けていただけないというケースもあるのですが、不妊治療は夫婦の二人三脚ですから、ぜひ2人できちんと向かい合っていただきたいな、と思います。

 これ以外にも、必要に応じて、ホルモン負荷テストや腹腔鏡検査をする事があります。検査は保険がきくものと自費のものがありますので、受診前にあらかじめ確認しておくといいでしょう。

日付:2010年6月7日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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不妊症の治療

不妊症の治療には次のようなものがあります。

 

1)タイミング法

 排卵の時期(月経開始から12日~15日くらい)に超音波で卵巣の中の卵(卵胞)の育ち具合を確認し、排卵のタイミングをより正確に予測して夫婦生活のタイミングを合わせる方法です。

 

2)内服薬による排卵誘発

 クロミッドやセキソビットという飲み薬を使って排卵を促す方法です。月経の3日目~5日目から5日間服用します。

 セキソビットの方がクロミッドより排卵を促す力は弱めなので、元々の排卵障害の程度に合わせて使い分けていきます。

 セキソビットの場合多胎になるリスクはほとんどありませんが、クロミッドでは双胎になる確立がわずかに高くなります。

 

3)内服薬と注射薬による排卵誘発

 クロミッドのみでは十分に卵が育たない場合や、卵は育つけれど排卵しない場合に注射を追加して排卵を促す方法です。卵を育てる注射はクロミッドに比べて作用が強いので、卵が複数育ってしまったり、育ちすぎて卵巣全体が腫れてしまったりする(卵巣過剰刺激症候群)ことがあります。

 

4)注射薬による排卵誘発

 クロミッドでは卵の発育が見られない場合に、月経の3~5日目から連日注射を行うことによって排卵を促していく方法です。

 クロミッドのみに比べて多胎になるリスクや卵巣過剰刺激症候群になるリスクが高くなります。

 

5)人工授精

 精液を洗浄・濃縮して、子宮内へ直接注入する方法です。精子の数が少なかったり精子の運動率が悪い場合は人工授精の対象になります。

 また、精液検査に異常がなくても、妊娠率を上げるために体外受精に進む前の段階として行うこともあります。5回以上繰り返しても累積の妊娠率はあまり上がらないため、通常は5~6回までを目処に行っていきます。

 

6)体外受精・顕微授精

 卵巣を刺激して一度に複数の卵を育て、卵巣から採ってきた卵子に精子を受精させて、受精卵を子宮内に戻す方法です。精子が非常に少ない場合や運動率が悪い場合、顕微鏡下で卵子に直接精子を注入する顕微授精を行います。

 体外受精による妊娠率は施設によって異なりますが、1回で約30%です。

 

 一般的には、1の方法から順により効率のいい方法へと徐々に段階を上げていく「ステップアップ」という方法をとります。ただし、年齢的にあまりのんびりできなかったり、元々排卵障害や卵管閉塞などの異常があったりした場合は、必ずしも1から順に段階を追っていかず、いきなり体外受精を選択することもあります。

 

 基礎体温できちんと排卵が確認でき、不妊検査で何の異常もなかった場合、まずは6ヶ月くらいを目処にタイミング法で様子をみます。それでも妊娠に到らない場合、例え自力で排卵していても弱い排卵誘発剤を使うことによって妊娠率が上がるため、内服薬による排卵誘発を6ヶ月行っていきます。それでも妊娠しなければ、人工授精を5~6回行い、最終的には体外受精へと進んでいきます。

 不妊検査で排卵障害やホルモン異常があった場合は、すぐに排卵誘発剤を使ったり、ホルモン異常に対する治療を行います。また、筋腫や子宮内のポリープなど、明らかに不妊の原因となっている病気が見つかった場合はそちらの治療を先に行います。

 

 子宮卵管造影検査で、卵管がつまっている=卵管閉塞という結果だった場合は、ステップアップではなく初めから体外受精を選択するしかなくなります。

 精液検査で異常があった場合も、人工授精または体外受精や顕微授精が初めから必要になります。

 

 どの治療をどのくらい続けるかは、年齢や不妊期間によって異なってきますが、大切なのは漫然と治療を続けるのではなく、適切なタイミングで次のステップに進んでいくことです。

 もちろん、絶対に自然妊娠でなければ受け入れられないという場合は、あえて人工授精や体外受精を行わず、自然に任せるという方法も選択肢の一つです。ただし、その場合は「やっぱり早い段階で体外受精をしておけばよかった」と後から後悔しないように、年齢的なリスクなどきちんと理解した上で納得して選択していくことが重要になってきます。

日付:2010年6月6日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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不妊治療のゴールは?

 不妊治療の現場にいると、どんなにがんばっても赤ちゃんを授かれないケースに遭遇することもあります

 特に、年齢的なタイムリミットを越えてしまっていると、どうにもならないこともあるんですね。
 不妊カウンセリング学会の講義でそういった事例を聞く中で、不妊治療のゴールは「妊娠」ではない、そんなふうに感じたことがありました。
 何というか、「妊娠」しても解決しないものが根っこにあるというか、妊娠しなくてもそれを解決すればゴールが見えるというか・・・

 講義を聞く中で、不妊で悩む方に必要なのは「受け入れと選択」なんだという事に気づきました。
 妊娠しにくいという事実・妊娠できないという事実・妊娠しない自分・妊娠を目指せないパートナー・理解の無い周囲・子どもがいない未来・・・色々否定してきているものを「受け入れる」。そして、「今のままの自分でいいんだ。今のままの自分で十分完璧で何も欠けてはいないんだ」という「自己受容」がなにより大事なんです。

 これって、不妊に限らず、自己否定に陥っているケース全てにいえることなんだとは思います。自分は何かが「欠けている」という認識から、「このままでいいんだ」という認識へ変わっていく、そのプロセスをサポートする必要があるんだと思います。
 「女は産んで一人前」とか「子育てを経験していないと人として未成熟」なんて周りからのプレッシャーは、単なる価値観の押し付けです。そんな声が気にならなくなるくらい、「私は私!」と思えること、これが一番大事なのかなと感じたんですよね。

 そしてもう一つ、「自分で選択した」という実感。これが大事なんです。
 「自然妊娠が望めない」のではなく「積極的に赤ちゃんを迎えにいく」という選択をする。
 「産めない」のではなくて「産まない」という選択をする。
 「子どもがいない人生」ではなく「子どもを作らない人生」を選択する。

 人生の中で、思い通りにならないことなんて、妊娠・出産だけじゃなくてもたくさんあるじゃないですか。それでも、最終的な結論は「自分で選択したんだ」という実感が、自分の人生を積極的に主体的に生きるという意味で必須なんです。
 仕方なく、今の人生を余儀なくされたのではなく、きちんと自分の意思で自分の手で「選び取った」と胸を張れる。そう思えるようになるまで治療や相談にお付き合いしていくことが、不妊治療には必要なんだなと思います。

日付:2010年6月5日  カテゴリー:不妊症,婦人科の病気

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PMSは現代病?!

「月経前症候群(PMS)」」は、排卵後から月経の直前の時期にかけて、さまざまな体調不良や精神的な症状が出て、月経が来たとたんにそれらの症状がすっかり消えてしまう病気です。排卵後から2週間近く具合が悪い人もいれば、月経直前の1日だけ寝込んでしまうという人もいます。

 

最近ようやく女性誌などでも特集が組まれたり、ネットで検索すれば目にすることも増えてきたPMSですが、実は一昔前までは婦人科の教科書にすら載っていませんでした。

昔はこういった病気が全くなかったのかと言うとそうではありません。おそらく「なんだか毎月同じ時期に極端に体調が悪くなるな」とか「生理前だけ性格が変わってしまうみたいだな」と感じていた人はいたはずです。ただ、PMSという病気の概念がなかったので病院で相談しても「精神的なもの」とか「我慢が足りない」といったことで取り合ってもらえなかったのではないかと考えられます。

 

また、昔は月経が来るようになったら数年で子どもを産み始め、立て続けに何人も産んでいたので、妊娠・授乳期間の無月経が頻繁にありました。月経回数が少ない分、月経前の症状に悩まされることも少なかったわけです。

現代は、晩産化・少子化のために一生のうちに迎える月経の回数が極端に増えました。その上、ハードワークや様々なジェンダープレッシャーにさらされているので、ストレスのせいでPMSになる女性は急増しています。そういった意味で、PMSは現代病と言えるでしょう。

 

PMSかどうかの目安は、体調や気分の変化があっても日常生活が普通に送れているか・仕事に影響が出ていないかなど。月経前には誰もが多少体調が悪くなったりイライラしやすくなったりしますが、それらの変化が極端で日常生活に支障をきたしてしまうレベルになるとPMSと言えます。月経が来たとたんにケロっと治ってしまうのが特徴なので、基礎体温をつけながら体調の変化を記録するとPMSなのか自分でも見当をつけやすくなるでしょう。

日付:2010年5月23日  カテゴリー:婦人科の病気,月経前症候群(PMS)

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