婦人科の病気
主な性病
性病=性感染症は、性交渉でうつる感染症全ての総称です。10代から20代前半を中心に広がっており、特に自覚症状が出にくいタイプの病気が蔓延しつつあります。
予防はコンドームを初めから正しく使うこと!これしかありません。診断や治療の方法は感染の種類によって異なります。
・クラミジア感染症
感染力が強く症状がほとんど出ないために、特に女性の感染者が増えています。20-24歳の女性で、症状がない人も含めると6.4%、つまり16人に1人がクラミジアにかかっていることが推定されています。診断方法はおりものの検査か血液検査。治療法は抗生物質の服用です。
・淋病
クラミジアと同様症状が出にくく、また、薬が効かない「耐性菌」が増えているためにじわじわと広がっています。診断方法はおりものの検査のみ。治療は抗生物質を点滴や筋肉注射します。
・性器ヘルペス
「単純ヘルペスウイルス」というウイルスによる感染症です。最近は感染力があるのに自覚症状はない「不顕性感染」が増えているため、特に男性から女性へ気づかずに感染してしまうケースが増えています。
発症すると外陰部に水ぶくれができて尿がしみたり強い痛みが出ます。診断方法は水ぶくれなどの見た目で判断できますが、血液検査や水ぶくれをこすって検査を行なう事もあります。治療は抗ウイルス薬の塗り薬や飲み薬ですが、重症だと点滴が必要になります。
・尖圭コンジローマ
HPVの6型や11型が原因で外陰部や肛門周囲に「イボ」ができる病気です。コンドームで防ぎきれないことがあるのと、再発しやすいので、かかると厄介。イボを見れば一目で診断できます。治療はイボをレーザーや電気メスで切り取るか、塗り薬を一定期間使用します。
・HPV感染症
HPVの中でも子宮頸癌の原因となるハイリスクタイプに感染したら要注意です。性交経験のある女性の7~8割が50歳までに1度はかかると言われているくらいメジャーなウイルス。診断はおりものの検査で行います。
HPVに対する治療薬はありませんが、9割の人は1度かかっても自然に治ります。また、16型・18型を防ぐワクチンが発売されたので、子宮頸がんの6割はワクチンで予防できるようになりました。
・トリコモナス腟炎
細菌よりも大きな「原虫」が感染して炎症を起こします。おりものが泡立ったようになって、強い痒みが出ることが多いのが特徴。おりものを取って顕微鏡を見ればすぐに診断できます。治療は、飲み薬又は腟剤を10~14日間使って行います。
・毛じらみ
陰毛に特有の「しらみ」が毛から毛へ移動して感染します。痒みや点状の出血で気づくことが多い。診断は毛根についている卵か、しらみそのものを見つけること。治療は毛を全部剃ってしまうか、スミスリンパウダーを毛に振り掛けて洗い流します。
・B型肝炎・C型肝炎
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる感染症です。性交渉以外にも輸血や医療行為中の血液との接触などによって感染することもあります。感染してもほとんど症状が出ません。診断は血液検査で行ないます。
・HIV/AIDS
HIVウイルスによる感染症で、ウイルスによって免疫不全を発症した状態が「AIDS」です。先進国の中で唯一日本だけが新規感染者が増えており、1日3~4人の感染者が報告されています。特に、20代~30代では異性間での感染が増えているのが特徴です。
診断は血液検査で行ないます。ウイルスを体から排除する治療薬はありませんが、ウイルスの活動を抑えて発症しないようにすることは可能です。
日付:2010年5月20日 カテゴリー:婦人科の病気,性病
クラミジア
妊娠初期の検査では、必ずクラミジア感染の有無を調べることになっています。クラミジアはセックスによって感染する性病=STDの一種なんですが、自覚症状がほとんどないために知らないうちに感染していることがあります。
感染に気付かず、治療しないままにしていると、お産の時に赤ちゃんに産道感染して、新生児の肺炎や結膜炎を引き起こすことも。だから、お産になる前に感染の有無を調べて、あらかじめ治療するようにしてあるんですね。
このクラミジア、10代や20代前半の女性だと17~20人に1人は感染しているというくらい、メジャーなSTDです。症状が出にくいので検査されていないだけで、実際はもっと多いのではないかと考えられています。
現場での印象でも、過去の感染を含めると10%以上の人が検査で陽性を示すように感じています。これは、妊婦健診と不妊検査に来られた方全員にクラミジアの検査をして発見されたものです。症状を訴えて受診された方からクラミジアが検出される率はもっと高くなります。
クラミジアは妊婦さんだけが注意しなければいけないわけではありません。感染による炎症がお腹の中に広がると、卵管の周りに癒着をおこして、卵管の通りが悪くなることがあります。これらの癒着は、将来の不妊や子宮外妊娠のリスクを高めてしまうんです。10代の頃の感染が、30代になって不妊治療の際に発見される、といったケースも実際にありえるんです。
クラミジアの感染そのものは、適切な抗生物質を飲めば治療可能です。最近は4錠を一度に飲むだけで、治療はできます。でも、いったんお腹の中に起こった癒着は治りません。
クラミジア感染を予防するためには、セーファーセックスを心がける!これしかありません。セーファーセックスとは、不特定多数の人と関係をもたない・コンドームを正しく使う・パートナーと一緒に定期的に検査を受ける、といった心がけで、STDのリスクを出来るだけ下げようというものです。セックスをする限り100%STDを予防することはできません。コンドームでも防ぐことの難しいSTDもあるんです。
ただコンドームを使うだけでは実は不十分で、やはりお互いにきちんと検査を受けておくことが大切だと感じています。
最近はブライダルチェクといって、結婚前に不妊の要素や性感染症がないか調べる検診もあります。結婚して、いざ妊娠を目指したら先に性感染症にかかってしまった、なんて、悲しすぎますからね。
避妊に関して心配する人はまあまあいますが、性感染症に関しては無頓着な人が多いような気がします。性感染症の検査は、特別な人だけがするものではなくて、お互いを思いやって付き合いを深めていく人同士がするものなんですね。
検査をしようと切り出すのは、とっても勇気が要ることかもしれません。初めは誤解を招くかもしれません。でも、もしそういった話をして離れていってしまうような相手なら、きっとその先いい関係は築いていけないんじゃないかしら。自分がどれだけ真剣にお互いのことを考えて、将来のこともちゃんと考えているのか伝えれば、真意は汲み取ってもらえるんじゃないかと思います。
日付:2010年5月20日 カテゴリー:婦人科の病気,性病
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス」というウイルスが外陰部に感染することで起こる性感染症の1つです。このウイルスは、「水疱瘡」の原因ウイルスの親戚みたいなもので、症状や感染後の潜伏の仕方など色々共通点も多いんですよ。ただ異なるのは、性器ヘルペスはその名の通り外陰部にしか感染・発症しないという点。
でも、最近はオーラルセックスが一般化してきたので、この性器ヘルペスのウイルスが口に感染しているケースも増えてきているようです。なので「口唇・性器ヘルペス」と呼ぶ事もあります。
性器同士の接触がなくても、口から性器への感染もありうるので、本人に「心当たり」がなくても感染していることがあるわけです。女性に比べて男性の方が症状が出にくいので、「症状はないけれど人にうつす力はある」ということがありえますから、ちょっとヤッカイなんですよね。
コンドームをしっかり、正しく使用していれば、感染のリスクを下げる事はできますが、ヘルペスもコンジローマも感染の範囲が広いのでコンドームだけでは覆いきれない部分にウイルスがいたら感染する可能性はあります。
主な症状は、外陰部の違和感・痛痒さ・尿がしみる・歩くとこすれて痛い・足の付け根のリンパ節が腫れる、などです。性器に水泡=水ぶくれや、びらん・潰瘍ができるので、ひどくなると痛すぎて歩けなくなったり尿ができなくなったりして入院が必要になることもあります。
初めは何となく痒いかな、という程度で、市販のお薬で様子をみていたけれど改善せずに痛みが出てきた、というパターンが多いですね。市販のお薬で2~3日様子を見ても改善しない場合は、早めに婦人科を受診することをお勧めします。
治療は、抗ウイルス薬の飲み薬や塗り薬です。症状の程度にもよりますが、5~10日間の治療で一旦よくなることが多いですね。塗り薬を塗る時は、素手で患部を触らず、綿棒などでお薬をつけるようにしなければいけません。
よほど密接な接触をしなければ、人にうつす事はありませんから、お風呂につかっても問題ないのですが、症状がある間はお湯がしみたりしますからシャワー程度にしておいた方がいいですね。
よく、プールや温泉で感染することはないのかと聞かれることがありますが、ヘルペスもほかの性病と同様性交渉以外で感染することはほとんどありません。
ただ、症状が出た時期=感染した時期とは限らないので、感染源を特定できないこともよくあります。感染してもしばらく症状がないままで経過し、体力が落ちた時に初めて症状が出ることもあるので、まったく性交渉がない時期に突然症状が出て驚かれる方もいらっしゃるんですよ。
このヘルペスがヤッカイなのは、一度感染するとウイルスを完全に体から排除する事ができないという点です。いったん体に入ったウイルスは、症状が治まっても「神経節」というところにひそんだ状態になるんですね。普段は何も悪さはしませんが、体力が落ちたりして免疫力が下がると、また活動しだして症状が再発します。
再発の場合、初感染の時よりは症状は軽めにすむ事が多いんですが、結構不愉快な症状なのでご本人のQOLは著しく下がってしまいます。できるだけ体力を落とさないようにする事が大切ですが、年に6回以上再発を繰り返してしまうようなケースでは「維持療法」と言って、少量の抗ウイルス薬を飲み続けて再発しなくする方法もありますから、1人で悩まずにまずは婦人科で相談してみてくださいね。
HPV感染
いまや、1日3人の新規HIV感染者が出ているという現実。
20~24歳の女性の15人に1人はクラミジアに感染しているのではないかと予測されています。20代で不妊症になっている女性の約3割からクラミジア抗体が検出されているんですよ。
中でも、最も自覚しにくくて最も広がっているのがHPV感染です。
HIVやクラミジアくらいは高校生でも知っている人が多いと思いますが、HPVについて知っている方はまだまだ少ないのではないでしょうか?
HPVというのは、ヒューマンパピローマウイルスのことで、約100種類の型に分かれているウイルスです。子宮頸部には性的接触でしか感染せず、性交経験のある女性の7~8割は一生に一度は感染すると言われているくらい、非常にポピュラーな性感染症なんですね。専門家の先生は、「風邪のウイルスのようなもの」とおっしゃっていました。
なぜこのHPVが問題になってきているかというと、HPVの「ハイリスクタイプ」に分類される型に感染すると、将来子宮頸癌になるリスクが高くなるからです。ハイリスクタイプには、16型・18型・31型・33型・35型・52型・58型・・・というようにいくつかのタイプが含まれます。
性風俗関係の仕事についている女性=コマーシャルセックスワーカー(CSW)のHPVハイリスクタイプの感染率は、ここ数年でほぼ変わらず、48~61%で推移しているそうです。一方、一般の受診者の中で感染率を調べると、10代で46.7%・20代で21.7%とかなり高いことが分かります。
つまり、性感染症は「風俗嬢だけがかかる病気」じゃなくて、普通の人でもかかりうるものなんです。
例えパートナーが一人であっても、相手が病原菌を持っていれば感染するわけですからね。
10代のうちからHPVに感染していれば、当然将来子宮頸癌になるリスクは高くなります。逆に、HPVにかからなければ子宮頸癌にはほとんどならないと言えます。
ここで誤解していただきたくないのが、感染したからといって必ず癌になるわけでもなければ、子宮頸癌になった人が「性的活動が活発だった」から癌になったわけでもないということです。
HPVは性感染症ですが、癌は感染がきっかけでその後病変が進んだだけですから。癌になることと性的活動の活発さは関係ありません。
実際、HPV感染が「持続するリスク」とパートナーの数は比例しますが、感染による病変が「進行するリスク」はパートナーの数と関係ないというデータも出ています。
HPVに感染しても、それだけでは癌に進んでいきません。感染が持続することで、「異形成」という状態から「上皮内癌」→「進行癌」と進んでいきます。どのくらい感染が持続すると癌になっていくのかというと、5年以上の持続感染によって病変が進んでいくと言われているんですね。
ただ、体には自然な免疫機能というものが備わっていますから、1度感染しても2年以内に90%の人がウイルスが勝手に消えていきます。つまり、10代や20代のうちに約80%の人がいったんHPVに感染するけれど、そのうち10%弱の人だけが30歳以降も感染が持続し、そのうち1~2%の人が癌に進んでいく、というわけです。
このHPV感染に対し、何をすればいいのでしょうか。
できることはたくさんあります。
最も強調すべきことは「早すぎるセックスは危険だ」ということをきちんと教えていくことだと思います。
10代に対して、セックスを禁止することはできません。でも、「先延ばしにすることにメリットはあるよ」と伝えることは大事だと思うんですよね。
もう一つ、今すぐできることは、コンドームによる予防です。感染を予防する方法は、性交渉をしないかコンドームを使うかしかないんですね。
そして、さらに大事なことは、セックスの経験があったら何歳であっても、1年に1回の子宮癌検診を受けることです。検診によって細胞の変化を早いうちに見つけたり、HPVに感染していることが分かれば、癌になってしまう前に適切な治療ができますから。
検診の目的は、癌になる手前もしくはごく初期の癌の段階で発見することで、子宮を残したまま完治することができるようにすること、つまり子宮を失わずに治療をすることなんです。
さらに、これにプラスして有効な予防ができるように、昨年末から接種可能になったのがHPV予防のワクチンです。海外では、主に中学生に、国が公費負担でHPVワクチンの接種をしているんですよ。
日本では2価ワクチン(16型・18型のみを予防するワクチン)が承認・発売されています。まだ公費負担になっている地域はごくわずかなので、ほとんどは自費での接種になるんですけれど。
ワクチンを接種すると、ちょうどインフルエンザの予防接種をしたのと同じように、型が一致するウイルスには感染しません。
臨床試験での有効性は100%で、大きな副作用は見られていません。きちんと接種すれば、終生免疫つまりその後一生16型と18型には感染しない可能性が高いと言われています。
12歳でワクチンを接種すると、約73%の子宮頸癌を予防することができると予想されています。これってすごいことなんですよ。ワクチン予防できる癌なんてそうそうありませんから。
年間8000人が新たに子宮頸癌になり、年間7000人が新たに上皮内癌(癌のごくごく初期)になっているのって、あまり知られていませんよね。乳癌が増えていることは、ピンクリボンキャンペーンなどの効果で結構皆さんご存知なんですが、実は20代や30代の女性の癌の中では、乳がんよりも子宮頸がんが多いんです。
ワクチンを打たないで将来子宮頸癌になった人の治療にかかる医療費などを計算すると、12歳でのワクチン接種代金を国が負担したとしても、190億円の医療費及び労働損失の抑制につながるそうです。
世界では一般的になっているHPVのワクチンが、早く日本でも中学校ですべての女性に接種できるようになって欲しいですね。
HPVワクチンの話しをすると、必ずと言っていいほど聞こえてくるのが「そんなものを中学生に打ったら中学生にセックスを推奨しているようなものじゃないか」というご意見なんですが・・・
それって「ヘルメットをかぶせたら無謀な運転をしてしまうからヘルメットなんかかぶせない方がいい」って言っているようなものです。
有効な予防手段を講じることと、性行動の抑制につながる情報を提供することは全く異なる角度からのアプローチです。若い女性の健康を守るためには、ワクチンもコンドーム教育も性教育も、全部必要なんですよね。
尖圭コンジローマ
クラミジアほど多くはないのですが、時々見かけるのが尖圭コンジローマ。これは、ヒト乳頭腫ウイルス(ヒューマンパピローマウイルス=HPV)というウイルス感染によって、外陰部や子宮頚部などにイボができる性感染症です。専門家が診れば一目で分かる特徴的なイボなんですが、自分でイボに気付ける人は稀です。大抵は何かの検査の際に偶然見付かったり、外陰部のかゆみや灼熱感が気になって受診したらイボを指摘されたというケースがほとんどですね。
コンジローマの厄介なところは、イボの部分に皮膚や粘膜が触れると感染してしまう可能性があるので、イボの場所によってはコンドームで防ぎきれないという点です。一旦発症したら、完全にイボがなくなるまで、性的な接触は控えなければいけません。
また、一度感染したウイルスを完全に無くすことはできないので、3ヶ月以内に約25%の人が再発してしまいます。
主な治療法は、レーザーや電気メスでイボを焼き切るか、軟膏による治療です。
焼いた方がイボそのものは早くなくなりますが、その後新たなイボが出現しないか経過を見ていく必要がありますし、再発に対して軟膏を併用しなければいけないこともあります。どちらにしろ、他の性感染症に比べてしつこいのが特徴です。
もう一つ気を付けなければいけないのが、HPVの「ハイリスクタイプ」に感染すると、子宮頚部の細胞に変化が起きやすく、将来子宮頚癌になるリスクが高くなってしまうということ。
誤解のないように補足しますが、コンジローマにかかった人全てが子宮頚癌になりやすいわけでもなければ、子宮頚癌になった人全てがコンジローマになっていたわけでもありません。コンジローマの原因になるのはHPVの6型や11型の「ローリスクタイプ」。がんの原因となるハイリスクタイプとは種類が異なります。
ただ、複数のタイプに同時に感染しているケースもあるので注意が必要なんですね。癌になりかけの状態(異形成といいます)も含め、子宮頚癌の約8割にハイリスクタイプHPVの感染を認めています。
なので、万が一コンジローマにかかってしまったら、必ず定期的に子宮癌検診を受けるように気を付けましょう。感染してしまったものはどうすることもできませんが、いたずらに不安がる必要もないですよ。ちゃんと指示された間隔で検診を受ければいいわけですから。
コンジローマは先に書いたように、コンドームだけでは予防することは難しい病気です。お互いがちゃんと検査をして、やはりハイリスクな相手との接触を避けるしかありません。
難しいのは、誰が「ハイリスク」なのか、パッと見では分からないんですよね。もちろん、パートナーに失礼な行為をしないって事は大前提ですが、特定の人としか関係をもっていなくても、その人が感染しているかどうかが分かっていなければ、安心はできないということ。
感染のリスクがある行為というのは、オーラルセックスも含めた全ての性的な接触であることをきちんと認識して、お互いの健康を侵害しないように思いやってほしいですね。
トリコモナス腟炎
トリコモナスは、正確には「原虫」と言って、とっても小さな寄生虫の仲間です。ウイルスや細菌ほど小さくはないので、おりものを採って顕微鏡で見てみると、チョコチョコと泳ぎ回っているのを見ることができます。ほとんどが性交渉による感染ですが、稀にタオルや温泉などで感染する事もあるようです。実際、患者様の中にも「全く心当たりがないんですが」という方もいらっしゃいます。
感染すると、女性の場合はやや黄色がかった泡状のおりものが増えて強い痒みを伴います。痒みという自覚症状が出やすいので、女性の性感染症の中では珍しく、「気付かずに放置する」という危険性は少ないんですね。逆に、男性側は感染していても何の症状も出ない事の方が多いので、たいていは女性側が診断されることで男性側の感染が判明します。
治療は、原虫に対する飲み薬と腟剤の併用で10日間しっかり行います。治療後2週間で再検査をし、トリコモナスが検出されなかったらその時点で治療終了です。再検査で完治を確認するまでは、もちろん性交渉は厳禁ですよ。
男性は、泌尿器科で診断を受け、治療してもらう事になります。どんな性感染症も、2人そろって治療しなければ意味がありませんから、「どっちがうつした」なんて議論はおいといて、まずはきちんと治療してくださいね。
以前トリコモナス腟炎にかかって治療したことがある方が、またトリコモナスが陽性になった場合、「再発」と「再感染」の2つの可能性があります。
「再発」は以前の治療が不十分で、なりを潜めていたトリコモナスが再度増えてきた、というもの。「再感染」は、前回の感染は完治していたけれど新たに感染してしまった、というもの。
後者の場合、パートナーが治療していなかったか、新たにどこかで感染してきたかのどちらかの可能性が出てきます。
性感染症は、繰り返すごとに不妊やHIVなど深刻な感染症にかかるリスクが高くなっていきます。不完全な治療や感染を何度も繰り返すことは、絶対に避けてほしいと思います。万が一性感染症にかかったら、パートナーと一緒にきちんと治療をし、今後は確実に予防するように心がけてくださいね。
カンジダ腟炎
カンジダ腟炎は、おりものの異常を起こす病気の中で最もポピュラーな感染症です。「感染症」と言っても「性感染症」いわゆる「性病」とは異なります。
性感染症は性行為によってパートナーからうつるものですが、カンジダ腟炎は常在菌である「カンジダ真菌」というカビが異常に増えることによって起きるものです。要するに、元から自分が持っている弱い雑菌が増えすぎてしまっただけの状態。なので、性交経験のない方でもカンジダ腟炎になることがあります。
時々、高校生が「エッチしてないのに性病になった!」と本気で悩んでしまうようですが、性感染症とは原因が全く異なりますから心配する必要はありません。
主な症状は、おりものの異常と外陰部や腟内の痒みです。おりものはヨーグルト状や酒粕状の少しポソポソした状態になることが多く、白~黄緑色をしています。割と特徴的なおりものなので、一度でもカンジダ腟炎になったことがある人なら、再発した時にすぐに分かると思います。
外陰部の炎症がひどくなると、痒みだけでなくヒリヒリした痛みをともなうこともあります。男性の場合、性器は皮膚で覆われていますからカンジダに感染しても皮膚炎を起こすだけです。ひどくなると痒みが出たり皮膚が赤くなったりしますが、これが俗に言う「インキンタムシ」です。
腟内には「自浄作用」と言って、弱い雑菌を善玉菌の力で抑えて洗い流してしまう作用を持っています。なので、軽いカンジダ腟炎なら自然に治ってしまうこともあります。ただ、おりものが多量に出たり強い痒みがあるような状態になってしまったら、早めに病院で治療を受けた方がいいでしょう。
治療は、腟内をよく洗浄してカンジダ真菌を抑える「抗真菌薬」の腟剤を腟の中に入れるだけ。腟剤は1度入れると1週間効き目が続くタイプのものと、毎日1個ずつ腟内に入れるタイプのものとあります。たいていは病院で腟内を洗ってもらって、持続タイプの腟剤を入れてもらえば自分で腟剤を使わなくても大丈夫です。
ただ、かなりひどい場合や何度も繰り返して再発しやすくなっている場合は、自宅でも毎日腟剤を入れたほうが確実な治療になります。
外陰部の痒みには、抗真菌薬の塗り薬を使います。この痒みに対してステロイドや市販されている「痒み止め」を使うとかえって悪化させてしまうことがあるので注意してください。
日付:2010年4月29日 カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気
カンジダ腟炎の原因と治療法
カンジダ腟炎の原因は、体力の低下や免疫力の低下・妊娠・抗生物質の服用などです。風邪や膀胱炎の治療のために抗生物質を飲んだら数日後にカンジダ腟炎になった、というのはよくあるケースですが、これは飲んだ抗生物質で腟内の善玉菌まで除菌されてしまうために、本来は増えないはずのカンジダが異常増殖して引き起こされるのです。
カンジダは普通に空気中にも存在するカビなので、誰かからうつるという類のものではありません。自分がカンジダ腟炎になっていても、相手にうつしてしまうという心配もほとんどありません。
ただし、カンジダ腟炎になっているときは、外陰部も腟内もただれて非常にデリケートになっていますから、完治するまでは性交渉は控えた方が無難です。
非常に稀に、性交渉をするたびにカンジダ腟炎になってしまうという人がいます。この場合、相手の男性が抗真菌薬の塗り薬を使うことで改善することもあります。
カンジダ腟炎を予防するには、まずカビが増えやすい状態を作らないことです。湿気の多い場所はカンジダにとっては「居心地のいい場所」ですから、綿100%の通気性のいい下着を着ける・厚手のデニムやガードルははかない・おりものシートは使わない・ナプキンやタンポンはこまめに換えるといったことを心がけて、蒸れを防ぎましょう。
また、自分自身の抵抗力が落ちると、カンジダのような弱い真菌でも増えやすくなってしまいます。疲れやストレスをためない・体を冷やさないなど、免疫力アップに努めましょう。糖尿病の人はカンジダになりやすいのですが、血糖値が高いと雑菌は繁殖しやすくなります。なので、甘い物の摂りすぎにも注意が必要です。
ティーツリーというアロマオイルには殺菌作用がありますから、薄めてタンポンにしみこませたり、外陰部にアロマクリームを塗ったりして上手に活用してみるといいでしょう。
日付:2010年4月29日 カテゴリー:おりものの異常,婦人科の病気
生理痛の原因
月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などの明らかな原因となる病気がはっきりしている「器質性月経困難症」と、はっきりとした原因は分からないけれどとにかく痛いという「機能性月経困難症」に分けられます。
器質性月経困難症の原因で最も多いのは、やはり子宮内膜症ですね。元々月経痛がひどい人や、だんだん痛みがひどくなる人は、内膜症がないかどうかはきちんと検査してもらっておいた方がいいですよ。内膜症の中でも子宮腺筋症といって、子宮の壁が内膜症の病変によって分厚い状態になっている人は月経痛がひどく出血量も多くなりやすいんです。
器質性月経困難症の原因となりうる病気は、内膜症以外にもいくつかあります。子宮のお部屋の中に出っ張るタイプの子宮筋腫=粘膜下筋腫は、月経のたびにこの筋腫を押し出すように子宮がギュッと強く収縮するので強い痛みの原因になることがあります。出血量も増えやすいので、余計に痛みが強くなりやすいんですよ。
数はあまり多くありませんが、双角子宮や重複子宮のような「子宮奇形」の場合も、血液がスムーズに出にくいために痛みが強くなりやすかったりします。
子宮後屈は病気ではありませんが、子宮の位置が後ろに強く傾きすぎていると、やはり血液がスムーズに排出されにくくなって強い痛みを伴うこともあります。
月経困難症の人の多くは、検査をしても何も異常が見つからない「機能性月経困難症」です。中にはごく初期の子宮内膜症で、普通の検査でははっきりと分からないだけという場合もありますが、何も病気がないけれどいたいという人の方が圧倒的に多いんですよ。
病気がないのになぜ痛みが強くなる人がいるんでしょう?様々な説がありますが、1つは前回お話しました痛みの伝達物質「プロスタグランジン」が多く出てしまうせいだと言われています。子宮内膜が人より分厚くなりやすい人は、その分出てくるプロスタグランジンも多くなってしまうので、強い痛みが出ている可能性があります。
また、月経の時期は多かれ少なかれ、子宮の周りに血液が滞ってしまうんですが(これを医学的には「うっ血)といいます)、元々冷え性だったり血液の流れが悪い人の場合、月経時期のうっ血がひどくなって下腹や腰が重くなりやすいんですね。
それ以外にも、特に若い方の月経困難症は、子宮がまだ未熟で細長いために月経血がスムーズに出にくくて、子宮が無理やり血液を押し出そうとするせいで痛みがひどくなっている可能性もあります。年齢とともに月経痛が軽くなったり、お産をすると痛みが軽くなったりすることがあるのは、月経血の通り道が広がるからなんです。
機能性月経困難症になりやすい人は、タバコを吸っていたり、冷え性だったり、不規則な生活をしていることが多いんですが、これらは全て血液の流れを悪くしてしまうので改善する必要があります。
特に、タバコは血管を収縮させて血液をドロドロにしてしまうので、血液の流れは非常に悪くなってしまいますからね。タバコは百害あって一利なし!タバコを吸っている人は、どんな治療よりもまず先にしっかり禁煙するように心がけましょう。
日付:2010年4月26日 カテゴリー:婦人科の病気,生理痛
生理痛の治療
月経困難症の治療は、薬による治療と手術による治療に大きく分けられます。
はっきりとした原因がなくて痛い場合や、原因となっている病気に対して手術などの積極的な治療を行わない場合は、治療の目的は「痛みを軽くすること」。つまり、生活改善を行ったり薬を上手に活用して痛みを和らげていくわけです。
どんな病気にも言えることですが、まず大事なのは生活改善なんですね。ストレスをためない・良質な睡眠をとる・体に害のある食品を口にしない・体を冷やさない・・・こういった日々の積み重ねを無視してどんな治療を行っても根本的な解決にはなりません。
特に、女性にとって大敵の「冷え」を改善することは生理痛だけでなくあらゆる婦人科の病気の改善につながると思っていいでしょう。体の内部を冷やさないためには、薄着をしない・毎日寝る前にきちんと湯船につかる・冷たい飲み物や体を冷やす食品を摂り過ぎない・発酵食品や精製していない食品を食べる・定期的に運動をするといったことを心がけるといいですよ。生理痛はあるけれどそこまでひどくないという人は、生活改善だけで痛み止めが必要なくなってしまうこともあります。
手っ取り早く痛みを抑える方法は、痛み止めを「早めに」飲むことです。「早め」というのは、しっかり痛みが出てしまってからでは痛み止めの効果が充分に発揮されないから。「ちょっと痛いかな~」くらいの時に早めに1錠飲んでしまえば、その後何度も追加で飲まなくてもすむことが多いんですよ。
痛みをギリギリまで我慢してから痛み止めを飲むと、すでに痛みの伝達物資が大量に放出された後なので焼け石に水ということになってしまいます。ただし、痛み止めはあくまで痛みを「抑えている」だけの対症療法に過ぎません。根本的な治療ではないということを分かった上で上手に活用してくださいね。
体質的に冷えや血行不良がある人は、体を温めたり血液の流れを良くするような漢方が有効なこともあります。婦人科でよく使うのは、「当帰芍薬散」や「桂枝茯苓丸」などですね。
これらの漢方は滞った悪い血を押し流してくれる働きがあるんです。これらと、子宮の収縮を和らげるような漢方を組み合わせて痛みをコントロールしていくこともあります。
日付:2010年4月26日 カテゴリー:婦人科の病気,生理痛










