婦人科の病気

 

前回のパートナーで妊娠しなかった理由は?

 妊娠を希望しているという主訴で受診なさる方の中には、「前回の結婚の時に結局妊娠しなかったから」「結婚前に他の人と同棲期間があったけれどその時も妊娠しなかったから」という理由で、「この先も妊娠しにくいかもしれない」と心配されている方がいらっしゃいます。
 前のパートナーと妊娠を目指していた時よりも自分の年齢も上がっているし、「また妊娠しないかも」と不安になるのはある意味自然な反応かもしれません。

 でも、ちょっと待ってください。
 「前のパートナー」や「前回の結婚相手」とは、結局別れたわけですよね?
 もしその時に妊娠が成立していたら、どうなっていたと思いますか?
 子どもがいる状態で別れるのと、子どもがいない状態で別れるのと、様々なハードルが大きく異なります。もし、これから来てくれる赤ちゃんが、今の「未来」を予測して「そのタイミングで来るのを遠慮してくれた」としたらどうでしょう?
 あるいは、赤ちゃんから見てどう考えてもその時のパートナーが「お父さんにふさわしくない」と判断されたために、「今はまだ行ってはダメだ」と思ったのだとしたらどうでしょう?
 その時「妊娠しなかった」ことは、不安材料になりますか?

 単純に、前回のパートナーが男性不妊だったという可能性もありますし、その時ご自身が「妊娠したい」と思った理由がずれていたという可能性もあります。
 大事なことは、その時に「妊娠しないという選択をした」意味を考えてみるということです。そして、「今回のパートナーだと妊娠してよい理由」を考えてみましょう。

日付:2018年7月30日  カテゴリー:不妊症

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外陰部の痒みや不快感が続くときは

 この時期は蒸れや汗のせいで外陰部の痒みが出やすくなる人が増える時期ではありますが、中には何年も前から痒みを繰り返していたり、難治性のカンジダを何度も治療しているとい方もいらっしゃいます。
 外陰部の痒みや不快感が続く場合や、カンジダやヘルペスを何度も繰り返してしまう場合は、単なる感染や免疫力の問題だけでなく、その症状を引き起こす心理的背景が隠れていることが多々あります。

 わざわざ「外陰部」という場所に痒みや不快な症状を引き起こすということは、何らかの「性的なこと」「性的なパートナーに関すること」「性的体験に関すること」「妊娠出産に関すること」「母親との関係」において、不快感や苛立ちや不満などを「抱えておきたい」という背景があるのです。それらの事項を象徴する「外陰部」という場所に不快感を感じ続けることで、その感じておきたい感情を味わい続けているということです。

 例えば、原因不明の外陰部の痒みが続く10代の方は、過去に痴漢にあった時の記憶がずっと残っていてその「不快感」を痒みという症状で再現していました。痴漢にあった時の記憶を処理することで、痒みはすっかり消えてしまいました。
 また、数か月間カンジダの症状を繰り返しているという方は、よくよくお話を伺うと兄弟の病気のせいで自分が母親から十分な愛情を受け取っていないと認識されていました。母親との関係性を修正し、自己認識を変えることでカンジダの症状は出なくなりました。
 原因不明の外陰部の違和感が続いて、軟膏を塗っても膣剤を使ってもよくならなかった方は、過去に「産んであげられなかった」ことに対してずっと罪悪感を抱えていらっしゃいました。その時の記憶を処理して、赤ちゃんからのメッセージを受け取ることで、症状は消えていきました。
 性器ヘルペスを何度も繰り返してしまう方は、過去のパートナーを「責める気持ち」がずっと続いており、またそんなパートナーを選んだ自分も責め続けていました。過去のパートナーシップや出来事に対する解釈を変えることで、症状は出なくなっていきました。

 このように、ただの痒みでもそこには何らかの心理的背景があり、体から「そこに向かい合ってほしい」というメッセージが出ているケースが多々あります。
 なんだか同じような症状を繰り返してしまうという場合は、その都度薬で症状を抑えるのも一つの方法ですが、体からのメッセージを受け取って根本解決を図ってみてはいかがでしょうか。

日付:2018年7月30日  カテゴリー:おりものの異常

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子宮頸がん検診で異常が出た方向けのチェックシート

 

子宮頸部異形成の方向けチェックシート


 


 子宮の病気になる方は、男性やジェンダーに対する不満や怒りを持っていることがあります。また、妊娠に関する何らかの「不完了な思いや出来事」を抱えたままになっているケースも多く見受けられます。


 以下の項目で当てはまるものがないか、セルフチェックをしてみてください。


 


□パートナーや「男性」に怒りを抱えていた


□パートナーや男性に不満や無力感を感じることが多かった


□「女は損だ」「女は無力だ」と感じることがあった


□妊娠に対して不完了な思いがあった


□妊娠したいけれど抵抗があるといった矛盾する感情を抱えることがあった


□性行為において不満や不安を抱えることがあった


□性的なことに対する感情を抑え込むことがあった


□「いっそ子宮なんてなければいいのに」と思うことがあった


□ジェンダーバイアスや男女の不平等さに憤りを感じることがよくあった


□男性に勝ちたいまたは男性に負けたくないと思っていた


□男性は自分より下の立場だと思っていた


□母親が父親のことをよくけなしていた


□父親が母親のことをバカにしたりけなしたりすることがあった


日付:2018年4月10日  カテゴリー:子宮頚がん

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【医師が解説】妊娠超初期って?

 ネット上には様々な情報が交錯していますが、医師の目から見ると「なんだこれは?」という不思議な用語が使われていたり、明らかに間違った情報が出ていることもあります。以前から、医学的監修を依頼される案件の中で「妊娠超初期について」というテーマのものを何度か見かけていたため「妊娠超初期」で検索したら、わんさか同じような間違った情報がヒットしました。

 まず、大前提として「妊娠超初期」という用語は医学的には間違っています。妊娠0週0日~4週0日までを「超」初期と定義しているようですが、そもそも0週0日って月経初日のことですよ?月経中や排卵期に「妊娠」という呼び方をすること自体がおかしいのは分かりますよね?

 わかりやすくするために、生理の周期が28日の場合に限定して説明しますと、月経初日を0週0日と数えて、「妊娠が成立していることが分かってから」今日が何週何日ですとカウントします。通常の妊娠検査薬は、3週5日くらいでうっすら陽性が出ます。月経予定日が4週0日ですから「そろそろ生理が来るはずなんだけど来ないな~」というタイミングで調べれば、排卵日がずれていなければ陽性が出ます。なので、妊娠週数のカウントは、どんなに早くても4週0日から、多少フライングで妊娠反応が確認できたとしても3週5日くらいからになるのです。

 それを、さかのぼって「妊娠2週0日」というようにカウントすることは間違っています。2週0日は排卵日です。たとえその排卵で受精が成立してもまだ「妊娠」はしていません。受精卵が着床して、それが妊娠組織として無事に育って初めて「妊娠が成立した」と言えるのです。受精してから約1週間後が着床なので3週0日という時期はやっと着床したかどうかというタイミングです。この時期でも、まだ「妊娠」という用語を使うにはふさわしくありません。

 あえて、妊娠「超」初期と呼ぶなら、妊娠反応が陽性で出てから超音波検査で子宮内に胎嚢が確認できるまでの、3週5日くらいから4週5日くらいの約1週間の時期になるでしょう。妊娠反応が陽性で出た時点で、体のどこかに妊娠組織があるということは確実です。ですから、「妊娠」の状態ではあるのです。

 ただ、まだ超音波検査という「画像」での診断ができないため、妊娠しているけれどはっきり確認できていないごく初期、と言えます。

 妊娠を希望している方にとっては、排卵後から次の月経まで、つまり妊娠反応が確認できるまでの時期は、とてもドキドキする時期だと思います。だから、「妊娠しているかもしれない徴候」をネットで集めてしまう気持ちはよくわかります。

 基礎体温をつけていれば、高温期が2週間続いていれば妊娠の可能性が高くなりますので、その時点で妊娠反応を確認するといいでしょう。でも、例えば胸がいつも以上に張るとか、においに敏感になるとか、吐き気やめまいがするといった症状は、妊娠の兆候なのか月経前症候群の症状なのかは厳密な意味で判別は不可能です。私も、1人目を妊娠した時は、妊娠反応が出る1週間くらい前から異常な胸の張りがありましたが、2人目の時は全くそのような症状もなく、「今日が生理予定日なんだけどな~」と思って検査をしたら陽性でした。なので、身体症状をあてにするのはあまりお勧めできません。

 排卵後は、赤ちゃんが産まれたらどんなことをしてあげたいか、どんな風に自分の愛情を表現してあげたいかをゆったりイメージしながら2週間過ごす方が、ネット情報や基礎体温とにらめっこしているよりも、未来の赤ちゃんはやってきやすいと思いますよ。あまり不確実なネット情報に振り回されず、赤ちゃんの立場に立って妊活をしてみてくださいね。

日付:2018年1月12日  カテゴリー:不妊症

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妊娠に対していつまでも受け身であり続けたいあなたへ

 月経不順の患者様を拝見していると、しばしば遭遇するのが「現時点で自分が妊娠を望んでいるかどうかの結論を『保留』にしておくため」に排卵しにくい状態を作り出しているというケースです。

 「生理不順」を主訴に受診なさった場合、まずは超音波検査で子宮や卵巣に異常がないかをみたり、ホルモンのバランスを調べたりします。ホルモンの結果や基礎体温から排卵をしていないことが分かった場合、妊娠の希望があれば「排卵誘発」を行う必要があります。つまり、薬を使って排卵を促すという治療を行い、妊娠を目指せるようにするということです。

 ところが、患者様に「今妊娠を希望されていますか?」と伺うと「そんなに積極的には希望していません」と言われ、「では避妊と治療を兼ねてピルを処方しましょうか?」とご提案すると「妊娠する可能性を『ゼロ』にはしたくないです」と言われることがしばしばあるのです。つまり、積極的に妊娠も目指そうとはしないし、確実な避妊もしないということです。「妊娠したらしたでうれしい」とおっしゃるのですが、だからと言って薬を使ってまで妊娠は目指したくないのだそうです。

 こういったケースでは、本音では強く妊娠を望んでいないけれど「私は妊娠したくありません(=私は母親になりたくありません)」とはっきりと意思表明することに抵抗を感じていることがほとんどです。なので、生理は来るけれど排卵はしないという、妊娠はしにくいけれど健康に大きな害はない、非常に宙ぶらりんな状況をあえてキープしようとするのです。

  妊娠したくない理由は人によって様々ですが、「そもそも子どもが好きではない」「自分のやりたいことを優先したい」という場合や、妊娠を人生の中で「経験すべきノルマ」のようにとらえていて「年も年だし周りもうるさいし本当はそろそろ妊娠しないと『いけない』のだろうけれど…」と思っている場合もあります。また、妊娠・出産によって自分の健康が失われるのではないかとか、自分のための時間が無くなるのではないかという心配があり、『妊娠したいけれどしたくない』というダブルバインド状態になっている方もかなりいらっしゃいます。

 これらの、何らかの理由で「潜在意識が妊娠を望んでいない」という場合に、本人がきちんと「私は今は妊娠したくありません」とか「この先もずっと産む気はありません」という意思をはっきり表明できればいいのですが、女性が「子どもを望まない」と口にすること自体が何となくタブー視されている感覚があるのか、はっきりと口にせず「体で無言の抵抗をする」方が少なくありません。その結果が無排卵や不妊症という状態です。

 また、中には「今自分が妊娠したいのかどうか」の結論を「自分で」出すことを避けようとして、無排卵になる方もいらっしゃいます。自分の意思をはっきり決めないということは、自分の人生に対して責任をとらなくていい状態をキープしようとするということです。

 妊娠についていえば、「妊娠する」という選択をして積極的に妊娠を目指すと、妊娠出産によって起こりうるトラブルや『思うようにいかない』ことを全て自分が「妊娠する」という選択をしたことによる結果として引き受けなければならなくなります。簡単に言うと、何か嫌なことがあった時に「人のせい」にできなくなるのです。なので、「妊娠できたらできたでうれしい」という、「私が積極的に望んだわけではないけれど、妊娠したから産んだのよ」という、どこかで責任をとらなくてよい「逃げ場」をキープしておく方が都合がよいわけです。

 逆に、積極的に「妊娠しない」という選択をして、最終的に子どものいない人生を歩んだ時、いざ妊娠のタイムリミットをむかえたり「1人」ということを実感したりしても、それによって引き起こされる感情も状況も自分の責任として受け止めなければいけなくなります。排卵障害やその他の「病気」を作り出すことによって、「本当は子どもが欲しかったのだけれど病気のせいでできなかったの」ということにしておけば、「妊娠しない」という選択を自分がしたわけではないという逃げ場ができます。

 「妊娠したいのかしたくないのか」という問いかけに対して、答えに「正解」はありません。また、「現時点で」の答えなので、1か月後に計画変更することもあり得ます。なので、どんな答えであってもよいのですが、答えを出すこと自体を「保留」にしてしまって、自分の人生に責任をとらない生き方を選択することは、あまりお勧めはできません。

 生理不順や排卵障害だけでなく、子宮や卵巣の病気がある人は、一度自分の胸に手を当てて、「私は今妊娠したいのか?」「私は将来妊娠したいのか?」についての答えを導き出してみるとよいでしょう。もしかしたら、なぜ今その病気をやっているのかのヒントが隠れているかもしれません。

日付:2018年1月11日  カテゴリー:生理不順

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医師が解説「不正出血の原因と治療」

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 受診なさる患者様の訴えで多いのは月経不順や月経痛などの月経関連症状ですが、「不正出血」も受診のきっかけとして比較的多い症状のひとつです。「不正出血」自体は病名ではなく、月経以外に出血したという症状を表しています。月経の時期とは明らかに違うタイミングで不定期に出血したり、月経が終わったと思ったらまたすぐに少量の出血があったり、性行為の後に出血したり、閉経後なのに出血が見られたら、それらはすべて「不正出血」ということになります。
 月経不順の方の中には、毎回周期も月経量もバラバラなので、どれが月経でどれが不正出血なのか区別がつかないという方もいらっしゃいます。月経が短い周期で何度も来ると訴えている方を診察すると、月経は正常な周期で来ていて、月経と月経の間でクラミジア感染による少量の出血を繰り返していた、というパターンもあります。

 不正出血の原因としては次のような状態が考えられます。
 *月経不順に伴う中途半端な出血
 *排卵期(中間期)の出血
 *子宮頚管ポリープ
 *子宮内膜ポリープ
 *子宮内膜増殖傾向
 *クラミジアや淋菌感染による炎症
 *閉経後の萎縮性膣炎
 *子宮頸がんや子宮体がん

 *妊娠
 *原因不明の機能性子宮出血

 不正出血があった場合は、年齢や出血のパターンによって、これらの原因がないかを検査で確認していきます。原因検索のために必要な検査は次のようなものがあります。
 *子宮頸がん検査→性交経験があって1年以内に検査を受けていなければほぼ必ず行います
 *子宮体がん検査→40歳以上や超音波検査で子宮内部が厚くなっている場合などに行います
 *超音波検査→ほぼ全例に行います
 *クラミジア・淋菌検査→性行為の経験がある方に行います
 *ホルモン検査(採血)→月経不順傾向がある場合や年齢的に更年期が近い方に行います

 これらの検査で、何も異常がなく、月経と月経のちょうど間くらいに少量の出血がある場合は「中間期出血(排卵期出血)」と呼ばれるものの可能性が高く、通常は何もせず様子を見ても問題ないものです。気になる場合は、ピルで排卵を抑えて症状が改善するかどうかを見ていきます。
 子宮頚管ポリープがあればポリープ切除を行いますし、クラミジアなどの感染が見つかれば適切な抗生剤で治療します。子宮内ポリープや子宮内膜増殖傾向によるものは、ピルで子宮内膜を整える治療が有効なため、3か月程度ピルを服用することが多いですが、年齢や基礎疾患によっては他のホルモン剤を使う場合もあります。
 注意が必要なのは、子宮頸がんや子宮体がんです。不正出血のパタンだけで、それが「悪い物からかどうか」は判別することはできません。明らかな出血が見られる以外にも、織物が茶色やピンク色になっている場合も、それは出血が混ざっているというサインです。いつもと違う出血がごくわずかでもあったら、できるだけ早めに婦人科を受診してくださいね。

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日付:2017年12月10日  カテゴリー:婦人科の病気

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女性の方がうつになりやすい理由

  先週末は女性医療ネットワーク主催のシンポジウムに参加してきました。テーマは「PMSとうつ」そして「PMSと発達障害」です。月経前に心身の不調が出るのがPMSですが、特にイライラや気分の落ち込みなどメンタル症状がメインで出る方の場合、ベースにうつや発達障害などほかの病気があって、その症状が特に月経前になるとひどくなるというパターンもあるのです。この場合も、ピルでホルモンの波を抑えることは症状の軽減につながりますが、根本の原因が婦人科的なものとは別にあるので、同時に心療内科的なアプローチも必要になってくるのです。

 うつ病は以前のように「隠すべきもの」ではなく、「誰でもなりうるもの」という認識変わってきました。うつになる医学的な背景には、環境などの外的要因と個人の脆弱性などの内的要因があるのですが、うつが「誰がなってもおかしくない」と認識されることによって、個人の脆弱性が無視されてすべて「環境のせい」にされてしまっている傾向があるとのことでした。確かに、同じ環境や同じ出来事に対して、個人の反応が異なってきます。うつになる人もいれば平気な人もいるのは、個人の反応の仕方が異なるからなんですが、「自分がうつになったのは○○のせい」だと思っている人は多い印象ですね。実は、この「○○のせい」と思っていること自体が、うつを治りにくくしてしまいます。
 心理学的アプローチでうつの原因を見ると、その背景には「あるもの」を抑え込んでいる可能性が高いのですが、「○○のせい」だと思っていると、この「あるもの」の存在に気付きにくくなってしまうのです。なぜなら「あるもの」は自分の中から生み出されるものだからです。

 シンポジウムの中では、なぜ女性の方がうつ病になりやすいのかも解説されていました。うつ病は、男性に比べて女性の方が2倍多いというデータがあります。統合失調症・双極性障害・強迫性障害は性差がありません。これらは、ホルモンの影響を受けるのではなく、遺伝的要因が大きいからです。

 性差があるのは、うつ病・全般不安症・社交不安症・パニック症などです。これらは、遺伝子的要因よりも心理・社会的要因の方が強く影響するからです。また、女性の方が心理・社会的影響を受けやすいため、これらの疾患が起きやすくなる背景が色々あるということです。

 女性がうつ病になりやすい理由の1つは、性ホルモンの変動が大きくあるからです。月経にともなう月単位の変動・妊娠&出産に伴う変動・閉経にともなう変動。これらのホルモンの「変化」がメンタル症状を引き起こしやすい原因として挙げられます。

 また、社会的背景として、女性の方が「弱者」になりやすいとい背景もあります。男女差別・様々なハラスメント・仕事と家庭の両立問題・DVや性被害など…先進国ほどこれらの男女差は減るはずなんですが、日本のジェンダーギャップ指数をご存知でしょうか?ジェンダーという視点から見ると、日本はまだまだ「先進国」の仲間入りができていません。

 ホルモンの影響は「低い・高い」ではなく、ホルモンの「変動」つまり「上下する」時に精神的症状が出やすくなります。卵巣から出る女性ホルモンは二つありますが、エストロゲンは脳に対して「良い影響しかない」と言われているほど、精神面においても安静させる方向に働きます。一方で、プロゲステロンは精神的に不安定になったり、抑うつ状態になったりする原因となります。
 月経周期では、排卵前後と月経直前から初日にかけて、いったん上がったエストロゲンが下がります。また、排卵後から月経前にかけてプロゲステロンが上がります。なので、排卵前後と月経前は気分が落ち込んだりイライラしやすいのです。
 妊娠中や産後のホルモンの変動は少し複雑ですが、簡単に言うと妊娠中の前半はエストロゲンの作用が弱くなってプロゲステロンの作用が強くなります。なので、妊娠期の前半はうつ傾向が出やすいのです。また、出産直前まで多量に出ていたホルモンが、分娩とともに一気に急降下します。なので、大体出産して2~3日後から約1週間は「マタニティーブルー」と言って、誰もが気分が落ち込みやすくなる時期なのです。
 もう一つ、ホルモンが大変動する時期が閉経前後です。完全に閉経する1~2年前から女性ホルモンは急激に下がっていきます。このホルモンの急降下によって、いわゆる更年期障害が出るのですが、この時期に気分の落ち込みやイライラを強く自覚する方も多くいらっしゃいます。

 このように、女性は月単位・ライフイベント単位の二つのサイクルでホルモンの「波」にさらされているのです。
 この「波」の影響をまずは自分で把握して、うまく付き合っていくということがとても重要です。そして、自分にはこの「波」が大きすぎるなと思ったら、ピルやHRTでホルモンの変動を緩やかにすることも「自分らしい毎日」を過ごすための賢い手段と言えるでしょう。
 「波」に振り回され続けて、自分の人生のコントロール権を放棄してしまっているようなら、お早めに婦人科でご相談くださいね。

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日付:2017年11月15日  カテゴリー:月経前症候群(PMS)

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子宮頸がんワクチンの「被害者」であり続けるデメリット

  前々回の記事で、子宮頸がんワクチンのせいで歩けなくなった・勉強ができなくなったなどの多彩な症状を訴えている状態が、実はワクチンとの因果関係はないといことをご説明しました。「ワクチンのせいではありません」と言うと、症状が出ている方がかわいそうではないかという声も聞こえてきます。でも、本当はワクチンは関係ない症状に対して「ワクチンのせいである」という思い込みを持ち続けることの方が、患者様ご本人のためにならないのです。
 現在「被害者の会」という立場で、主に接種した本人ではなくその親が中心となって「この症状はワクチンのせいであると認めろ」という訴えを起こしています。しかし、前述の通り因果関係はありませんので、おそらく国も製薬会社もその訴えを認めないでしょう。そうすると、「ワクチンのせいであると認めさせる」ために、現在出ている症状が改善しないという事態が起きてくるのです。なぜなら、症状がなくなったら訴え続けることができなくなるからです。ワクチンのせいにし続けるためには、「症状がある方がメリットがある」状態になってしまっています。しかも、症状が出ている本人と、訴えている人が異なるため、代理ミュンヒハウゼン症候群とよく似た親子関係になっていく可能性があります。

 これは、心理技術的アプローチで解析すれば、ごく単純なからくりです。被害者の会の方たちにとっては、被害者であり続けることに意味がある、という状態になってしまっているのです。なので、本来は症状が出て苦しんでいるご本人が一日も早く回復して元気になることが大切であるはずなのに、「ワクチンのせいである」と認めてもらうことが第一目標にすり替わってしまっています。「ワクチンのせいである」と言い続ければ言い続けるほど、症状は治らないということになってしまうのです。
 また、「ワクチンのせいである」つまり、自分の責任ではなく誰かまたは何かの責任であると解釈することを「他者原因」と言いますが、病気は他者原因のままでい続けると治りません。また、ワクチンのせいにし続けるということは、そのワクチンを接種させた誰かまたは自分を責め続けることになります。「罪悪感」を持ち続けることも、前に進むことを阻む大きな足かせになります。「罪悪感は正義の仮面をかぶってやってくる」と言います。罪悪感を持ち続けると、まるで問題解決に向けて一生懸命になっているような錯覚に陥るのです。実際は、罪悪感は本来の問題から目をそらすための隠れ蓑にしかなりません。

 このように、本当はワクチンのせいではない症状に対して、「ワクチンの被害者」という立場をとり続けることに、患者様ご本人対するメリットは何もないのです。
 私が、ワクチンの副反応に対する「でっち上げ」を見て一番気になったのはこの点でした。このままでは「被害者」扱いされている方たちがいつまでたっても救われない。自ら治る力までも奪われてしまう。それどころか、何の根拠もない治療を色々試されて、さらに「病人」に仕立て上げられてしまう。そう感じています。
 症状が出ている方にとって最も大事なことは何なのか、もう一度ニュートラルな立場に立って考えてみる必要があるのではないでしょうか。

日付:2017年10月12日  カテゴリー:HPVワクチン,子宮頚がん,日々の雑記

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「子宮頸がんワクチンで不妊になる」はウソ!

 前回の記事で、「副反応だ!」と騒がれている症状が実は子宮頸がんワクチンのせいで引き起こされるものではないということはご理解いただけたと思います。
 これ以外にも、子宮頸がんワクチンが広く広まるのを阻んでいると思われる、いくつかの「デマ」があるのです。

 例えば、最近見かけるようになったのが、このワクチンが「劇薬」に分類されていることを強調した「反対論」。ワクチンの添付文書の画像を貼り付けて、「劇薬」と書かれていることを指摘して「こんな危険な薬です」と訴えているわけですが、薬剤の分類つまりどんな薬品を「劇薬」とするかは明確な定義があります。なので、その定義に当てはまればどんな薬品も「劇薬」なのです。
 例えば、心臓の病気などの時に使う「ジゴキシン」という薬の添付文書を見れば、子宮頸がんワクチンと同じように「劇薬」の文字が印字されています。でも、この薬によって病気が改善している人もいます。投与量を間違えば、危険な症状が出る可能性もあります。だから「劇薬」と分類して医療者側が取り扱いに注意しましょうと促しているわけです。「劇薬」は、必ずしも「人体に害を及ぼす危険な薬」といういうわけではなく、使い方に注意が必要な薬剤であることを示しているのです。

 また、以前から医学的には何の根拠もないなと感じながらも、あまりにもよく目にする「反対論」が「子宮頸がんワクチンで不妊になる」というデマです。こんな意味不明の指摘が出てしまった大元は、南出喜久治氏のYouTube動画「サーバリックス子宮頸がんワクチンによる民族浄化/弁護士 南出喜久治」なのだそうです。ワクチンに含まれている「アジュバント」という成分が、動物の避妊治療(去勢)に使われる薬剤にも含まれているので、子宮頸がんワクチンは「不妊にさせるワクチンだ」というこじつけ論が展開されているのです。
 「アジュバント」は多くのワクチンに含まれている成分です。これは、ワクチンの効果を賦活化(少量でも効きやすくする)するために、ワクチンとしての有効成分と合わせて配合されるものです。子宮頸がんワクチンは、HPVというウイルスに対する免疫抗体を作るためのものです。なので、この抗体を作りやすくして、なおかつ定着しやすくする目的で「アジュバント」が入っています。一方、避妊用のワクチンには「妊娠しなくするための成分」が入っており、その作用をサポートするために「アジュバント」が一緒に含まれています。要するに「アジュバント」が避妊効果を発揮するのではなく、あくまで「妊娠しなくするための成分」の作用をアジュバントが増強しているに過ぎないのです。子宮頸がんワクチンには、そもそも妊娠しにくくなる成分など入っていませんから、それがアジュバントを加えたからと言って「不妊になる」わけではありません。
 おかしなデマのからくりがご理解いただけましたか?

 ワクチン接種後の妊娠率については、接種した人と接種していない人で差がないというデータは出ています。もちろん、日本では接種開始後の年数が短いので、妊娠に対する影響について「日本人だけで」とったデータはまだありませんが、世界中で同じような内容の研究はされており、妊娠に対しては何も影響がなことがハッキリしています。
 また、デンマークのコホート研究では、妊娠中にこのワクチンを接種した場合の安全性について研究したデータがあります。主要な先天性異常・自然流産・早産・死産・低体重出征・発育不全などの項目について、ワクチン接種した人と接種していない人を比較した結果、両者に有意な差はなかった、つまり妊娠転機にリスクの変化はないという結論が出ています。
 詳細を知りたい方は、論文を参照してくださいね。
 N Engl J Med 2017;376:1223-1233

 このように、子宮頸がんワクチンを「危険なものである」と指摘する理論は、いずれも医学的には根拠がなかったり単なるこじつけだったりします。ネットや雑誌に載っているこれらのデマをうのみにして、本来予防できるはずのがんを予防しないことが賢明な選択なのかどうかは、各自がしっかり考えるべきだと思います。
 「子宮頸がんワクチンで不妊になる」よりも、子宮頸がんになって子宮を失う方がよほど確実に妊娠の機会を失います。私は少なくとも、自分の娘にそのような思いはさせたくないと考えます。

 どの情報が正しいのか、誰が言っているのかが正しいのかよりも、どのような選択をすることがトータルで見た時に「すべての女性の健康サポート」につながるのかを考えてこれらの情報をお伝えしています。
 あなたや大切な人の未来を守るお役に立てていただければ幸いです。

日付:2017年10月10日  カテゴリー:HPVワクチン,子宮頚がん,日々の雑記

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子宮頸がんワクチンの安全性

  今日は避妊教育ネットワークの勉強会に参加してきました。他のメンバーの活動報告に刺激を受けたり、ピルによる避妊機序について生理学的に詳しい解説を受けたり、子宮頸がんワクチンの接種がなぜ広まらないのかについて日本の現状の裏話を聞いたり、盛りだくさんの内容でした。
 子宮頸がんワクチンの接種は、公費負担での接種が開始されてからもそれほど希望者が多くなく、「なぜこれほどまでに予防意識が広まらないのだろうか」と懸念していましたが、「積極的接種を推奨しない」との発表後は全くと言っていいほど接種希望者がいらっしゃらなくなりました。
 でも、10代の娘さんを持つお母さまからは時々質問を受けたりします。特に、お母様ご自身が子宮頸部の異形成で定期フォローを受けていらしたりすると、「娘には同じ思いをさせたくない」というお気持ちもあるようです。ワクチン接種を受けさせたいけれど、メディアの報道を見ていると怖くなるという意見が多いため、まずはメディアの報道をどのように受け止めたらよいのかを解説していきたいと思います。

 私自身は、明らかにそうであるというエビデンスのある内容についてはそのエビデンスを優先します。その事実を証明または否定するエビデンスが充分でない時は、「エビデンスがないからそれは間違いだ」とは断定せず、その事実が本当である可能性も考えるようにしています。
 子宮頸がんワクチンに対して「積極的接種を推奨しない」という措置をとらざるを得なくなった背景には、メディア上で報道されているようなけいれんなどの激しい症状を伴う「副反応」が見られるとの指摘を受けたせいです。しかし、実際は、この問題となっている症状とワクチンの因果関係についてははっきりと否定されているのです。学会も、WHOも、明らかな因果関係はないと結論付けているにもかかわらず、まるでワクチンのせいでそのような症状が出てしまっているような取り上げられ方がされているため、一般の方は「ワクチンの副反応であんなふうになってしまうこともあるのか」と誤解をしてしまっても無理はありません。

 どんな薬もそうですが、大人数に使えば一定の割合で「副反応」と呼ばれる症状が出ることがあります。ワクチンの副反応もそうですが、接種後に出た症状が「明らかにワクチンのせいなのか」を見極めるには、いくつかポイントがあるのです。
 1)症状がワクチン接種後のみに見られて接種前には見られない
 2)ワクチンを打っていない人に同じ症状は出ていない
 3)ワクチンの接種以外ことで同じ症状が出ていない
 4)ワクチン接種と症状の出現時期に明らかな因果関係がある
 例えば、ワクチンを接種した数分後に失神するケースはあります。医学的には「迷走神経反射」と呼ばれるもので、一時的に血圧が下がって急に意識を失うものです。ワクチンを接種してすぐに起きるものなので「ワクチン接種のせいでそうなった」と言えますが、実は同じことは採血でも他の注射でも起こりえます。なので、この場合3)の「ワクチン以外のことで同じ症状が出ない」に当てはまりません。つまり、「ワクチンという薬剤の成分」で起こった症状ではなく、「注射という痛み刺激」のせいで起こった症状ということになります。

 子宮頸がんワクチン接種後に起きているとされる、けいれんや歩行ができなくなるなどの多彩な症状は、ワクチンを接種していない人や男性にもみられていること。ワクチン接種が開始される前から、同様の症状を訴える人がいたことなどから、ワクチンの薬剤そのものが影響して引き起こされた症状ではないという結論に至っているのです。
 ワクチン接種後から症状が出た場合に、ワクチン接種という痛みや心理的負担が「引き金」になった可能性は考えられるかと思われます。でも、それは「薬剤」のせいではないわけです。その点が、最も大きな誤解として、一般の方には「副反応だ!」と印象つけられているのではないかと感じました。
 実際、「海外のデータではあてにならない。日本人特有の反応の仕方があるのかもしれない」との指摘を受けて、名古屋市が接種した人としていない人に見られる症状を、正しい統計学的分析をして比較したデータがあります。倦怠感等のいずれの症状もワクチンを接種したグループの方が「わずかに少ない」という結果が出ているとのことです。つまり、「副反応だ」と指摘されている症状は、実際はワクチン接種が関係ない可能性が大きいのです。

日付:2017年10月9日  カテゴリー:子宮頚がん,日々の雑記

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