婦人科の病気
おりもの・かゆみ・性感染症の検査|内診は必要?
性感染症の検査は、症状だけでなく「いつ・どのような接触があり、どの部位に感染した可能性があるか」に合わせて選びます。一つの検査で、すべての性感染症を調べることはできません。おりものやかゆみの原因も、カンジダ、細菌性腟症、かぶれなどさまざまで、問診だけで正確に診断することは困難です。[1][2]
症状がある場合は、検査が陽性になりやすい時期を自己判断で待たずに受診してください。発熱、強い下腹部痛、妊娠中の症状、性器の潰瘍などは早めの診察が必要です。
性感染症検査を考えるタイミング
- おりものの量・色・臭いがいつもと違う
- 外陰部のかゆみ、痛み、排尿時痛、水疱、ただれがある
- 不正出血、性交時出血、性交痛、下腹部痛がある
- 新しいパートナーとの性行為、コンドームを使わない性行為があった
- パートナーが性感染症と診断された、または症状がある
- 妊娠を希望している、妊娠が分かった
- 症状はないが、感染の有無を確認したい
クラミジアや淋菌は無症状のことがあり、HIVや梅毒にも症状のない時期があります。「症状がないから感染していない」とは限りません。[3]
症状・感染機会に応じて選ぶ検査
| 調べる病気・状態 | 主な検体・検査 | ポイント |
|---|---|---|
| 腟カンジダ | 腟分泌物の顕微鏡検査・培養など | 症状だけでは確定できない。再発や治りにくい場合は菌種確認が役立つ |
| 細菌性腟症 | 腟分泌物、pH、顕微鏡検査など | 腟内細菌のバランスの乱れを評価する |
| トリコモナス | 腟分泌物の核酸検査・顕微鏡検査・培養など | パートナーの検査・治療も重要 |
| クラミジア・淋菌 | 腟・子宮頸部・尿などの核酸増幅検査 | 口や肛門への接触があれば、咽頭・直腸など別部位の検査も検討 |
| Mycoplasma genitalium | 腟・子宮頸部・尿などの核酸検査 | 全員への一律検査ではなく、持続・再発する子宮頸管炎などで検討 |
| 性器ヘルペス | 水疱・潰瘍など病変部の核酸検査・培養 | 症状がある時の病変部検体が有用。抗体検査だけでは現在の病変の原因を確定できない |
| 梅毒・HIV・肝炎 | 血液検査 | 感染直後は陰性のことがあり、時期に応じて再検査が必要 |
「マイコプラズマ」という名前の菌をすべて同じように検査・治療するわけではありません。病原性や治療の必要性が異なるため、症状と診断目的を確認します。[4]
検査する部位が大切です
性感染症は性器だけでなく、のどや直腸に感染することがあります。腟の検査が陰性でも、咽頭感染を否定したことにはなりません。オーラルセックスやアナルセックスを含め、感染した可能性のある部位を医師に伝えてください。
問診は検査を絞るための医療情報です。責めるための質問ではありません。分かる範囲で、接触した時期、コンドームの使用、相手の診断、現在の症状をお伝えください。
性行為から何日後に検査できますか?
病原体と検査法によって、感染から検出できるまでの期間が異なります。接触直後の陰性結果だけでは感染を否定できないことがあり、初回検査と後日の再検査を組み合わせる場合があります。正確な時期は、接触日、症状、選ぶ検査によって個別に判断します。
症状がある時は、検査時期を待って受診を遅らせないでください。その日に診察できる原因を調べ、必要に応じて後日再検査を計画します。HIV、梅毒などの無料・匿名検査を行う保健所等もあります。検査場所は厚生労働省の案内で確認できます。[3]
内診は必ず必要ですか?
全員に内診が必要なわけではありません。尿検査や血液検査で調べる項目もあり、検査法によっては腟ぬぐい液を自分で採取できることもあります。ただし、おりもの、出血、下腹部痛、外陰部の皮膚症状がある場合は、診察で得られる情報が重要です。
性交経験がない方や診察に強い不安がある方は、最初にお伝えください。外陰部の観察、外側からの採取、尿検査など、目的に応じて負担の少ない方法を検討します。医学的に内診が必要な場合も、理由と方法をご説明して同意を確認します。
検査前に気をつけること
- 腟洗浄はせず、可能なら腟剤・市販薬を使う前に受診する
- すでに薬を使った場合は、薬名、使用日、回数を伝える
- 抗菌薬を最近使用した場合は、薬名と期間を伝える
- 最終月経、妊娠の可能性、アレルギー、持病を伝える
- 強い症状がある場合は、準備のために受診を遅らせない
生理中も検査できる場合がありますが、出血量や検査項目により採取しにくいことがあります。予約時にご相談ください。
結果が出た後に確認すること
陽性の場合は、治療法だけでなく、パートナー対応、性行為を再開できる時期、治癒確認・再検査の必要性を確認します。クラミジアや淋菌などは再感染が多いため、治療後およそ3か月での再検査が勧められることがあります。[5]
陰性でも、検査した部位と病原体、検査時期の範囲内での結果です。症状が続く場合は、感染症以外の皮膚疾患、ホルモン低下、子宮頸部の病変なども含めて再評価します。
保険診療と自費検査
症状があり、医師が必要と判断した検査は保険診療となる場合があります。症状のないスクリーニングや希望によるセット検査は、原則として自費診療です。検査項目によって費用が異なるため、最新情報は診療費用のページをご確認ください。
性感染症検査についてよくある質問
Q. かゆみがあれば性病検査が必要ですか?
かぶれやカンジダなど性感染症以外の原因も多いため、かゆみだけで一律に決まりません。性行為の状況、皮膚の状態、おりものを確認し、必要な検査を選びます。
Q. 血液検査ですべての性病が分かりますか?
分かりません。血液検査は梅毒、HIV、肝炎などに用います。クラミジア・淋菌・トリコモナスなどは、感染した可能性のある部位から別の検体を採ります。
Q. パートナーが陰性なら自分も陰性ですか?
そうとは限りません。感染の成立、検査部位、検査時期が異なるため、ご自身も適切な時期・部位で検査してください。
Q. 検査結果は何日で出ますか?
検査項目と検査機関によって異なります。診察時に、結果の予定日と確認方法、結果を待つ間の注意点をご案内します。
横浜駅近くで性感染症検査をご希望の方へ
横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。症状と感染機会に合わせ、必要な検査をご案内します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月5日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。
参考文献
- 日本性感染症学会.性感染症 診断・治療ガイドライン2026.
- CDC. Vulvovaginal: STI Treatment Guidelines. 2021.
- 厚生労働省.HIV・性感染症検査相談マップ.
- CDC. Mycoplasma genitalium: STI Treatment Guidelines. 2021.
- CDC. STI Screening Recommendations. 2021.
◆◆◆当院はGME医学検査研究所の提携医療機関です◆◆◆
おりもの・かゆみ・性感染症の治療|原因別の薬と治るまで
おりものやかゆみの治療は、原因によって使う薬も、パートナーの対応も異なります。カンジダには抗真菌薬、細菌性腟症や細菌性の性感染症には原因に合う抗菌薬、ヘルペスには抗ウイルス薬を使います。かぶれや外陰部の皮膚疾患では、感染症の薬ではなく刺激を避けることや適切な外用薬が必要です。[1]
症状だけでは原因を区別できないことがあるため、自己判断で余った薬や市販薬を繰り返さず、必要な検査を受けてください。複数の感染や皮膚疾患が重なることもあります。
原因別の主な治療
| 病気・状態 | 主な治療 | 治療上のポイント |
|---|---|---|
| 腟カンジダ | 腟錠・クリームなどの抗真菌薬。状態により内服薬 | 妊娠中、再発例、治りにくい例では薬の選び方や治療期間が異なる |
| 細菌性腟症 | メトロニダゾール、クリンダマイシンなど | 再発することがある。腟内洗浄を習慣にしない |
| トリコモナス | ニトロイミダゾール系薬の内服など | 現在のパートナーも評価・治療し、治療完了まで性行為を控える |
| クラミジア | 適切な抗菌薬 | パートナー対応と再感染予防が重要。治療後の再検査を検討 |
| 淋菌 | セフトリアキソンなどの注射薬 | 耐性菌を考慮し、治療失敗時は培養・薬剤感受性検査を検討 |
| Mycoplasma genitalium | 耐性を考慮した段階的な抗菌薬治療 | 一律の抗菌薬治療ではなく、専門的な判断が必要 |
| 性器ヘルペス | 抗ウイルス薬の内服。再発頻度により抑制療法 | 体内のウイルスを完全に除く薬ではないが、症状と再発を抑えられる |
| かぶれ・皮膚疾患 | 刺激物の中止、保湿、診断に合った外用薬 | 湿疹、硬化性苔癬などではステロイド外用薬が適切なことがある |
| 更年期以降の乾燥 | 保湿剤・潤滑剤、必要に応じて腟内の局所ホルモン治療 | 出血がある場合は、治療前に別の病気がないか確認する |
薬の種類・投与期間は、妊娠の有無、アレルギー、感染部位、重症度、薬剤耐性、国内の承認内容によって変わります。具体的な処方は診察後に決定します。
検査結果が出るまで治療を待ちますか?
症状が軽く全身状態がよい場合は、原因を確認してから治療することがあります。一方、骨盤内炎症性疾患が疑われる、妊娠中で感染の影響が心配、症状が強い、パートナーが感染症と診断されている場合などは、検体を採取したうえで結果を待たずに治療を始めることがあります。
すでに抗菌薬や腟剤を使っていると、検査結果に影響する場合があります。受診時に薬名と使用時期をお伝えください。
パートナーの検査・治療が必要な病気
クラミジア、淋菌、トリコモナスなどでは、現在または一定期間内のパートナーにも検査・治療が必要です。自分だけが治療すると、再感染する可能性があります。治療が完了し、医師から案内された期間が過ぎるまでは性行為を控えてください。[2][3]
一方、腟カンジダは通常、性感染症として扱わず、症状のないパートナーを一律に治療することは勧められていません。細菌性腟症についても、パートナー対応はカンジダや典型的な性感染症と同じではありません。病名ごとに確認してください。
治療後の再検査・治癒確認
- クラミジア・淋菌:再感染が多いため、治療後およそ3か月で再検査を勧めることがある
- 淋菌の咽頭感染:治癒確認が必要になることがある
- トリコモナス:再感染を確認するため再検査を勧めることがある
- カンジダ・細菌性腟症:症状が改善すれば一律の再検査を行わないこともあるが、持続・再発時は再評価
- ヘルペス:症状の経過と再発頻度をみて、再発時治療または抑制療法を相談
「薬を飲み終えたこと」と「再感染していないこと」は別です。再検査の時期は病名と治療内容によって異なるため、受診時に確認してください。[4]
薬を使っても治らない・再発する時
症状が残る場合は、診断が違う、複数の原因がある、薬が十分に効いていない、薬剤耐性がある、再感染した、皮膚疾患があるなどの可能性があります。同じ薬を繰り返す前に再診してください。
- カンジダを短期間に何度も繰り返す
- 治療後も悪臭、黄緑色のおりもの、痛みが続く
- 外陰部の皮膚が白くなる、厚くなる、切れやすい
- 発熱、下腹部痛、不正出血が出てきた
- パートナーが未治療、または治療後に再び性行為があった
反復するカンジダでは、培養による菌種確認、糖尿病や免疫状態など背景因子の確認、長めの治療が必要になることがあります。[5]
妊娠中・妊娠の可能性がある場合
妊娠中は使用できる薬や投与方法が異なります。妊娠中の腟カンジダでは、一般に腟内へ使うアゾール系抗真菌薬を一定期間使用し、経口フルコナゾールは自己判断で使いません。[5]
妊娠中のおりもの、かゆみ、出血、下腹部痛は、妊娠経過に関係する病気との区別も必要です。市販薬を使う前に産婦人科へご相談ください。
治療中に避けたいこと
- 腟の中を石けんや洗浄剤で洗う
- 処方された薬を自己判断で中断・分け与える
- 余った抗菌薬を別の症状に使う
- 治療が必要な性感染症で、パートナーが未治療のまま性行為を再開する
- 痛みや発熱が悪化しているのに様子をみる
腟剤の使用中は薬の成分や基剤が白いカスのように出ることがあります。詳しくは腟カンジダの薬を入れた後のおりものをご覧ください。
治療についてよくある質問
Q. おりものが多い時は抗菌薬を飲めば治りますか?
原因によります。カンジダに抗菌薬は効かず、かえって発症のきっかけになることがあります。まず原因に合う検査・診断が必要です。
Q. 症状がなくなれば薬を途中でやめてもよいですか?
自己判断で中止せず、処方された方法を守ってください。中断により治療が不十分になったり、再発・耐性化につながったりする場合があります。
Q. パートナーと同じ薬を使えばよいですか?
病名、感染部位、妊娠、アレルギーなどで処方が異なります。薬を分けず、それぞれが医療機関で相談してください。
Q. 治療後、いつから性行為を再開できますか?
病気と薬によって異なります。性感染症では、自分とパートナーの治療が完了し、指示された期間が過ぎ、症状が改善してから再開します。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月5日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本性感染症学会.性感染症 診断・治療ガイドライン2026.
- CDC. Chlamydial Infections: STI Treatment Guidelines. 2021.
- CDC. Gonococcal Infections Among Adolescents and Adults. 2021.
- CDC. STI Screening Recommendations. 2021.
- CDC. Vulvovaginal Candidiasis: STI Treatment Guidelines. 2021.
★こちらの記事もご参照ください「腟カンジダの薬を入れるとおりものは増える?」
腟カンジダの薬を入れると白いカス・おりものが増える?
腟カンジダの腟錠を入れた後に、白いカスや粉状・クリーム状のおりものが出ることがあります。多くは、腟内で溶けた薬の成分や基剤が分泌物と一緒に出てきたものです。量や出る時期は製品、腟内の水分量、入れた位置などで異なり、数日続くこともあります。
かゆみや赤みが改善していて、強い臭い、発熱、下腹部痛、出血がなければ、すぐに異常とは限りません。ただし、腟錠がほぼ原形のまま早く出た、症状が悪化した、治療後もかゆみが続く場合は、追加で薬を入れずに処方元または婦人科へご相談ください。
白いカスは薬?それともカンジダのおりもの?
| 考えられるもの | 特徴の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 腟錠の残り | 薬を入れた後に、白い粉、カス、ペースト状のものが出る | 薄いおりものシートを使い、腟内を洗わず経過をみる |
| カンジダのおりもの | 白くぽろぽろ・酒かす状で、強いかゆみや赤みを伴うことがある | 症状が続く場合は診察・分泌物検査 |
| 別の腟炎・子宮頸管炎 | 強い悪臭、灰白色・黄緑色、泡状、血が混じるなど | カンジダと決めつけず、原因に合う検査 |
| 薬による刺激・アレルギー | 使用後に強い灼熱感、腫れ、発疹、痛みが増える | 使用を中止し、早めに医療機関へ相談 |
見た目だけで確実に区別できないことがあります。カンジダの症状は他の腟炎や皮膚疾患でも起こるため、治療しても改善しない時は再検査が必要です。[1]
腟錠を入れた後の過ごし方
- 薬は処方時の説明または添付文書どおりに使用する
- 白いカスが出ても、指やシャワーで腟の中を洗わない
- 必要に応じて薄いおりものシートを使い、こまめに交換する
- タンポンは薬を吸収する可能性があるため、使用可否を医師・薬剤師に確認する
- 腟錠がほぼ原形のまま出ても、自己判断で2回分を入れない
- 治療中の性行為は刺激で症状が悪化することがあるため控える
腟剤の中には、コンドームや避妊用ダイアフラムなどラテックス製品の強度に影響するものがあります。使用中と使用後の注意期間は製品ごとに異なるため、添付文書をご確認ください。
腟錠が出てきたら、もう一度入れますか?
溶けた白いカスが出ただけなら、通常は予定どおり次の使用を続けます。腟錠がほぼ原形のまま出た場合は、出てきた時刻や形、製品が1回用か連日用かによって対応が異なります。
出てきた錠剤を入れ直したり、追加でもう1錠使用したりせず、処方元または薬剤師に確認してください。自己判断で倍量を使うと、刺激症状が強くなる可能性があります。
白いカスが出た時に受診した方がよい症状
- 強い臭い、黄緑色・灰色・血の混じるおりものがある
- 発熱、悪寒、強い下腹部痛、背中の痛みがある
- 水疱、潰瘍、外陰部の強い腫れや痛みがある
- 薬を使った後に、灼熱感、発疹、腫れが悪化した
- 処方された治療を終えても改善しない
- 市販薬を使用しても症状が続く、または2か月以内に再び症状が出た
- 短期間に何度も繰り返す
- 妊娠中、妊娠の可能性がある
初めての症状や、いつものカンジダと違う症状は、他の腟炎・性感染症・皮膚疾患の可能性があります。[1]
腟カンジダとは
腟カンジダは、カンジダという真菌が腟や外陰部で増えて炎症を起こす病気です。カンジダは症状のない人にも存在することがあり、検査で菌が見つかっただけでは必ずしも治療が必要とは限りません。かゆみ、赤み、痛み、おりものなどの症状と検査結果を合わせて診断します。
腟カンジダは通常、性感染症には分類されません。性交経験がない方にも起こり、症状のないパートナーを一律に治療する必要はありません。パートナーに亀頭や包皮の赤み・かゆみがある場合は、医療機関へご相談ください。[1]
カンジダが増えるきっかけ
- 抗菌薬の使用
- 妊娠や女性ホルモンの影響
- 血糖値が高い・糖尿病がある
- 免疫を抑える治療や免疫機能の低下
- 外陰部の蒸れや刺激で症状を感じやすくなる
多くは明確な原因を一つに決められません。不潔だから発症する病気ではなく、洗いすぎはかえって刺激になります。
腟カンジダの検査
外陰部の赤みやおりものを確認し、腟分泌物の顕微鏡検査や培養などを行います。症状だけではカンジダと確定できず、細菌性腟症、トリコモナス、かぶれなどとの区別が必要です。問診だけで腟炎の原因を正確に診断することは難しいとされています。[2]
治りにくい場合や短期間に繰り返す場合は、カンジダの菌種、薬の効きにくさ、糖尿病などの背景を確認することがあります。
腟カンジダの治療
主にアゾール系抗真菌薬の腟錠・クリームを使用し、状態によって内服薬を選びます。外陰部の症状が強い場合は外用薬を併用することがあります。薬の種類と日数は、初回か再発か、妊娠の有無、症状の強さ、菌種によって異なります。
妊娠中は薬の選び方が異なり、一般に腟内へ使うアゾール系薬を一定期間使用します。経口フルコナゾールを自己判断で使用しないでください。[1]
市販の腟カンジダ薬を使ってよいのはどんな時?
日本の市販の腟カンジダ薬は、以前に医師から腟カンジダと診断・治療されたことがある方の「再発」が対象です。初めて症状が出た方、妊娠中・妊娠の可能性がある方、短期間に繰り返している方、発熱・下腹部痛・異常出血・悪臭の強いおりものなどがある方は、自己治療せず受診してください。[3]
市販薬を使用しても症状が続く、または治療後2か月以内に再び症状が出た場合は、診察と検査が勧められます。[1]
カンジダを何度も繰り返す場合
目安として1年に3回以上症状を繰り返す場合は、再発性外陰腟カンジダ症として詳しい評価を行います。培養で菌種を確認し、通常より長い初期治療や再発を抑える治療を検討します。[1]
症状が繰り返していても、毎回カンジダとは限りません。接触皮膚炎、硬化性苔癬、細菌性腟症などが隠れていることがあるため、検査をせずに市販薬だけを繰り返さないことが大切です。
腟カンジダの薬についてよくある質問
Q. 腟錠の翌日に白いカスが出ても大丈夫ですか?
溶けた薬の成分や基剤が出ていることが多く、すぐに異常とは限りません。強い臭い、発熱、下腹部痛、出血、症状の悪化があれば受診してください。
Q. 白いカスを腟の中から洗い流してよいですか?
腟内洗浄はしないでください。薬まで流したり、粘膜を刺激したりする可能性があります。外陰部だけをぬるま湯でやさしく洗いましょう。
Q. 薬が出たら治療に失敗していますか?
溶けた薬が少し出るのは珍しくありません。ほぼ原形の錠剤が出た場合は、自己判断で追加せず、処方元または薬剤師に確認してください。
Q. 腟カンジダはパートナーからうつった病気ですか?
通常は性感染症には分類されません。性交経験がなくても起こります。症状のないパートナーを一律に治療する必要はありません。
Q. おりものが白ければカンジダですか?
白いおりものは正常なこともあり、腟錠の残りや別の腟炎でもみられます。かゆみなどの症状と診察・分泌物検査を合わせて判断します。
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横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。治療後のおりもの、治りにくいかゆみ、繰り返すカンジダについてご相談ください。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月5日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- CDC. Vulvovaginal Candidiasis: STI Treatment Guidelines. 2021.
- CDC. Vulvovaginal: STI Treatment Guidelines. 2021.
- PMDA.腟カンジダ再発治療薬(一般用医薬品)添付文書.
- 日本性感染症学会.性感染症 診断・治療ガイドライン2026.
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更年期障害とは?症状・診断・検査・治療を産婦人科医が解説
更年期障害とは、更年期に現れるさまざまな症状のうち、ほかの病気によるものではなく、日常生活に支障をきたす状態です。ほてりや発汗だけでなく、不眠、気分の落ち込み、疲れやすさ、頭痛、めまい、肩こり、関節痛、腟の乾燥など、現れ方は人によって大きく異なります。[1]
更年期障害には、1回の血液検査だけで決まる診断基準はありません。年齢、月経の変化、症状、生活への影響を確認し、甲状腺疾患、貧血、うつ病、婦人科疾患などを必要に応じて除外して診断します。
更年期・閉経・更年期障害の違い
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 閉経 | 卵巣機能の低下により月経が永久に停止した状態。ほかの原因がなく12か月月経がないことを確認して、最後の月経を振り返って閉経と判断します。 |
| 更年期 | 閉経の前5年間と後5年間を合わせた約10年間。日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、時期には個人差があります。 |
| 更年期症状 | 更年期に現れる多様な症状のうち、ほかの病気に直接起因しないもの。 |
| 更年期障害 | 更年期症状によって仕事、家事、睡眠、人間関係など日常生活に支障が出ている状態。 |
「更年期」は病気ではありませんが、つらい症状を我慢する必要はありません。症状で生活の質が下がっていれば治療の対象になります。
更年期障害が起こる理由
閉経へ向かう時期は、卵巣から分泌されるエストロゲンが単純に少なくなるだけでなく、大きく揺れ動きながら低下します。その変化に脳や自律神経が対応しにくくなり、ほてり、発汗、動悸、睡眠障害などが起こります。
一方、更年期障害はホルモンだけで決まるものではありません。仕事や介護、子どもの独立、家族関係などの社会的要因、もともとの体質や心理的要因、睡眠不足、ほかの病気が重なって症状が強くなることがあります。[1]
更年期障害の主な症状
血管運動神経症状
- 顔や上半身が急に熱くなる、ほてる
- 汗が止まらない、寝汗をかく
- 動悸、冷え
精神・神経症状
- 寝つきが悪い、途中で目が覚める
- イライラ、不安、気分の落ち込み
- 集中しにくい、物忘れが気になる
- 頭痛、めまい、疲れやすさ
身体症状
- 肩こり、腰痛、関節痛
- 手指のこわばり
- 皮膚や粘膜の乾燥
月経・泌尿生殖器の症状
- 月経周期が短くなる、長くなる、出血量が変化する
- 腟の乾燥、性交痛
- 頻尿、尿意切迫感、繰り返す膀胱炎
更年期障害の診断と検査
更年期障害に、全国共通の数値だけで決まる診断基準はありません。問診で症状と生活への影響を確認し、診察や検査で似た症状を起こす病気がないかを調べます。症状評価表は重症度や治療効果を見るために役立ちますが、点数だけで診断や治療法を決めるものではありません。[1]
45歳以上で典型的な症状と月経変化がある場合、FSHやエストラジオールの測定が必ず必要とは限りません。更年期移行期はホルモン値が大きく変動するため、1回の採血が正常でも更年期障害を否定できず、異常でも症状の原因がすべて更年期とは限りません。[2]
更年期障害の治療法
治療は、最もつらい症状、月経の有無、子宮の有無、持病、乳がん・血栓症などのリスク、希望に合わせて選びます。
| 治療 | 向いている症状・特徴 |
|---|---|
| ホルモン補充療法(HRT) | ほてり・発汗などの血管運動神経症状に最も効果が高い治療。睡眠や生活の質が改善することもあります。適応と禁忌を確認して使います。[3] |
| 漢方薬 | 複数の症状が重なる場合や、HRTを使わない・使えない場合の選択肢。体質と症状に合わせて処方します。 |
| 局所治療 | 腟の乾燥、性交痛、排尿症状が中心なら、保湿剤・潤滑剤や腟に使用するエストロゲン製剤などを検討します。 |
| 心理・睡眠への治療 | 認知行動療法、カウンセリング、症状に応じた睡眠薬・抗うつ薬など。うつ病や不安症が疑われる場合は専門科と連携します。 |
| 生活の調整 | 睡眠、運動、食事、禁煙、飲酒の見直し、症状を悪化させるきっかけへの対策。薬物療法と併用します。 |
HRTは「何を、どう使うか」でリスクが異なります
HRTの安全性は、エストロゲンの投与経路、量、開始時期、黄体ホルモンの種類、使用期間、本人の背景によって異なります。
HRTは何歳から何歳まで?
月経が完全に止まるまで待つ必要はありません。更年期移行期に症状がつらく、診察で適応があると判断されれば開始できます。ただしHRTには避妊効果がないため、妊娠の可能性がある間は避妊も別に考えます。
一般に、60歳未満または閉経後10年以内に開始する場合は利益とリスクのバランスが良好です。60歳を超えてからの新規開始や、閉経から10年以上経ってからの開始は一律禁止ではありませんが、心血管疾患、脳卒中、血栓症などの絶対リスクが高くなるため、より慎重に判断します。[3]
「5年で必ず中止」「65歳で必ず中止」という一律の期限はありません。症状、骨折リスク、乳がん・心血管リスク、本人の希望を定期的に見直し、継続・減量・中止を相談します。
早めの受診が必要な症状
- 閉経後、つまり12か月以上月経がなかった後の性器出血
- ナプキンが1~2時間でいっぱいになるような大量出血
- 胸痛、強い息切れ、片脚の腫れや痛み
- 突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、手足のまひ
- 動悸や息切れが強い、失神する
- 強い抑うつ、自分を傷つけたい気持ちがある
これらは更年期だけでは説明できない病気の可能性があります。緊急性が高い症状は救急医療機関を受診してください。
更年期障害についてよくある質問
Q. 血液検査で更年期障害か分かりますか?
採血が参考になる場合はありますが、1回のホルモン値だけでは診断できません。更年期移行期はFSHやエストラジオールが大きく変動するため、年齢、月経、症状、ほかの病気の可能性を合わせて判断します。
Q. 生理があるうちは更年期障害ではありませんか?
生理がある更年期移行期にも症状は起こります。月経が完全に止まる前から、ほてり、不眠、気分変化、月経不順などが現れることがあります。
Q. HRTは乳がんになる治療ですか?
乳がんへの影響は、子宮の有無、エストロゲン単独か黄体ホルモン併用か、黄体ホルモンの種類、期間などで異なります。利益とリスクを個別に確認し、推奨される乳がん検診を受けながら使用します。
Q. 症状が軽くても受診できますか?
受診できます。症状が更年期によるものか不安な場合や、仕事・睡眠への影響が出始めた段階でご相談ください。
更年期障害の詳しいページ
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産婦人科医会.更年期障害の検査・診断.2025.
- National Institute for Health and Care Excellence. Menopause: identification and management(NG23). Updated 2024.
- The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
- British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
- Stute P, et al. The impact of micronized progesterone on breast cancer risk: a systematic review. Climacteric. 2018;21:111-122.
更年期障害の症状|ほてり・不眠・気分の落ち込み・関節痛
更年期障害の症状は、ほてりや発汗だけではありません。眠れない、気分が落ち込む、疲れが取れない、頭痛、めまい、肩こり、関節痛、腟の乾燥など、全身に多様な症状が現れます。症状が仕事、家事、睡眠、人間関係に影響している場合は、程度にかかわらずご相談ください。[1]
更年期障害の症状一覧
| 症状の種類 | 主な症状 |
|---|---|
| 血管運動神経症状 | ほてり、のぼせ、発汗、寝汗、動悸、冷え |
| 睡眠症状 | 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、早朝に目が覚める、熟睡感がない |
| 精神・認知症状 | イライラ、不安、気分の落ち込み、意欲低下、集中しにくい、物忘れが気になる |
| 頭部・感覚症状 | 頭痛、めまい、耳鳴り |
| 運動器症状 | 肩こり、腰痛、関節痛、手指のこわばり、筋肉痛 |
| 全身症状 | 疲れやすい、だるい、息切れ、皮膚の乾燥 |
| 月経の変化 | 周期が短い・長い、月経が飛ぶ、出血量が多い・少ない |
| 泌尿生殖器症状 | 腟の乾燥、性交痛、外陰部の違和感、頻尿、尿意切迫感、繰り返す尿路感染 |
症状の組み合わせと強さには個人差があります。日本人女性では、ほてり・発汗よりも疲労感、肩こり、精神症状を強く感じる方もいます。[1]
ほてり・発汗・寝汗
急に顔、首、胸などが熱くなり、汗が出る症状をホットフラッシュといいます。数十秒から数分続き、日に何度も起こることがあります。夜間に起こる寝汗は中途覚醒を招き、日中の疲労や集中力低下につながります。
ホットフラッシュはHRTが最も効果の高い治療ですが、全員にHRTが適するわけではありません。頻度、生活への影響、持病、希望を確認して治療を選びます。[2]
イライラ・不安・気分の落ち込み
更年期移行期はホルモン変動に加え、睡眠不足、仕事、介護、家族関係などが重なり、イライラ、不安、抑うつ気分が現れることがあります。ほてりや寝汗を治療して睡眠が改善すると、気分も軽くなる方がいます。
一方、すべての精神症状を更年期だけで説明することはできません。強い抑うつ、楽しめない状態が続く、食事や仕事ができない、自分を傷つけたい気持ちがある場合は、うつ病なども考え、早急に精神科・心療内科を含む医療機関へ相談してください。
更年期の不眠
寝汗で目が覚めるほか、気分の変化、むずむず脚、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺疾患、薬剤、飲酒などが睡眠に影響します。「更年期だから眠れない」と決めつけず、いびき、日中の強い眠気、脚の不快感なども確認します。
治療は、ほてりが原因ならHRTやほかの治療、慢性不眠には睡眠習慣の調整や認知行動療法、必要に応じた薬物療法を組み合わせます。
関節痛・手指のこわばり
更年期には肩、腰、膝、手指などの痛みやこわばりを訴える方がいます。エストロゲン低下が関係する可能性はありますが、関節リウマチ、変形性関節症、腱鞘炎、甲状腺疾患などでも似た症状が起こります。
関節が腫れる、朝のこわばりが長く続く、発熱を伴う、片側だけ強く痛む場合は、整形外科・リウマチ科などでの評価が必要です。
腟の乾燥・性交痛・頻尿
エストロゲン低下により、腟や外陰部、尿道の粘膜が薄く乾燥し、性交痛、かゆみ、頻尿、尿意切迫感、繰り返す尿路感染などが起こることがあります。これらを閉経関連尿路性器症候群(GSM)と呼びます。
ほてりが落ち着いた後も続くことがあり、自然に改善しにくい症状です。保湿剤・潤滑剤、腟に使用するエストロゲン製剤などを症状に応じて検討します。[3]
月経の変化と注意したい出血
更年期移行期には、月経周期や出血量が不規則になります。ただし、すべてを「閉経前だから」と判断してはいけません。子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症、子宮体がんなどでも不正出血や過多月経が起こります。
次の出血がある場合は婦人科を受診してください。
- 月経以外の出血や性交後出血
- ナプキンが1~2時間でいっぱいになる大量出血
- 出血が長期間続く
- 貧血症状を伴う
- 12か月以上月経がなかった後の出血
更年期に似た症状を起こす病気
| 症状 | 確認することがある病気・状態 |
|---|---|
| 動悸・発汗・体重変化 | 甲状腺機能異常、不整脈、貧血 |
| 疲労・息切れ | 貧血、甲状腺疾患、肝疾患、睡眠障害 |
| めまい | 貧血、耳の病気、脳・神経の病気、薬の影響 |
| 気分の落ち込み | うつ病、不安症、適応障害、睡眠障害 |
| 関節痛・こわばり | 関節リウマチ、変形性関節症、腱鞘炎 |
| 不正出血 | 子宮筋腫、ポリープ、子宮内膜増殖症、婦人科がん |
更年期チェックリストの使い方
簡易更年期指数(SMI)などの質問票は、症状を整理し、治療前後の変化を確認するために役立ちます。ただし、点数が高いだけで更年期障害と確定するものではなく、点数が低くても一つの症状で生活に支障があれば治療の対象になり得ます。
受診前に「どの症状が、いつ、どのくらい続き、生活にどう影響しているか」「月経日と出血量」「服用中の薬」を記録しておくと診察に役立ちます。
すぐ受診した方がよい症状
- 胸痛、突然の息切れ、片脚の腫れ
- 突然の激しい頭痛、手足のまひ、言葉が出にくい
- 失神、持続する強い動悸
- 閉経後出血、大量出血
- 自傷・自殺を考えるほどの気分の落ち込み
これらは血栓症、脳卒中、心疾患、悪性疾患、重いうつ病などの可能性があります。緊急時は救急医療機関を受診してください。
更年期障害の症状についてよくある質問
Q. 40代で生理が順調でも更年期症状は出ますか?
出ることがあります。更年期移行期は排卵やホルモン分泌が揺らぎ、生理が続いていても、ほてり、不眠、気分変化などが現れる場合があります。
Q. 肩こりや関節痛だけでも更年期障害ですか?
更年期に関連することはありますが、整形外科疾患や関節リウマチなどの可能性もあります。痛みの部位、腫れ、持続時間などを確認し、必要に応じて他科と連携します。
Q. 更年期の症状はいつまで続きますか?
期間には大きな個人差があります。数年で軽くなる方もいれば、ほてりやGSMなどが長く続く方もいます。年齢だけで我慢せず、続く症状に合わせて治療を見直します。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産婦人科医会.更年期障害の検査・診断.2025.
- The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
- The North American Menopause Society. The 2020 genitourinary syndrome of menopause position statement. Menopause. 2020;27:976-992.
更年期障害の診断基準と検査方法|血液検査だけでは決まりません
更年期障害には、FSHがいくつ以上なら確定、という一律の診断基準はありません。年齢、月経の変化、症状、生活への影響を確認し、似た症状を起こす病気を必要に応じて除外して診断します。ホルモン検査は役立つ場合がありますが、1回の採血だけで更年期障害かどうかを判定することはできません。[1]
更年期障害の診断の考え方
日本産科婦人科学会の用語では、更年期に現れる多様な症状のうち、器質的変化に起因しない症状を「更年期症状」と呼び、その中でも日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」とします。
診断では、主に次の4点を確認します。
- 閉経前後の時期に当たるか、月経がどう変化しているか
- どの症状が、いつから、どの程度続いているか
- 仕事、家事、睡眠など日常生活にどの程度支障があるか
- 症状を説明するほかの病気や薬剤の影響がないか
更年期障害は「検査で異常がないから気のせい」という病気ではありません。一方で「40~50代の不調はすべて更年期」と決めつけず、危険な病気や治療可能な病気を見逃さないことが大切です。
診察で確認すること
- 最終月経、月経周期、出血量、不正出血
- ほてり、発汗、睡眠、気分、頭痛、動悸、関節痛、泌尿生殖器症状
- 症状が起こる時刻・頻度と生活への影響
- 妊娠の可能性と避妊方法
- 乳がん・婦人科がん、血栓症、脳卒中、心疾患、肝疾患、片頭痛などの既往
- 家族歴、喫煙、飲酒、体重変化
- 服用中の薬・サプリメント
- 乳がん検診・子宮頸がん検診の受診歴
血圧、体重・BMIも確認します。更年期は高血圧、脂質異常症、糖尿病、骨量低下などが現れやすくなる時期でもあります。
症状評価表・更年期チェックリスト
簡易更年期指数(SMI)や日本人女性の更年期症状評価表などを使い、症状の種類と強さを整理することがあります。これらは治療前後の変化を確認するうえで有用ですが、点数だけで診断したり、HRTの適否を決めたりするものではありません。[1]
気分の落ち込みが強い場合は、抑うつ・不安の質問票を併用することがあります。自傷念慮、強い抑うつ、日常生活が保てない状態がある場合は、早めに精神科・心療内科と連携します。
FSH・エストラジオールの血液検査は必要ですか?
45歳以上で、典型的な症状と月経の変化がある場合、ホルモン検査が必須とは限りません。更年期移行期はFSHやエストラジオール(E2)が日ごと・周期ごとに大きく変動するため、1回の数値はその時点の一断面にすぎません。[2]
| 状況 | ホルモン検査の考え方 |
|---|---|
| 45歳以上・典型的な症状 | 問診と月経歴を中心に判断し、FSH・E2を測定しないこともあります。 |
| 40~44歳で閉経が疑われる | 早発閉経などの評価のため、FSHなどを検討します。 |
| 40歳未満で無月経・低エストロゲン症状 | 早発卵巣不全(POI)を含む原因検索が必要です。自己判断で「若年性更年期」とせず受診してください。 |
| 子宮摘出後で月経から判断できない | 年齢・症状に加え、必要に応じてFSH・E2を参考にします。 |
| ホルモン薬を使用中 | ピルやHRTなどが数値と出血に影響するため、検査の解釈に注意が必要です。 |
FSHが高い、E2が低いという結果だけで症状の原因や治療効果が決まるわけではありません。症状が改善しているかを最も重視します。
ほかに行うことがある血液検査
症状や健診歴に応じて、次の検査を選びます。全員に一律の「更年期検査セット」が必要なわけではありません。
- 血算・鉄関連検査:過多月経、疲労、息切れ、めまいがある場合の貧血評価
- 甲状腺機能:動悸、発汗、疲労、冷え、体重変化、月経異常がある場合
- 肝機能:全身状態の確認、HRTや薬剤選択の参考
- 脂質・血糖:生活習慣病と心血管リスクの評価
- 妊娠反応:月経が遅れており妊娠の可能性がある場合
- その他:症状から疑われる病気に応じた検査
職場健診や特定健診の結果をお持ちの場合、重複する検査を省けることがあります。
婦人科診察・超音波検査
不正出血、過多月経、下腹部痛、腹部膨満などがある場合は、内診や経腟超音波検査で子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、卵巣腫瘍、子宮内膜の状態などを確認します。
閉経後出血、子宮内膜の肥厚、出血リスクがある場合は、子宮内膜細胞診・組織診、子宮鏡検査などを検討することがあります。必要な検査は症状と診察所見によって異なります。
更年期障害と区別する主な病気
| 主な訴え | 確認する病気・状態の例 |
|---|---|
| ほてり・動悸・発汗 | 甲状腺機能亢進症、不整脈、貧血、薬剤の影響 |
| 疲労・冷え・体重増加 | 甲状腺機能低下症、貧血、睡眠障害、肝疾患 |
| 気分の落ち込み・不安 | うつ病、不安症、適応障害、薬剤・アルコールの影響 |
| 頭痛・めまい | 片頭痛、耳科疾患、脳・神経疾患、貧血、高血圧 |
| 関節痛・こわばり | 関節リウマチ、変形性関節症、腱鞘炎 |
| 不正出血・過多月経 | 子宮筋腫、ポリープ、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、悪性疾患 |
HRTを始める前に確認すること
HRTを検討する場合は、症状と診断に加えて、治療の利益とリスクを判断する情報を確認します。
- 原因不明の性器出血がないか
- 乳がん・子宮体がんなどの既往と家族歴
- 血栓症、脳卒中、心筋梗塞の既往・リスク因子
- 肝疾患、胆のう疾患、高血圧、糖尿病、脂質異常症、片頭痛
- 子宮の有無
- 乳がん検診・子宮頸がん検診の受診状況
乳がん検診や子宮頸がん検診は、HRTのためだけに特別な頻度で行うのではなく、年齢・既往・地域の推奨と個別リスクに沿って受けます。出血などの症状があれば、検診とは別に診断のための検査が必要です。
骨密度検査が勧められることがある方
- 40歳未満の早発卵巣不全、45歳未満の早発閉経
- 低体重、喫煙、多量飲酒
- 骨折歴や骨粗鬆症の家族歴がある
- ステロイド薬を長期間使用している
- 骨量低下につながる病気・治療歴がある
骨密度検査の時期は年齢だけでなく、これらのリスク因子を確認して決めます。
更年期障害の診断・検査についてよくある質問
Q. FSHが正常なら更年期障害ではありませんか?
いいえ。更年期移行期のFSHは変動するため、1回正常でも更年期障害を否定できません。症状、月経、年齢、ほかの病気の可能性を合わせて判断します。
Q. 更年期チェックの点数が高ければHRTが必要ですか?
点数は症状整理の目安です。HRTの適否は、最もつらい症状、持病、リスク、子宮の有無、本人の希望などを確認して決めます。
Q. 30代でも更年期のような症状はありますか?
あります。甲状腺疾患、貧血、精神疾患などのほか、40歳未満では早発卵巣不全(POI)の可能性もあります。月経不順・無月経を伴う場合は早めに婦人科を受診してください。
Q. 初診日にHRTを始められますか?
問診、診察、検診歴などから安全に開始できると判断すれば開始できる場合があります。不正出血や持病がある場合は、必要な検査・他科確認を先に行います。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産婦人科医会.更年期障害の検査・診断.2025.
- National Institute for Health and Care Excellence. Menopause: identification and management(NG23). Updated 2024.
- European Society of Human Reproduction and Embryology. Guideline on premature ovarian insufficiency. 2024.
更年期障害の治療法|HRT・漢方・生活改善の選び方
更年期障害の治療は、ホルモン補充療法(HRT)だけではありません。最もつらい症状、月経の状態、子宮の有無、持病、乳がん・血栓症などのリスク、ご希望に合わせて、HRT、漢方薬、腟の局所治療、心理・睡眠への治療、生活の調整を組み合わせます。
ほてり・発汗にはHRTが最も効果の高い治療ですが、不眠や気分の落ち込み、関節痛などは別の原因が重なっていることもあります。症状ごとに治療目標を決め、効果を確認しながら調整することが大切です。[1]
更年期障害の治療を選ぶ4つのポイント
- 最も困っている症状:ほてり、睡眠、気分、痛み、腟・尿の症状など
- 安全性:乳がん、血栓症、脳卒中、肝疾患、原因不明の出血など
- 月経と子宮の状態:月経の有無、子宮があるか、不正出血があるか
- 希望と生活:ホルモンを使うか、貼り薬・塗り薬・飲み薬のどれが続けやすいか
治療は一度決めたら固定ではありません。効果、副作用、生活や希望の変化に応じて変更できます。
治療法の比較
| 治療法 | 期待できること | 注意点 |
|---|---|---|
| HRT | ほてり・発汗・寝汗に最も有効。睡眠や生活の質、骨量維持にも利益が期待できる。 | 適応・禁忌を確認する。子宮がある方は原則として黄体ホルモンを併用。 |
| 漢方薬 | 複数の不定愁訴が重なる場合、HRTを希望しない・使えない場合の選択肢。 | 体質と症状で処方が異なる。甘草による偽アルドステロン症など副作用にも注意。 |
| 局所治療 | 腟乾燥、性交痛、外陰部症状、排尿症状に対して保湿剤・潤滑剤・腟エストロゲンなど。 | 出血、感染、皮膚疾患など別の原因を確認する。 |
| 心理・睡眠治療 | 認知行動療法、カウンセリング、症状に応じた睡眠薬・抗うつ薬など。 | うつ病、不安症、睡眠時無呼吸などは専門的な評価が必要。 |
| 生活の調整 | 運動、睡眠、食事、禁煙、体重管理、症状の引き金への対策。 | 生活改善だけで十分でない場合は我慢せず薬物療法を検討する。 |
ホルモン補充療法(HRT)
HRTは、低下・変動するエストロゲンを補う治療です。ほてり・発汗・寝汗などの血管運動神経症状に最も効果が高く、閉経関連尿路性器症候群(GSM)や骨量低下にも効果が期待できます。[1]
HRTで改善が期待できる症状
- ほてり、のぼせ、発汗、寝汗
- ほてりに伴う不眠・疲労
- 腟の乾燥、性交痛など
- 更年期症状による生活の質の低下
気分の落ち込み、関節痛、頭痛などが改善する方もいますが、ほかの病気が原因の場合や、HRTだけでは十分に改善しない場合があります。
子宮がある方・ない方で処方が異なります
子宮がある方に全身作用のあるエストロゲンを単独で続けると、子宮内膜増殖症・子宮体がんのリスクが上がります。そのため、原則として子宮内膜を守る黄体ホルモンを併用します。子宮を摘出している方は、通常エストロゲン単独を検討します。[2]
漢方薬
漢方薬は、HRTを希望しない方、HRTが使えない方、複数の症状が重なっている方に用いることがあります。日本で更年期障害によく使われる処方には、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸などがありますが、同じ症状でも体力、冷え、のぼせ、むくみ、精神症状などによって選択が異なります。[3]
漢方薬も副作用がないわけではありません。甘草を含む処方では、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、筋力低下などを起こす偽アルドステロン症に注意します。複数の医療機関や市販薬で同じ生薬が重ならないよう、お薬手帳をご提示ください。
腟の乾燥・性交痛・頻尿への局所治療
腟・外陰部の乾燥、性交痛、頻尿、尿意切迫感、繰り返す尿路感染などを閉経関連尿路性器症候群(GSM)と呼びます。症状が局所に限られる場合は、全身HRTではなく、次の治療を検討します。
- 腟・外陰部用の保湿剤
- 性交時の潤滑剤
- 腟に使用するエストロゲン製剤
- 感染、皮膚疾患、骨盤底機能障害などがある場合の治療
GSMはほてりと異なり、閉経後に徐々に進み、自然に改善しにくいことがあります。出血、悪臭のあるおりもの、外陰部の病変がある場合は先に診察が必要です。
不眠・不安・気分の落ち込みへの治療
ほてりや寝汗が不眠の原因なら、HRTなどで血管運動神経症状を治療すると睡眠が改善することがあります。一方、慢性不眠、うつ病、不安症、睡眠時無呼吸症候群などが重なっている場合は、それぞれの治療が必要です。
- 睡眠習慣の調整、認知行動療法
- カウンセリング、ストレス要因への支援
- 症状と診断に応じた睡眠薬、抗うつ薬など
- 精神科・心療内科・睡眠専門外来との連携
抗うつ薬の一部は、HRTを使えない方のほてりに用いられることがありますが、日本での承認・保険適用は薬剤と目的によって異なります。自己判断で服用せず、医師とご相談ください。[4]
生活でできる対策
- 運動:無理のない有酸素運動と筋力トレーニングを続ける
- 睡眠:起床時刻を整え、就寝前の飲酒や長時間のスマートフォンを控える
- ほてり対策:重ね着、室温調整、携帯扇風機などを利用し、飲酒・辛い物など個人の誘因を記録する
- 食事:極端な制限を避け、たんぱく質、カルシウム、ビタミンDを意識する
- 禁煙:心血管・骨・がんリスクを下げるために重要
- 体重管理:急な減量を避け、筋肉量を保つ
運動や生活調整は健康維持に重要ですが、「これだけで必ず更年期障害が治る」というものではありません。生活に支障がある場合は医療的な治療を併用します。
サプリメント・エクオール・プラセンタについて
サプリメントや健康食品は、製品ごとに成分量、品質、効果、安全性の根拠が異なります。HRTと同等の効果が確認されているわけではなく、「天然だから安全」とも限りません。薬との相互作用や、乳がんなどホルモン感受性疾患がある方への影響にも注意が必要です。
プラセンタ製剤もHRTとは異なる治療です。献血制限など製剤固有の注意点があります。使用中のものは市販品を含めて医師にお知らせください。
治療開始後の流れ
- 改善したい症状と治療目標を決める
- 少量または標準的な方法で治療を開始する
- 数週間~数か月で効果、副作用、出血を確認する
- 十分な効果がなければ、診断、量、剤形、別の原因を見直す
- 安定後も定期的に継続の利益とリスクを確認する
HRTは、処方された用法どおりに使用してください。つらい時だけ1~2錠飲む、自己判断で黄体ホルモンを休む、貼付量を急に増減する、といった使い方は避けてください。出血や副作用がある場合は処方医へ相談します。
更年期障害の治療についてよくある質問
Q. 更年期障害は自然に治るまで我慢するしかありませんか?
いいえ。症状が生活に影響していれば治療の対象です。HRT、漢方、局所治療、心理・睡眠治療などから希望と安全性に合う方法を選べます。
Q. HRTと漢方薬を併用できますか?
症状に応じて併用することがあります。ただし、漢方薬にも副作用や重複処方の問題があるため、すべての薬・市販品を医師にお知らせください。
Q. HRTは症状がある時だけ使ってよいですか?
自己判断での頓用は勧められません。特に子宮がある方では黄体ホルモンの用法が子宮内膜保護に重要です。処方されたスケジュールで使用してください。
Q. 治療しても改善しない場合はどうしますか?
診断、薬の量・剤形、服薬状況、甲状腺疾患・貧血・うつ病・睡眠障害など別の原因を見直し、必要に応じて他科と連携します。
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この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年8月29日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
- 日本産婦人科医会.更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT).2025.
- 日本産婦人科医会.更年期障害に対する漢方療法.2025.
- The North American Menopause Society. The 2023 nonhormone therapy position statement. Menopause. 2023;30:573-590.
更年期のホルモン補充療法(HRT)の選び方|貼り薬・ジェル・飲み薬
更年期のHRTは、エストロゲンの「量」だけでなく、飲む・貼る・塗るという投与経路、子宮の有無、黄体ホルモンの種類と使い方で選びます。貼り薬・ジェルなどの経皮エストラジオールは、経口剤より静脈血栓症リスクが低いと考えられ、血栓症リスク因子がある方では第一選択として検討されます。ただし、どの方法でもリスクが完全にゼロになるわけではありません。[1][2]
HRTとは
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期に低下・変動するエストロゲンを補い、ほてり、発汗、寝汗、腟の乾燥などを改善する治療です。血管運動神経症状に最も効果の高い治療で、骨量減少を抑える効果もあります。[3]
HRTは避妊薬ではありません。閉経前で妊娠の可能性がある場合は、避妊を別に考える必要があります。
最初に決めること:子宮があるか
| 子宮の状態 | 基本的なHRT | 理由 |
|---|---|---|
| 子宮がある | エストロゲン+黄体ホルモン | 黄体ホルモンで子宮内膜増殖症・子宮体がんを防ぐため |
| 子宮を摘出している | 原則としてエストロゲン単独 | 保護すべき子宮内膜がないため |
子宮内膜症の既往、子宮体がん治療後などでは個別の判断が必要です。子宮がある方が自己判断で黄体ホルモンだけを中止すると、子宮内膜を守れなくなるため避けてください。
エストロゲン:貼り薬・ジェル・飲み薬の違い
| 投与経路 | 特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 貼り薬 | 皮膚から吸収。肝臓の初回通過を避け、経口剤より血栓症リスクが低いと考えられる。交換頻度は製剤による。 | かぶれ、はがれ、貼付部位のローテーションが必要。 |
| ジェル | 皮膚に塗って吸収。経皮剤として血栓症リスクの面で利点がある。 | 毎日塗布する製剤が多い。乾くまで衣服・他者との接触に注意。 |
| 飲み薬 | 使用しやすく、皮膚トラブルがない。 | 肝臓の初回通過があり、経皮剤より静脈血栓症リスクが高い。 |
| 腟剤 | 腟乾燥・性交痛など局所症状を中心に治療。 | 全身のほてりを治す目的の製剤ではない。出血・感染などを確認。 |
経皮エストロゲンは血栓症リスクが低い?
飲み薬のエストロゲンは腸から吸収された後に肝臓を通り、凝固系に影響します。貼り薬やジェルは皮膚から直接吸収され、肝臓の初回通過を避けるため、観察研究や専門学会の指針では、経口剤より静脈血栓症リスクが低いと考えられています。[2]
日本産婦人科医会も、肥満、加齢、脂質異常症、高血圧、糖尿病、慢性炎症性疾患、片頭痛などの血栓症リスクや胆のう・肝臓疾患がある場合、経皮エストラジオールを第一選択としています。[1]
ただし、「貼り薬なら血栓症は絶対に起こらない」という意味ではありません。血栓症の既往、喫煙、肥満、長期不動、手術予定、遺伝的素因などを確認し、リスクが高い場合はHRT以外を含めて検討します。
黄体ホルモンの選び方
子宮がある方では、全身用エストロゲンに十分な黄体ホルモンを組み合わせる必要があります。黄体ホルモンには、天然型(微粒子化)プロゲステロンと合成黄体ホルモンがあり、眠気、出血パターン、代謝・血栓・乳房への影響などが異なります。
| 種類 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 天然型(微粒子化)プロゲステロン | 体内のプロゲステロンと同じ構造。観察研究では一部の合成黄体ホルモンより乳がん・血栓症リスクが低い可能性。 | 眠気・めまいが出ることがある。乳がんリスクがゼロではなく、長期データは限定的。 |
| 合成黄体ホルモン | 複数の種類があり、子宮内膜保護作用、出血、代謝への影響が異なる。 | 製剤・用量・期間により乳房や血栓への影響が異なる。 |
天然型プロゲステロンが全員に最適とは限りません。眠気、出血、費用、併存疾患、飲み方を踏まえて選びます。
周期的投与と連続投与
| 方法 | 使い方の概要 | 出血の特徴 |
|---|---|---|
| 周期的併用法 | エストロゲンを継続し、黄体ホルモンを一定期間併用する。 | 黄体ホルモン終了後に予定された消退出血が起こることがある。閉経移行期や閉経後早期に選ぶことがある。 |
| 持続的併用法 | エストロゲンと黄体ホルモンを原則毎日併用する。 | 最初は不正出血が起こることがあるが、その後無出血を目指す。通常は閉経後に選ぶ。 |
月経の状態、閉経からの期間、出血への希望によって選びます。自己判断で黄体ホルモンの日数を減らさないでください。
HRTと乳がんリスク
乳がんへの影響は一つの数字で説明できません。子宮の有無、エストロゲン単独か併用療法か、黄体ホルモンの種類、使用期間、もともとの乳がんリスクによって異なります。
- 子宮がある方のエストロゲン+黄体ホルモン併用療法では、使用期間とともに乳がんリスクがわずかに上がる可能性があります。
- 天然型(微粒子化)プロゲステロンは、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性が観察研究で示されています。
- 天然型でも乳がんリスクがゼロになるわけではなく、5年を超える長期使用の根拠は限定的です。[4]
- 乳がん検診を推奨される間隔で受け、乳房の変化があれば受診します。
過去または現在の乳がんがある方は、全身HRTを通常は使用せず、がん治療医と連携して非ホルモン治療や局所症状への対応を検討します。
HRTを使用できない・慎重に判断する主な状態
適否は製剤の電子添文、病歴、治療目的を確認して個別に判断します。主な例は次のとおりです。
- 診断されていない原因不明の性器出血
- 乳がんやエストロゲン依存性悪性腫瘍の既往・治療中
- 静脈血栓塞栓症、脳卒中、心筋梗塞などの既往・活動性疾患
- 重い肝疾患
- 妊娠または妊娠の可能性
- 製剤成分への過敏症
片頭痛、高血圧、糖尿病、脂質異常症、胆のう疾患、子宮筋腫・子宮内膜症などがあっても、一律にHRTが使えないとは限りません。投与経路・量を含めて慎重に選びます。
開始後に起こりやすい症状
- 不正出血、予定された消退出血
- 乳房の張り・痛み
- むくみ、腹部膨満感
- 頭痛
- 貼付部位のかぶれ
- 天然型プロゲステロンによる眠気・めまい
開始後の軽い症状は数か月で落ち着くことがありますが、出血量が多い、長く続く、いったん止まった後に再び出血する場合は評価が必要です。胸痛、突然の息切れ、片脚の腫れ、神経症状は緊急受診してください。
HRT中の定期確認
- 症状が改善しているか
- 出血・乳房症状・皮膚症状などの副作用
- 血圧、体重、生活習慣
- 新しい病気・手術予定・服薬の変化
- 乳がん検診・子宮頸がん検診など年齢に応じた検診
- 継続の利益とリスク、減量・中止の希望
HRTの量、方法、期間は個別化し、少なくとも定期的に見直します。年齢だけで機械的に中止するのではなく、症状と健康状態を確認して判断します。
HRTの選び方についてよくある質問
Q. 貼り薬なら血栓症になりませんか?
経口エストロゲンよりリスクは低いと考えられますが、ゼロではありません。血栓症の既往、肥満、喫煙、手術予定などを確認して選びます。
Q. 子宮があるのにエストロゲンだけを使えますか?
全身用エストロゲンを使う場合は、原則として子宮内膜保護のため黄体ホルモンが必要です。自己判断で黄体ホルモンを中止しないでください。
Q. 天然型黄体ホルモンなら乳がんリスクはありませんか?
リスクがゼロとはいえません。一部の合成黄体ホルモンより低い可能性はありますが、主に観察研究に基づき、5年を超える長期データは限定的です。
Q. HRTで太りますか?
HRTが直接大きな体重増加を起こすという明確な証拠はありません。更年期には加齢、筋肉量低下、睡眠や活動量の変化で体重が増えやすくなります。むくみを感じる場合は処方を調整します。
横浜駅近くでHRTをご相談になりたい方へ
横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が、子宮の有無、症状、持病、血栓症・乳がんリスク、生活上の希望を確認し、剤形と組み合わせをご提案します。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- 日本産婦人科医会.更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT).2025.
- British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
- The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
- Stute P, et al. The impact of micronized progesterone on breast cancer risk: a systematic review. Climacteric. 2018;21:111-122.
- PMDA.エストラーナテープ 医療用医薬品情報・電子添文.2025年10月改訂.
- PMDA.エフメノカプセル100mg 医療用医薬品情報・電子添文.2025年10月改訂.
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.
天然型黄体ホルモン(エフメノ)のメリットと乳がんリスク
天然型黄体ホルモン(微粒子化プロゲステロン)は、体内で作られるプロゲステロンと同じ化学構造をもつ薬です。子宮がある方が全身用エストロゲンを使う際に、子宮内膜増殖症・子宮体がんを防ぐ目的で併用します。日本ではエフメノカプセル100mgが承認されています。[1]
観察研究では、天然型プロゲステロンを組み合わせたHRTは、一部の合成黄体ホルモンを使うHRTより乳がんリスクが低い可能性が示されています。しかし、「天然型なら乳がんリスクがゼロ」「長期間でも必ず上がらない」とは言えません。特に5年を超える長期使用のデータは限定的です。[2][3]
HRTで黄体ホルモンを使う理由
エストロゲンは更年期症状を改善しますが、子宮がある方が全身用エストロゲンだけを続けると、子宮内膜が増殖し、子宮内膜増殖症・子宮体がんのリスクが上がります。黄体ホルモンはエストロゲンによる子宮内膜への刺激を抑え、内膜を保護します。
| 子宮の状態 | 黄体ホルモン |
|---|---|
| 子宮がある | 全身用エストロゲンに原則として併用が必要 |
| 子宮を摘出している | 通常は不要。ただし子宮内膜症などで個別判断することがある |
黄体ホルモンは、つらい時だけ飲む薬ではありません。処方された日数・量を守ることが子宮内膜保護に重要です。
「天然型」とは
天然型(微粒子化)プロゲステロンは、植物由来原料などから製造されますが、最終的な有効成分は体内のプロゲステロンと同じ構造です。「天然型」という言葉は、無加工の自然物や副作用のないサプリメントという意味ではありません。
医薬品として承認された天然型プロゲステロンと、個人輸入・調剤による未承認のいわゆる「バイオアイデンティカルホルモン」は区別が必要です。承認医薬品は含量、品質、用法・用量、安全性情報が審査されています。
天然型プロゲステロンのメリット
- 体内のプロゲステロンと同じ化学構造
- 承認された用法でエストロゲン投与時の子宮内膜増殖症を抑える
- 観察研究では、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性
- 観察研究では、血栓症への影響が比較的小さい可能性
- 眠気が出る性質を、就寝前の服用で受け入れやすい方がいる
これらは平均的な傾向であり、全員に同じ効果・副作用になるわけではありません。
天然型プロゲステロンと乳がんリスク
乳がんリスクに関する代表的なデータには、フランスのE3Nコホートなどの観察研究があります。これらでは、エストロゲン+天然型プロゲステロンは、エストロゲン+一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性が示されました。[3]
2018年の系統的レビューは、エストロゲン+微粒子化プロゲステロンについて、5年以内の使用では乳がんリスク増加を示さないとまとめています。一方、5年を超える使用ではリスク上昇の可能性を示す根拠が限られており、結論は確定していません。黄体ホルモンの種類にかかわらず、併用HRTの説明では乳がんリスクを扱うべきとしています。[2]
ここから言えること・言えないこと
| 言えること | 言えないこと |
|---|---|
| 天然型は、一部の合成黄体ホルモンより乳がんリスクが低い可能性がある | 天然型なら乳がんにならない |
| 5年以内の使用については比較的安心できるデータがある | 5年を超えて何年使ってもリスクが上がらない |
| 黄体ホルモンの種類を選ぶことはリスク低減の一要素 | 検診や定期的な利益・リスクの見直しが不要になる |
観察研究は実際の診療に近い長期データを得られる一方、薬を選んだ背景などの影響を完全には除けません。長期の無作為化比較試験が不足しているため、数字を確定的に説明しないことが重要です。
血栓症リスクとの関係
HRTの血栓症リスクには、主にエストロゲンの投与経路が大きく関係します。貼り薬・ジェルなどの経皮エストラジオールは、経口エストロゲンより静脈血栓症リスクが低いと考えられています。黄体ホルモンも種類によって影響が異なり、天然型プロゲステロンは一部の合成黄体ホルモンより血栓症リスクへの影響が小さい可能性があります。[4]
ただし、血栓症の既往、喫煙、肥満、長期不動、手術、がんなど本人側のリスクも重要です。「経皮エストラジオール+天然型プロゲステロンなら血栓症はゼロ」とは説明できません。
エフメノの飲み方
日本の電子添文では、エストロゲン製剤との併用で、次のいずれかの方法が承認されています。実際の処方は月経状態、出血の希望、副作用などにより医師が決めます。[1]
- 持続的併用:100mgを1日1回、就寝前に服用
- 周期的併用:エストロゲン開始日を1日目として、15~28日目に200mgを1日1回、就寝前に服用
眠気・めまいが現れることがあるため、就寝前に服用します。服用後の自動車運転や危険を伴う作業は避けてください。飲み忘れた場合は自己判断で2回分をまとめず、処方時の指示または医療機関・薬剤師に確認します。
主な副作用・デメリット
- 眠気、傾眠、めまい
- 不正出血、予定された消退出血
- 頭痛
- 乳房の張り・痛み
- 腹部膨満感、吐き気
- 気分の変化
眠気が強い、転倒しそうになる、出血量が多い、出血が長引く場合は処方医へ相談してください。黄体ホルモンを自己判断で減量・中止すると、子宮内膜保護が不十分になるおそれがあります。
天然型が必ず最適とは限りません
天然型プロゲステロンは有力な選択肢ですが、次のような場合は別の方法が合うことがあります。
- 眠気・めまいが強く、継続が難しい
- 周期的な出血を避けたい、または出血パターンが合わない
- 飲み忘れが多い
- 持病や併用薬との関係で別の黄体ホルモンが適する
- 子宮を摘出しており、黄体ホルモン自体が通常不要
薬の名称だけで選ぶのではなく、エストロゲンの経路と量、黄体ホルモンの用法、本人のリスクを一つの処方設計として考えます。
天然型黄体ホルモンについてよくある質問
Q. エフメノは乳がんリスクを上げませんか?
一部の合成黄体ホルモンより低い可能性はありますが、リスクゼロを証明した薬ではありません。5年を超える長期データは限定的で、定期的に継続の利益とリスクを見直します。
Q. 「天然型」なら副作用はありませんか?
副作用はあります。特に眠気、めまい、不正出血、乳房の張りなどに注意します。医薬品として用法どおりに使用します。
Q. 眠れないのでエフメノだけ飲んでもよいですか?
睡眠薬として自己使用する薬ではありません。HRTで子宮内膜を保護する目的と処方全体を確認して使用します。
Q. 出血があるのでエフメノをやめてもよいですか?
自己判断で中止せず受診してください。投与法に伴う出血か、子宮内膜や子宮の病変による出血かを確認し、処方を調整します。
横浜駅近くでHRT・エフメノをご相談になりたい方へ
横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。現在の処方で眠気や出血がつらい方、経皮エストロゲンと天然型プロゲステロンの組み合わせを相談したい方もご相談ください。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- PMDA.エフメノカプセル100mg 医療用医薬品情報・電子添文.2025年10月改訂.
- Stute P, et al. The impact of micronized progesterone on breast cancer risk: a systematic review. Climacteric. 2018;21:111-122.
- Fournier A, et al. Unequal risks for breast cancer associated with different hormone replacement therapies: results from the E3N cohort study. Breast Cancer Res Treat. 2008;107:103-111.
- British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
- Asi N, et al. Progesterone vs. synthetic progestins and the risk of breast cancer: a systematic review and meta-analysis. Syst Rev. 2016;5:121.
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.
HRTは何歳から何歳まで?開始時期・継続期間・やめどき
HRTは、月経が完全に止まるまで待たなければ始められない治療ではありません。更年期移行期に、ほてり・発汗・寝汗などで生活に支障があり、診察で適応があると判断されれば開始できます。一方、60歳を超えてから、または閉経後10年以上経ってから初めて開始する場合は、心血管疾患・脳卒中・血栓症などの絶対リスクが高くなるため、より慎重な評価が必要です。[1]
「5年で必ずやめる」「65歳で全員中止」という一律の期限はありません。症状、骨折リスク、乳がん・心血管リスク、投与経路、本人の希望を定期的に確認し、継続・減量・中止を個別に決めます。
先に結論:開始・継続年齢の目安
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 閉経前・月経が不規則 | 症状と適応があれば開始可能。出血方法と避妊を別に考える。 |
| 60歳未満または閉経後10年以内 | 禁忌がなければ、つらい症状に対する利益とリスクのバランスが一般に良好。 |
| 60歳以上または閉経後10年超で新規開始 | 一律禁止ではないが、絶対リスクが上がるため個別評価。低用量・経皮剤などを慎重に検討。 |
| 65歳以上で継続中 | 年齢だけで一律中止しない。明確な目的、定期評価、リスク低減を前提に継続できる場合がある。 |
| 40歳未満の早発卵巣不全 | 自然閉経と別に考え、禁忌がなければ平均的な閉経年齢までホルモン補充を勧めることが多い。 |
生理があるうちからHRTを始められますか?
始められる場合があります。ほてり・寝汗などは、最後の月経より前の更年期移行期から現れることが多く、治療を12か月の無月経まで待つ必要はありません。
ただし、閉経前は卵巣からのホルモン分泌も変動しているため、不正出血が起こりやすくなります。月経状況に合わせて周期的に黄体ホルモンを使う方法などを選びます。
HRTには避妊効果がありません。月経が不規則でも排卵・妊娠の可能性は残るため、必要な期間はコンドーム、子宮内避妊具、適切なホルモン避妊法などを別に相談します。
「60歳未満・閉経後10年以内」の意味
国際的な専門学会は、禁忌のない健康な女性が、60歳未満または閉経後10年以内にHRTを開始する場合、つらい血管運動神経症状の治療と骨量減少予防について、利益とリスクのバランスが一般に良好としています。[1]
これは「60歳の誕生日を迎えたら危険になる」という境界線ではありません。年齢と閉経からの期間が長くなるほど、心血管疾患、脳卒中、静脈血栓症などのもともとの絶対リスクが上がるため、開始時期を判断する目安です。
50代で開始して60歳を超えた方と、70歳で初めて開始する方では、同じ年齢でも考え方が異なります。
60歳を超えてから初めてHRTを始める場合
60歳以上、または閉経後10年以上経ってからの新規開始は一律禁止ではありませんが、次の点をより慎重に確認します。
- 症状が本当にエストロゲン低下によるものか
- 冠動脈疾患、脳卒中、静脈血栓症の既往・リスク
- 乳がん・子宮体がんなどの既往
- 原因不明の性器出血
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満
- 全身HRTではなく局所治療で対応できる症状か
開始する場合は、症状に必要な低用量から、経皮エストラジオールなど非経口経路を優先して検討することがあります。[2]
HRTは何年まで続けられますか?
使用期間に一律の上限はありません。血管運動神経症状が続く期間には個人差があり、60代以降もつらい症状が残る方がいます。生活の質への利益があり、本人が継続を希望し、禁忌がなく、定期的に評価できる場合は長期継続を検討できます。[3]
一方、期間が長くなるほど注意すべきリスクもあります。特に子宮がある方のエストロゲン+黄体ホルモン併用療法では、黄体ホルモンの種類と使用期間により乳がんリスクが変わる可能性があります。
「できるだけ短期間」という言葉だけで必要な治療を打ち切るのではなく、継続する医学的な目的があるか、より低い量や局所治療でよいかを毎年見直すことが重要です。
65歳になったら中止しなければいけませんか?
年齢だけを理由に65歳で一律中止する必要はありません。The Menopause Societyの2022年ポジションステートメントは、持続するほてり、生活の質、骨粗鬆症予防などの明確な目的があり、利益とリスクを定期的に再評価する場合、65歳を超えた継続を検討できるとしています。[3]
年齢が上がるほど、低用量と非経口経路の選択、血圧・生活習慣病・乳房・出血の確認がより重要になります。継続しているから安全、年齢だけで危険、のどちらでもありません。
継続中に毎年見直すこと
- 治療を続ける目的:ほてり、睡眠、GSM、骨量など
- 現在も十分な効果があるか
- 不正出血、乳房症状、頭痛、皮膚症状など
- 乳がん、血栓症、脳心血管疾患などの新しいリスク
- 血圧、体重、喫煙、持病、服用薬の変化
- 投与経路・用量・黄体ホルモンの種類を改善できないか
- 継続・減量・中止についての本人の希望
定期的な検診は必要ですが、検診を受ければすべてのHRTリスクがなくなるわけではありません。症状と処方の妥当性を一緒に見直します。
HRTのやめどきと中止方法
次のような時に、減量・中止・別の治療への変更を相談します。
- 症状が落ち着き、本人が中止を希望する
- 効果より副作用・負担が大きい
- 新たな禁忌や大きなリスクが見つかった
- 局所症状だけになり、腟の局所治療へ切り替えられる
- 手術・長期不動などで一時中止が必要と判断された
急に中止しても、徐々に減量してもよい場合があります。どちらがほてりの再発を確実に防ぐという明確な差はありません。再発が心配な方は、用量を下げる、貼付間隔を医師の指示で調整するなど段階的な方法を相談します。
中止後に症状が再発した場合は、再開、より低用量、局所治療、非ホルモン治療などを再検討できます。
40歳未満の早発卵巣不全(POI)は別に考えます
40歳未満で卵巣機能が低下する早発卵巣不全(POI)や、両側卵巣摘出などによる早い時期の低エストロゲン状態は、自然な閉経年齢の更年期と同じではありません。治療しない期間が長いと、骨・心血管・泌尿生殖器などへの影響が懸念されます。
禁忌がなければ、平均的な自然閉経年齢ごろまでホルモン補充を勧めることが一般的です。この期間は「通常より早く失われたホルモンを補う」という意味合いが強く、50歳前後から初めるHRTの年齢リスクと同じようには考えません。[4]
POIでも自然排卵・妊娠が起こる可能性があるため、妊娠希望と避妊について個別に相談します。
HRTの年齢・期間についてよくある質問
Q. 生理があるうちにHRTを始めてもよいですか?
症状と適応があれば開始できます。月経の状態に合わせて投与法を選び、妊娠の可能性がある間は別に避妊を考えます。
Q. 60歳になったらHRTをやめるべきですか?
60歳で一律中止する必要はありません。開始時期、症状、投与経路、乳がん・心血管・血栓症リスクを定期的に見直して判断します。
Q. HRTは5年以上続けられますか?
続けられる場合があります。特に併用HRTでは乳がんリスクが期間とともに変化する可能性があるため、黄体ホルモンの種類を含めて毎年評価します。
Q. やめたら症状が戻りました。再開できますか?
再開できる場合があります。現在の年齢、閉経からの期間、新しい持病・リスクを再評価し、低用量や経皮剤、非ホルモン治療も含めて選びます。
横浜駅近くでHRTの開始・継続をご相談になりたい方へ
横浜駅から徒歩6分、ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~で女性医師が診察します。これからHRTを始めたい方、60歳・65歳を迎えて継続に迷う方、他院から継続処方をご希望の方も、これまでの治療内容と検診結果をご持参のうえご相談ください。
この記事の執筆・医学監修
清水なほみ 医師
日本専門医機構認定産婦人科専門医
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~ 院長
更新日・最終医学確認:2026年9月3日。本ページは一般的な医療情報であり、個別の診断・処方に代わるものではありません。
参考文献
- The North American Menopause Society Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement. Menopause. 2022;29:767-794.
- British Menopause Society. BMS & WHC recommendations on HRT. Updated 2026.
- The Menopause Society. Women aged older than 65 years may be able to safely continue taking hormone therapy. 2024.
- European Society of Human Reproduction and Embryology. Guideline on premature ovarian insufficiency. 2024.
- National Institute for Health and Care Excellence. Menopause: identification and management(NG23). Updated 2024.
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会.ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版.2025.











